日本サルコイドーシス/肉芽腫性疾患学会雑誌
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34 巻, 1 号
日本サルコイドーシス/肉芽腫性疾患学会雑誌
選択された号の論文の15件中1~15を表示しています
追悼文
会長講演
  • 山口 哲生
    2014 年 34 巻 1 号 p. 7-10
    発行日: 2014/10/10
    公開日: 2015/02/02
    ジャーナル フリー
    サルコイドーシス治療において,抗菌薬,免疫抑制剤,吸入ステロイド薬は,各々有効率は低いものの明らかに有効な例が存在することは確かである.抗菌薬の中ではドキシサイクリンが最も使いやすく,隆起性の皮膚病変や筋肉病変などに有効性が高いが肺野病変やBHLにはほぼ無効である.メトトレキサートは単剤治療でも肺野病変やBHLにも有効な例がある.フルチカゾンの吸入は末梢型肺野病変例には無効であるが中枢型病変例では有効例がある.経口ステロイド治療では症例に応じて少量ステロイド,十分量ステロイド治療を使い分ける.本症の全身症状は,不定愁訴と考えずに本症特有の治療の対象となる病変と考えるべきであり,ステロイド薬や抗菌薬が有効な例がある.
学会賞受賞講演
  • 宮崎 泰成
    2014 年 34 巻 1 号 p. 11-17
    発行日: 2014/10/10
    公開日: 2015/02/02
    ジャーナル フリー
    【要旨】過敏性肺炎は,特異抗原を吸入した際にアレルギー反応を起こす間質性肺炎である.本疾患の40–80%が慢性で,5年生存率は45%と特発性肺線維症と類似し予後不良であるため,慢性・線維化機序の研究を行った.急性過敏性肺炎では,Th1ケモカイン・サイトカインにより肉芽腫と胞隔炎を形成する.一方で,慢性におけるTh1/Th2細胞の役割は明らかではなかったので,臨床検体および動物モデルで検討した.血清およびBALFでは,Th1ケモカインCXCL10は急性で増加し,再燃症状軽減型,潜在性発症型の順に有意に減少を示し,逆にTh2ケモカインCCL17は急性で減少し,再燃症状軽減型,潜在性発症型の順に有意に増加していた.潜在性発症型に多いUIPパターンでCCL17/CXCL10陽性細胞比が高く,同様にレセプターであるCCR4/CXCR3陽性細胞比も有意に高かった.慢性化・UIPパターンになるに従ってTh1/Th2バランスがTh2ヘシフトしていることが分かった.慢性過敏性肺炎マウスモデルで,A/Jマウス(Th2優位)とC57BL/6マウス(Th1優位)において比較したところ,A/JマウスではTh2サイトカインの上昇とともに線維化病変が強く起こった.以上より,過敏性肺炎ではTh1/Th2の免疫バランスがTh1からTh2にシフトし,慢性・線維化していた.Th2へのシフトを調整するような薬剤が慢性・線維化を抑制する可能性が示され,今後の治療戦略に役立つと考えられる.
総説
  • 有害事象とそのsafety management
    徳田 均
    2014 年 34 巻 1 号 p. 19-24
    発行日: 2014/10/10
    公開日: 2015/02/02
    ジャーナル フリー
    【要旨】副腎皮質ステロイドホルモン薬(ステロイド)や免疫抑制薬治療に不応の難治性サルコイドーシス例に対してTNF阻害薬が欧米を中心に試験的に導入され,比較的良好な治療効果が確認されている.効果の期待される病型,臨床指標,薬剤などもほぼ明らかとなっている.しかし短期投与では再発が多く,長期投与した場合の効果については十分検討されているとはいえない.一方これらTNF阻害薬は関節リウマチ,クローン病などの免疫性炎症性疾患の領域で既に広く使用され,めざましい効果を挙げると共に,低頻度ながら重大な副作用が発生することがわかっている.特に感染症が問題で,死亡例も少なくなく,その対策も議論されている.しかしサルコイドーシスにおけるこれら有害事象の疫学的検討は母数が少ないこともあって充分ではない.またTNF阻害療法の特異な副作用としてサルコイドーシス発症の報告が相次いでいる.この逆説的な事態はサルコイドーシスを成立させる免疫学的機序が複雑である事を示している.
  • 諸井 雅男, 宇野 公一, 山田 嘉仁, 山口 哲生, 諸岡 都, 窪田 和雄, 廣江 道昭
    2014 年 34 巻 1 号 p. 25-30
    発行日: 2014/10/10
    公開日: 2015/02/02
    ジャーナル フリー
    【要旨】Fluorodeoxyglucose(FDG)は糖のアナログであり,18F-FDG PETは細胞の糖代謝を画像化する.近年,心臓サルコイドーシスの活動性病変を評価する方法として,18F-FDG PETが有力であることが示された.しかしながら心臓におけるマクロファージなどの炎症細胞へのFDGの取り込みを評価するためには,正常心筋細胞への取り込みを抑制する必要がある.そのためには18時間以上の絶食と検査前の低炭水化物食(5 g以下)による前処置が重要である.また,長時間絶食の確認には血中遊離脂肪酸濃度が役立つ.長時間絶食によっても不全心筋細胞はFDGを取り込む.実際の心臓サルコイドーシス病変部位では不全心筋細胞と炎症細胞が混在すると考えられる.瘢痕病巣との区別は重要で,心筋血流SPECT,心筋脂肪酸代謝SPECTが参考となる.18F-FDG PETは臨床的には治療の評価および心内膜下心筋生検のガイドとしての活用が期待される.
総説(シンポジウム記録)
  • 山口 哲生, 山口 陽子, 鈴木 未佳, 河野 千代子, 山田 嘉仁
    2014 年 34 巻 1 号 p. 31-33
    発行日: 2014/10/10
    公開日: 2015/02/02
    ジャーナル フリー
    【要旨】サルコイドーシス治療におけるドキシサイクリンの有用性について検討した.ドキシサイクリンはミノサイクリンに比べて副作用による服薬中止率が低く,有効率も高い傾向にあった.発病後服薬開始までの経過年数の短い例のほうが有効率は高かった.皮膚や筋肉など隆起性,膨隆性の病変においては有効率が高いと思えたが隆起のない皮膚病変では有効率は高くなかった.また肺野病変やBHLにもほぼ無効であった.倦怠感や痛みなどの全身症状に対しても有効例が存在した
  • 小野 真一, 石川 晴美
    2014 年 34 巻 1 号 p. 35-40
    発行日: 2014/09/10
    公開日: 2015/02/02
    ジャーナル フリー
    【要旨】中枢神経サルコイドーシス(CNS sar)におけるメトトレキサート(MTX)の使用実態についてはよく分かっていない.我々は,髄膜脳炎を唯一の臨床症状とするCNS sarを経験した.プレドニゾロンの減量により症状の再燃をみたため,MTXを10 mg/週1回で5年間(累積投与量2,850 mg)併用し,症状の再燃なくプレドニゾロンを5 mg/日に減量できた.自験例を含めた報告にみる限り,CNS sarではMTXは副腎皮質ステロイドホルモン薬(以下ステロイド)と併用投与され,ステロイドが有効であればMTXも有効であった.しかし,先行投与のステロイドが無効であってもMTX有効例があり,MTXは単なる“steroid spearing effect”ではなく,何らかの相乗作用の存在が伺われる.メタボリック症候群の増加による非アルコール性脂肪性肝疾患ならびに免疫抑制薬使用によるde novo肝炎を鑑みると,今後は肝疾患に対する留意が一層重要になると考えられる
  • 大道 光秀
    2014 年 34 巻 1 号 p. 41-46
    発行日: 2014/10/10
    公開日: 2015/02/02
    ジャーナル フリー
    【要旨】サルコイドーシスにおけるメトトレキサート(以下,MTX)治療について考える上で,副腎皮質ステロイドホルモン薬(以下ステロイド)治療のみで悪化した症例と,ステロイド減量時の再増悪にMTXが有効だった肺サルコイドーシスの症例を提示した.また肺サルコイドーシスにおけるMTX治療の適用についてWASOG recommendationを参考に見解を述べた.
  • 長井 苑子
    2014 年 34 巻 1 号 p. 47-49
    発行日: 2014/10/10
    公開日: 2015/02/02
    ジャーナル フリー
    【要旨】サルコイドーシスの治療は長期におよび副作用が治療効果を上回るとの問題がある.我々は,心病変サルコイドーシス17症例(プレドニン単独治療7例,プレドニンとメトトレキサート併用治療10例)について長期間の心機能の変化を比較検討した.両群間では,病悩期間,年齢,性別,病変の数,ペースメーカー使用数,組織診断,画像所見,肺機能所見,血清ACE,合併症などに有意差はなかった.心病変の診断は,2006年の日本サルコイドーシス肉芽腫性疾患学会の診断基準に従った.治療の指標として用いた心エコー上の拍出率は,治療開始後3年目,血清NT-proBNP,単純胸部写真上の心胸郭比(CTR)は,3年目と5年目でそれぞれ有意差を持って安定化し,左室拡張終期径(LVDd)では,3年目に安定化する傾向がそれぞれ認められた.その後も経過観察をしているが併用治療群では安定に経過して副作用も少ない.ステロイド単独群では,副作用が多く,心不全をきたして入院,死亡した症例もある.
症例報告
  • 吉野谷 清和, 五影 昌弘, 笠松 悠, 角谷 昌俊, 笠松 美宏, 山田 圭介
    2014 年 34 巻 1 号 p. 51-54
    発行日: 2014/10/10
    公開日: 2015/02/02
    ジャーナル フリー
    【要旨】肺・皮膚・眼サルコイドーシスで通院中の40歳,女性.物忘れ・ふらつきを主訴に来院し,頭部CTで水頭症,造影MRIで中脳水道に造影効果のある結節を認めた.サルコイドーシス患者に新たに出現した神経症状であることからサルコイド結節による髄液の通過障害による水頭症と診断した.副腎皮質ステロイドホルモン薬(以下ステロイド)パルス療法を施行するも改善に乏しく,早期にventriculoperitoneal shunt(VPシャント)を施行し改善を認めた.退院後9 ヵ月かけてステロイドを終了とし経過を観察しているが,発症2年5 ヵ月たった現在も再増悪を認めていない.
  • 粟野 暢康, 酒寄 雅史, 園田 唯, 近藤 圭介, 小野 竜, 守屋 敦子, 安藤 常浩, 生島 壮一郎, 熊坂 利夫, 武村 民子, 今 ...
    2014 年 34 巻 1 号 p. 55-62
    発行日: 2014/10/10
    公開日: 2015/02/02
    ジャーナル フリー
    【要旨】症例は40歳男性.X年6月の気管支鏡検査でサルコイドーシスと診断され,神経サルコイドーシスと考えられる四肢の痺れに対し,同年7月よりプレガバリンを内服していた.X+1年4月より肝障害と全身の広範な皮疹を認め緊急入院.血清ACE 28.3 IU/L,sIL2R 4,860 U/mL,リゾチーム 14.1 µg/mLと肝サルコイドーシスの合併を疑ったが,肝生検では肉芽腫を認めず,胆汁うっ滞とリンパ球浸潤を認めた.また,皮疹は多形性紅斑であり,尿中バルビツール酸系薬物検査が陽性であったことと,ペア血清でのHHV-6 IgG抗体価の上昇を認めたため,薬剤性過敏症症候群(DIHS)が疑われた.全薬剤を中止し,ステロイドパルス療法と免疫グロブリン製剤の併用で救命し得た.本例はDIHSを発症する既知の薬剤を使用していなかったが,サルコイドーシス経過中にHHV-6の再活性化を認めた稀な例であったため報告する.HHV-6の活性化はDIHSとサルコイドーシスに共通した病態であり,これは制御性T細胞(Treg)が関与している可能性があり両疾患の病態解明に重要と考えられる.
  • 數寄 泰介, 市川 晶博, 小松 あきな, 伊藤 晶彦, 宮川 英恵, 児島 章
    2014 年 34 巻 1 号 p. 63-68
    発行日: 2014/10/10
    公開日: 2015/02/02
    ジャーナル フリー
    【要旨】症例は32歳男性.30歳時に健康診断で胸部異常陰影を指摘され当科を紹介受診した.胸部CTにて多発結節影と両側肺門・縦隔リンパ節腫脹を認め,経気管支肺生検にて肺サルコイドーシスと診断したが外来受診を自己中断したため無治療のまま経過した.32歳時に全身性痙攣と意識消失が出現した.頭部造影MRIで右頭頂葉から側頭葉にかけて髄膜の造影効果を認め,経過から神経サルコイドーシスと診断し,プレドニゾロン60 mgによる治療を行い画像所見と臨床症状は改善した.肺サルコイドーシスの経過観察中に神経サ症を発症することもあり,臨床上注意が必要である.
  • 杉崎 勝教, 吉松 哲之, 瀧川 修一, 井上 聡一, 河野 宏, 大津 達也, 伊藤 和信, 三浦 隆
    2014 年 34 巻 1 号 p. 69-73
    発行日: 2014/10/10
    公開日: 2015/02/02
    ジャーナル フリー
    【要旨】中脳水道を狭窄する結節性病変を伴う水頭症をきたしたサルコイドーシスの1例を報告した.症例は30歳男性.検診異常で発見され肺および眼の病変および鎖骨上リンパ節生検による組織所見からサルコイドーシスと診断された.その後頭痛を訴えるようになりMRI検査で水頭症,脳浮腫と中脳水道を狭窄する結節性病変を認めた.画像所見及び臨床経過から中枢神経サルコイドーシスによる病変と診断し副腎皮質ステロイドホルモン薬の投与のみで軽快した.水頭症を呈する中枢神経サルコイドーシスの症例はまれであり,またVPシャントを行わずに改善した貴重な症例と考え報告した.
  • 田中 葵, 一門 和哉, 川村 宏大, 吉岡 正一, 本田 俊弘, 中尾 浩一, 菅 守隆
    2014 年 34 巻 1 号 p. 75-78
    発行日: 2014/10/10
    公開日: 2015/02/02
    ジャーナル フリー
    【要旨】心臓サルコイドーシス(以下,心病変)は,サルコイドーシスの予後不良因子であり,発症予測と早期診断が困難である.心外病変でのサルコイドーシスの確定診断後,当院循環器科が心病変を診断した4症例の臨床的特徴を検討した.全例副腎皮質ステロイドホルモン薬(ステロイド)での治療歴はなく,サルコイドーシス診断から心病変の発症までは,5年以上の経過であった(平均値7.5年).発症時の心電図所見は,1例以外は,心室頻拍や完全房室ブロック,心室細動といった重症不整脈で,心肺停止症例もあった.また,サルコイドーシス診断時の胸郭内病変が確認できた2症例は,心病変の発症時も変化はなく,安定して残存していた.サルコイドーシスの心病変は,確定診断後のいかなる時期にも合併する可能性があり,たとえ胸郭内病変が5年以上安定していても,重症不整脈で発症する可能性があると考えられた.また,現在の診断の手引きでは,偽陰性が存在し,心病変を常に念頭においた経過観察が必要であると考えられた.[
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