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永井 利幸, 香坂 俊, 奥田 茂男, 浅野 浩一郎, 安斉 俊久, 福田 恵一
2012 年 32 巻 1 号 p.
93-100
発行日: 2012/09/27
公開日: 2013/01/23
ジャーナル
フリー
サルコイドーシスにおいて,心病変の存在は最大の予後規定因子であるとされている.近年画像診断の進歩により,心臓MRI遅延造影(Late gadlinium enhancement-cardiac magnetic resonance: LGE-CMR)を用いた心病変の早期検出と予後への寄与を算出できる可能性が見出された.今回我々は,心臓外病変で組織学的あるいは臨床的にサルコイドーシスと確定診断され,特に胸部症状を認めず,左室駆出率も保たれた連続した57例を登録し,LGE-CMRを施行した後に約2年間前向きに観察した.結果,8例がLGE-CMR陽性であり,様々な造影パターンを認めた.LGE-CMR陽性群は陰性群と比較して血清ACE値が低値であった他は罹患臓器数,罹患期間,ステロイド使用の有無に差を認めなかった.観察期間内の評価では,死亡例は肺病変によるLGE-CMR陰性群の1例のみであり,全死亡,心臓死,症候性不整脈,心不全発症に関して,両群で有意な差を認めなかったが,LGE-CMR陽性群のうち,1例で高度房室ブロックにより,ペースメーカー植え込み術が施行され,1例でステロイド治療の開始により半年後のLGE-CMR所見の改善を認めた.結論として,無症候の段階でのLGE-CMRによる心病変の早期検出および,早期介入の可能性は期待できるが,こうした潜在例では中期的な予後は比較的良好と考えられた
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安東 優, 西尾 末広, 江原 千尋, 増田 大輝, 藤崎 秀明, 山末 まり, 石井 稔浩, 竹中 隆一, 伊東 猛雄, 濡木 真一, 縄 ...
2012 年 32 巻 1 号 p.
101-105
発行日: 2012/09/27
公開日: 2013/01/23
ジャーナル
フリー
腎機能障害を呈したサルコイドーシスの頻度,病態,臨床経過,治療予後について検討した.対象は2001 年1月から2011 年6月までに当科に入院し,組織学的にサルコイドーシスと診断した106 症例とした.腎機能障害をeGFR<60 mL/min/1.73m
2 が少なくとも3ヵ月以上続くものと定義すると,腎機能障害を呈するサルコイドーシス患者は16例(15.1%)であった.そのうち,組織学的に腎サルコイドーシスと診断した症例は4例(3.8%),肉芽腫を認めないが腎病変を強く示唆する臨床所見を認め腎サルコイドーシスが疑われた症例は7例(6.6 %)であった.血清Ca 濃度は全例11 mg/dL以下であり,腎機能障害の原因としてCa 代謝異常の関与は低いと考えられた.また,経過を検討すると,ステロイド治療により6ヵ月後のeGFR値は若干改善したものの,全例で60 mL/ min/1.73m
2 未満に留まった.我々の検討では,サルコイドーシスに関連する腎機能障害の原因としてCa 代謝異常の関与は低いことから,腎機能障害を認める場合は腎生検による詳細な検討が必要である.
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平澤 康孝, 山口 哲生, 前村 啓太, 竹島 英之, 槇田 広佑, 山口 陽子, 一色 琢磨, 細木 敬祐, 在間 未佳, 河野 千代子, ...
2012 年 32 巻 1 号 p.
107-111
発行日: 2012/09/27
公開日: 2013/01/23
ジャーナル
フリー
当科で6ヵ月以上経過を観察したサルコイドーシス688人のうち,41人に43個(15種類)の悪性腫瘍(以下がん)の既往または新規発症が認められた.サルコイドーシスの発症時にがんの既往があるかあるいは同時発見のもの(既往群)は19 例,サルコイドーシスの経過中に新たにがんの発症がみられたもの(新規群)は24 例であった.サルコイドーシス発症からがん発症までの期間は中間値で8.6 年,がん発症からサルコイドーシス発症までの期間は7.6年であった.2つの疾患の発症が10年以内のものは76%と多く,また,がんの発症年齢中間値は既往群50.1歳,新規群56.5 歳と比較的若年のものに多かった.これらのことから,これら2つの疾病の発症には何らかの関連性がある可能性が示唆された.
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高佐 顕之, 中山 雅之, 坂東 政司, 間藤 尚子, 中屋 孝清, 細野 達也, 山沢 英明, 杉山 幸比古
2012 年 32 巻 1 号 p.
113-117
発行日: 2012/09/27
公開日: 2013/01/23
ジャーナル
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症例は51 歳女性.2008 年12 月に右大腿から膝にかけて丘疹が出現し,左上腕・臀部・両側大腿に皮下硬結を自覚した.その約2週間後から37 –38 ℃の発熱を認め,両膝・足関節の腫脹,疼痛を自覚し,さらに左膝から下腿にかけて結節性紅斑が出現した.臀部皮下硬結の生検で非乾酪性類上皮細胞肉芽腫を認めた.胸部単純X線写真で肺門部リンパ節腫脹を認めたため,サルコイドーシスが疑われ当科に紹介された.MRI画像所見から腫瘤型筋サルコイドーシスと診断した.また両側肺門リンパ節腫脹を認め,関節炎,結節性紅斑を伴っていたことからLöfgren 症候群を合併していたと考えられた.Löfgren 症候群は本邦では稀であり,また腫瘤型筋サルコイドーシスとの合併は報告されておらず,貴重な症例と考え報告する.
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杉山 英太郎, 竹中 孝, 加藤 瑞季, 蓑島 暁帆, 武藤 晴達, 乗安 和将, 藤田 雅章, 佐藤 実, 別役 徹生, 井上 仁喜, 寺 ...
2012 年 32 巻 1 号 p.
119-126
発行日: 2012/09/27
公開日: 2013/01/23
ジャーナル
フリー
症例は31歳,男性.主訴は失神.自宅で洗面中に失神し,近医を受診.完全房室ブロックを認め入院,一時ペースメーカを挿入された後,当科を紹介された.完全房室ブロックが持続したため,恒久ペースメーカを植え込み,原因精査を行った.左室造影で心尖部に一部無収縮を認めたが,右室心筋生検では非特異的な所見のみで,確定診断には至らなかった.全身検索を行ったところ,CT上縦隔リンパ節腫脹,肺粒状影と肝脾内に多発する腫瘤を認め,肺,肝脾サルコイドーシスが疑われた.経気管支肺生検や経皮的肝生検では異常所見を認めなかった.肝脾の腫瘤はエコーでは同定できなかったため,確定診断のため腹腔鏡下で肝生検を行った.肝表面に黄白色の結節を確認でき,同部位の生検にて多核巨細胞浸潤を伴う類上皮細胞肉芽腫を認め,サルコイドーシスと診断しえた.サルコイドーシスの確定診断に,腹腔鏡下肝生検が有用であった.
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金津 正樹, 井上 義一, 杉本 親寿, 露口 一成, 庄田 武司, 新井 徹, 審良 正則, 北市 正則, 林 清二
2012 年 32 巻 1 号 p.
127-135
発行日: 2012/09/27
公開日: 2013/01/23
ジャーナル
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サルコイドーシスに膠原病を合併することは,1994年の全国統計ではサルコイドーシス877例中37例(4.2%)で,比較的稀と考えられる.当院でサルコイドーシスと診断し,膠原病を合併した3症例の臨床像について検討した.全例女性で,年齢は64 –77 歳であった.3例中2例はサルコイドーシスが先行した.症例1では眼サルコイドーシス発症から12 年後に強皮症と診断した.症例2は皮膚サルコイドーシス発症から23 年後に強皮症およびシェーグレン症候群の合併と診断した.症例3は膠原病が先行し,混合性結合組織病と診断した6年後,ステロイド治療中に虹彩炎が出現した.胸部CTで肺野の粒状陰影の出現を認め,気管支鏡等の精査の結果,サルコイドーシスと診断した.膠原病とサルコイドーシスは共に全身性疾患であり,かつ肺に病変を形成するため,両疾患の合併例では慎重に診断および治療にあたる必要がある.
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中塚 賀也, 安田 一行, 辻 貴宏, 加持 雄介, 安田 武洋, 橋本 成修, 寺田 邦彦, 黄 文禧, 羽白 高, 田中 栄作, 田口 ...
2012 年 32 巻 1 号 p.
137-143
発行日: 2012/09/27
公開日: 2013/01/23
ジャーナル
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症例は78 歳男性.1995 年,67 歳時に発熱・ぶどう膜炎・両側肺野浸潤影を来し,経気管支肺生検で非乾酪性肉芽腫が確認され,サルコイドーシスと診断された.その後ステロイド治療により寛解に至り,1998 年に治療を終了した.しかし,2000 年に両側肺野の間質影が増強し,再燃と考えて治療を再開したが,サルコイドーシスの肺病変を認めた領域に一致して線維化が進行した.2006 年12 月,急速な呼吸不全増悪と両側肺野すりガラス状陰影の出現を認め,臨床的に線維化肺の急性増悪と診断し加療するも死亡した.剖検肺では肉芽腫を認めず,線維化のない残存肺で硝子膜形成を伴うびまん性肺胞障害の所見を認めた.線維化病変は,上肺野では気管支血管束周囲主体であったが,下肺野では胸膜直下に強く認められた.サルコイドーシスの経過中びまん性肺胞障害を来す事は稀であり,報告する.
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藪内 健一, 岡崎 敏郎, 中村 憲一郎, 花岡 拓哉, 荒川 竜樹, 木村 成志, 熊本 俊秀
2012 年 32 巻 1 号 p.
145-152
発行日: 2012/09/27
公開日: 2013/01/23
ジャーナル
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症例は56 歳,女性.乳癌の既往あり.2010 年5月より霧視と羞明感を自覚していた.同年9月に頭痛,難聴および右顔面神経麻痺が出現し,近医にて髄膜炎と診断されたが,頭部MRIで右蝶形骨内に造影される腫瘤を認め,当院転院となった.神経学的に右末梢性顔面神経麻痺,両側難聴,項部硬直,小脳失調および下肢異常感覚を認めた.ACE高値,ツベルクリン反応の陰転化,CD4/CD8 比の増加,両側肺門リンパ節腫脹およびGa シンチグラフィ集積像を認めた.経気管支肺生検にて非乾酪性類上皮細胞肉芽腫が指摘され,神経サルコイドーシス(組織診断群/probable群)と診断した.右蝶形骨内の腫瘤は,外科的生検の結果whorl formationの存在,vimentinおよび S-100蛋白陽性から髄膜腫と診断した.サルコイドーシスに頭蓋内腫瘤を認めた場合,腫瘍との鑑別が困難である場合が多いため,外科的生検が必要である.
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中屋 孝清, 中山 雅之, 草野 彩, 大圃 美穂, 山内 浩義, 小松 有, 平野 利勝, 間藤 尚子, 山沢 英明, 坂東 政司, 福嶋 ...
2012 年 32 巻 1 号 p.
153-159
発行日: 2012/09/27
公開日: 2013/01/23
ジャーナル
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症例は21 歳の時に関節リウマチの既往がある52 歳,女性.2007 年12 月に経気管支肺生検にて器質化肺炎と診断され,ステロイド療法を導入された.以後,肺野の陰影は消失したため,2009年8月にステロイドは中止となった.2010 年2月の胸部CTにて縦隔リンパ節腫大,4月から霧視,12 月上旬からは心不全に伴う労作時呼吸困難が出現した.2011 年1月に入院後,TBLB検体の再評価,心臓超音波,心臓造影MRI,ガリウムシンチグラフィなどの所見より,心サルコイドーシスによる心不全と診断した.プレドニゾロン30 mg/日とフロセミド20 mg/日を開始後,速やかに心不全による呼吸不全は改善し,縦隔リンパ節腫大の縮小も認めた.器質化肺炎で発症したサルコイドーシスは稀であり,また再燃時の病態が異なることからサルコイドーシスの病態を解明する上で有用であると考えられた.
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村松 聡士, 玉田 勉, 奈良 正之, 村上 康司, 海老名 雅仁, 一ノ瀬 正和
2012 年 32 巻 1 号 p.
161-169
発行日: 2012/09/27
公開日: 2013/01/23
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サルコイドーシスの臨床所見,自然経過及び予後は症例によって大きく異なり様々なフェノタイプ分類が試みられてきている.なかでも生活様式の変化や精神的ストレスによってサルコイドーシスの臨床経過が左右される症例も多い.2011 年3月11 日の東日本大震災のような,同時期に広範囲で甚大な被害を引き起こした震災に伴う病勢の変化によるフェノタイプ分類を検討した報告は少ない.そこで今回,当院通院中の安定期サルコイドーシス患者の東日本大震災前後における病勢の変化を後ろ向きに検討した.サルコイドーシス通院患者全129 例中5例で病勢の変化を認め,うち2例は改善し3例は増悪していた.気管支喘息やCOPD等では震災後に増悪患者が増加しているとの報告が多いが,サルコイドーシス患者では増悪だけではなく改善している患者が存在していた点で興味深い.今後同様の症例を集積し因果関係も含めてさらに検討を行う必要があると考えられた.
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松本 健, 高橋 典明, 植松 昭仁, 大木 隆史, 権 寧博, 岩井 和郎, 中山 智祥, 橋本 修
2012 年 32 巻 1 号 p.
171-178
発行日: 2012/09/27
公開日: 2013/01/23
ジャーナル
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症例は38 歳の男性.胸部異常陰影,ぶどう膜炎を指摘され紹介受診した.胸部X線検査にて両側肺門リンパ節腫脹,両中下肺野の小結節陰影を認め,TBLBにて非乾酪性類上皮細胞肉芽腫を証明した.緩やかな血清ACE値上昇と小結節陰影の増加を認めていたが,症状や呼吸機能障害を認めず,経過観察としていた.初診時より5年後に偶発的と思われる肺結核症を発症した.入院にて抗結核薬(INH,RFP,EB,PZA)治療を開始した.結核治療中,一時的に血清ACE値低下を認めたが,抗結核薬治療終了後より肺野病変の増悪と血清ACE値上昇を認めた.結核性病変の進展あるいはサルコイドーシスの活動性上昇を疑い,再度TBLBを行ったが結核菌を認めず,サルコイドーシスに矛盾しない所見であった.現在まで経過観察中であるが,無治療にてサルコイドーシスは寛解状態に至った.これまでに結核治療を契機に寛解状態に至ったサルコイドーシスの報告はなく,非常に稀な例であり,文献的考察を加え報告する.
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