馬精巣上体(上体)の各部灌流液中に見られる円形細胞の形態および数的変化を観察し、射出精液中の円形細胞の出現数との関連性についても検討を加えた。
実験には21頭(5~28歳)から採取した精液23検体および雄馬4頭の精巣上体各部から採取した精巣上体管灌流液を供試し、直径7.0μm以下(SC)、7.0~12.5μm(MC)、12.5μm以上(LC)に分類した円形細胞数および精子数の算出と形態観察を行った。
精子1000尾に対する円形細胞の平均出現数は輸出管で5.73個であったが、上体頭では45.01に急増した。しかし、上体体上部では3.05に低下し、上体体中部以下では漸増する傾向があった。なお、上体尾の円形細胞は69.2%が生存していた。輸出管と上体管内の円形細胞を大きさ別にみると、MCの出現割合が最も高く54.9~71.4%を占めていた。一方、SCは輸出管では14.7%であったが、上体管内では26.2~42.2%を占め、MCとSCには相反する増減傾向が見られた。LCの割合は輸出管では16.8%であったが、上体管内では2.2~4.7%と低くなった。一方、射出精液中の円形細胞の平均出現数は0.20個と上体管に比べて極めて低く、大きさではSCが4.8%、MCが90.1%、LCが5.1%であり、上体管内に比べMCの割合が著しく高かった。
以上の結果から、円形細胞の大多数が精巣上体通過中に消失することが明らかとなり、射出精液中に出現する円形細胞は上体頭で見られるものの1/100以下である可能性が示唆された。
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