日本家畜臨床学会誌
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29 巻, 1 号
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  • 小川 秀治, 伊藤 隆, 佐藤 行, 鎌田 久祥, 安田 有, 渡部 満
    2006 年29 巻1 号 p. 1-5
    発行日: 2006/06/10
    公開日: 2009/04/22
    ジャーナル フリー
    分娩後における乳清及び血清中免疫グロブリンG(IgG)濃度、豚萎縮性鼻炎(AR)、豚丹毒(SE)凝集抗体価の経時的推移を、母豚24頭を用いて調査した。乳清中IgGは、分娩0日が最も高く、42.5mg/mlと血清IgGの約3倍の値を示した。この後16日までは血清と同レベルで推移し、以降低下し20日で血清の半分になった。乳清中のAR抗体およびSE抗体は、それぞれ分娩後20日、分娩後10日まで検出可能であった。豚オーエスキー病ラテックス凝集抗体を、ワクチン接種豚の乳清38検体、未接種豚の乳清23検体を用いて調査した。ワクチン接種豚の乳清中抗体は分娩0日の9検体全てが陽性を示し、10日後の2検体も陽性を示した。酵素抗体法(ELISA)検査では、凝集抗体陽性の検体は全例ワクチン抗体と判断された。未接種豚の乳清23検体は全て抗体陰性であった。なお、野外抗体陽性6例の検査では、乳清中の抗体は血清と同じく野外抗体と判断された。
    初乳は血清と同様の抗体検査が可能であり、初乳を用いた抗体検査は繁殖母豚群の抗体スクリーニングや疾病清浄化に向けて有効な方法と考えられた。
  • 佐藤 繁, 小野 秀弥, 一條 俊浩, 岡田 啓司
    2006 年29 巻1 号 p. 6-9
    発行日: 2006/06/10
    公開日: 2009/04/22
    ジャーナル フリー
    健康乳牛にBacillus subtilis菌体製剤を経口投与し、末梢血液中のリンパ球幼若化能の推移を検討した。リンパ球幼若化能は50gの5日間あるいは250gの1回投与牛のいずれも、初回投与日から投与後2-3日目にかけて上昇し、その後しだいに低下したが、7日目にも投与前に比べて高値(ConA、PWM)を示した。一方、50g28日間投与牛のリンパ球幼若化能は、投与開始時から投与後3-4週目にかけて上昇し、対照牛に比べて有意な高値(ConA、PWM)を示して5週目(投与終了後1週目)には対照牛と同様の値まで低下する傾向が認められた。これらのことから、B.subtilis菌体製剤投与は、PHAやCon Aで刺激されるTリンパ球とPWMで刺激されるBリンパ球活性を増強する作用があり、また、長期連続投与は乳房炎など感染症予防に応用可能であることが示唆された。
  • 大澤 健司, 松田 敬一, 古宮 久美, 穂積 愛美, 山根 正子, 御領 政信, 岡田 啓司, 内藤 善久
    2006 年29 巻1 号 p. 10-15
    発行日: 2006/06/10
    公開日: 2009/04/30
    ジャーナル フリー
    ホルスタイン種経産牛における子宮外膜部の巨大被包化膿瘍を伴う子宮蓄膿症の一症例について、臨床的および病理学的に検索した。症例牛は3歳(体重549kg)、1産で、分娩月日は平成15年8月19日であった。平成16年9月、長期発情不明を主訴に直腸検査を実施、左子宮角にソフトボール大の硬結した腫瘤が触診された。平成17年2月28日に視診により左下腹部の著明な膨隆がみられ、直腸検査において子宮はさらに腫大し、膨満していた。血液生化学検査、細菌検査および超音波検査から、慢性炎症を伴う子宮蓄膿症と診断され、食欲廃絶等から予後不良と判断された。後日病理解剖を実施、子宮内膜における化膿性炎症所見と、これとは別に被膜を介して子宮外膜部に巨大(100cm×70cm×70cm)な被包化膿瘍がみられ、第一胃は高度に萎縮していた。被包化膿瘍内には多量のクリーム状ないし泥流状の膿汁と凝血塊が認められた。両側卵巣には、機能性黄体および退行黄体ともに観察されず、卵巣は萎縮状態であった。以上の結果、本症例は子宮蓄膿症と共に子宮外膜部に形成された膿瘍が巨大化し、慢性経過を辿るなかで卵巣が萎縮して無発情状態となり、腹腔内の大部分を占めるまでに発達した被包化膿瘍が原因で全身症状を示すに至った例であると推察された。
  • 山岸 則夫, 入江 陽一, 能登 はる菜, 浪岡 徹, 岡田 啓司, 大澤 健司, 内藤 善久
    2006 年29 巻1 号 p. 16-19
    発行日: 2006/06/10
    公開日: 2009/04/22
    ジャーナル フリー
    30日齢のホルスタイン種子牛1頭(雄)が、急性に落ち着きなく寝起きを繰り返し、起立時には腹部を蹴り上げるなどの疝痛症状を示した。排便量は少なく、腹部は進行性に膨満し振盪にて拍水音が聴取された。血液一般検査では、白血球数の著しい増加が顕著であった。腹部X線検査では、ガスが膨満しループ状になった小腸が腹腔内全域に観察された。右〓部切開による試験的開腹では、ガスで膨満した小腸が腹腔内に充満していた。触診にて腸問膜根の約180°反時計方向への捻転を確認し、これを用手的に整復した。術後、症例は速やかに回復した。
  • 池田 浩希, 長縄 直樹, 安藤 貴朗, 大塚 浩通, 朴 天鎬, 小山田 敏文, 渡辺 大作
    2006 年29 巻1 号 p. 20-24
    発行日: 2006/06/10
    公開日: 2009/04/22
    ジャーナル フリー
    妊娠6ヵ月の黒毛和種牛(5歳)が、放牧場で腹痛と沈うつの症状を呈して衰弱していたとの稟告で来院した。初診時に著しい腹部膨満が認められたため超音波検査を行ったところ、腹水の貯留と腫瘍状組織の増生が認められた。血液および腹水検査では尿素窒素とクレアチニンの高値が認められた。腫瘍または膀胱破裂を疑い、診断的開腹により大量の腹水を確認したが、腹腔内の内視鏡検査では腫瘍状組織は認められなかった。膀胱の内視鏡検査では、尿中に浮遊物と膀胱粘膜の一部に糜爛が認められた。これらの検査結果から、放牧場にて何らかの腎毒性を有する植物を採食した事によるネフローゼ、尿毒症を疑って治療を試みた。持続点滴、抗生物質の全身投与、膀胱内への薬液注入、腹水の除去などを行ったが症状は改善せず、第11病日に死亡した。剖検では、腎皮質の出血および弓状動脈への血栓形成による多発性梗塞と、腎リンパ節の著しい腫大が認められた。本症例で見られた腹水は尿成分が主体となっていたことから、腎梗塞部からの尿の漏出が原因であると考えられた。しかし、腎臓の梗塞を起こした血栓の成因は明らかにできなかった。
  • 仲佐 友身, 安中 篤史, 羽瀬 水奈子, 安藤 貴朗, 大塚 浩通, 渡辺 大作
    2006 年29 巻1 号 p. 25-28
    発行日: 2006/06/10
    公開日: 2009/04/22
    ジャーナル フリー
    嚥下困難で食渣を吐出し、栄養不良を呈していた35日齢の黒毛和種子牛において、触診による咽頭部の腫脹と聴診による喘鳴音から内視鏡検査を行った。その結果、咽頭背部において母指頭大腫瘤状結節4個が食道基部を狭窄していた。このことから咽頭炎を疑い抗生物質と副腎皮質ホルモン剤および補液による治療を行ったところ徐々に食欲が回復し、喘鳴音も軽減された。第16病日の内視鏡検査では腫瘤状結節の消失が確認され、第19病日に退院とした。本症例は、内視鏡検査を含む各種臨床検査により早い時期に非化膿性の咽頭炎を診断することが可能となり、抗生物質と副腎皮質ホルモン剤の投与による治療で順調に回復さぜることができた。したがって、内視鏡検査は咽喉頭疾患において有用な診断法の一つと考えられた。
  • 日本型畜産を求めて
    大塚 浩通, 大澤 健司
    2006 年29 巻1 号 p. 29-32
    発行日: 2006/06/10
    公開日: 2009/04/22
    ジャーナル フリー
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