日本家畜臨床学会誌
Online ISSN : 1883-4604
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31 巻, 3 号
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原著
  • 福田 卓巳, 大澤 健司, 打座 美智子, 爲岡 奈々恵, 遠藤 保, 大井 隆弘, 荒屋 孝一, 下村 則夫, 広沢 悠子, 居在家 義 ...
    2008 年31 巻3 号 p. 137-142
    発行日: 2008/12/31
    公開日: 2013/05/16
    ジャーナル フリー
    効果的な過剰排卵処置法の開発をする目的で、CIDRを併用した過剰排卵処置における卵巣反応性と回収胚数および品質との関係について検討した。ホルスタイン種未経産牛15頭を供試し、CIDRを挿入した群(挿入群;n=6) と挿入しなかった群(非挿入群;n=9) に分け、挿入群にはDay14(Day0=発情日) にCIDRを膣内に挿入した。全頭に過剰排卵処置開始前3~5日に安息香酸エストラジオール2mgを注射した。過剰排卵処置は挿入群ではDay19~22から、非挿入群ではDay10~12から開始し、FSH24AUを4日間漸減注射した。FSH注射最終日にPGF類似体を注射すると同時に、挿入群ではCIDRを抜去した。人工授精(AI) を発情発現日の翌日の朝と夕の2回行い、初回AI時にはGnRH類似体を注射した。胚回収はAI後6日目に実施し、回収した胚の数と品質を調べた。処置を行った発情周期のDay2から、過剰排卵処置開始前日まで、隔日に超音波検査を行って卵胞数とその直径により小卵胞(2~5mm)、中卵胞(6~9mm)、大卵胞(≧10mm) に3区分し、それぞれの数を計測した。また、胚回収前日に黄体数および直径≧10mmの大卵胞数を計測した。さらに、胚回収時の末梢血中エストラジオール‐17β(E2) 濃度をRIA法によって測定した。小卵胞数は、挿入群ではDay4に最多およびDay12に最少、非挿入群でDay6に最多およびDay10に最少となった。挿入群において、黄体数および回収胚数は多く、胚回収前日における大卵胞数は少ない傾向が認められた。さらに、両群において、過剰排卵処置開始前日の小卵胞数と胚回収前日の黄体数および大卵胞数の合計との間には有意な正の相関が認められた。胚回収時のE2濃度と大卵胞数および回収胚の品質には有意な相関は認められなかった。以上の結果より、過剰排卵処置前日に小卵胞が多数認められる場合には、過剰排卵処置に対する反応性が良好であることが明らかになった。また、CIDR挿入により過剰排卵処置に対する反応性が向上する可能性が示唆された。
  • 山田 裕, 加藤 真紀, 猿山 由美, 小中 一成, 内山 史一, 磯 日出夫
    2008 年31 巻3 号 p. 143-147
    発行日: 2008/12/31
    公開日: 2013/05/16
    ジャーナル フリー
    乳牛は分娩時生理的に血中Ca濃度が低下し、重度の場合は起立不能となることが知られている。低Ca血症(血中総Ca濃度<7.0mg/dlまたはイオン化Ca濃度<0.9mmol/L) の予防を目的として、プロピオン酸Caを主剤としたペースト状Ca剤を分娩開始時およびその12時間後の2回経口投与し、分娩前、第2回の投与直前、分娩後1、2および3日後に採血し、無投与対照群と血中Ca濃度などを比較した。その結果、試験群における低Ca血症発症率は29.4%と対照群の44.4%より低くなる傾向がみられた。低Ca血症のため治療を行った割合も、対照群33.3%に対し試験群は17.6%と少ない傾向がみられた。分娩後の血中Ca濃度は試験群において対照群より回復が早かった。本剤投与に起因すると考えられる臨床症状および検査所見の異常は認められなかった。以上の結果より、分娩開始時または分娩直後およびその12時間後の2回のペースト状Ca剤の経口投与は、その後の低Ca血症の発生の抑制と、血中Ca濃度の回復に有効である可能性が示唆された。
症例報告
  • 山岸 則夫, 大越 なつき, 江原 和則 , 久保田 学, 古岡 秀文, 古林 与志安, 羽田 真悟 , 宮原 和郎, 小岩 政照, 大星 ...
    2008 年31 巻3 号 p. 148-153
    発行日: 2008/12/31
    公開日: 2013/05/16
    ジャーナル フリー
    うっ血性心不全の症状を呈した乳牛2例の臨床および病理学的所見について報告した。症例1は2歳のホルスタイン種乳牛であり、食欲廃絶、胸垂の皮下浮腫、頚静脈の両側性怒張などを呈した。心電図検査では、QRS群の著しい低電位が認められた。心臓の超音波検査では、左右心房および心室腔の拡張と左室内径短縮率の低下が認められ、臨床的に拡張型心筋症と診断された。剖検では、左右両心室腔の著明な拡張と心室壁の菲薄化が認められ、組織学的に心筋細胞の肥大と空胞変性ならびに間質性心筋線維化が観察されたことから、拡張型心筋症と確定診断された。症例2は3歳のホルスタイン種乳牛であり、食欲廃絶、胸垂の皮下浮腫、頚静脈の両側性怒張などを呈した。心臓の超音波検査では、左心室腔と大動脈弁口の著しい拡張、心膜液貯留に伴う右心室の拡張不全、大動脈弁・弁尖の接合の欠落が認められた。病理学的検査において、左心室腔ならびに大動脈弁口の著しい拡張、大動脈弁・弁尖の肥厚(粘液腫様変性) が認められた。以上より、本例は、大動脈弁閉鎖不全症と診断された。
  • 岡田 らん, 今井 直人, 安藤 貴朗 , 小比類巻 正幸, 大塚 浩通, 渡辺 大作, 及川 正明
    2008 年31 巻3 号 p. 154-159
    発行日: 2008/12/31
    公開日: 2013/05/16
    ジャーナル フリー
    軟骨下骨の欠損を伴う骨軟骨症の黒毛和種子牛について、その検査と治療の概要について報告した。症例は41日齢で、来院時には右前肢腕節に疼痛、腫脹、熱感がみられ、右前肢に負重は認められなかった。X線検査では、右前肢第三中手骨近位端に直径約1cmの嚢胞状のX線透過性亢進像がみられた。関節液は白濁していたが細菌培養検査は陰性であった。これらの結果より骨軟骨症と診断し、入院3日目から関節内の洗浄および消炎剤の関節内投与を行ったが、症状の改善はみられなかった。39日目のX線検査で病変部の拡大が認められたため、関節鏡手術により病変部全体を掻爬、洗浄し、ヒアルロン酸ナトリウムを1週間ごとに4回、関節内に投与した。術後は徐々に症状が改善し、67日目のX線検査では病変部の縮小と骨組織の充実が認められ、跛行を示さなくなった。本症例では消炎剤投与による治療では、病態の良化は認められなかったことから、病変部の骨、軟骨の壊死により疼痛を生じていたと考えられた。関節鏡を用いた壊死病変の掻爬とヒアルロン酸ナトリウムの関節内投与は、疼痛の改善、関節軟骨の修復や保護、粘弾性の回復などにより牛の骨軟骨症に有効な治療法だと考えられた。
短報
  • 望月 啓太, 渡辺 菜美, 小比類巻 正幸, 安藤 貴朗, 大塚 浩通, 渡辺 大作, 及川 正明
    2008 年31 巻3 号 p. 160-164
    発行日: 2008/12/31
    公開日: 2013/05/16
    ジャーナル フリー
    牛における双子の分娩は増加傾向にあるが、双子の妊娠・分娩は過剰な生理的負担となる。本研究では、分娩前後のBCS、体重、体重変動率(WCR)、体格指数(BMI) の変化について双子分娩牛(双子群) と単子分娩牛(単子群) に分けて調査を行った。さらに、双子分娩が乳牛の生産性に及ぼす影響を明らかにするため、妊娠期間、死流産率、初回授精日数、初回授精による受胎率および廃用率についても比較を行った。その結果、BCSおよびWCRは分娩前2~1ヶ月において、単子群は増加傾向を示したのに対し、双子群では増加は認められなかった。さらに全期間で、BCSは単子群と比較して双子群が低値を示した。BMIは、分娩後1~2ヶ月において単子群と比べて双子群が低値を示す傾向にあった。分娩時の状況として、双子群では妊娠期間の短縮および死流産率の増加がみとめられた。また、双子群では分娩後の初回授精日数の延長、初回授精による受胎率の低下、分娩後の廃用率の増加がみられた。本研究の結果から、双子妊娠牛は分娩前のエネルギー要求量が高くなるにもかかわらず、摂取量が増加していないことがわかった。双子妊娠牛では周産期のダメージを軽減するために、乾乳後期の増飼や良質粗飼料の給与など、乾乳期からの個体ごとの飼養管理が重要であることが示唆された。
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