患者が治療に対しどの程度同意しているかの患者とセラピストとの間の治療同盟を問うTherapeutic Alliance in Physiotherapy Questionnaire-Patients(CAF-P)は,治療効果や満足度と大きな関連がある。そこで本研究では,国際的な質問紙票の異文化適応ガイドライン(順翻訳,順翻訳統合版作成,逆翻訳,仮日本語版作成,パイロットテストの5段階)に準拠して14項目からなるCAF-Pの日本語版を作成した。運動器疾患の治療を受ける日本語を第一言語とする30名を対象としたパイロットテストでは,5段階数値評価スケール(1:日本語として全く意味が分からない,5:日本語として十分伝わる)で日本語として意味が伝わるかを評価し,スコアが1-3の場合はコメントを得た。スコア3の回答が420(30人×14質問)回答中3件であり,コメントをもとにより分かりやすい日本語に修正して最終的な日本語版CAP-Fとなった。日本語版CAF-Pは,今後の研究や臨床のセラピストのチェックリストとしての利用が期待できる。
本予備研究の目的はFunctional Movement Screening system (FMS)における自動下肢伸展挙上(ASLR)のスコア1とスコア3の者の間には体幹表層伸展筋群の筋活動様式の違いがあるのかを検証するために必要なサンプルサイズを算出することとした。対象は,腰痛下肢痛は無いがFMS-ASLRスコア1(機能不全有り)の者18名とスコア3(機能不全なし)の者9名を対象とした。右ASLR時における,右大腿直筋の筋活動onsetに対する左右胸最長筋,左右腰腸肋筋,左右多裂筋の筋活動遅延の差を算出し,効果量(Hedges’ g)とα=0.05,β=0.2における必要サンプルサイズを算出した。結果,スコア1の者はスコア3の者に比べて右大腿直筋に対する左右胸最長筋,左右腰腸肋筋,左右多裂筋の筋活動遅延が小さく,その効果量は全評価項目の中で最大値の1.32となり,必要なサンプルサイズはFMS-ASLRスコア1(機能不全有り)の者14名とスコア3(機能不全なし)の者14名と算出され,本実験においては少なくとも合計で28名の被験者が必要であることが分かった。
本研究の目的は,ホームエクササイズを実施する自信の程度を問うSelf-Efficacy for Home Exercise Programs Scale(SEHEPS)の日本語化とした。方法としては、国際的な質問紙票の異文化適応ガイドラインに則り,5段階の過程(順翻訳,順翻訳統合版作成,逆翻訳,仮日本語版作成,パイロットテスト)を経た。5段階目のパイロットテストの過程では,運動器疾患がありホームエクササイズが処方されている者30名より,仮日本語版のSEHEPSについて「1:日本語として全く意味が分からない,5:日本語として十分伝わる」の5段階評価スケールを用いて理解度の評価を行い,1-3のスコアの場合は自由記載にて問題箇所のコメントを得た。結果として,対象者は男性16名女性14名,平均年齢±標準偏差は52.6±17.1歳であった。スコア4以上を選択した者の割合は66.7%から100%であり,スコア1を選択したものは1人もいなかった。パイロットテストでのコメントをもとに順翻訳者と逆翻訳者を合わせた計5名で協議して最終的な日本語版SEHEPSを作成した。