土木学会論文集C
Online ISSN : 1880-604X
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64 巻, 1 号
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和文論文
  • 吉田 秀樹, 坂田 和俊, 片桐 雅明, 寺師 昌明, 村川 史朗
    2008 年 64 巻 1 号 p. 1-13
    発行日: 2008年
    公開日: 2008/01/21
    ジャーナル フリー
     層厚が時間と共に増加して行く埋立解析では,投入される浚渫粘土の実質土量(土粒子のみの体積)の投入計画もしくは投入履歴が必要となる.埋立は浚渫対象の地山での全体積ベースで計画されるため,実質土量は浚渫予定地の含水比などの地盤調査結果を介して推定することとなる.しかし,浚渫対象箇所の地盤調査が十分に行われていない場合には,この実質土量の推定精度が低くなり,これを用いた埋立解析による予測解析結果の誤差は大きくなる.本研究では,実質土量の投入履歴が十分把握できていない浚渫土埋立地に対して,埋立途中に実施した埋立地内の地盤調査結果を活用して精度向上を図ることができる埋立解析手法を提案し,新北九州空港2工区の事例で検証した.
  • 大谷 順, 高野 大樹, 永谷 英基
    2008 年 64 巻 1 号 p. 14-29
    発行日: 2008年
    公開日: 2008/01/21
    ジャーナル フリー
     シールドトンネル工法によりトンネルを掘削する際,海底地盤などの地表面変形がある程度許容される条件下においては,土砂を取り込まずシールド切羽を圧入することで,無排土あるいは低排土掘削によるトンネル構築も可能であると考えられる.しかし,シールドマシンを強制的に地山に圧入した場合に生じるであろう切羽前方地盤の受働破壊現象については,ほとんど解明されていないのが現状である.本研究はこのような受働破壊現象を対象とし,切羽形状が受働領域に及ぼす影響について遠心模型実験とX線CT (computed tomography) を用いた1G場での模型実験の結果を基に考察を行った.その結果,コーン状の切羽先端形状の中心を偏心させることが有効であることを確認した.
  • 笹原 克夫, 田村 圭司
    2008 年 64 巻 1 号 p. 30-42
    発行日: 2008年
    公開日: 2008/01/21
    ジャーナル フリー
     密詰め供試体の正のダイレイタンシーに起因するせん断応力の付加について,不飽和三軸圧縮試験結果により検討した結果,これが破壊時の主応力差を大きくすることが判明した.この破壊時の正のダイレイタンシーに起因する主応力差(ダイレイタンシーせん断応力)を分離し,それと破壊時の間隙比と限界間隙比の差として定義した状態変数の関係は,サクションに依存しない線形関係となる.状態変数が0に向かって大きくなるとダイレイタンシーせん断応力は小さくなり,状態変数が0の時にダイレイタンシーせん断応力も0となる.また破壊時のみならずせん断中の任意の時点においても,状態変数とダイレイタンシーせん断応力の関係は,破壊時以降では同様な線形関係を示すことが判明した.
  • 佐川 修, 兵動 正幸, 中田 幸男, 吉本 憲正, 藤原 愛
    2008 年 64 巻 1 号 p. 43-56
    発行日: 2008年
    公開日: 2008/01/21
    ジャーナル フリー
     本論文では,Na型ベントナイトと砂を異なる混合率で混合した材料に対して,カルシウム水溶液を長期間浸透させ,透水特性の経時変化を観察するとともに,Ca置換させた供試体に対して三軸圧縮試験を行い,せん断挙動に及ぼすCa置換の影響について検討を行った.カルシウム水溶液の長期浸透による透水係数の経時変化から,Na型ベントナイト混合砂からのNaイオンの流出にともない,透水係数が上昇することが観察された.また,力学試験後のCa置換ベントナイト混合供試体に対して固相分析による定量分析を行った結果,Ca置換率は75∼98%を示しCa置換されたことを確認した.三軸圧縮試験によるせん断試験の結果から,Ca置換ベントナイト混合供試体は,Na型ベントナイト混合砂と比較して高いせん断強度を発揮することが明らかとなった.
  • 田口 岳志, 鈴木 素之, 平岡 真樹, 藤野 秀利, 藤本 哲生, 山本 哲朗
    2008 年 64 巻 1 号 p. 67-78
    発行日: 2008年
    公開日: 2008/02/20
    ジャーナル フリー
     上載圧下で養生したセメント安定処理土を対象に走査型電子顕微鏡による画像解析と水銀圧入型ポロシメーターによる間隙径分布の測定を実施した.その結果,上載圧の増加に伴って処理土の累積間隙容積は減少し,そのときの間隙径と間隙容積の関係も上載圧の影響を受け,処理土の間隙構造は上載圧の影響に加えてセメント水和物の生成によって緻密になることを示した.また,同処理土のエックス線回折試験および強熱減量試験の結果から,エックス線回折パターンには上載圧の大きさによる違いはみられないこと,強熱減量は添加量や養生時間の増加に対して増加するが,上載圧の増加に対して不変であることを示した.処理土の水和物の量および質は圧密養生過程での上載圧の影響を受けない.
  • 山口 晶, 吉田 望, 飛田 善雄
    2008 年 64 巻 1 号 p. 79-89
    発行日: 2008年
    公開日: 2008/02/20
    ジャーナル フリー
     地表面に現れた噴砂の分布から,液状化層厚を算定する方法を模型実験から求めた.実験は,液状化層の上部に低透水性層を有する模型地盤を振動させるものである.この実験では,側面および上方から噴砂を観察・記録し,噴砂の面積や個数を調べた.なお,実験では低透水性層と液状化層の両層が液状化した.その結果,液状化層厚と噴砂の面積と個数に関係が認められた.この関係から求めた液状化層厚の推定式の妥当性を,2003年宮城県北部地震によって観察された噴砂の分布状況と比較した.その結果,推定された液状化層厚と調査結果は一致した.
  • 高橋 晃, 竹内 友章, 新家 由隆, 松原 由和, 山本 正人, 松岡 俊文
    2008 年 64 巻 1 号 p. 90-100
    発行日: 2008年
    公開日: 2008/02/20
    ジャーナル フリー
     本論文では,既設シールドトンネル坑内で弾性波を発震し,セグメントを透過した弾性波の地層境界からの反射波を同じトンネル坑内で受振することで,トンネル周辺の地層構成を推定する手法について提案する.すなわち,地中の任意の場所に掘削されたトンネル坑内の任意の一点で発震された弾性波(S波)は,コンクリート製のセグメントを透過してトンネル周辺全体の地盤に伝播する.そして,トンネル上下の地層境界から到来する反射波をトンネル坑内で受振し,反射波の到来方向を分離することで,地層構成を推定することが可能となる.本探査法を既設のトンネル坑内で実施したところ,ボールリング調査により作成した地層構成と整合性のある結果が得られた.
  • 田中 俊行, 戸井田 克
    2008 年 64 巻 1 号 p. 101-110
    発行日: 2008年
    公開日: 2008/03/21
    ジャーナル フリー
     高い遮水機能が要求される構造物に適用することを目的として,締め固めた「礫-砂-ベントナイト混合土」の締固め特性や透水特性について検討した.その結果,この材料は「砂-ベントナイト混合土」に最大粒径20mm程度の礫を混入することで密度を高めて間隙を小さくし,同じベントナイト混入率の砂-ベントナイト混合土と比較して,高い遮水性能を達成できることが分かった.さらに,礫混入率,ベントナイト混入率や初期含水比等の要因が透水係数に及ぼす影響について調べ,これらの要因を統一的に評価できる新しい指標を提案し,透水係数を良好に整理し推定する方法を示した.
  • 吉田 秀樹, 坂田 和俊, 片桐 雅明, 寺師 昌明, 村川 史朗
    2008 年 64 巻 1 号 p. 111-126
    発行日: 2008年
    公開日: 2008/03/21
    ジャーナル フリー
     地盤の破壊や変形を検討する場合,通常,対象地盤に対して地盤調査や土質試験を実施して,層序や初期状態,地盤定数などの地盤に対する情報を設定する.浚渫粘土埋立地を対象にした圧密促進のための地盤改良設計においても同様で,埋立完了後に実施される地盤調査の結果が用いられる.しかし,浚渫粘土埋立完了後直ちに地盤改良工事を行う場合には,地盤調査,試験の時間的余裕が乏しいこと,埋立直後の地盤は未圧密で試料採取が困難なこと,などから,浚渫土埋立中に完成時の埋立地の状態を予測し,地盤改良設計を行っておく必要がある.本研究では,このような状況下で埋立地の地盤状態と圧密定数を設定する手法を,浚渫粘土埋立解析をベースとして提案し,その妥当性を新北九州空港建設事業で検証した.
  • 北詰 昌樹, 高橋 英紀
    2008 年 64 巻 1 号 p. 144-156
    発行日: 2008年
    公開日: 2008/03/21
    ジャーナル フリー
     石灰やセメントなどを用いた安定処理土の長期特性に関する研究事例は限られており,そのメカニズムに関しては未解明の点も多い.筆者らは,1979年以来,港湾技術研究所構内の土槽に生石灰で安定処理した現場土塊を保存しており,1991年には11年間保存した石灰安定処理土の湿潤密度,含水比,一軸圧縮強さおよびカルシウム含有率の調査を行った.その後も安定処理土塊をそのまま地中で養生し続け,27年間保存した安定処理土を再度調査する機会を得た.その結果,石灰安定処理土は11年間に約3倍に強度増加した後はほぼ一定の強度で推移し,劣化の兆候は見られなかった.本稿では,打設時のデータを含めた3回の調査結果から,27年に亘る石灰安定処理土の長期特性に関して報告する.
  • 坂井 晃
    2008 年 64 巻 1 号 p. 157-174
    発行日: 2008年
    公開日: 2008/03/21
    ジャーナル フリー
     土の繰返し非排水せん断変形を求めるために過剰間隙水圧発生量を定式化することは,繰返し載荷時の有効応力経路を表現する上で極めて有用である.本研究は,サイクリックモビリティを含めた有効応力経路の表現方法として,変相線を用いることなく,正負のダイレイタンシーを表す2つの曲線の和によって表示する有効応力経路式を使用する.また,この有効応力経路式を用いることによって,繰返し載荷時の累積せん断仕事と残留過剰間隙水圧の関係を非線形応力ひずみ関係に適用した繰返し非排水せん断変形モデルを提案し,初期せん断応力を受けるときの飽和砂およびひずみ速度の影響を受ける粘性土の繰返し非排水せん断変形への適用性とそのときの変形特性について検討する.
和文報告
  • 吉田 秀典, 木下 尚樹, 大野 雅之
    2008 年 64 巻 1 号 p. 57-66
    発行日: 2008年
    公開日: 2008/01/21
    ジャーナル フリー
     露天掘り鉱山において,安定的な残壁を形成しつつ採掘を進めることは,鉱山労働者に対する危害の防止や景観保護等の観点から重要な課題となっている.しかしながら,残壁崩壊事例が以前より現在に至るまで多数報告されており,四国管内においても平成16年4件,平成17年1件,平成18年2件の残壁崩壊事故が発生している.このため,中国四国産業保安監督部四国支部では平成17年度および18年度に中国四国地方鉱山保安協議会四国部会に専門委員会を設置し,今後の残壁崩壊を防止するための対策に資するために,管内の露天堀鉱山における残壁の状況について取りまとめを行うとともに,これまでに発生した残壁崩壊事例の調査を行い,崩壊要因,前兆,対策などについて整理・検討を行った.
  • 冨澤 幸一, 三浦 清一, 渡辺 忠朋
    2008 年 64 巻 1 号 p. 127-143
    発行日: 2008年
    公開日: 2008/03/21
    ジャーナル フリー
     軟弱地盤中の杭の水平抵抗の増加を図るため杭周辺に複合地盤を形成する工法において,その地震時挙動を検討した.2次元有限要素法による動的非線形解析の結果,複合地盤を施すことで地震時に杭水平変位,杭ひずみおよび地盤変形が抑制された.その傾向はレベル1地震動のみでなくレベル2地震動でも同様であった.また,複合地盤の改良強度および改良範囲を杭特性長1/βを指標に種々に変化させた検討の結果,特に杭の応答変位やひずみに改良深さが大きな影響を及ぼすことが明らかとなった.地震時の地盤変形は改良深さの増加と伴に減少し,杭と一体化するように挙動した.これらを踏まえ,複合地盤における杭の耐震照査フローを策定し,耐震上の課題を整理した.
和文ノート
  • 篠崎 晴彦, 松田 博, 白 元珍
    2008 年 64 巻 1 号 p. 175-180
    発行日: 2008年
    公開日: 2008/03/21
    ジャーナル フリー
     水硬性を有する高炉水砕スラグは硬化により有用な非液状化材料として期待される.そこで,硬化に伴う繰返しせん断強度を把握するために,相対密度50%および80%で養生した硬化供試体を用いて,静的なせん断強度試験および非排水繰返し三軸試験を行った.その結果,繰返しせん断強度は硬化に伴い静的なせん断強度に比例して増加し,一軸圧縮強さが50kN/m2または粘着力が40kN/m2以上であれば,引張りによる破断を呈して液状化しないことが分かった.また,現場で硬化した試料についても試験を行い,一軸圧縮強さと繰返しせん断強度の関係は,室内養生試料と同様の傾向を示すことを確認した.
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