新型コロナウイルス感染症流行は、就労・学業・経済活動など社会に大きな影響を及ぼすとともに、多くの健康アウトカムや健康関連行動を悪化させている。我々はそうした社会や健康への影響を検討するために、JACSIS=Japan COVID-19 and Society Internet Survey(日本における社会と新型コロナウイルス感染症問題に関するインターネット調査研究)として、日本全国すべての都道府県から人口分布に合わせて2020年9月にサンプリングした28,000人を対象として調査を行い、その後も2021年2月、9月と縦断調査を行っている(https://takahiro-tabuchi.net/jacsis/)。2020年9月の調査から、新型コロナウイルス感染症流行下でメンタルヘルスが悪化する危険因子として、女性や若年とともに、低所得者と自営業、介護負担感の増加やドメスティックバイオレンス、そして新型コロナウイルス感染症そのものへの恐怖が重要な心理的不調の危険因子であることを示した。また居住環境に焦点を当てた解析から、メンタルヘルスの悪化が、新型コロナウイルス感染症患者発生の有無にかかわらず全国的な問題であり、特に人口密度が高い地域、貧困の度合いが高い地域であるほど、深刻であることを示した。心理的不調を来たす方の早期発見や支援、自殺予防は急務の課題であり、上記研究が少しでも参考になればと願っている。また、2021年2月の調査では、ワクチン忌避の実態を明らかにする研究を行った。ワクチンは感染収束の切り札として期待されている。ワクチン接種率を高め維持するための取り組みの一助になればと願っている。
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