【目的】マルチモダリティ画像研究は、早期精神病の病態を多角的に捉えることのできる研究戦略である。我々は、2008年より早期精神病を対象としたマルチモダリティ脳画像研究の体制を築き、早期支援サービス「東大こころのリスク外来」とともに臨床研究を行っている(Koike et al., 2013)。
【対象と方法】東京大学医学部附属病院精神神経科一般外来および「東大こころのリスク外来」を受診した患者のうち精神病ハイリスクあるいは早期精神病の定義を満たし、研究参加に同意したものを対象とした。構造MRI、機能的MRI(fMRI)、光トポグラフィー(NIRS)、脳波検査を同一被験者で測定し、臨床像との関連を検討した。
【結果】MRI研究では前頭葉に位置する下前頭回の構造的・機能的異常を(Iwashiro et al., 2012; Natsubori et al., 2014)、NIRS研究では前頭領域での血流低下の進行を見出した(Koike et al., 2011)。脳波研究では、側頭葉に発生源を持つ聴覚事象関連電位のミスマッチネガティビティ(MMN)と聴覚定常反応(ASSR)の異常を報告した(Nagai et al., 2013; Tada et al., 2016)。
【結論】時間、空間解像度の異なる様々なモダリティによる脳画像研究から早期精神病病態の多角的な変化を捉えた。各検査にはそれぞれ利点と限界があり、病態解明に向くものや臨床応用に向くものがある。我々は、マルチモダリティ研究の推進により早期精神病の理解と臨床実践の向上に貢献することを目指している。
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