予防精神医学
Online ISSN : 2433-4499
1 巻, 1 号
選択された号の論文の13件中1~13を表示しています
  • 水野 雅文
    2016 年 1 巻 1 号 p. 1
    発行日: 2016年
    公開日: 2020/12/01
    ジャーナル フリー
  • 松本 和紀
    2016 年 1 巻 1 号 p. 2-3
    発行日: 2016年
    公開日: 2020/12/01
    ジャーナル フリー
  • 松岡 洋夫
    2016 年 1 巻 1 号 p. 4-16
    発行日: 2016年
    公開日: 2020/12/01
    ジャーナル フリー
    目的:DSM-5(2013年)において、精神病性障害の推定的前駆状態でもある「減弱精神病症候群」(APS)が収載された。DSM改訂の背景とAPSを巡る議論をまとめ、この領域の方向性を検討する。 対象と方法:精神病性障害のDSM改訂の背景と、APSならびにその導入の可否を巡っての関連論文を非系統的にレビューする。 結果:2013年のDSM改訂では、疾患相互の重複問題と、正常と異常の境界(診断閾値)問題を本質的には克服できなかった。APSに関しては倫理的問題を含め活発な議論があったが、DSM-5精神病性障害ワークグループは、一般臨床での診断信頼性の検証が不十分という理由で、APSを「今後の研究のための病態」(第Ⅲ部)に収載した。この領域の専門家グループもこれを支持した。精神病の超ハイリスク状態は高い精神病移行率(追跡3年で約30%)を示すものの、その状態からの回復や状態の持続、さらに他の障害への移行も見られ、多能性多次元早期症候群という病態概念が適切である。 結論:精神病移行の要件と予防治療の研究は重要であるが、同時に“精神病移行”転帰からの脱却も求められ、APS群全体の新たな転帰の目標設定と個別化医療の実現を推進する領域へと発展することが必要である。そのためには専門家のみならず一般医療従事者などを対象にしたAPSの病態とその通常治療の啓発、さらに、この領域の専門治療、研究、治験が行える専門施設の構築と専門家の育成が重要課題である。
  • 片桐 直之, 水野 雅文
    2016 年 1 巻 1 号 p. 17-29
    発行日: 2016年
    公開日: 2020/12/01
    ジャーナル フリー
    統合失調症では、多彩な精神病症状が生じるが、その背景として、脳内の様々なアブノーマリティが関連することが明らかになっている。統合失調症の発症は陽性症状が発症の閾値を超えたか否かで判断されるが、近年、発症閾値下の精神病症状を呈する精神病発症危険状態 (At risk mental state: ARMS)においても、脳内において様々なアブノーマリティが生じることが明らかになっている。 ARMSのうち、30%前後が、後に統合失調症などの精神病を発症するが、我々は残りの70%の、後に精神病を発症しない群(非発症群)においても、脳梁の白質の統合性が低下するという生物学的アブノーマリティが生じている可能性を示した。一方、脳梁の白質の統合性の低下は、閾値下の精神病症状の改善とともに、改善する可能性も示した(Katagiri, 2015)。これは、脳梁の白質の統合性の改善が発症閾値下の精神病症状の改善や発症の阻止と関連する可能性を示唆するものである。本項においては、統合失調症やARMSにおける脳内のアブノーマリティに関するこれまでの報告、ARMSにおける発症閾値下の精神症状の改善と関連する脳内の変化についてまとめた。
  • 多田 真理子, 永井 達哉, 切原 賢治, 小池 進介, 越山 太輔, 荒木 剛, 笠井 清登
    2016 年 1 巻 1 号 p. 30-36
    発行日: 2016年
    公開日: 2020/12/01
    ジャーナル フリー
    【目的】マルチモダリティ画像研究は、早期精神病の病態を多角的に捉えることのできる研究戦略である。我々は、2008年より早期精神病を対象としたマルチモダリティ脳画像研究の体制を築き、早期支援サービス「東大こころのリスク外来」とともに臨床研究を行っている(Koike et al., 2013)。 【対象と方法】東京大学医学部附属病院精神神経科一般外来および「東大こころのリスク外来」を受診した患者のうち精神病ハイリスクあるいは早期精神病の定義を満たし、研究参加に同意したものを対象とした。構造MRI、機能的MRI(fMRI)、光トポグラフィー(NIRS)、脳波検査を同一被験者で測定し、臨床像との関連を検討した。 【結果】MRI研究では前頭葉に位置する下前頭回の構造的・機能的異常を(Iwashiro et al., 2012; Natsubori et al., 2014)、NIRS研究では前頭領域での血流低下の進行を見出した(Koike et al., 2011)。脳波研究では、側頭葉に発生源を持つ聴覚事象関連電位のミスマッチネガティビティ(MMN)と聴覚定常反応(ASSR)の異常を報告した(Nagai et al., 2013; Tada et al., 2016)。 【結論】時間、空間解像度の異なる様々なモダリティによる脳画像研究から早期精神病病態の多角的な変化を捉えた。各検査にはそれぞれ利点と限界があり、病態解明に向くものや臨床応用に向くものがある。我々は、マルチモダリティ研究の推進により早期精神病の理解と臨床実践の向上に貢献することを目指している。
  • 茅野 分
    2016 年 1 巻 1 号 p. 37-47
    発行日: 2016年
    公開日: 2020/12/01
    ジャーナル フリー
    “At-Risk Mental State, ARMS(精神病発症危険状態)”とは、精神病発病へのリスクの高い状態を意味する。一見軽症で、注意深く診察しないと一般的なうつ状態などと鑑別できない。精神科診療所へはうつ状態や不眠、不安などを主訴とする患者が数多く受診している。ARMSの具体的な診療について、国内に6000を超えるとされる精神科診療所で共通の認識を得ているとは言いがたい。そこで、銀座泰明クリニックを受診したARMS 3症例、診断基準は満たさないものの可能性ある2症例を提示して考察した。精神科診療所は精神医療の「ゲートキーパー」としてARMS診療、早期発見・早期治療に寄与できる。夜間・土日、駅前・街中など、いつでもどこでも気軽に受診できるのは診療所の強みであろう。高次医療や救急医療を求められる場合は大学病院や精神科病院へ紹介し、良好な連携を取っていくことが望まれる。そのためには、日ごろから大学病院や精神科病院との「病診連携」を高めるため、診療所の医師が学会や研究会などへ積極的に参加し、お互い顔の見える関係を構築・維持することが望まれる。最後に「精神科医」として最も大事なことは「診断」という「ラベリング」ではなく、苦痛を訴える患者に寄り添い、できる限り「援助」を提供していこうとする、「治療者」の「マインド」である。
  • 大久保 亮
    2016 年 1 巻 1 号 p. 48-52
    発行日: 2016年
    公開日: 2020/12/01
    ジャーナル フリー
    統合失調症患者の重篤な社会機能障害を予防し、その予後を改善する上で、早期診断、早期介入は必須の課題である。統合失調症の発症リスクが高い一群としてAt Risk Mental State(以下ARMS)が提唱されており、近年、国内の各地でARMS患者に対する専門的な診療が提供されるようになってきている。北海道大学病院精神科神経科では、2014年9月からARMS患者に対する診療として、4泊5日の「こころのリスク検査入院」を開始した。検査入院では、認知機能検査を中心とした検査を行い十分に検討した上で、その結果を患者本人、かかりつけ医に伝え、診療に役立ててもらうことを目的としている。統合失調症の認知機能障害は前駆期から出現し、社会機能との関連が深く、患者が自覚的に困っていることと関連が深いことが多い。また、認知機能の低下に対しては、認知リハビリテーションによる改善も期待することができる。ARMSが疑われる患者に対して認知機能検査を中心に検査を行い、結果を伝えることは有益な点が多い。ARMS患者の診療では、統合失調症へ移行するか否かに関心が集まりがちであるが、医療機関に来る方はそれぞれ主訴として困っていることを持っている。現在困っていることをどのように解釈することが医学的に考えて妥当か、また今後の治療に役立つかを十分に考え、その困っていることに応じた治療を提供できるような環境を整備していくことが必要である。
  • 桂 雅宏
    2016 年 1 巻 1 号 p. 53-67
    発行日: 2016年
    公開日: 2020/12/01
    ジャーナル フリー
    アットリスク精神状態(At-Risk Mental State:ARMS)の概念が、精神病性疾患の発症予測や予防に役立つことが示されてから久しく時が経つ。しかし、専門外来で診療を行う立場からは、先行研究の知見や専門外来で得られたノウハウが、日常臨床の現場には十分活かされていないと感じられる。 その理由は、ARMSの概念や診断、診療指針等の知識が十分に普及していないことと、ARMSに対する理想的な診療の実践が難しいこととに大別できるかもしれない。前者は、ARMSが看過される、逆に症状が過大評価され、過剰な治療が施される、精神病以外の併存症や機能障害への対応が疎かになるなどの問題につながっていく。後者には、診療時間が限られ薬物療法偏重となり易いこと、適切な診断を行うのが難しいこと、認知行動療法を行う治療者や体制が準備できないことなどの問題が含まれる。 これらの課題を解決するために、ARMSの臨床研究や専門診療に携わる者は、自らが診療を行うのに留まらず、より明確な形でARMSの実例や診療指針を呈示する、敷居の低いコンサルト体制を整える、診断・治療技術向上のための訓練の機会を提供するなど、ARMSを普及していくための試みが求められる。一方、一般診療の現場では、ARMSと精神病の診療方針の違いよく認識した上で、縦断的にも横断的にも多様性をもつARMSに柔軟に対応する姿勢を保ち、心理社会療法を中心に据えた治療を多職種で提供すること、日常臨床に取り入れられる工夫から重ねていくことが大切である。
  • 佐藤 康治郎, 吉村 文太, 石神 弘基, 初鳥 日美, 村尾 利之, 来住 由樹
    2016 年 1 巻 1 号 p. 68-79
    発行日: 2016年
    公開日: 2020/12/01
    ジャーナル フリー
    【目的】岡山県精神科医療センターにおける初回エピソード統合失調症First-episode schizophrenia(以下FES)患者への入院棟、外来、回復期デイケア、訪問看護が連携した包括的支援の成果を検証する。 【対象と方法】対象は2013年4月~2015年10月の期間に回復期デイケアの利用を終了したFES患者、訪問看護を利用し6ヶ月経過したFES患者52名である。調査方法は、診療録の後方視的調査である。調査項目は対象者の特徴、ベースラインの重症度、社会機能などとした。支援内容は、入院棟では薬物療法アルゴリズム、クリニカルパスの適応、病早期の患者を集めた疾病教育を行い、外来部門では、若年者向けの回復期デイケア、訪問看護によるケースマネジメントを中心とした支援を行った。 【結果】回復期デイケアの終了までの通所期間は平均36.9週であり、訪問看護の利用期間は平均69.4週であった。支援導入時の社会機能は、社会的ひきこもり50名(96.1%)であった。支援後の社会機能は、一般就労15名、障害者枠就労3名、就労継続支援A型11名、就労継続支援B型5名、地域活動支援センター1名、復学5名、主婦業2名、社会的ひきこもり6名(11.5%)であった。 【結論】FESに対する包括的支援は、社会機能の回復において有効である可能性が示唆された。
  • 大塚 達以, 木戸口 千尋, 佐藤 純子, 鈴木 春香, 齋藤 和子
    2016 年 1 巻 1 号 p. 80-91
    発行日: 2016年
    公開日: 2020/12/01
    ジャーナル フリー
    子どもの心の問題への対応には、学校と医療の連携が不可欠である。児童精神科臨床においては、子ども達の心の問題の背景に様々な環境要因が関与するため診察室内だけで完結せず、学校情報や学校介入を要することが多い。一方、学校現場では教育の範囲で様々な取り組みが行われているが、医療的視点からの対応を要し学校内対応では不十分な場合も多い。しかし、効率的で有効な学校と医療の連携の形は未だ確立してはおらず、相互理解の乏しさや、精神疾患への偏見も存在し、スムーズな連携が行われているとは言い難い。そのような中、学校現場におけるメンタルヘルスの普及啓発や精神疾患の早期発見・早期介入を目的として、平成22年より宮城県仙南地区にて、3つの高校と1つの中学校を対象に、県主導のモデル事業が展開された。本事業の主な内容は、①学校内で行われる支援委員会、②教師・生徒向けの研修会、③心の健康調査、④合同事例検討会、⑤専門外来の開設であり、医療スタッフが学校現場に積極的に介入した。学校と医療の連携のコアとなったのは、モデル校で開催された支援委員会での事例検討会であり、検討会を通して学校と医療の相互理解が深まり、学校現場でのメンタルヘルスに対する理解や生徒への対応力が向上したと考えられた。学校と医療の連携のためには、顔の見える関係の構築とその継続を可能とする連携システムが必要である。
  • 森本 幸子, 伊藤 智之, 川村 有紀, 菅原 里江, 坂本 真士
    2016 年 1 巻 1 号 p. 92-101
    発行日: 2016年
    公開日: 2020/12/01
    ジャーナル フリー
    当事者から声を発信する活動が多く行われるようになってきている。当事者やその家族が体験を話すことによって、スティグマが解消されることが報告されているが、当事者が自分の体験を話すことは当事者自身あるいは聴衆にどのような影響を与えるのだろうか。 本シンポジウムでは、当事者から声を発信することがどのようにスティグマを解消するのか、その意義や残された課題について整理し、議論したい。
  • 菊地 紗耶, 佐野 ゆり, 小澤 千恵, 平野 秀人, 小林 奈津子, 本多 奈美, 松岡 洋夫
    2016 年 1 巻 1 号 p. 102-113
    発行日: 2016年
    公開日: 2020/12/01
    ジャーナル フリー
    周産期におけるメンタルヘルス支援は、妊娠期および産後の母親のメンタルヘルス支援だけでなく、子どもの健全な身体的情緒的発達や、夫婦や親子といった家族関係の問題まで幅広い支援が求められている。地域母子保健や産科医療機関におけるスクリーニングは全国的に浸透してきているが、今後はそのスクリーニングを生かすために、その後のアセスメントと支援の質の向上がより重要になる。母子保健担当者や助産師等によるアセスメント能力の向上、支援技術の充実、更に必要な妊産婦に適切な精神科医療を提供するという一連の流れを全国的に実施できるような体制が必要である。各地域で積極的に取り組んでいる母子のメンタルヘルス支援の実践を生かし、今後は日本の医療保健福祉の資源に見合った、体系だった支援体制の構築という次の段階に進む時期である。
  • 大室 則幸
    2016 年 1 巻 1 号 p. 114-116
    発行日: 2016年
    公開日: 2020/12/01
    ジャーナル フリー
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