目的 : 脛骨関節面後方傾斜は主に顆部の後方回転により規定されるが, 顆部後方回転とInsall-Salvati ratio (IS比) との関連性を検討した。
対象と方法 : 313症例313膝の膝側面像において, 脛骨骨幹前方皮質に沿った線に対する顆部前壁に沿った線のなす角 (Angle AW), 骨幹前方皮質線の垂線と内側関節面のなす角 (Angle TS), 顆部前壁と内側関節面のなす角 (Angle CS) を計測した。また, 膝蓋骨長と膝蓋腱長を計測し, IS比を算出した。距離は大腿骨骨幹前後径に対する百分率で表現した。
結果 : Ange AW, Angle TS, Angle CS, 膝蓋骨長, 膝蓋腱長, IS比の平均は, それぞれ, 15.5°, 9.6°, 95.9°, 141.9, 141.7, 1.0であり, Angle AWおよびAngle CSに対する膝蓋骨長, 膝蓋腱長, IS比の相関係数は, それぞれ, 0.22, −0.17, −0.28および0.21, −0.14, −0.24であった。脛骨顆部の後方回転と変形が大きい程, 膝蓋骨長は大きくなり, IS比は小さくなった。
考察 : 顆部の後方回転と菱形変形と考えられる変形により, 脛骨関節面は後方および遠位へ偏位し, 大腿骨顆部と膝蓋骨も後方および遠位へ偏位する。膝蓋大腿関節圧も変化するものと考えられ, 膝蓋骨へのせん断応力などにて膝蓋骨長が変化する可能性が示唆された。
結論 : 脛骨顆部後方回転角度とIS比との間には関連性を認めた。
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