日本関節病学会誌
Online ISSN : 1884-9067
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40 巻, 4 号
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原著
  • 藤井 秀人
    2021 年 40 巻 4 号 p. 325-328
    発行日: 2021年
    公開日: 2021/12/28
    ジャーナル フリー

    目的 : 内側のみの伸展屈曲ギャップを合わせるmodified gap法で, さらに軟部組織剥離を最小限度にする手術手技で施行したVanguard ROCCの術後1年の成績について検討すること。

    方法 : 2017年4月~2018年6月に同一術者が手術を行い, 主に可動域が悪く高度変形例41膝を対象とした。術後可動域, 術後1年時のEpicondylar viewでの屈曲位のギャップ, 術前後のJKOMを調査した。

    結果 : 可動域は術前平均伸展−9°屈曲112°が術後伸展−1°屈曲120°となっていた。屈曲位のギャップは4膝に2mm以上の内側ギャップの開大があり, 平均外開き角は2.4°で, 2膝に内開きがあった。JKOMは術前57.6が術後1か月38.8, 3か月26.0, 1年で16.4と改善した。

    考察 : 当科では術前屈曲角度が120°以下で高度変形例をVanguard ROCCの適応としている。Modified gap法でさらに軟部組織剥離を最小限度にする手術手技により比較的良好な屈曲ギャップが作成されていた。またJKOMの1年時の臨床成績は, 同時期に術前屈曲角度が良好で変形が比較的軽度な症例に対して施行した他機種と同等であった。適切な手術手技を機種の特徴により良好な臨床成績が得られていた。

    結論 : 可動域が悪い高度変形例に対し, 内側のみの伸展屈曲ギャップを合わせるmodified gap法で, さらに軟部組織剥離を最小限度にする手術手技で行われたVanguard ROCCの術後1年の成績を検討した。比較的良好な屈曲ギャップの作成と術後臨床成績が得られていた。

  • 丸木 千陽美, 桑沢 綾乃, 大津 匡弘, 福島 崇, 仁平 高太郎
    2021 年 40 巻 4 号 p. 329-336
    発行日: 2021年
    公開日: 2021/12/28
    ジャーナル フリー

    目的 : 変形性膝関節症 (OA) に対するPRP治療の有効性が示されているが, PRPの組織修復作用で軟骨は修復されるだろうか。次世代PRPと言われるAPSにおいて軟骨修復の有無を検討するため, メカニカルストレスが少ない膝蓋骨に着目し治療前後の軟骨体積量の変化を解析した。

    方法 : APS治療を受けた100膝を対象に, 施行前・6か月後のMRI画像をVINCENT膝解析ソフトを用いて定量解析し, 膝蓋骨軟骨体積を計測。軟骨体積量の増減を算出, 軟骨欠損面積の程度から軟骨欠損なし群, 軽症群, 重症群に分けて検討した。

    結果 : 体積の変化は, 全体では2.43→2.43mLと増減はなかったが, 体積量5%以上の増加例が18膝, 減少例は15膝あった。欠損重症度別では, なし群・重症群では増減はなかったが, 欠損軽症群のみ有意に体積量が増加した。

    考察 : OA膝では自然経過で年間4.5%の膝蓋骨軟骨体積が減少すると報告もあり, 全体で減少せず, 増加例もみとめたことはAPSによる組織修復作用の可能性を示唆している。また, 軽症群のみ軟骨量が増加したことは, 損傷部位の状態により軟骨修復に差が出る可能性があると考える。

    結論 : 軟骨欠損軽症群で膝蓋骨軟骨体積量の有意な増加をみとめ, APS療法では組織修復作用による軟骨修復が得られる可能性がある。

  • 月村 泰規, 岩間 友, 丸岩 侑史, 寺本 洋平, 倉坪 亮太, 小暮 一美, 網中 陽子
    2021 年 40 巻 4 号 p. 337-346
    発行日: 2021年
    公開日: 2021/12/28
    ジャーナル フリー

     当院での自家培養軟骨移植術 (JACC®) の短期成績に影響する因子を検討した。症例は, 術後1年の成績を渉猟し得た38膝で, 平均年齢46.9歳であった。欠損部位は, 単独が大腿骨内顆 (MFC) 21膝, 大腿骨外顆 (LFC) 2膝, 脛骨外顆 (LTP) 1膝, 膝蓋骨 (P) 4膝, 大腿骨滑車 (Tr) 1膝で, 複合がMFC+Tr 2膝, LFC+Tr 1膝, P+Tr 5膝, MFC+P+Tr 1膝であった。損傷面積は平均649.7mm2であった。臨床スコアとしてKOOS, Lysholm scoreを用いて, 年齢, BMI, 移植面積との相関と, 性別, 注入方法別, 部位別, HTOの有無との関連を検討した。

     症例全体のKOOS項目およびLysholm scoreは, 術前と比較して26週のsports以外, 26週以後有意に改善し, 104週まで経時的に改善した。術後合併症はHypertrophy 4膝, 軟骨剥離1膝, 関節拘縮で鏡視下授動術1膝であった。術後KOOSの比較では, symptom項目以外, 30歳以下が30歳以上に有意に改善した。術後KOOS全項目ともHTOあり, なしで有意差はなかった。しかし, 術前後の変化量でみると, HTOありが有意にHTOなしより改善した。

     JACCの短期成績に, 移植面積が小さい, 30歳以前, HTO併用が好影響を与えていた。

  • ―3次元補正されたDRR画像による精度解析―
    吉野 宗一郎, 川原 慎也, 本村 悟朗, 濱井 敏, 池村 聡, 藤井 政徳, 中島 康晴, 原 俊彦, 中村 哲郎, 進 悟史, 馬渡 ...
    2021 年 40 巻 4 号 p. 347-352
    発行日: 2021年
    公開日: 2021/12/28
    ジャーナル フリー

    目的 : 両上前腸骨棘 (ASIS) を結ぶ線が骨盤傾斜の絶対基準軸とされているが, 両股関節正面X線写真は両涙痕下端などの基準軸で評価される。複数の骨盤基準軸の冠状面・横断面での精度を評価しASISが真に両股関節の正中を規定しうるかを検討した。

    方法 : 股関節に関節症変化を伴わない人工膝関節全置換術51例の術前CTを術前計画ソフトに取り込み, 両大腿骨頭中心を結ぶ線 (骨頭基準軸) を骨盤基準と定義した。冠状面について, 人工的な2次元画像であるDRR画像を作成し, (1) ASIS, (2) 涙痕下端, (3) 臼蓋上縁, (4) 閉鎖孔上縁, (5) 閉鎖孔下縁, (6) 坐骨下端を結ぶ軸を定義した。横断面は補正CTスライスで (a) ASIS, 骨頭中心高位での (b) 寛骨臼前縁, (c) 寛骨臼後縁, (d) 坐骨後縁を結ぶ軸を定義した。各軸と骨頭基準軸の誤差を計測した。

    結果 : 冠状面ではASISと比較し誤差は臼蓋上縁で有意に小さく, 涙痕下端も小さい傾向であり, 坐骨下端で有意に大きかった。横断面ではASISと比較し誤差は寛骨臼前後縁で有意に小さかった。双方とも骨頭により近い軸で誤差が小さい傾向にあった。

    考察 : 骨盤基準を規定する際に, 症例に応じて両上前腸骨棘よりも骨頭レベルにより近い基準軸を参照することが重要と考えられた。

  • 園部 正人, 中島 新, 赤津 頼一, 齊藤 淳哉, 乗本 将輝, 山田 学, 小山 慶太, 山本 景一郎, 梅田 涼, 松下 容子, 中川 ...
    2021 年 40 巻 4 号 p. 353-359
    発行日: 2021年
    公開日: 2021/12/28
    ジャーナル フリー

    目的 : 骨強度は骨密度と骨質で規定され, 骨質の評価も重要であるが, 確立された骨質評価方法はない。一方で, 加齢や閉経, 生活習慣病などで高まる酸化ストレスは骨質劣化の原因とされており, 我々は, 酸化ストレスマーカーであるd-ROMsが骨質評価マーカーとなる可能性を報告した。この報告の対象には骨粗鬆症治療患者やRA患者を含んでいたが, 今回それらの患者を除外して検討した。

    方法 : 2016年1月から2020年5月までに当院で人工膝関節置換術を施行したOA患者のうち, DXA, 腰椎XP, 股関節XP, d-ROMsの全データが確認でき, かつ骨粗鬆症未治療であった127例を対象とした。DXA法による腰椎・大腿骨頚部のYAM値と, 脆弱性骨折の有無で骨質の状態を推測・定義し, YAM値≦70%でも脆弱性骨折がない症例を骨質が正常のため骨折していないと判断し (骨質正常群, n=26), 一方, YAM値>70%でも脆弱性骨折を認める症例を骨質が劣化しているため骨折したと判断した (骨質劣化群, n=8)。2群間で年齢, 性別, BMI, d-ROMs, 血中ペントシジンについて比較検討した。またd-ROMsと血中ペントシジンの相関も解析した。

    結果 : d-ROMsは骨質劣化群で有意に高値であり (骨質正常群 : 348.3±65.5, 骨質劣化群 : 493.5±100.1, P=0.001), 血中ペントシジンも骨質劣化群で有意に高値であった (骨質正常群 : 75.5±22.8, 骨質劣化群 : 116.4±24.4, P=0.007)。また, d-ROMsと血中ペントシジンには強い正の相関を認めた (R=0.87, P<0.001)。

    結論 : d-ROMsは骨質劣化群で有意に高値であり, 骨質評価マーカーとして一定の信頼性がある血中ペントシジンと強い正の相関を認めた。d-ROMsは骨質評価マーカーとなり得る。

  • 長嶺 隆二, 川崎 展, 勝呂 徹
    2021 年 40 巻 4 号 p. 360-365
    発行日: 2021年
    公開日: 2021/12/28
    ジャーナル フリー

    目的 : 脛骨関節面後方傾斜は主に顆部の後方回転により規定されるが, 顆部後方回転とInsall-Salvati ratio (IS比) との関連性を検討した。

    対象と方法 : 313症例313膝の膝側面像において, 脛骨骨幹前方皮質に沿った線に対する顆部前壁に沿った線のなす角 (Angle AW), 骨幹前方皮質線の垂線と内側関節面のなす角 (Angle TS), 顆部前壁と内側関節面のなす角 (Angle CS) を計測した。また, 膝蓋骨長と膝蓋腱長を計測し, IS比を算出した。距離は大腿骨骨幹前後径に対する百分率で表現した。

    結果 : Ange AW, Angle TS, Angle CS, 膝蓋骨長, 膝蓋腱長, IS比の平均は, それぞれ, 15.5°, 9.6°, 95.9°, 141.9, 141.7, 1.0であり, Angle AWおよびAngle CSに対する膝蓋骨長, 膝蓋腱長, IS比の相関係数は, それぞれ, 0.22, −0.17, −0.28および0.21, −0.14, −0.24であった。脛骨顆部の後方回転と変形が大きい程, 膝蓋骨長は大きくなり, IS比は小さくなった。

    考察 : 顆部の後方回転と菱形変形と考えられる変形により, 脛骨関節面は後方および遠位へ偏位し, 大腿骨顆部と膝蓋骨も後方および遠位へ偏位する。膝蓋大腿関節圧も変化するものと考えられ, 膝蓋骨へのせん断応力などにて膝蓋骨長が変化する可能性が示唆された。

    結論 : 脛骨顆部後方回転角度とIS比との間には関連性を認めた。

  • 原田 豪人, 室谷 好紀, 藤田 裕, 片岡 正尚, 奥谷 祐希, 清水 優
    2021 年 40 巻 4 号 p. 366-369
    発行日: 2021年
    公開日: 2021/12/28
    ジャーナル フリー

    目的 : 高位脛骨骨切り術の対象患者は比較的若年となることが多く術後も高い活動性が要求される。今回高位脛骨骨切り術後の患者立脚型評価に関連する因子を検討したので報告する

    方法 : 内側型変形性膝関節症に対して高位脛骨骨切り術を施行した14例17膝を対象とした。臨床成績はIKDC scoreおよびKOOS scoreを用いて評価し, 術後1年の臨床成績と手術時年齢, 体重, BMI, 膝可動域, 膝伸展筋力, medial proximal tibial angle, femorotibial angle, %mechanical axis, 脛骨後傾角度, Caton比との関連を調査した。

    結果 : 術後1年時の膝屈曲角度が術後1年時のIKDC scoreおよびKOOS scoreと有意に関連していた。また術後6か月時の膝伸展筋力が術後1年時のIKDC scoreおよびKOOS scoreに関連していた。その他の項目には術後1年の臨床成績と有意な関連は認めなかった。

    考察 : 本研究結果において術後6か月時の膝伸展筋力が術後1年時のIKDCおよびKOOSに関連していたことから, 骨癒合が得られ復職やスポーツ復帰となる時期の筋力強化がのちの患者の感じる臨床評価に重要と考えられた。また, 臨床成績と術後の膝屈曲角度に相関を認めたことから, 単なる立ち座りだけでなくしゃがみ姿勢での作業などの深屈曲が, 高い活動性に要求されたと考えられた。

  • 川島 史義, 髙木 博, 加藤 慎, 古屋 貴之, 佐藤 敦
    2021 年 40 巻 4 号 p. 370-375
    発行日: 2021年
    公開日: 2021/12/28
    ジャーナル フリー

    Objective: The purpose of this study was to investigate postoperative outcomes in patients aged≥40 years old with medial meniscus (MM) tear complicated by early osteoarthritis (OA) that was treated with arthroscopic surgery alone.

    Methods: The subjects were 13 patients (13 knees: 8 in males and 5 in females) with MM tear accompanied by Kellgren-Lawrence grade 0-Ⅱ early OA on plain radiography in the knee joint. All patients were treated with arthroscopic surgery alone at our hospital between January 2016 and December 2019. Evaluation items were clinical symptoms before and after surgery, MRI findings, preoperative plain radiographic findings, and intraoperative arthroscopic findings.

    Results: The clinical outcome was favorable and meniscus tear-derived symptoms that were present before surgery improved in all patients after surgery. However, OA-derived symptoms remained in 2 knees.

    Conclusion: We suggest that high tibial osteotomy may be an option for highly active patients with concomitant MM tear and symptoms of early OA.

  • 木之田 章, 毛利 貫人, 永井 一郎, 苅田 達郎, 田中 栄, 内藤 昌志, 永瀬 雄一
    2021 年 40 巻 4 号 p. 376-381
    発行日: 2021年
    公開日: 2021/12/28
    ジャーナル フリー

    目的 : 人工股関節全置換術 (total hip arthroplasty: THA) の前方アプローチ (direct anterior approach: DAA) は筋間進入による術後疼痛の軽減と脱臼率の低下という利点から変形性股関節症を中心に近年増加傾向である。しかしながら関節リウマチ (rheumatoid arthritis: RA) 症例は長期の炎症による関節の拘縮, 骨軟部の脆弱性もあり, DAAを用いたTHAはそれほど浸透していない。本研究の目的はRA症例に対するTHAにおいて, DAA群と後方アプローチ (posterior approach: PA) 群を術後早期の歩行能力獲得, 術後疼痛, 早期合併症について後ろ向きに比較検討することである。

    方法 : 対象は2010~2020年までの間にRA症例に対し当院で実施したTHA群で, 内訳はDAA群31関節, PA群30関節である。検討項目は術後1日目, 3日目の疼痛 (Face Scale) とT字杖歩行開始, 独歩訓練開始となった日数, 出血量, カップ設置角, 早期合併症とした。

    結果 : 術後1日目・3日目の疼痛は両群間に有意差はなかった。T字杖歩行開始までの期間はDAA群で6.8日, PA群で11.4日でありDAA群で有意に短かった。また独歩訓練開始までの期間もDAA群で11.8日, PA群で18.9日でありDAA群で有意に短かった。PA群で2例脱臼があったが, DAA群ではなかった。

    考察 : RA症例に対するTHAにおいて, 筋間進入のDAA群はPA群と比較して術後の歩行獲得時期が早くなることが示唆された。

  • 松村 大智, 赤木 將男, 井上 紳司, 墳本 一郎, 山岸 孝太郎, 橋本 晃明, 森 成志
    2021 年 40 巻 4 号 p. 382-391
    発行日: 2021年
    公開日: 2021/12/28
    ジャーナル フリー

    目的 : 本研究の目的は, 脛骨インプラントの適合性 (オーバーハングの発生) と骨切り面被覆率から人工膝関節置換術 (TKA) の回旋指標であるAkagi’s line (A line) と膝蓋腱付着部内縁から内側1/3線 (1/3 line) を比較検討することである。

    方法 : 内反型変形性膝関節症7例の下肢CTデータをTKA術前計画ソフトウェアにより解析した。TKA 3DモデルにはInitia (内外側対称) およびJourney Ⅱ (内外側非対称) を用いた。上記の回旋指標を用いて脛骨を正面化し, 外側平原軟骨下骨から9mm遠位で機能軸に垂直に骨切りし, 次いで, 外側顆部骨切り面の前後幅を超えない最大サイズのモデルを選択し, 内外側幅の中央にインプラントを設置した。なお, Gerdy結節骨切り面にはインプラントを乗せないようにした。この段階でオーバーハングを認めた場合には適合不良と判定し, サイズダウンした。次いでインプラントによる骨切り面被覆率を計算した。また, 術中にオーバーハングを回避する場合, どの方向に回旋位を調整するかを想定するため, 最終的な設置から6度内外旋させた場合の適合不良の発生についても検討した。

    結果 : 1/3 lineはA lineに対して平均9.0±1.1度外旋していた。A lineを指標とした場合のInitiaおよびJourney Ⅱの適合不良の例数 (7例中のオーバーハング例数) と平均被覆率は, それぞれ0例と78.9%, および, 0例と80.1%であった。1/3 lineを指標とした場合のInitiaおよびJourney Ⅱの適合不良の例数と被覆率は, それぞれ3例と76.4%, および, 5例と72.6%であった。6度内旋による適合不良の例数 (14例中のオーバーハング例数) は, A lineと1/3 lineで, それぞれ6例 (43%) と2例 (14%), 6度外旋による適合不良の例数は, それぞれ9例 (64%) と12例 (86%) であった。A lineを指標としてInitiaを用いた場合の6度内旋では, 適合不良の例数は2例 (29%) と少なかった。

    考察と結論 : いずれの機種においてもA lineを用いる方が良好な適合性と被覆率を示し, 回旋位決定の指標として有利であると考えられた。また, 1/3 lineを回旋指標にした場合, 追加の内外旋によりオーバーハング発生率に大きな差があるため, 術者は1/3 lineよりやや内旋位で設置する傾向があると思われる。A lineを回旋指標として対称性インプラントを用いる場合には, 過内旋エラーをオーバーハングにより察知しにくいことに注意が必要である。

  • 川崎 恵吉, 酒井 健, 坂本 和歌子, 久保田 豊, 根本 哲也, 稲垣 克記
    2021 年 40 巻 4 号 p. 392-397
    発行日: 2021年
    公開日: 2021/12/28
    ジャーナル フリー

    目的 : 母指手根中手 (CM) 関節症のStage-Ⅳは, 舟状大菱形骨間関節 (STm関節) 面以外に, 舟状小菱形骨間関節 (STd関節) 面にも関節症変化をきたしているかどうかの評価が重要である。そこで我々はこれらに対して, コンピュータ断層撮影 (CT) と磁気共鳴撮像法 (MRI) を用いて評価を行い, 変性を認めた場合には, 従来から行ってきたLigament reconstruction with tendon interposition法 (LRTI法) とSuture-Button suspensionplastyを併用したHybrid suspensionplastyに加え, 小菱形骨の近位関節面の軟骨をノミで切除し, 有頭骨に打ち込んだソフトアンカー (JuggerKnotTM 1.0mm Mini) の縫合糸に, FCRの半裁腱の腱球を縫着し, STd関節内に固定している。このHybrid変法を行った8例の治療成績を調査した。

    方法 : 2019年以降, 母指CM関節症のStage-Ⅳに対して, Hybrid変法を行い, 6カ月以上経過観察しえた8例を対象とした。CTおよびMRIで, STm関節に加えSTd関節の変性を全例に認めた。平均年齢は69.9歳, 男性1名, 女性7名, 平均術後経過観察期間は8.1カ月であった。これらの症例に対して, 画像評価と臨床成績を調査した。

    結果 : 疼痛視覚的評価スケール (VAS) とつまみ力は, 術前より最終診察時には有意に改善していた。大菱形骨腔長は, 術直後に比べて24.3%短縮したが, 術後のCTによる小菱形骨切除間隙の平均は3.4mmと維持されていた。CTによる橈骨月状骨角 (RL angle) は, 術前後で有意な差はなかった。

    考察 : 母指CM関節症には術前のSTd関節の評価が重要であり, 我々のHybrid変法は, 母指CM関節症Stage-Ⅳに有用と思われた。

  • 真野 洋彰, 内田 嘉雄, 西川 卓治
    2021 年 40 巻 4 号 p. 398-405
    発行日: 2021年
    公開日: 2021/12/28
    ジャーナル フリー

    目的 : 高齢化が進むことによりさまざまな合併症が生じる頻度が高くなり, 特に腎機能障害は関節リウマチ (以下RA) 患者における薬物の選択肢や投与量を制限させる要因となる。腎機能障害を合併しているRA患者に対する薬物療法について検討した。

    方法 : 都立墨東病院リウマチ膠原病科に通院中のRA患者1,129名のデータを使用した。腎機能障害の有無をeGFRが60mL/分/1.73m2をカットオフ値として2群に分け, 年齢, 性別, 使用薬剤, 疾患活動性 (DAS28-CRP), 身体機能 (mHAQ) を比較検討した。

    結果 : 腎機能正常群は868名, 腎機能低下群は261名であり, 腎機能正常群の平均年齢は64.5歳, 腎機能低下群は73.9歳と腎機能低下群のほうが有意に年齢が高かった。MTXは投与率, 投与量とも腎機能低下群で減少していた。ステロイドは投与率は腎機能低下群で増加していたが, 投与量は両群で同等であった。生物学的製剤は腎機能正常群と腎機能低下群で投与率に有意差はみられなかった。腎機能低下群ではnon-TNF製剤の投与率が増加した。腎機能低下群で疾患活動性が高く, 身体機能は低下していた。

    結論 : RA患者において, 腎機能障害はMTXの投与率や投与量を減少させ, 寛解率が低下する一因となった。

  • ―人工関節を温存するためには―
    石井 隆雄, 田窪 明仁, 佐野 陽亮, 土橋 信之, 神津 崇, 龍 啓之助, 李 賢鎬, 中西 一義
    2021 年 40 巻 4 号 p. 406-413
    発行日: 2021年
    公開日: 2021/12/28
    ジャーナル フリー

    Objective: Debridement, antibiotics, and implant retention (DAIR) is performed for periprosthetic joint infection (PJI) after total knee arthroplasty (TKA). The aim of this study was to identify prognostic factors associated with successful DAIR in patients with PJI.

    Patients and methods: The study included 52 knees in 51 patients who were treated according to the same protocol for infected TKA. The outcome of treatment and the success rate of DAIR were assessed in these cases. Patient characteristics, timing of infection onset, time from onset of infection to start of treatment, and type of causative bacteria were compared between the implant retention group and the implant removal group, and factors associated with successful implant retention were investigated.

    Results: The implant was ultimately retained in 17 of 52 (32.7%) knees, and the success rate for implant retention using DAIR was 45.9% (17/37 knees). The success rate for implant retention by the onset timing of infection was 50% in early postoperative infections, 61.5% in acute hematogenous infections, and 13.8% in late chronic infections, showing a low success rate for retention in cases of late chronic infection. The success rate for implant retention by time from onset of infection to start of treatment was 65.4% in those who started treatment ≤2 weeks and 0% in those who started ≥2 weeks (significantly different), suggesting the importance of early treatment. Calculation of a cutoff value using ROC curve demonstrated that performing DAIR between the onset of infection to day 13 results in a high probability of retaining the implant. Regarding the causative bacteria, methicillin-resistant Staphylococcus aureus (MRSA) and Staphylococcus epidermidis led to poor outcomes with low success of retaining the implant.

    Conclusion: To retain the implant in PJI after TKA, DAIR should be performed within 13 days of onset of infection, with consideration for the type of causative bacteria, in those with acute infections such as early postoperative infections and acute hematogenous infections.

  • 金山 智之, 堀井 健志, 重本 顕史, 岩井 信太郎, 羽土 優, 岡本 駿郎, 河合 燦, 五嶋 謙一, 藤田 健司, 澤口 毅
    2021 年 40 巻 4 号 p. 414-420
    発行日: 2021年
    公開日: 2021/12/28
    ジャーナル フリー

    目的 : Open wedge高位脛骨骨切り術 (OWHTO) において外側ヒンジ骨折 (LHF) は骨癒合遷延のリスクとなる。LHFは単純X線像による竹内分類で評価されることが多いが, CTを用いて3次元的に評価したものは少ない。本研究の目的はOWHTOにおけるLHFや骨癒合経過に関してCTを用いて経時的に評価することである。

    方法 : 2017年9月から2020年2月までにOWHTOを施行し, 術後経時的にCTを撮影した59膝 (手術時年齢 ; 66.8±11.5歳, 平均開大幅 ; 10.4±2.6mm) を対象として後ろ向きコホート研究を行った。単純X線像, CTを術後1週, 6週, 3か月と経時的に撮影し, LHFの発生率, LHFのType分類, ヒンジ部の骨癒合経過を評価した。LHFは竹内分類に加えてCTで前後方向の骨折を評価した (前方骨折 : A, 後方骨折 : B, 前方+後方 : C)。術後LHFを認めなかったが術後6週で初めて同定できたものをlate LHFと定義した。また, 術後3か月のCTでヒンジ部の骨癒合が得られていないものを骨癒合遷延とした。

    結果 : 術後1週までに単純X線像で判明したLHFは7膝 (12%), CTでさらに17膝 (29%) が同定可能であった。Late LHFを11膝 (19%) に認め, 最終的なLHFは35膝 (59%) であった。骨癒合遷延は15膝 (25%) に認め, CTによるLHF分類では前方から後方へ骨折線を認めるType 1Cが11膝, Type 2C 2膝, 複合型2膝であった。CTでLHFを認めなかった24膝は術後3か月で全例骨癒合を得られていた。骨癒合遷延の危険因子はLHF Type 1C (odds比194.6: P<0.01), 男性 (odds比22.5: P<0.05) であった。

    考察 : 術後単純X線像のみではCTと比べLHFを過小評価しており, 荷重開始後に新たに発生するlate LHFを少なからず認めた。本研究の結果から安定型で骨癒合に影響がないとされているType 1骨折であっても, CTで前方から後方に骨折がある場合, 骨癒合が遷延していた。

  • ―Round SignとHardy分類の比較―
    田吹 紀雄, 松田 秀一, 伊藤 宣, 村田 浩一
    2021 年 40 巻 4 号 p. 421-424
    発行日: 2021年
    公開日: 2021/12/28
    ジャーナル フリー

    目的 : 外反母趾の評価は内側種子骨位置によるHardy分類や, 第一中足骨の回内を示すX線像でのRound signが知られている。手術後に外反母趾の再発を認めることがあるが, 手術直後のX線検査所見で再発を検討した報告は少ない。外反母趾再発のX線学的予測因子に関して検討した。

    方法 : 2013年1月から2019年3月までの当院における外反母趾手術患者90例に対して, 術前, 術後, 荷重時, 最終経過観察時の外反母趾角, M1M2角, Hardy分類, Round Signを評価し, それぞれの相関関係に対して多変量解析を用いて後ろ向きに評価した。

    結果 : 術前, 術直後, 最終経過観察時の外反母趾角は41.3±13.6度 (中央値41.8度), 11.7±9.1度 (中央値10.5度), 18.4±11.6度 (中央値17.9度) であり, 有意な相関関係にあった。外反母趾再発の定義をHV角20度以上とすると, 術直後にRound Signがあり外反母趾再発症例は5例中5例であり, 陽性的中率は100%であった。術直後のHardy分類5以上で外反母趾再発症例は18例中12例であり, 陽性的中率は66.6%であった。一方, 術直後にRound Signがなく外反母趾再発を認めない症例は86例中52例であり陰性的中率は60.4%であった。術直後のHardy分類4以下で外反母趾再発を認めない症例は80例中50例であり陰性的中率は62.5%であった。

    結論 : 外反母趾手術において, 術直後のX線像でRound Signが陽性であることは, Hardy分類5以上であることよりも, 術後再発の予測因子となり得る。

  • 吉田 勝浩, 小林 秀男, 高橋 洋二郎, 紺野 慎一
    2021 年 40 巻 4 号 p. 425-429
    発行日: 2021年
    公開日: 2021/12/28
    ジャーナル フリー

    はじめに : 前十字靱帯 (anterior cruciate ligament: ACL) 再建術後は, スムーズなリハビリテーションのため, 良好な疼痛コントロールが求められる。我々は, 以前は持続硬膜外ブロック (continuous epidural block: Epi) と術後鎮痛薬の内服のみで疼痛管理を行ってきた。しかし, 疼痛管理が不十分と考えられため, 関節周囲多剤カクテル注射療法 (periarticular multimodal drug injection: PMDI), 先行鎮痛を追加していき, 現在は, Epi, PMDI, 先行鎮痛を組み合わせて施行している。

    目的 : 本研究の目的は, ACL再建術後の疼痛管理方法について, 比較検討することである。

    対象と方法 : Epiと術後鎮痛薬の内服で疼痛管理を行った12例 (A群), Epi, 術後鎮痛薬の内服とPMDIを行った18例 (B群), Epi, PMDIと先行鎮痛を行った69例 (C群) を対象とした。先行鎮痛は, 手術当日の朝8時にセレコキシブ200mg (50kg未満の未成年は100mg) とドンペリドン10mgの内服, 20時にセレコキシブ200mg (50kg未満の未成年は100mg) の内服とした。術後の追加鎮痛薬の使用回数と有害事象について検討した。

    結果 : 術後の追加鎮痛薬の使用回数はA群では平均2.3±0.49回, B群では平均1.2±0.35回, C群で平均0.2±0.1回であり, C群で有意に少なかった。悪心・嘔吐などの有害事象は, 3群間で有意差はなかった。

    結論 : ACL再建術後の疼痛管理は, Epi, PMDI, 先行鎮痛を組み合わせて行うことで良好となる。

  • 池口 良輔, 野口 貴志, 安藤 麻紀, 吉元 孝一, 坂本 大地, 松田 秀一
    2021 年 40 巻 4 号 p. 430-433
    発行日: 2021年
    公開日: 2021/12/28
    ジャーナル フリー

    目的 : 母指CM関節症に対する関節形成術は, さまざまな術式が報告されてはいるが, 治療成績について結論は出ていない。今回, 我々は, スーチャーボタンを併用した鏡視下大菱形骨部分切除術による関節形成術を行ったので, 術式選択について報告する。

    方法 : 保存加療が無効な母指CM関節症を手術適応とし, 術後6か月以上経過観察可能であった18例を対象とした。平均年齢65.1歳 (48~81歳) で, 男性7例, 女性11例であった。手術方法としては, 鏡視下に大菱形骨遠位関節面を部分切除後, ミニタイトロープにて第1中手骨基部と第2中手骨骨幹部近位を制動固定した。10日間のthumb spica cast固定後, 可動域訓練を行った。

    結果 : 疼痛 (術前平均VAS 76.7) は術後6か月 (平均VAS 13.8) で有意に減少した (P<0.001)。可動域は, 掌側外転 (術前平均58.3°術後平均70.7°), 橈側外転 (術前平均45.7°術後平均61.0°) とも有意に増加した (P<0.05)。quick DASHスコア (術前平均36.5) は術後6か月 (平均14.9) で有意に改善した (P<0.001)

    考察 : 本法はスーチャーボタンにて制動するため術後早期からのリハビリテーションが可能で, さらに, 鏡視下手術のため低侵襲であるという利点がある。母指CM関節症に対して, スーチャーボタン併用鏡視下関節形成術は, 有効な治療法であると考えられた。

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