日本関節病学会誌
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41 巻, 2 号
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Editorial
原著
  • 北折 俊之, 高塚 和孝, 髙木 治樹
    2022 年 41 巻 2 号 p. 19-26
    発行日: 2022年
    公開日: 2022/07/31
    ジャーナル フリー

    目的:関節リウマチ(RA)に続発する骨粗鬆症(RA-OP)に対してDual Energy X-ray Absorptiometry(DXA)法による骨密度検査(以下,DXA検査)の関連性を明らかにすること。

    方法:当施設の電子カルテデータから40歳以上の女性RA患者1,452例を抽出し,年齢,Body Mass Index(BMI),ステロイド薬(以下,PSL)の服用率・服用量,骨折歴の有無,DXA検査介入の有無,Young Adult Mean値(YAM値),治療介入の有無を調査した。DXA検査を複数回施行された症例ではYAM値が増加した患者割合を算出した。変形性膝関節症(OA)の女性患者4,794例を対照とした。

    結果:RA患者はOA患者より低BMIで,PSL服用率が35.7%と高く,骨粗鬆症のリスク因子を複数有していた。大腿骨近位部DXA検査ではYAM値<70%の患者割合が60歳代以降に増加し,OA患者との有意差を認めた。RA患者へのDXA検査介入率は43.6%で,検査介入症例の治療介入率(65.1%)は検査介入のない症例の治療介入率(7.7%)よりも有意に高かった。また,治療介入のあるRA患者ではYAM値が改善した患者割合が2.4~2.5倍に増加した。一方,PSL服用のないRA患者はPSL服用RA患者と比べてDXA検査介入が2分の1,治療介入が3分の1と低く,介入が見逃されている可能性が指摘された。

    考察:RA-OPにおけるDXA検査介入と治療介入の関連性が示唆され,DXA検査介入は良好な治療介入に貢献しうると考えられた。DXA検査介入のない患者やPSL服用のない患者では治療の機会が見逃されやすく注意を要する。

  • 新妻 学, 稲垣 克記, 久保 和俊, 川崎 恵吉
    2022 年 41 巻 2 号 p. 27-32
    発行日: 2022年
    公開日: 2022/07/31
    ジャーナル フリー

    目的:表面置換型人工PIP関節置換術の術後5年以上の中・長期経過観察例を評価すること。

    方法:21年間に施行した38指のうち,5年以上経過観察し得た10例12指を後ろ向きに調査した。機能評価を統計学的評価した。

    結果:使用機種はAVANTA-SRが7指,石突式人工指関節が5指であった。原因疾患は変形性関節症が11指,外傷後スワンネック変形が1指だった。手術アプローチは背側アプローチが3指,掌側アプローチが9指だった。術前・術後のPIP関節可動域は,屈曲では平均62.1°から71.7°へ有意に改善した。伸展では平均−33.3°から−22.9°へ減少した。Mayo clinic scoreはGoodが9指,Fairが3指だった。手術アプローチ別で術前・術後の屈曲伸展arcを比較したが,有意差は認めなかった。掌側アプローチの1指において術後転倒受傷し背側脱臼となり,屈曲強直となったため最終的に遠位コンポーネントを抜去した。再手術率は12指中1指で8.3%であった。X線評価はコンポーネントの沈み込みを12指中4指に認め,1指に橈屈偏位を認めたが,bone cement interfaceの沈み込み変化は術後3年程度で出現し,それ以降は安定した。

    考察:術後3年以内は沈み込みを生じる場合があるため注意して経過観察する必要がある。

  • 長嶺 隆二, 川崎 展, 勝呂 徹
    2022 年 41 巻 2 号 p. 33-38
    発行日: 2022年
    公開日: 2022/07/31
    ジャーナル フリー

    目的:脛骨顆部後方回転による解剖軸と機能軸の角度の変化を調査した。

    対象と方法:109症例131膝の脛骨側面像において,脛骨骨幹前方皮質に沿った線に対する顆部前壁に沿った線のなす角(Angle AW),解剖軸のなす角(Angle AA),機能軸のなす角(Angle MA)を計測し,解剖軸と機能軸のなす角(解剖軸機能軸角)を算出した。また,脛骨の膝関節面上と足関節面上での機能軸と解剖軸の距離(Dist. KN,Dist. AN)を計測し,Angle AWとの相関を調べた。

    結果:Ange AW,Angle AA,Angle MA,Dist. KNおよびDist. ANの平均は,それぞれ,15.4°,1.2°,3.6°,14.1mm,および0.5mmであり,Angle AWに対する,Angle AA,Angle MA,解剖軸機能軸角,Dist. KNおよびDist. ANの相関係数は,それぞれ,0.04,0.39,0.48,0.65および0.21であった。脛骨顆部の後方回転が大きいほど,脛骨の膝関節面と足関節面は後方へ偏位し,機能軸と解剖軸のずれは大きくなった。

    考察:顆部の後方回転により膝関節面は後方へ偏位するが,足関節も後方へ偏した。偏位は膝関節面が大きいため,機能軸は後方へ傾斜し,解剖軸と機能軸とのずれは大きくなった。

    結論:脛骨顆部後方回転により,矢状面における脛骨の解剖軸と機能軸のずれは大きくなる。

  • 酒井 健, 川崎 恵吉, 坂本 和歌子, 西中 直也, 稲垣 克記
    2022 年 41 巻 2 号 p. 39-43
    発行日: 2022年
    公開日: 2022/07/31
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    目的:舟状骨偽関節で近位部に骨壊死をきたす症例では,通常の遊離腸骨移植術の骨癒合率は低いとの報告が多い。手関節の舟状骨偽関節に対する鏡視下手術(Arthroscopic法,以下AS法)は低侵襲であり,良好な治療成績が報告されているが,術前に骨壊死が予想される症例には適さないとされていた。今回,術前MRI画像にて壊死が疑われた症例に対し,鏡視下手術を施行した症例の治療成績を報告する。

    方法:術前MRIにて全例で近位骨片に骨壊死が疑われたが,骨欠損部が小さく,AS法にて対応可能と思われた舟状骨偽関節13例を対象とした。受傷から手術までの期間は3.5(2~7)か月,平均年齢が18.9(16~25)歳,骨折部は腰部8例,近位部5例,経過観察期間は12.8か月であった。これらの骨癒合率,臨床評価としてMayo Wrist Scoreを評価した。

    結果:全例で骨癒合は得られ,術前MRIはT1強調画像で近位骨片は全例でiso signalであったが,T2強調画像は症例によってさまざまであった。術後掌背屈の可動域およびMayo Wrist Scoreで改善を認め,術後成績は良好であった。

    考察:術前MRI T1強調像にて骨壊死が疑われた症例であっても,遊離骨移植であるAS法で骨癒合が得られ,良好な成績が得られた。AS法により骨膜などの周囲組織を可及的に温存したことが有利に働いたと思われ,骨欠損が小さければ,骨壊死が疑われてもAS法は有効と思われた。MRI画像と壊死との関連性や適応症例の詳細についてはさらなる検討が必要ではあるが,特に若年者が対象のAS法の適応はさらに広がる可能性がある。

  • 戸田 佳孝
    2022 年 41 巻 2 号 p. 44-49
    発行日: 2022年
    公開日: 2022/07/31
    ジャーナル フリー

    目的:変形性膝関節症(膝OA)に対するジクロフェナク結合ヒアルロン酸Na(DF-HA)関節内注射にはアナフィラキシーショックを含む重篤な副作用が報告されている。アレルギー反応は抗原に接触した1回目には起らないが,2回目に接触した時に重篤なアレルギー反応が起る。そこで1回目のみDF-HA注射を行い,2回目はHA注射を行った場合の副作用発生頻度と治療効果を評価した。

    方法:56例の膝OA患者が前向きに無作為に2群に分類した。初回にDF-HA注射を受け,4週後にHA注射を受けた26例をDF-HA群とし,毎週5回HA注射を受けた26例を対照群とした。臨床評価は5週間後に行った。それぞれの群で治療前と治療後のLequesne重症度指数の改善点数を評価した。参加者に割り当てられた注射が原因だと考える副作用について質問を行った。

    結果:アナフィラキシーショックを含む重篤な副作用を起こした症例はなかった。寛解点数は対照群(3.5±4点)に比べてDF-HA群(6.8±4.5点)で有意に改善した(P=0.014)。

    考察:DF-HA注射は単回関節注射した場合には重篤な副作用は起らなかった。DF-HAを併用された患者の寛解点数はHA注射を連続して受けた患者より優れていた。DF-HAの単回注射は比較的安全で効果的であると結論した。

症例報告
  • 梅田 涼, 赤津 頼一, 中島 新, 園部 正人, 齋藤 淳哉, 乗本 将輝, 山田 学, 小山 慶太, 山本 景一郎, 山川 奈々子, 松 ...
    2022 年 41 巻 2 号 p. 50-54
    発行日: 2022年
    公開日: 2022/07/31
    ジャーナル フリー

    症例:67歳女性。歩行時に右膝関節の外側部痛とロッキングを自覚したため近医を受診し,右膝の外側半月板(lateral meniscus: LM)損傷と診断され,手術加療目的に当科を受診した。既往に6年前の右脛骨高原骨折があった。受診時は膝蓋跳動陽性,関節可動域は伸展−15°,屈曲120°,McMurray testで外側に疼痛を認めた。単純X線画像では脛骨外側関節面の陥凹および外側関節裂隙に骨化陰影を認め,MRIでは顆間にT1強調画像で高信号,T2強調画像で骨髄と等信号の領域を認めた。診断として関節内遊離体が考えられ,関節鏡手術を施行した。しかし,関節内に遊離体が存在せず,LM後節には骨化組織を認めたため,半月板と一塊に切除した。切除した病理組織所見は半月板と連続する脂肪髄を伴った骨組織であり,LM骨化症と診断した。術後に症状は改善し,経過良好のため終診となった。手術から4年後に対側の左膝関節外側部痛とロッキングが出現し近医を受診し,関節内遊離体の診断で手術加療目的に当院を紹介受診となった。左膝の受診時所見として膝蓋跳動陽性,関節可動域は伸展−25°,屈曲120°であった。単純X線画像は右膝と類似しており,MRIでLM内に骨髄と等信号の領域を認めたことから,LM骨化症と考え鏡視下半月板切除術を施行した。LM中節~後節に骨化病変を認め,半月板と一塊に切除した。病理組織像は右膝と同じ所見であり,両側LM骨化症と診断した。術後は症状も消失し経過良好であった。半月板骨化症の発生機序は一次性と二次性に分けられるが,本症例は両側とも関節内骨折や半月板変性に伴う二次性の骨化症と考えられた。過去に,両側の半月板骨化症の報告はなく,極めてまれな症例と思われた。

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