体育・スポーツ経営体における管理者の管理行動(対面的な影響力の行使と対状況に関わる意思決定)は,組織の活動を方向づけ,組織成果の向上に寄与する直接的な条件である。管理者は,自らを取り巻く種々の状況を解釈・判断し,経営条件の整備に努め,それを経営成績に結びつけていかなければならない。本稿は,こうした管理者の根本的な役割に着目し,具体的には,優れた体育管理者は,管理行動と業務遂行をめぐる状況との動態的な関係の中から描かれる,という当初の仮定のもとに,両者の適合的な関係を明らかにすることを目的とした。学校の体育管理者である体育主任と,それ以外の体育科教員を分析対象とし,階層的重回帰法を適用して検討を行った。その結果,まず,管理者評価に対しては,管理行動の主効果が極めて大きく,いかなる状況においても,有能な管理者であるためには,意欲的に管理行動を行使し続けなければならない。ただし,管理者評価への寄与の度合は,基礎的管理よりも発展的管理のほうが大きい。次に,部分的にではあるが,管理行動と職務特性の優位な交互作用効果が検出され,両者の複合的な影響が,管理者の有能さを左右することが明らかになった。特に,職務の自律性・曖昧性及び境界関係性の変動に対応できるか否かが,有能さの説明に有効である。最後に,管理者自身よりもその他の成因の方が,管理者による状況適合的行動の重要性を認識している。体育管理者といえども,状況への敏感さと行動様式の工夫が要求されている。
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