日本体育学会大会予稿集
Online ISSN : 2424-1946
ISSN-L : 2424-1946
第67回(2016)
選択された号の論文の881件中351~400を表示しています
一般研究発表(04) 運動生理学
  • 経頭蓋磁気刺激法による皮質脊髄路と第一次視覚野の興奮性の検討
    水口 暢章, 彼末 一之
    p. 159_1
    発行日: 2016年
    公開日: 2017/02/24
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     運動イメージを用いたトレーニングは運動スキルを向上させることできる。運動イメージは筋感覚的運動イメージと視覚的運動イメージに分けることができるが、2種類のイメージ中の第一次運動野と第一次視覚野の興奮性を同時に検討した研究はない。そこで、本研究は14名の被験者を対象に、筋感覚的および視覚的運動イメージ中の第一次視覚野の興奮性を経頭蓋磁気刺激によって誘発されるphospheneの出現確率によって評価した。第一次運動野の興奮性は運動誘発電位の振幅から評価した。イメージする動作は指タッピングとした。その結果、視覚的運動イメージ中には第一次視覚野および第一次運動野の興奮性が安静時と比較して増大した。しかし、筋感覚的運動イメージ中には第一次運動野の興奮性のみしか増大しなかった[交互作用(イメージのモダリティ×脳部位):p<0.05]。これらの結果は、2つのモダリティの運動イメージによって増大する皮質興奮性は非対称的であることを示している。運動イメージ中の神経メカニズムを明らかにすることはより効果的なイメージトレーニング法の開発につながる。

  • 河辺 章子
    p. 159_2
    発行日: 2016年
    公開日: 2017/02/24
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     本研究では、鉛直方向に移動する指標を追従視する際の空間定位について、特に移動指標の速度、方向、および視野位置による影響を検討することを目的とした。被験者の前方2.3 m離れたスクリーン(縦60 deg、横90 deg)上に、赤色円形の移動指標(大きさ:0.6 deg)を映しだした。被験者(15名)はこの移動指標をできるだけ追従視するよう指示された。その途中で音刺激が提示されるので、音刺激提示時点の移動指標の位置にマウスカーソルを合わせて左クリックすることを課題とした。このクリックによってカーソルの座標位置がPCに入力された。移動指標速度は20、30、40、50、60 deg/sの5条件、移動方向はdownward(上→下)、upward(下→上)、右→左(control条件としての水平移動)の3条件、定位位置(音刺激提示位置)を遠心20、10、0、求心10、20°の5条件で行い、計300試行を行った。結果として、鉛直方向の移動指標追従視時の空間定位は、downward移動の方がupward移動よりも正確性が高く、練習効果においてもdownward移動において効果が高いことが示された。

  • 渡邊 裕宣, 吉武 康栄
    p. 159_3
    発行日: 2016年
    公開日: 2017/02/24
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     片側性の随意的筋収縮中において、反対側同名筋に不随意的に発生する筋活動の特性について、随意的筋収縮課題の難易度、収縮強度、年齢の要因から統合的に明らかにする。右利きの健常な若齢者12名および高齢者12名を対象に、非利き手(左手)の等尺性示指外転動作による力調節課題を行った。力調節課題の目標強度は、最大随意収縮力の20、40、60、80%とした。対象者は、表示された目標値の許容範囲を目視しながら発揮する力を許容範囲内に合わせるよう努力した。課題難易度は、許容範囲を各目標強度の±2%を難課題、±7%を易課題と設定した。不随意的筋活動は、右手の第一背側骨間筋より導出した筋電図のRMS値(aEMG)によって評価した。aEMGは、全ての要因間(課題難易度、目標強度、年齢)において交互作用は認められなかったが(P>0.05)、各要因に主効果が認められ(P<0.05)、特に難課題は易課題よりもaEMGが1.45倍大きかった。以上より、反対側同名筋の不随意的筋活動は、片側性の随意的筋収縮の強度や加齢の要因に加え、随意的な力調節課題の難度が高い方が増加することが明らかとなった。

  • 井上 裕美子
    p. 160_1
    発行日: 2016年
    公開日: 2017/02/24
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     本研究では、視覚情報と聴覚情報を同時に処理する課題を行った場合、どの程度周辺視野における反応が遅れるのかについて、選択反応時間、脳波、眼球運動などの生理応答を計測し検討を行った。男子大学生15名が実験に参加した。実験条件は、単1課題として「周辺課題」、2重課題として「中心課題(周辺課題と中心課題)」及び「聴覚課題(周辺課題と聴覚課題)」、3重課題として、「視聴覚課題(周辺課題、中心課題、聴覚課題)」の4条件を設定した。周辺課題は、視野角25度の上下左右4箇所に配置された球に対する選択反応課題とした。中心/聴覚課題は、英字または数字を1秒に1文字を視覚/聴覚提示し、数字が提示された回数を数える課題とした。実験の結果、周辺視野の反応時間は、各課題の難易度と関連しており、周辺課題が最も短く、2重課題(中心課題、聴覚課題)、3重課題(視聴覚課題)の順に長くなることが示された。2重課題同士で比較すると、中心課題の方が聴覚課題よりも反応時間が短い結果が得られた。視覚情報は、聴覚情報よりも早く処理されるため情報処理の負荷が低く、反応時間も短縮されたと示唆された。

  • 大野 直紀, 佐野 加奈絵, 国正 陽子, 久野 峻幸, 牧野 晃宗, 石川 昌紀
    p. 160_2
    発行日: 2016年
    公開日: 2017/02/24
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     近年、免荷装置を利用したリハビリテーション(以下、リハ)やトレーニングが盛んに行われている。しかし、免荷時の筋腱や末梢神経系の調整機序については不明な点が多い。本研究は、荷重量の変化に対する筋腱の形態的変化と脊髄反射の応答を明らかにすることを目的とした。被験者は健常成人男性10名とした。免荷調整はLower Body Positive Pressureを用いた。超音波装置を用いてヒラメ筋腱を撮像し、ヒラメ筋束長、アキレス腱長を算出し、同時に床反力からアキレス腱張力を算出した。また、誘発筋電図を用いてヒラメ筋のH/M比を各条件で測定した。免荷量の増加に伴い、H/M比の低下、筋束長の増加、アキレス腱長の短縮とその腱張力の低下が認められた。一方、荷重量の増加に伴い、H/M比の増大、筋束長の短縮、アキレス腱長とその張力の増加が確認された。免荷装置を利用したリハは、下肢への負担が軽減されるため、アキレス腱や膝関節障害後の段階的なリハとして有効である。一方、免荷によって脊髄の興奮性が低下する為、伸張反射などの末梢神経の調整機能を利用した動的な身体運動への影響については、今後詳細に検討していく必要がある。

  • 田村 飛鳥, 平塚 和也, 角田 直也
    p. 160_3
    発行日: 2016年
    公開日: 2017/02/24
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     本研究では、筋収縮特性に及ぼす高周波温熱の効果について検討することを目的とした。被験者は健康な成人男性20名とし、被験筋は右脚の大腿直筋とした。高周波温熱には、高周波治療器TEC no six Erta(GMG s.r.l社製)を用いた。刺激周波数は750kHzとし、エネルギー出力は60Wで、15分間の施術時間で行った。筋の形状変化からみた収縮特性は、筋収縮特性装置TMG-100(TMG社製)を用いて高周波温熱の実施前後で測定した。測定項目は、反応時間(Td)、収縮時間(Tc)及び最大変位(Dm)の3項目とした。その結果、高周波温熱の実施前後における筋収縮特性は、Td及びTcが低下し、Dmは上昇する傾向が見られた。高周波温熱により筋温が上昇し、筋収縮速度と弾性が上昇したと考えられる。これらのことから、高周波温熱は筋の機能的要素を改善させ、ウォーミングアップや疲労回復等に有効な効果を示すことが推察された。

  • 平塚 和也, 角田 直也
    p. 161_1
    発行日: 2016年
    公開日: 2017/02/24
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     本研究の目的は、TMG法を用いて下肢筋群における形状変化から筋収縮特性の差異を検討することを目的とした。被検者は、体育系大学生の男子130名とした。被験筋は、大腿直筋(RF)、内側広筋(VM)、外側広筋(VL)、大腿二頭筋(BF)、前脛骨筋(TA)、腓腹筋内側頭(GM)及び腓腹筋外側頭(GL)とした。筋収縮特性は、筋収縮特性装置TMG-100(TMG社製)を用いて測定した。測定項目は、反応時間(Tc)、収縮時間(Tc)、最大変位量(Dm)及び筋収縮相対速度(Vrn)の4項目とした。その結果、TdはVMが最も低い値を示し、全ての筋群において有意な差異が認められた。また、TcはVMとVLでほぼ同様な値を示し、他の筋群間と比較して有意な差がみられた。DmはRFが最も高い値を示した。Vrnは、RF及びBFが有意に低い値示した。これらのことから、TMG法によるTd、Tc、Dm及びVrnは筋群によって異なる様相を示すことが示唆された。

  • 川島 峻, 平塚 和也, 角田 直也
    p. 161_2
    発行日: 2016年
    公開日: 2017/02/24
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     本研究では、筋疲労後の回復過程について、筋出力と筋収縮特性の経時的変化から検討した。被検者は、体育系大学男子学生7名とし、被験筋は上腕二頭筋とした。疲労は、BIODEX System 3(Biodex Medical System社製)を用いて5秒間随意最大努力による筋力発揮させ、1秒休憩を1セットとし、連続50セット行わせた。筋収縮特性は、収縮特性測定装置TMG-100(TMG社製)を、筋出力はBIODEXを用いて、それぞれ筋力発揮前(Pre)、50セット終了後(Post)、30分後、1時間後、24時間後、48時間後に測定した。TMG法の測定項目は、反応時間(Td)、収縮時間(Tc)及び最大変位(Dm)を分析した。その結果、筋出力は疲労直後に低下し、その後徐々に回復し、2日後には疲労前の値と同様であった。筋収縮特性では、Dmは筋出力と同様な結果がみられた。一方Tcは疲労直後及び30分後に高くなり、その後徐々に低下していく傾向がみられた。しかし、Tdには差はみられなかった。筋の疲労後の回復過程は筋出力及びDmは疲労直後に低下するが、Tcは上昇することが明らかとなった。

  • 磯貝 貴大, 平塚 和也, 角田 直也
    p. 161_3
    発行日: 2016年
    公開日: 2017/02/24
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     筋の収縮特性を評価する方法として、Tensiomyography法(TMG法)が開発された。この方法は、筋の形状変化から、遅延時間(Td)、収縮時間(Tc)、及び筋腹中央の最大変位(Dm)等の収縮特性を評価することが可能である。誘発筋電図法による筋の活動状況を評価する方法としてM波が用いられている。本研究では、TMG法による筋の形状変化とM波との関係について検討した。被検者は下肢に神経障害の既住がない成人男性15名とし、被験筋は右脚のヒラメ筋とした。収縮特性は、筋収縮特性装置TMG-100(TMG社製)を用いて測定した。電気刺激は右脚の膝窩表面に直径3cmの電極を2枚貼付し、脛骨神経を経皮刺激した。筋電図は大腿外側上顆より遠位2/3のヒラメ筋筋腹中央に貼付し、アース電極は脛骨外果に貼付し、ヒラメ筋から導出した(誘発筋電図装置(TMG社製))。その結果、TMG法による筋の形状変化からみた収縮特性とM波形の収縮情報は深い関係を有することが観察された。

  • 中村 智洋, 内藤 久士
    p. 162_1
    発行日: 2016年
    公開日: 2017/02/24
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     背景 自転車競技選手にとって、1kmTT(タイムトライアル)の記録は、短距離から長距離の競技種目を問わずパフォーマンスを評価するための指標として用いられているが、高校生年代では1kmTT記録と関連する体力テスト項目の検討はほとんどなされていない。目的 高校生自転車競技選手の1kmTTの記録を推定する体力テスト項目の検討を行うこと。方法 被験者は、全国大会入賞レベルを含む青森県内の自転車競技部に所属する男子高校生28名とした。1kmTTの記録は、平成27年度シーズンの最高記録を採用した。また、体力測定から、握力、背筋力、膝伸展および屈曲筋力、垂直跳び、最大無酸素パワーおよび平均パワーを評価した。結果 1kmTTの記録と握力、背筋力、膝伸展および屈曲筋力、垂直跳び、最大無酸素パワーおよび平均パワーとの間に有意な負の相関関係が見られた。また、重回帰分析の結果、1kmTTの記録は体重あたりに発揮できる平均パワーおよび握力の2項目で推定できる可能性があることが示された。結論 高校生自転車競技選手において、体重あたりに発揮できる平均パワーおよび握力を測定することで1kmTTの記録を推定できることが示唆された。

  • 黄 忠, 黒部 一道, 西脇 雅人, 有光 琢磨
    p. 162_2
    発行日: 2016年
    公開日: 2017/02/24
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     本研究は低酸素環境下でのレジスタンス運動とスプリント運動を融合した複合トレーニングが筋力・筋パワーに及ぼす影響について検討することを目的とした。健康な成人男性8名(33 ± 2歳)が、低酸素(FiO2=12.7% : H群)および常酸素(FiO2=20.9% : N群)環境において、それぞれスクワットでのレジスタンス運動(10RMを3セット)と自転車エルゴメータでのスプリント運動(6秒の全力運動を24秒の休息を挟んで5回、2セット)を週3回の頻度で8週間実施した。トレーニング前後に大腿部の筋断面積、最大無酸素性パワーおよび等尺性股関節屈曲伸展トルクを測定した。トレーニング後、筋断面積、最大無酸素性パワーはH群・N群ともにトレーニング前に比べて有意な増大が認められた(P<0.01)。また、股関節屈曲トルクは両群ともに有意に増大した(P<0.05)が、伸展トルクはH群のみトレーニング後に有意な増大が認められた(P<0.01)。しかし、すべての項目は環境間に有意な差異がみられなかった。以上、複合トレーニングは筋肥大とともに自転車でのパワー発揮、股関節の最大筋力の増大に有益であるが、低酸素・常酸素環境によるトレーニング効果は類似していることが示唆された。

  • 佐藤 大輔, 山﨑 雄大, 山代 幸哉, 丸山 敦夫
    p. 162_3
    発行日: 2016年
    公開日: 2017/02/24
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     運動学習による技能習熟には極めて大きな個人差が生じる。本研究では、系列的運動学習で生じる個人差と一次運動野介在ニューロンの感受性との関係を検証した。成人男女30名を対象に、系列的運動学習課題を実施し、その前後に技能レベルを評価した。課題には4-choise serial reaction time task (SRTT)を用い、技能レベルの評価は、学習前、学習5分後、15分後および30分後に行った。一次運動野介在ニューロンの感受性の評価には、経頭蓋磁気刺激(TMS)の刺激方向によって生じる運動誘発電位(MEP)の潜時差を用いた。SRTT学習後の技能レベルは、学習前と比較して有意に高い値を示した。一次運動野介在ニューロンの感受性と示すMEPの潜時差とonline learningとの間には有意な関係が見られなかったが、学習5分後の技能レベルとの間に負の相関関係が認められた。以上のことから、SRTT直後においてのみ、一次運動野介在ニューロンの感受性が技能レベルの定着に関与している可能性がある。

  • 伊藤 僚, 山下 直之, 稲葉 泰嗣, 松本 孝朗
    p. 163_1
    発行日: 2016年
    公開日: 2017/02/24
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     【目的】本研究は降雨による身体冷却が寒冷環境下における高強度走運動時の体温調節およびエネルギー代謝に及ぼす影響を検討した。【方法】被験者は男性8名で、環境温5℃、相対湿度50%に設定された人工気象室で10分間の立位安静の後、60分間の走運動を降雨あり(RAIN)、降雨なし(CON)の2条件で行った。運動強度は80% VO2maxとし、服装はポリエステル100%の長袖ランニングシャツとランニングパンツとした。【結果】直腸温は運動開始10分および運動開始40、50、60分でRAINがCONと比較して有意に低い値を示した。酸素摂取量は運動開始10分および運動開始50、60分でRAINがCONと比較して有意に高い値を示した。心拍数と主観的運動強度は運動開始50、60分でRAINがCONと比較して有意に高い値を示した。血漿乳酸濃度と血漿ノルエピネフリン濃度は運動開始10分および運動開始40、50、60分にRAINがCONと比較して有意に高い値を示した。【結論】寒冷環境下における降雨は運動開始初期と、その後、身体の濡れが進むに伴って、身体冷却を原因とした運動能低下を起こすと考えられる。

  • 高校生以降の健常者を対象に
    田邊 弘祐, 野井 真吾
    p. 163_2
    発行日: 2016年
    公開日: 2017/02/24
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     近年、運動と睡眠に関する研究が精力的に行われており、報告される論文数は年々増加している。そこで本研究では、現在までの運動と睡眠に関する研究を概観し、同分野における今後の研究課題を明らかにすることを目的とした。国内の文献はCiNiiを利用して(運動OR身体活動) AND (睡眠OR昼寝)等のキーワードで、海外の文献はPubMedを利用して(exercise OR physical activity) AND (sleep OR nap)等のキーワードでそれぞれ検索した。その結果、“運動が睡眠機能に及ぼす影響”では運動の影響を睡眠ポリグラフのみで評価した報告が大半を占めており、それ以外の生理的メカニズムについては十分に検討されているとはいい難い状況にあった。また、“運動が睡眠機能に及ぼす影響”においても、“睡眠が運動機能に及ぼす影響”においても、一時的な運動や睡眠の影響を検討したものがほとんどである状況も確認できた。以上のことから、習慣的な運動状況や睡眠状況の影響を種々の生理指標を基に検討することが今後の研究課題として期待されているとの結論に至った。

  • 大島 卓馬, 村山 敏夫
    p. 163_3
    発行日: 2016年
    公開日: 2017/02/24
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     九州地震によって改めて静脈血栓塞栓症予防の必要性が問われている。運動やマッサージは効果的な予防法だが、これらは血流鬱滞を抑制し血液凝固を防ぐことを目的としている。血流を促すにはこれらの方法以外に、日常生活の中でも取り入れる手立てがある。そのひとつが入浴であり、適切な入浴法は血流鬱滞を予防する最適な手段である。また、近年では血流増加を謳う多種多様な入浴剤が開発され、今では入浴シーンに欠かせない程に存在感を示している。一方で、心身が不調をきたすと入眠潜時に影響を及ぼすとの報告もあり、ここでも適切な入浴が質の高い眠りの確保と入眠を促すことが知られていることから、入浴の重要性が再認識できる。そこで本研究は、抹消血管血流量に着目した様々なパターンの入浴法における生体反応を観察する。入浴法は自宅でのシャワー浴、全身浴、重炭酸を用いた全身浴として、抹消血管血流量、血圧、体温などの生体情報を収集する。さらに浴後からの入眠を、脳波計を用いて観察し、抽出されたデータを用いて最適なコンディショニング方法を提案する。

  • 鷲野 壮平, 吉武 康栄
    p. 164_1
    発行日: 2016年
    公開日: 2017/02/24
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     外因的な吸気抵抗条件下での吸気筋トレーニングが学術的にもスポーツ現場においても注目されている。しかし、何れもトレーニングに必要な条件(Flow rateや肺気量)は曖昧なまま実施されている。本研究では、トレーニングに効果的な吸気条件を見出すために、胸鎖乳突筋と斜角筋を対象に、様々な吸気条件下での表面筋電図(EMG)の振る舞いを明らかにした。成人男性8名は、最高Flow rateを基準に設定した目標値(8段階)に合うよう随意的吸気を行った。この課題を吸気抵抗あり(23cmH2O)となし条件で行い、胸鎖乳突筋と斜角筋からEMGを導出した。各条件および各筋において、横軸に最高Flow rateで正規化された平均Flow rate、縦軸に最大吸気圧発揮時のEMGで正規化されたEMG振幅値をプロットし、曲線推定を行った(Flow rate-EMG関係)。その結果、全被検者の各筋において、有意な指数回帰曲線が得られた。その増加勾配は、高い肺気量時に高まり、またEMGが発現開始するFlow rateは、吸気抵抗の存在に加えて肺気量が高いほど、低値になった。したがって、トレーニングの吸気条件の決定には、吸気抵抗、肺気量、およびFlow rateの組み合わせを吟味する必要性があると言える。

  • 石濱 慎司, 田中 幸夫
    p. 164_2
    発行日: 2016年
    公開日: 2017/02/24
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     これまでに我々は呼吸法と体操を組み合わせた操体呼吸法を一般健常者(初心者)に実施し、末梢循環応答の増大、気分が向上するや唾液アミラーゼの活性化など、生理的および心理的に良い影響をおよぼすことを報告してきた。さらに初心者を対象にして、呼気ガス分析装置(K4システム)を用いた操体呼吸法時の呼気ガスの採取・分析をおこなった結果から、呼吸法および体操時における運動強度は、ゆっくりとした歩行程度の強度であり、呼吸の特徴としては呼吸法時に呼吸回数の減少、一回換気量の増大、呼息と吸息の変化がみられた。そこで本学会では、操体呼吸法実施中の呼気ガスを分析し、対象である熟練者と初心者の呼吸パターンを比較検討することを目的とした。そして誰でも簡単にこの操体呼吸法を実践するための要領を明らかにすることにある。その結果、熟練者は初心者と比して足芯呼吸法時の一回換気量にほとんど違いはないが、一回あたりの呼吸時間(呼息と吸息の時間)が延長する傾向にあった。本大会ではさらに詳細に検討を加え報告する。

  • 中谷 深友紀, 高井 洋平, 堀尾 郷介, 小森 大輔, 金久 博昭
    p. 164_3
    発行日: 2016年
    公開日: 2017/02/24
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     本研究は、大学サッカー選手および陸上跳躍・混成選手を対象に、下肢および腹部の筋厚における種目差を明らかにすることを目的とした。超音波法を用いて、大腿前・後部(大腿長遠位50%位置)、下腿前・後部(下腿長遠位30%位置)、腹部(第2腱画下)および側腹部(腸骨稜直上)の筋厚を測定した。なお大腿前部については、大腿長の遠位30%、50%および70%位置の内側(30%位置を除く)、中央、外側の計8か所を測定した。身長、体重および体脂肪率に、有意な種目差は認められなかった。大腿前・後部(50%位置中央)、下腿前・後部、腹部および側腹部の6か所の筋厚の比較において、大腿後部および腹部では跳躍・混成選手が、側腹部ではサッカー選手がそれぞれ有意に大きな値を示した。また、大腿前部の内側、中央、外側の各位置における筋厚の総和を比較した結果、外側部においてサッカー選手が跳躍・混成選手よりも有意に大きい値を示した。本研究の結果より、下肢筋群および体幹の筋形態と関連する走・跳躍動作を多く行なっている競技種目であっても、大腿部および腹部の筋には種目によって部位特異的な肥大が生じることが示唆された。

  • 久保 潤二郎, 小林 幸次
    p. 165_1
    発行日: 2016年
    公開日: 2017/02/24
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     柔道は、相手の道着を握り、相手をコントロールし、投げたり、抑えたりすることで勝敗が決する競技である。また、従来から柔道着の握り方に関しては、第3指から第5指あたりでしっかりと握ることが好ましく、第1指や第2指を中心に握ることは、手首の動きが悪くなるという理由から、好ましくないとされてきた。また、柔道着の握り方は、相手の袖口付近を握る引き手、相手の襟を握る釣り手という違いもある。柔道着を握るという行為は、柔道競技に不可欠であり、かつ柔道のパフォーマンスに大きく影響すると考えられるが、道着の握り方やその筋力に関する研究はほとんどない。そこで本研究では、学生柔道選手の組み手と握力およびピンチ力の関係を調査することを目的とした。学生男子柔道選手37名を対象とし、握力とピンチ力を測定した。ピンチ力の測定は、第1指と第2指で挟む力と第1指と第4指で挟む力を測定した。釣り手側の握力(47.8 ±6kg)は、引き手側の握力(46.4 ±6kg)より有意に高い値を示した(p<0.05)。また、釣り手側の第1指と第4指で挟む力(3.2 ±2kg)が、引き手側のそれ(2.9 ±1kg)より有意に高い値を示した(p<0.05)。

  • 高齢者と若年者の比較から
    宮辻 和貴, 川端 浩一
    p. 165_2
    発行日: 2016年
    公開日: 2017/02/24
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     歩行は人類の基本的な移動運動であり、非常に興味深い動作である。本研究では歩行指導へ向けた提案に対する取り組みへの知見を得るため、高齢男性10名(年齢76.1 ± 5.8歳)と若年男性10名(年齢19.7 ± 0.5歳)に異なる速度(自由歩行、緩歩、速歩)で歩行を実施した。歩行動作を2台のビデオカメラ(60fps)で撮影し、DLT法を用いて3次元動作解析を行った。基礎となる自由歩行に関する歩行指標データ(歩行速度が有意に低いなど)の多くに高若群間で差異が認められた。また、歩行速度に対する歩行動作指標との関係においては、ほとんどの動作指標との間に特徴となる差異はみられなかった。これは単純に異なった歩行速度を比較していたことが考えられる。つまり、これまでの歩行動作中心の指導のみならず、自由歩行速度が高まるような土台づくり(体力的要素の向上など)と環境づくり(速く歩く、高く跳ぶなど)に対する取り組みが必要であることを明らかにした。

  • 陸上との比較
    木下 みき, 森山 進一郎, 金沢 翔一, 北川 幸夫, 沢井 史穂
    p. 165_3
    発行日: 2016年
    公開日: 2017/02/24
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     水中レジスタンス運動は水の抵抗を利用した筋力トレーニングであり、健康づくり運動の1つとして普及している。しかし、水中でのレジスタンス運動がどの程度の負荷抵抗を課すことができているかについては十分明らかにされていない。そこで本研究は、水中レジスタンス運動中の主働筋の活動水準及び腹腔内圧を明らかにし、同一運動を陸上で遂行した時と比較することを目的とした。大学女子競泳選手10名を被検者とし、水中(鎖骨水位、剣状突起水位)及び陸上において5種類のレジスタンス運動(レッグエクステンション;LE、レッグカール;LC、チェストフライ;CF、バックプッシュダウン;BP、ヒップアダクション;HA)を実施したときの大腿直筋、大腿二頭筋、大胸筋、広背筋、大内転筋の表面筋電図(EMG)と腹腔内圧(IAP)を測定した。各運動中のEMG及びIAPは最大努力時の値で正規化して評価した。対象とした運動中の主働筋の活動水準は、全試行で20% EMGmax未満であったが、LE、CF、BPでは水中の方が陸上より有意に高く、HAでは鎖骨水位より陸上の方が高かった。IAPは総じて低く、HA以外条件間で有意差は認められなかった。

  • 男性市民ランナー1名の事例報告
    中村 和照, 鍋倉 賢治
    p. 166_1
    発行日: 2016年
    公開日: 2017/02/24
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     我々は、漸増負荷走時の血糖値と血中乳酸値の動態は、トレーニングを積んだ競技者で一致率が高くなる可能性を報告してきた。本研究は、男性市民ランナー1名(41歳)を対象に39週間のトレーニング分析を行ない、3回の漸増負荷走(0、22、38週目)の測定指標(最高酸素摂取量、VO2peak;血中乳酸値が2 mmol/l時の走速度、V-2mmol/l;漸増負荷走時の血糖値と血中乳酸値の一致率、R2)の変化とフルマラソンンのトレーニング分析前自己記録(8週前)、23、39週目のレース記録との関連性を検討した。フルマラソンの走速度は、分析前(12.6 km/h)に比べて23週目(14.1 km/h)、39週目(14.3 km/h)と速くなった。VO2peak(53.3、57.7、58.5 ml/kg/min)と血糖値と血中乳酸値の一致率(59.7、96.6、97.2 %)は0週目に比べて22、38週目で高くなったが、V-2mmol/l(13.4 km/h、13.8 km/h、13.4 km/h)は、0週目と38週目には差は認められず、0週目と22週目の差もフルマラソンの走速度の差に比べると小さくなった。漸増負荷走時の血中乳酸値と血糖値の動態を同時に評価することで、血中乳酸値の動態には反映されないトレーニング効果が評価できる可能性が考えられた。

  • 奥本 正
    p. 166_2
    発行日: 2016年
    公開日: 2017/02/24
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     【緒言】本研究は、長時間運動パフォーマンスに及ぼす乳酸摂取の効果を有酸素能力の違いから検討した。【方法】被験者は、大学女子陸上競技部の短距離選手5名と長距離選手6名の計11名であった。実験は、乳酸(0.06ml/kg)を摂取した場合と、糖質(0.08ml/kg)を摂取した場合の2回に分けて行った。飲料摂取30分後、低強度運動(40% VO2peak)を60分間、その後パフォーマンステストとして高強度運動(80% VO2peak)を疲労困憊まで行わせた。【結果】パフォーマンスタイムは、短距離選手の糖摂取では8.7 ± 7.0分、乳酸摂取では9.1 ± 6.1分であり、長距離選手の糖摂取では9.6 ± 5.4分、乳酸摂取では9.8 ± 6.7分であった。両群ともに、乳酸摂取した方がパフォーマンスタイムが向上したが、有意な差は認められなかった。長距離選手の糖質消費量は、糖摂取より乳酸摂取した方が約67.2kcal多く消費していた。しかし、糖質節約効果は見られなかった。【結論】持久的能力の違いに関係なく、乳酸摂取による長時間運動パフォーマンスの向上は見られず、乳酸摂取の効果は糖質摂取と同じであった。

  • 渡部 圭介, 平塚 和也, 角田 直也
    p. 166_3
    発行日: 2016年
    公開日: 2017/02/24
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     本研究では、連続投球に伴う体幹及び上肢の収縮特性について検討した。被検者は準硬式野球部に所属する大学野球部員10名とし、被験筋は大胸筋、広背筋、僧帽筋、三角筋中部、上腕二頭筋、上腕三頭筋、腕橈骨筋の計7部位とした。各被検者とも連続投球は、1セット15球を9セットの計135球試行させた。各セットの休息時間は6分間に設定した。筋の収縮特性は、筋収縮特性装置TMG-100(TMG社製)を用いて投球1セット前(Pre)及び9セット後(Post)に測定した。測定項目は、反応時間(Td)、収縮時間(Tc)及び最大変位(Dm)の3項目とした。その結果、球速はセット数の増加に伴って低下が確認された。体幹及び上肢の筋収縮特性はTcでは、三角筋及び広背筋でPostの方が有意に高い値を示した。また、Dmは大胸筋、三角筋及び広背筋でPostの方が有意に低値を示した。

  • 年齢やポジション別特徴など
    鍋倉 賢治, 小井土 正亮, 青柳 篤, 岡部 正明, 辻 俊樹, 濵谷 奎介
    p. 167_1
    発行日: 2016年
    公開日: 2017/02/24
    会議録・要旨集 フリー

     サッカーの勝敗は、選手個人のボールを扱う技術の正確性、チーム戦術に負うところが大きい。選手がボールを扱う局面に目を向けると、一瞬のスピードやジャンプ力、当たり負けしない体幹の強さが求められ、これが局面における相手との勝敗に影響する。さらに、このようなスピード、パワー、クィックネスといった運動能力を90分という長い時間、間欠的に繰り返し発揮し続けなければならない。そのため、選手の持久的な能力を客観的なデータを用いて評価することは非常に重要な意味を持つ。そこで本研究では、プロサッカー選手の持久性体力を評価し、サッカー選手に求められる持久力の基礎的知見を得ることを目的とした。対象は2016年シーズンJ1リーグ所属チームのGKを除く25名(23.7 ± 4.5歳)である。トレッドミルにおいて漸増負荷試験を行い、呼気ガスパラメーターを測定し、最大酸素摂取量(VO2max)などを評価した。全員のVO2maxの平均値は58.5 ± 4.4ml/kg/minであり、別に測定した一流大学選手よりもやや低く、他国プロサッカー選手とほぼ同等であった。今後、ゲーム中の運動量や心拍数と合わせて検討していくことで、要求される持久力などが明らかになるものと期待される。

  • 体操マット、とび箱、柔道場の畳、剣道防具、グローブなどに分布する細菌
    上岡 尚代, 野田 哲由
    p. 167_2
    発行日: 2016年
    公開日: 2017/02/24
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     【背景】学校体育における衛生環境が適した状態に保たれることは学生の健康を守る意味で重要である。本研究は学校体育で共用されるスポーツ設備に付着する細菌の分布を把握することでスポーツ用具の衛生管理の基準作成の基礎資料とすることを目的とした。【方法】対象は、教育機関8校で共用される体操マット、とび箱、柔道畳、剣道の面・小手、グローブなどをふき取り検査用スワブで採取し、選択寒天培地によるコロニー形成とPCR法により増幅し16Sr RNA断片のRFLPによる分類を試みた。【結果】共用されるスポーツ設備の細菌分布を皮膚常在菌を中心として調べた結果、施設による違いが認められた。【考察】同じ用具でも施設によって分布に差がみられるのは、用具を保管する環境の違いや衛生管理方法の差によると考えられる。今後、細菌・真菌以外にもどのような微生物群が分布しているかを明らかにすることで、スポーツ用具の適切な衛生管理方法を検討する際に役立つと考えた。【結論】本研究の結果から共用されるスポーツ設備に付着する細菌の分布は学校間で差異がみられた。定期的な汚染状態のチェック及び、衛生管理のための基準づくりの必要性が示唆された。

  • 河上 俊和, 滝瀬 定文, 佐川 光一
    p. 167_3
    発行日: 2016年
    公開日: 2017/02/24
    会議録・要旨集 フリー

     【目的】 ラットの高脂肪餌摂取が、脂肪細胞の形態に及ぼす影響について血管内皮増殖因子の係りに着目し組織学的に検討を行った。【方法】4週齢SD系雄ラットを普通餌群と高脂肪餌群に分け8週間実験を行った。実験終了後、凍結およびパラフィン連続切片を作成しAP染色およびVEGF、マクロファージの免疫染色(LSAB法)を行い、組織の一部は走査型電子顕微鏡による微細形態観察を行った。【結果と考察】高脂肪餌群は、大型脂肪細胞の細胞膜表面に小型の脂肪滴が出現し、細胞近傍および細胞膜の表面にはコラーゲン繊維と微細血管の走行が観察された。また、免疫染色では、両群の間でVEGFとAP染色に対する反応に変化が認められ、高脂肪餌群の細胞間隙でのマクロファージの浸潤は、炎症反応による刺激要因として血管新生と小型脂肪滴の形成要因となることが考えられた。

  • 吉田 寿, 神谷 宣広
    p. 168_2
    発行日: 2016年
    公開日: 2017/02/24
    会議録・要旨集 フリー

     陸上競技は様々な外傷や障害を起こす可能性があるため、それに対して有効かつ適切な治療や予防法が求められる。本研究の目的は、大学陸上競技者における受傷時の治療や予防法、外傷や障害に対する意識調査を行い、今後起こりえる怪我を予防するために必要な基礎的資料を得ることである。対象は関西学生陸上競技連盟2部に属するT大学陸上競技部に所属する男女64名(男性46名:21.0 ± 1.2歳、女性18名:20.0 ± 1.2歳)であり、競技年数は8.0 ± 6.0年であった。意識調査はアンケート方式を用いて平成27年10~12月に実施した。調査項目は外傷・障害の既往と有無、予防行動意識の大きく2つに分けた。調査の結果、受傷時の相談相手が監督や指導者という者は53.1%であったのに対し、治療の専門家である医師と回答した者は12.5%にとどまった。また、全体の26.6%が予防を目的とした各種のトレーニングを行なっていないという回答であった。以上のことから、大学陸上競技選手において外傷・障害に対する意識は低く、積極的に怪我を予防していない現状が明らかとなった。今後は部活動や授業で怪我の予防意識を高める活動を行っていく必要があると考える。

一般研究発表(05) バイオメカニクス
  • 沼津 直樹, 藤井 範久
    p. 170_1
    発行日: 2016年
    公開日: 2017/02/24
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     サッカーのゴールキーパー(GK)がダイビング動作により飛来するシュートを防ぐ際、体幹を動作方向へ倒すことで、より遠くに飛来するシュートにも対応できると考えられる。また、動作方向と反対側の脚(CS脚)は動作方向に対して大きな力を発揮しており、体幹を倒すことにも影響があると考えられる。そのため本研究の目的は、ダイビング動作において、動作方向へ体幹を倒すことへのCS脚の役割を明らかにすることとした。GKには16.5m前方からシュートされるボールに対してダイビング動作を行わせた。その結果、CS脚の支持期において、CS脚の下肢3関節の屈曲伸展軸まわりのトルクは伸展(または底屈)トルクを発揮しており。CS脚の股関節伸展トルク発揮は、体幹を動作方向と反対方向に倒れるように作用する。その一方で体幹を動作方向に倒す作用がみられたのは股関節力によるモーメントであった。CS脚の股関節と膝関節の伸展トルク発揮がないと、体幹を動作方向へ倒すような股関節力によるモーメントを発揮することはできない。したがって、体幹を動作方向へ倒す股関節力を発生させるために、CS脚側の股関節と膝関節の伸展トルク発揮が重要であると考えられる。

  • 木伏 紅緒, 萩生 翔大, 神崎 素樹
    p. 170_2
    発行日: 2016年
    公開日: 2017/02/24
    会議録・要旨集 フリー

     歩行は非常に安定した動作であるが、歩行速度の上昇により制御は不安定になると考えられる。近年、冗長性を有する骨格筋の制御を簡略化する神経機構として筋シナジーが提唱されているが、中枢神経系が筋シナジーに指令を送る際の不安定性は歩行速度に依存すると予想される。本研究では、不安定性の指標である最大リアプノフ指数を用いて筋シナジーの活動度と身体重心速度を評価することにより、筋シナジーの活動度における不安定性の変化を明らかにした。様々な速度で歩行している10名の被験者から得られた表面筋電図より、筋シナジーの抽出を行った。最大リアプノフ指数の値が高いほど時系列データの軌道不安定性が高いことを意味し、急速な不安定性の発展はλS、長期的な発展はλ Lとした。λ Sは、身体重心速度および筋シナジーの活動度の両方において歩行速度の上昇に伴い高くなった。しかしλ Lは、身体重心速度では歩行速度の上昇に伴い高くなったが、筋シナジーの活動度においては歩行速度に依存せずほぼ一定であった。このことから、中枢神経系は筋シナジーの活動度を、歩行速度が変化しても長期的な不安定性は発展しないように制御していることが示唆された。

  • 辻本 典央, 布目 寛幸, 池上 康男
    p. 170_3
    発行日: 2016年
    公開日: 2017/02/24
    会議録・要旨集 フリー

     歩行時や走行時の支持期における後足部の過度の外反動作は、下肢の慢性障害の要因であると考えられてきている。そのため、後足部の外反動作を生み出す力学的要因である後足部外反モーメントの発生機序を明らかとすることは、下肢慢性障害の予防を考える上で重要である。本研究の目的は、歩行時と走行時の後足部外反モーメントの発生機序を明らかにすることである。歩行時、走行時ともに後足部接地パターンを示した健常な成人男性14名が、中央部に床反力計を埋設した約30mの走路上で歩行と走行の両方の試技を行った。光学式モーションキャプチャー装置から得られた足部の3次元動作データと床反力計から得られた地面反力より、後足部外反モーメントを算出した。接地直後の局面では、歩行・走行ともに、床反力の側方成分の大きさが後足部外反モーメントの大きさに寄与していることが明らかとなり、さらに走行時に限り、この床反力側方成分の大きさが接地直前の足部側方速度の大きさに依存することが示された。その後の局面では、歩行・走行ともに、足関節中心に対するCOPの側方変位の大きさが後足部外反モーメントの大きさに寄与していることが明らかとなった。

  • 田中 重陽, 今若 太郎, 角田 直也
    p. 171_1
    発行日: 2016年
    公開日: 2017/02/24
    会議録・要旨集 フリー

     本研究では最大及び筋力低下条件下における大腿伸筋群の力学的収縮特性をMCセンサー法により評価した。被検者は膝関節に障害経験の無い成人男性とした。等尺性及び等速性膝伸展トルクは、総合筋力測定装置(Biodex社製)を用いて測定した。等尺性膝伸展トルクの測定は、最大努力による30回の連続的な等速性膝伸展運動前後に実施し、いずれも漸増的な力発揮で行わせた。大腿直筋、内側広筋及び外側広筋の形状変化量はMCセンサー(TMG-BMC社製)を用いて、また、それらの筋放電量は無線型筋電計(日本光電社製)を用いて測定した。連続的な等速性膝伸展運動前後において、トルク発揮の度合いと筋の形状変化量及び筋放電量との間にそれぞれ有意な相関関係が認められ、各筋の形状変化量と筋放電量との間にもそれぞれ有意な相関関係が認められた。また、内側広筋と外側広筋の形状変化量の間には、連続的な筋力発揮前後においてそれぞれ有意な相関関係が認められた。これらの結果から、MCセンサー法による筋形状変化の評価は、様々な条件下における筋の力学的収縮特性や各筋の協働活動を観察する手法として有効であろうことが示唆された。

  • 大塚 光雄, 栗原 俊之, 伊坂 忠夫
    p. 171_2
    発行日: 2016年
    公開日: 2017/02/24
    会議録・要旨集 フリー

     本研究の目的は、短距離走のスタートダッシュにおいて、「セット」からスタート合図までの長さ(先行期間)がその後の反応時間に与える影響を明らかにすることであった。被験者は男子短距離走選手20名であった。事前に過去5年分の国際大会で調査した先行期間を基に、5条件(1.43、1.62、1.78、1.94、2.10秒:SS、S、N、L、LL条件)の先行期間を選定し、それらの条件下で全力疾走させた。被験者の疾走動作を光学式ハイスピードカメラで撮影し、四肢に加わる地面反力データと同期した。四肢の12関節の関節トルクを算出し、それらの関節反応時間を求めた。先行期間が短い場合、その後の全身反応時間は有意に短かった。特にLL条件での全身反応時間は、SS条件と比較して0.039 ± 0.030秒短かった。各四肢の中で比較的早く反応した関節では、先行期間が長い条件ほど関節反応時間は有意に短かった。それに対して、上肢の遠位部である手関節や下肢の中で比較的遅く反応した前脚の膝関節では、先行期間が関節反応時間に与えた影響はなかった。これらは、スタート合図がスターターの主観に依存する現行の競技会のルールでは、レースの公平性が保てない場合があることを示唆している。

  • 吉武 康栄, 土江 寛裕, 松尾 彰文, 金久 博昭
    p. 171_3
    発行日: 2016年
    公開日: 2017/02/24
    会議録・要旨集 フリー

     世界に類を見ない50mにわたってフォースプレートを敷き詰めたトラック@鹿屋体育大学SPLabを活用し、これまで実現不可能であった新たなスプリントトレーニングシステムを提案することを目的とする。まず、インカレ出場レベルの大学サッカー選手24名を対象に、50mスプリント走における最高疾走速度のキネティクス的規定因子を定量化した。その結果、最高走速度(8.6-9.6 m/s)は、鉛直・前後方向の合力から算出した力積(合力Im)に対する前後方向の力積(前後Im)の比(前後Im/合力Im)と最も高い相関関係(r = 0.80)を示すことが明らかとなった。さらに、被検者内(n = 2)においても、4種類の速度(加速度走)で疾走した場合、各走条件での最高走速度と前後Im/合力Imとの間には高い相関関係(r > 0.97)があることが確認できた。つまり、前後Im/合力Imの比を増加させれば、50m走の最高疾走速度は向上できることが示唆された。これらの結果を基に、疾走中の選手対して一歩ごとの前後Im/合力Imをリアルタイムでフィードバックを実現するシステムを開発したので紹介する。

  • 下門 洋文, 奈良 梨央, 馬場 康博, 下山 好充
    p. 172_1
    発行日: 2016年
    公開日: 2017/02/24
    会議録・要旨集 フリー

     水中ドルフィンキックでは、抵抗を減らすために前方から見た断面積を小さくすることで減速を抑制できると考えられている。近年、速い泳者ほど膝関節の屈曲角度が小さいことが報告されている。本研究では、テーピングを用いた強制的な膝関節の可動範囲制限が水中ドルフィンキックの泳速度に及ぼす影響について調査した。大学競泳選手17名が参加し、メトロノームでキック頻度が一定となるよう調節した上で、水中ドルフィンキックで泳いだ。始めに通常泳(Pre)、次に膝関節の屈曲が制限されるようテーピングを施した状態(Tape)、最後にテーピングを除外した後に再度泳いだ(Post)。これらの泳動作を2次元動作分析した。その結果、平均泳速度においては、Preに比べてTapeでは有意に減少し、Postでの有意な変化は認められなかった。一方で、Preに比べてPostにおいてけり上げ動作中の減速の程度が大きくなっている様子が観察された。このことから、膝関節へのテーピングの事後効果として、水中ドルフィンキックにおけるけり上げ動作中の抵抗を増大させる方向に働く可能性が示唆された。

  • 新たに開発された自己推進時抵抗の評価方法を用いて
    成田 健造, 高木 英樹
    p. 172_2
    発行日: 2016年
    公開日: 2017/02/24
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     水中で行われる水泳運動では抵抗力による影響が甚だ大きく、その評価は水泳研究の最重要課題の1つとされている。抵抗力は速度の2乗に比例して増加すると報告されており、より速く泳ぐためにはいかに身体が受ける抵抗力を小さくするかが重要となる。これまで抵抗力は、受動抵抗(静止姿勢時の抵抗力)と自己推進時抵抗(四肢を動作させ自己推進する際の抵抗力)に分けて評価されてきた。しかしながら、自己推進時抵抗の評価は非常に困難であり、現存する方法論は様々な制限を有している。そのため、下肢動作も用いたクロール泳で、幅広い速度を対象に受動抵抗と比較した研究はない。そこで本研究では、自己推進時抵抗を評価する新たな方法論を開発し、クロール泳中の自己推進時抵抗とストリームライン姿勢中の受動抵抗を幅広い速度で比較した。その結果、クロール泳中の自己推進時抵抗は受動抵抗よりも高い値を示した。さらに、受動抵抗は速度の約2乗に比例して増大するものの、自己推進時抵抗は速度の約3乗に比例して増大する傾向が示された。これは、自己推進するために四肢を動作させ、速度の増加に伴いストローク頻度を高めたことが原因として考えられる。

  • 海津 陽一, 藤井 範久
    p. 172_3
    発行日: 2016年
    公開日: 2017/02/24
    会議録・要旨集 フリー

     ボールリリース(ball release; BR)前のボール軌道を分析し、BR時合成ボール速度との関連性を明らかにする事を目的とした。20人のアマチュア野球選手を対象とし、動作解析システムVICON-NEXUS (250Hz)を用いて三次元動作解析を行った。ボール軌道に関するパラメータとして、ボール移動距離、ボール速度、ボールに加えた力(force applied to ball; FAB)、最大FABからBRまでに要した時間を算出した。なお、FABはボール加速度とボール質量の積により算出した。ボール移動距離は、鉛直方向より水平方向に大きく、BR直前にFABが下方、非投球方向(右投手の一塁方向)に急激に大きくなる特徴を認めた。BR時合成ボール速度との関連性の分析では、踏み出し足接地からBRまでの合成ボール移動距離と有意な相関を認めなかった。一方、全てのFABと最大FABからBRまでに要した時間との間に有意な相関を認めた。これらの結果より、ボール速度の増大には、力の作用距離を大きくするより、短い時間により大きなFABをボールに加えることが重要である事が示唆された。

  • 松尾 知之
    p. 173_2
    発行日: 2016年
    公開日: 2017/02/24
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     投球中にボールへ加えられる力の、時間・量・方向に関する情報は、投球速度やコントロール、あるいは回転量などの投球パフォーマンスの改善に役立つものと考えられる。また、無駄な力の発揮などの情報は投球傷害予防やイップスの改善などにも活用できるものと考えられる。我々は、野球のボール内に2つの超小型軽量の3軸力覚センサーを埋め込み、無線で力情報を獲得できるボールを開発し、4種の速度条件下での力発揮を計測した。個々の指の力の発揮の仕方は、人差し指優位タイプや中指優位タイプなどの個人差が大きかったが、それぞれの指が発揮する力は、3軸ともに概ね同じパターンを示した。それぞれの指の合力は、ボールリリースの30~50ms前に生じる肩関節最大外旋付近で最大のピーク(約160N)を迎え、リリース直前の約10ms付近で第2のピークを迎えることが多いが、この第2ピークの大きさあるいは有無は、個人内の速度条件や個人差に影響を受けていた。ボールの法線方向に垂直で、指と平行な方向の成分では、すべての投手において二峰性の力が観察された。この二峰性の第2ピークは、リリース直前(約10ms前)に指先方向にボールが転がり始める時間と一致していた。

  • 小嶋 武次
    p. 173_3
    発行日: 2016年
    公開日: 2017/02/24
    会議録・要旨集 フリー

     野球の投球でのリリース時のボールの回転数はその速度や、直前に指からボールに作用する最大トルクと相関があることが知られている(Nagami et al.、2011; 神事ら、2014、2015)が、他の事柄と回転数との関係は分かっていないようである。本研究の目的は、投球腕の第2、3指の関節角度とボールの回転数との関係を調べることである。大学野球部に所属する男子選手8名が室内で前方の的を狙って全力で投球した際のリリース時のボールの速度と回転数、その直前のボールの位置と回転及び両指の指節間関節角度を計測した。各選手についてこれらの速度と角度を独立変数、回転数を従属変数として重回帰分析を行った結果、リリース約6 - 2ms前の角度も回転数のばらつきをよく説明する選手が6名おり、これらの各選手内では屈曲度合いが大きくなると回転数が小さくなる傾向にあった。さらに、これらの角度は同時期のボールの指上での滑りのばらつきをよく説明する傾向にあった。これらの結果は、第2指や第3指の屈曲度合いがボールの指上の滑りに影響し、それがリリース時のボールの回転数に影響する場合があることを示唆している。

  • 堀内 元, 桜井 伸二
    p. 174_1
    発行日: 2016年
    公開日: 2017/02/24
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     本研究の目的は、野球のバッティングにおけるバットのダイナミクスを分析し、バットヘッドの加速メカニズムについて検討することであった。アマチュア野球選手99名の最大努力によるトスバッティング動作をモーションキャプチャーシステムで記録し、バットのキネマティクス的変数を算出した。加えて、逆動力学法を用いてバットグリップに作用する力およびトルクを算出した。バットスイング開始以降、グリップ周りにスイング方向へのトルクが発揮され、バットの回転エネルギーも増大した。しかし、インパクト直前からトルクの発揮は減衰し、インパクト時にはスイング方向とは逆向きのトルクに転じた。インパクト直前からはバットの並進エネルギーの増大が顕著であった。スイング動作を通してバットヘッドの曲率半径は単調増加の傾向を示し、インパクト直前におけるバット長軸方向への力とバットヘッドスピードの2乗に極めて強い相関関係が認められた。これらのことから、野球のバッティングでは異なるタイミングでバットの回転エネルギーと並進エネルギーを増大させることでバットヘッドを加速させていることが推察された。

  • プロ野球打者のトス打撃を対象として
    森下 義隆, 平山 大作, 熊川 大介
    p. 174_2
    発行日: 2016年
    公開日: 2017/02/24
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     野球打者は様々なコースに投じられたボールに応じたバットスイングが求められる。本研究の目的は、打撃における空間上の打撃ポイント(打点)の違いによってスイング特性がどのように変化するかを明らかにすることであった。NPBに所属する野手12名に25~40回トス打撃を行わせ、その運動をモーションキャプチャシステムで記録した。トス打撃は打点がストライクゾーン周辺で均一に分散されるように行った。バットのスイング特性を表すボール・インパクト直前のヘッド速度と水平面に対するヘッド速度の方向(スイング角)、およびスイング開始からインパクトまでの時間(スイング時間)を従属変数、高低の打点(鉛直方向)、内外角の打点(左右方向)、インパクト直前の打者の腰部に対する投手方向の打点(前後方向)を独立変数として、ステップワイズ法を用いた重回帰分析を行った。その結果、ヘッド速度とスイング角は全ての独立変数が、スイング時間には左右方向の打点を除く2変数が投入され、全ての回帰式において前後方向の打点の標準化偏回帰係数が最も大きかった。このことから、投手-捕手方向の打撃ポイントがスイング特性に最も影響することが示された。

  • 相馬 満利, 柏木 悠, 袴田 智子, 船渡 和男
    p. 174_3
    発行日: 2016年
    公開日: 2017/02/24
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     【背景】人体形状の相同モデル化は、人種差・世代差・性差などを明示することが示唆されている。トレーニングによる骨格筋の発達が著しいアスリートにおいて、形態形状の違いはより鮮明となりえる可能性がある。【目的】ジュニア男子器械体操選手と一般男子学生の形態形状を比較し、相同モデルの主成分分析を通して、形態的特徴を提示する。【方法】全日本男子ジュニア体操競技強化指定選手(GM)および同年代の一般男子学生(NA)であった。三次元人体計測法(BLS)を用いて、被験者の人体を撮像した。そのポリゴンデータを相同モデル標準テンプレートモデルに同一頂点数でフィッティングし、全被験者人体形状の相同モデル化を行った。また、主成分分析を用いて形態形状の違いの定量化を試みた。【結果および考察】形態計測値において、上腕囲、胸囲に有意な差がみられた。更に相同モデル化されたデータでの第1主成分(32% )は、上腕・体幹中間部・背側筋群に明確な発達が可視化され違いが明らかとなった。相同モデルを使用することにより、形態形状の視覚的な違いをより客観的に捉え、競技により特化した形態形状のより詳細な情報を提供する可能性が示された。

  • 河野 由, 水村 真由美
    p. 175_1
    発行日: 2016年
    公開日: 2017/02/24
    会議録・要旨集 フリー

     バレエダンサーは上肢の動きで作品に登場する人物の役柄や感情を表現するが、表現を伴う動作には、経験者であっても大きな個人差が存在する可能性が高い。そこで本研究の目的は、表現を伴う上肢動作の運動学的指標の個人差を上級者と中級者で比較することにより、身体表現の個人差と技術水準の関係を明らかにすることとした。対象は、海外のバレエ団に所属するプロ3名、アマチュア上級者6名、アマチュア中級者14名であった。対象者にバレエ作品『白鳥の湖』でみられる白鳥の羽ばたきを模した上肢動作を実施させ、その様子を光学式カメラで撮影した。その後、肩、肘、前腕、手、MP関節角度を算出した。各対象者の上肢挙上および下降局面の時間を100%として規格化し、規格時間1%ごとに各関節角度を平均した後、変動係数(CV)を算出した。その結果、算出した関節角度の中で手関節屈曲/伸展動作のCVが最も大きく、特にプロでは上肢下降局面の最大下降付近でCVが大きかった。これらの結果から、表現を伴う上肢動作において、技術水準が高くなると手関節屈曲/伸展動作の個人差が大きかったことから、手関節屈曲/伸展動作にダンサー個人の表現特性が内在している可能性が示唆された。

  • 藤原 敏行
    p. 175_2
    発行日: 2016年
    公開日: 2017/02/24
    会議録・要旨集 フリー

     両足旋回はあん馬で最も重要な基本運動である。本研究では、その両足旋回の運動質をより単純、簡便に評価できる変数を模索して、先行研究で測定された男子選手18名の両足旋回を再分析した。結果、頭部中心と左右つま先の中心の2点間の水平面距離(Head-Toe Distance: HTD)は、審判の評価得点と強い相関関係(r = 0.74、p < 0.001)を示した。これまでの研究で報告されている評価変数には、身体および股関節の屈曲角度、足部や肩の水平面回転における直径、両手背面支持局面中の肩関節伸展角度や頭部の前後位置などがあるが、これらはお互いに重複する要素を持ちながら、それぞれHTDに影響を与えるものと思われた。また、HTDはこれらのどの変数よりも得点との相関が高く、統合的な評価項目として両足旋回の質を高い妥当性を持って評価していると考えられた。さらに、HTDは頭部と足部の水平面での位置だけで算出できることから、マーカーレスの2次元自動動作分析システムなどに応用して、自動測定かつ即時フィードバックによって、より実践的に活用される可能性が示唆された。

  • バーの弾性力と動作の関連性について
    亀山 就平, 牛山 幸彦, 大庭 昌昭, 田中 誠二, 上島 慶, 齋藤 良宏, 川口 正太郎
    p. 175_3
    発行日: 2016年
    公開日: 2017/02/24
    会議録・要旨集 フリー

     体操競技における男子種目の平行棒には、繊維強化プラスチック製の弾力のあるバーが用いられている。そのため、競技者は運動時に生ずるバーの弾性力を利用して演技を実施する必要性があるといえる。本研究は、平行棒技術の一つである後方車輪を対象に、バーの弾性力と運動の関連性について解明することを目的とした。バーの弾性力は、ストレインゲージによって測定されるバーのひずみを基に算出される応力とし、垂直方向のバーの弾性力と重心速度や身体各部位の関節角度の変化の関連性について分析を実施した。技術熟練者群と未熟練者群に分けて比較を行なった結果、熟練者群は懸垂姿勢時、重心がバーの真下を通過する局面においてバーの弾性力が維持されており、身体重心がバーの真下から上方に変位する局面でも徐々に減少していることが明らかになった。よって、平行棒の後方車輪ではバーの弾性力を効率よく利用するため、懸垂時に腰、肩角度を伸展するぬき動作と屈曲するあふり動作の間隔を長くする運動が重要であり、この運動によって生み出されるバーの弾性力は、後方車輪運動終盤における身体重心の上昇を助長する働きがあると示唆された。

  • 記録向上過程の区間速度変化に着目して
    尾﨑 雄祐, 上田 毅, 福田 倫大, 足立 達也
    p. 176_1
    発行日: 2016年
    公開日: 2017/02/24
    会議録・要旨集 フリー

     400mハードルは、記録や発達段階でレースパターンやインターバル歩数に相違があり、それに応じたトレーニングの必要性が報告されている。しかし、これらの研究は記録に応じてレースを横断的に検証したものが多く、記録向上過程の変化についての研究は少ない。本研究では、高校男子選手に着目し、記録別のレース傾向、記録向上過程のレースパターンの変化を明らかにすることを目的とした。対象は過去数年のインターハイ、国体の両試合出場の選手58名とした。レースの区間ラップ、歩数から、速度、ピッチ等の項目を算出し、全体、記録別グループごとに横断的、縦断的に分析した。その結果、記録向上群は記録向上後、記録レベル別に異なるレースパターンの変化を示した。また、記録向上群と記録維持低下群は、同記録レベルであっても、インターハイ時点でレースパターンに相違がみられた。これらは記録レベル別の傾向だけでなく、個人のレースパターンの特徴から、目指すべきモデルレースパターンを設定することの重要性を示唆するものである。

  • 大沼 勇人, 立 正伸, 熊野 陽人, 平野 裕一
    p. 176_2
    発行日: 2016年
    公開日: 2017/02/24
    会議録・要旨集 フリー

     本研究では、曲走路全力走行中における左右脚の地面反力の差異を明らかにすることを目的とした。分析対象は、陸上競技部に所属する男子大学生12名(年齢20.3 ± 0.9歳、身長1.74 ±0.04m、体重66.7 ±4.6kg)であった。試技は、曲走路(曲率半径:37.9m)におけるスタンディングスタートからの60m全力走とした。45m地点付近の走動作を撮影し、左右脚それぞれの地面反力の最大値と最小値、力積を比較した。また、座標系はX軸を法線方向(内側を負方向、外側を正方向)、Y軸を接線方向(前方を負方向、後方を正方向)、Z軸を鉛直方向として設定した。その結果、X軸の地面反力の最小値には左右脚間で有意な差が見られなかった。しかしながら、その最大値は右脚より左脚で大きかった。また、Y軸の最小値には左右脚間で有意な差が見られなかった。しかしながら、その最大値は右脚より左脚で大きかった。Z軸の最大値には左右脚左右脚間で有意な差は見られなかった。一方、X軸の力積は右脚より左脚で有意に小さかった。しかし、YおよびZ軸の力積には左右脚間で有意な差は見られなかった。これらの結果より、曲走路全力疾走中における力発揮は右脚よりも左脚で大きいことが示された。

  • 永原 隆, 水谷 未来, 松尾 彰文
    p. 176_3
    発行日: 2016年
    公開日: 2017/02/24
    会議録・要旨集 フリー

     本研究では、加速疾走を複数回行った際にタイムが最も良かった試技(FT)と悪かった試技(ST)を比較し、加速局面全体にわたる時空間変数と地面反力の観点から加速疾走パフォーマンスの変動に影響する要因を明らかにしようとした。大学陸上競技部に所属する15名の男子選手に60mの全力走を行なわせ、疾走中の地面反力を50台のフォースプレートによって計測した。個人内のFTとSTを抽出し、疾走中の1歩ごとの時空間変数、支持期における力積、平均力などを算出した。得られたデータについて、1歩ごとに対応のあるt検定を行い、加速疾走パフォーマンスの変動に影響する要因について検討した。60m走のタイムには有意差があり、3–22歩目においてFTの疾走速度が有意に高かった。また、FTでは、3–22歩目においてステップ頻度が高く、2–6、8–22歩目において支持時間が短かった。さらに、FTでは、1–3歩目において水平加速力が大きかった。これらの結果から、スタート後の1–3歩目における水平加速力、3歩目以降における短い支持時間と高いステップ頻度が短期間における個人内の加速疾走パフォーマンス変動に影響する要因であることがわかった。

  • 宮﨑 俊彦, 田中 昭憲
    p. 177_1
    発行日: 2016年
    公開日: 2017/02/24
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     短距離の跳躍角とストライドについて検討するため、中学男子26名、中学女子13名、高校男子20名、高校女子13名を被験者にし、室内50m走を行った。オプトジャンプシステムを設置し、滞空時間と接地時間を測定した。同時にレーザ速度測定器を用いて疾走速度を測定した。一歩の跳躍角は、跳躍高とストライドの1/2の値からから正弦値を求め、跳躍角度を算出した。その結果、35-45m区間の跳躍角とストライドはどの群も負の関係が得られた。0-10m区間の跳躍角とストライドの関係については中学女子・中学男子の2-5歩目までは有意な相関係数が得られなかった。高校男子・高校女子の3歩目以降は有意な負の相関関係が得られた。以上の結果、中学女子は、スタート直後から高く跳びあがって、ストライドを得ようとしているのに対し、高校男子・高校女子は、3歩目以降より低く前に跳んでストライドを広げ、速度を上げようとしていると考えられた。

  • 宮本 彩, 安藤 柊之介, 柳谷 登志雄
    p. 177_2
    発行日: 2016年
    公開日: 2017/02/24
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     長距離走の場合、接地パタンが接地時の衝撃(Lieberman et al. 2010)や走動作(Kulmala et al. 2013)に影響することが知られている。一方、短距離走の場合、接地パタンにより疾走能力や疾走動作が異なるかは不明である。子どもを対象に、短距離走の接地パタンと疾走動作を調査することは、学校体育や陸上競技の指導法を検討する上で意義があると思われる。そこで本研究は、小学5年生男子の短距離走において、接地パタンが疾走能力と疾走動作に影響を及ぼすかを明らかにすることを目的とした。被験者は公立小学校に通う5年生男子14名であった。被験者に50mの全力走を行わせ、その際の接地パタンと走動作を左側方よりビデオ撮影(120fps)して分析した。被験者を、接地パタンにより後足部接地群と前・中足部接地群の2群に分類し、さらに疾走時のキネマティクス変数を群間で比較した。その結果、疾走タイムには、接地パタンによる差は見られなかったが、ピッチと接地時間、そして接地時の踵と重心の水平距離、重心鉛直変位、接地期の膝関節角度変位、引きつけ角速度および振り戻し角速度に有意差が認められた。

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