会計史学会年報
Online ISSN : 2758-1691
Print ISSN : 1884-4405
2018 巻, 37 号
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  • 橋本 寿哉
    2018 年 2018 巻 37 号 p. 1-14
    発行日: 2018年
    公開日: 2022/07/05
    ジャーナル フリー
    江戸時代には、商家ごとに独自の帳合法が形成されていたが、一部の大商家の帳合法は複式決算構造であったことが知られている。これは西洋起源の複式簿記と同一の原理に基づいたものであったが、日本で独自に生成した固有のものであったと考えられる。本稿では、こうした帳合法がいかにして生成・発達したかを明らかにするための一助として、17世紀後半に江戸に進出して木綿問屋として発展を遂げた伊勢商人・長谷川治郎兵衛家を事例として採り上げ、同家における帳合法が、最終的に複式決算構造の極めて体系的なものとして完成されるまでの発達過程を、経営上の時代区分に基づいて考察した。同家の帳合法は、組織体制の発展に対応して段階的な発達を見せ、最終的に、一族の事業、家産、家計が本家によって一元的に統括される中央集権的な持株会社形態の体制へと発展・進化したことが、体系的な帳合法を完成させることになった。以上より、江戸時代の商家の組織体制の発展・進化が、日本固有の体系的な帳合法を生成・発達させた重要な要因の一つであったと考えられる。
  • 「勘定帳」を中心とした会計帳簿の分析
    松田 有加里
    2018 年 2018 巻 37 号 p. 15-29
    発行日: 2018年
    公開日: 2022/07/05
    ジャーナル フリー
    江戸時代の日本において,商家は各家独自の方法で帳簿記録を行っていた。個別の商家を対象とする研究の蓄積により,決算報告書の様式や構造,日々の取引の記帳等の諸点において,商家ごとに相違が存在していることが明らかとなっている。これらの相違は,商売上の必要に応じて施された工夫と捉えることができる。各商家は,事業を行う上で何に関心を持ち,それをどのように記録したのだろうか。 本研究では,近江商人の特徴的な商いの1つとして挙げられる松前交易に焦点を当て,寛永期(1624–1644年)から蝦夷地(現北海道)において松前交易を営んだ柴谷家の江差店を取り上げ,同家がどのような業務上の要求に従って経済活動の記録管理の方法を構築したのかについて考察を行った。 江差店では,仕込み取引に関する貸付およびその返済状況等の記録を行う「書出帳」を中心とした帳簿組織を構築し,その記載内容を「勘定帳」の形にまとめ上げることで,取引先ごとの債権・債務の綿密な記録管理を行っていた。当該店では,仕込み取引を通じた上せ荷の安定的調達を目的として漁民を確保するため,彼らに対する債権・債務を個別に管理する必要があり,この情報要求に応じた会計記録・報告機構が構築されたと考えられる。
  • 単位当たり計算と割引現在価値
    野口 翔平
    2018 年 2018 巻 37 号 p. 30-43
    発行日: 2018年
    公開日: 2022/07/05
    ジャーナル フリー
    イギリス産業革命期において石炭産業が盛んであったのはDurhamやNorthumberlandを含む北東地域であった。そこでは,炭鉱監督者と呼ばれる技師によって,会計技術が利用されており,彼らが他企業や他業種へと移動することで,その知識も広がりを見せていた。そのような中で,本稿では,一次史料や先行研究をもとに,当時の石炭産業会計の特徴と考えられる単位当たり計算と割引現在価値による炭鉱評価が利用された背景を石炭の生産と炭鉱の所有関係から考察している。石炭産業の特徴は石炭の枯渇と採掘場所の移動であることから,収穫逓減の法則があてはまる。これによって,単位当たり計算の必要性があった。さらに,炭鉱は炭層によって生産が規定されており,また当時の炭鉱は賃貸借契約によって経営されていた。炭鉱評価に使われた割引現在価値計算は,これらを考慮した計算となっていた。
  • 大石 桂一
    2018 年 2018 巻 37 号 p. 44-47
    発行日: 2018年
    公開日: 2022/07/05
    ジャーナル フリー
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