英国Cambridge大学の図書館のManuscript Roomには、1799年-1801年にかけてのReid, Beale, Hamilton and Shank商会の史料が保管されており,本稿はその中の Ledger元帳A(史料番号A-1/2)の検討を行う。同商会は19世紀初頭のアジアの海域で貿易に従事したCountry Traderでpartnership制をとっていた。その簿記では,記帳の目的は,勘定の管理が一番大きい。勘定科目では人名勘定が圧倒的に多いことから,貸し借り,それに伴う金利、
手数料の管理が重要であった。
もう一つの目的は剰余の確定と分配の実施である。株式の公正な価値での取引ということが難しいpartnership会社では,純財産(剰余金を含んだ資本)が法人の財産という視点は乏しい。特にこの当時のCountry Traderは短期で資本を引き揚げる。そのため利益はすべて分配し、新たに事業にお金が必要なら出資なり個人で出す,その記録が帳簿である。そのような利益の測定と分配の役割もこの帳簿の仕組みで十全に機能したと考えられる。本稿により利益の計算手順はわかったので、この後の期に拡張し,データの変化を追い,どのような経緯で計算構造の変化が生ずるのかの究明が今後の課題である。
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