九州神経精神医学
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63 巻, 2 号
九州神経精神医学_63_2
選択された号の論文の7件中1~7を表示しています
巻頭言
総説
  • 衞藤 暢明, 川嵜 弘詔
    原稿種別: 総説
    2017 年 63 巻 2 号 p. 75-82
    発行日: 2017/08/15
    公開日: 2020/03/26
    ジャーナル フリー

     統計上10歳代の自殺は,昭和30年以降減少している。また他の年代に比べて数が圧倒的に少なく,自殺率も非常に低い。しかし,各国の状況と比較すると,15歳以上で自殺の割合は多い。

     思春期では自殺念慮は高い頻度で認めるが,自殺行動に至ることは少ない。自殺未遂後の既遂の割合は他の年代と同様に高い。そして自傷は将来の自殺に至る可能性を高める。メディアの影響で生じる群発自殺やインターネットに関連した思春期の自殺もある。

     思春期では自殺自体が少ないため,自殺予防の方策を確立することは難しく,自殺既遂をアウトカムとした調査・研究もほとんどない。また,思春期では精神疾患の確定が困難であり,個人の心理的な成熟や社会の変化の影響を受けるために,治療はより複雑となる。しかし,思春期の自殺予防は社会的な要請であり,エビデンスを確立していく必要がある。

研究と報告
  • 三高 裕, 島袋 盛洋, 松隈 憲吾, 髙木 俊輔, 外間 宏人, 三原 一雄, 近藤 毅
    原稿種別: 研究と報告
    2017 年 63 巻 2 号 p. 83-87
    発行日: 2017/08/15
    公開日: 2020/03/26
    ジャーナル フリー

     CADASIL(cerebral autosomal dominant arteriopathy with subcortical infarcts and leukoencephalopathy)とは皮質下梗塞と白質脳症を伴う常染色体優性遺伝性脳動脈症であり,随伴症状として,抑うつなどの精神症状を来たすことも多い。そのため,精神科受診当初はうつ病や双極性障害などの疾患と誤って診断される可能性も高いため,片頭痛や脳卒中の家族歴など,精神症状以外にCADASILを疑わせる症状や病歴があれば,速やかに頭部MRIを撮影すべきである。その結果,多発性脳梗塞や白質脳症を認めれば,CADASILを積極的に疑い,Notch3変異に関する遺伝子解析や,皮膚/筋生検を行って確定診断に繋げることが望ましい。

  • 齊之平 一隆, 石塚 貴周, 田畑 健太郎, 横塚 紗永子, 新井 薫, 塩川 奈理, 春日井 基文, 中村 雅之, 佐野 輝
    原稿種別: 研究と報告
    2017 年 63 巻 2 号 p. 88-93
    発行日: 2017/08/15
    公開日: 2020/03/26
    ジャーナル フリー

     前頭骨内板過骨症(Hyperostosis frontalis interna: HFI)は前頭骨に限局した結節性の過骨性変化を特徴とする疾患である。今回,前頭葉機能障害を中心とした認知機能低下とHFIを有する症例を経験したので報告する。症例は80代女性。物忘れや脱抑制的言動が目立つようになり認知症の鑑別と治療目的に入院した。Mini Mental State Examinationは28/30点と保たれていたが,Frontal assessment batteryをはじめとする前頭葉機能検査では顕著な障害を認めた。頭部CTやMRIにおいて前頭骨に限局した結節性の過骨性変化と軽度の頭頂葉の萎縮や両側側脳室下角の開大を認め,大脳白質にはT2延長領域を認めた。また,AD index(tau×Aβ40/42)が11697と高値を示し,血管性の病変に加え,アルツハイマー病理の存在も示唆された。本症例における認知機能障害は複数の病態による影響が考えられたが,前頭葉機能障害の重要な原因としてHFIが強く示唆された。

  • 精神療法場面における治療的距離についての工夫
    長沼 清, 大江 美佐里, 千葉 比呂美, 石田 哲也, 内村 直尚
    原稿種別: 研究と報告
    2017 年 63 巻 2 号 p. 94-102
    発行日: 2017/08/15
    公開日: 2020/03/26
    ジャーナル フリー

     兄弟例の症例報告を行う。兄は児童期に父から身体的虐待を受け,27歳で全般性不安障害と診断された。弟は「良い子」を演じて暴力被害を避けようとしたことから,虐待を受けなかった。弟は23歳時に社交不安障害の診断を受けた。彼ら二人はミネソタ多面人格目録(MMPI)上で類似の結果であったが,異なる行動様式を示し,兄は接近,弟は回避のパターンを示した。行動様式と効果的な精神療法の相違について,アタッチメント理論と治療距離理論を用いて考察を加えた。

  • 土屋 達郎, 廣瀬 武尊, 猪狩 圭介, 村上 智哉, 光安 博志
    原稿種別: 研究と報告
    2017 年 63 巻 2 号 p. 103-110
    発行日: 2017/08/15
    公開日: 2020/03/26
    ジャーナル フリー

     飯塚病院は福岡県筑豊地域の急性期総合病院である。当院ではリエゾンチーム活動を行っている。昨年度よりリエゾン精神科が設立され,初年度である平成28年度の当院でのリエゾン活動を振り返り,今後の課題を検討した。

     平成28年度のリエゾン依頼の述べ件数は613例であり,最多はせん妄であり292例であった。自殺企図は59例であった。せん妄へのベンゾジアゼピン系薬剤の使用が目立っており,薬剤選択の啓発や,全体研修等の予防活動が課題であることが認識された。自殺企図例についても背景疾患や内服薬剤を含めた治療方針の検討が必要であり,また自殺企図後の定期フォローの重要性は高まっていることから,継続フォローの実現体制を整えることも課題である。

資料
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