九州神経精神医学
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66 巻, 3_4 号
九州神経精神医学_66_3_4
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巻頭言
研究と報告
  • 堀田 洋, 阿部 祐太, 吉住 昭
    原稿種別: 研究と報告
    2021 年 66 巻 3_4 号 p. 93-100
    発行日: 2021/08/15
    公開日: 2021/10/14
    ジャーナル フリー

    東日本大震災発生後,花巻病院では釜石地区で支援活動を行っている。同地区の被害は甚大で,死者・行方不明者は2400人以上にのぼり,残された被災者も深刻な死別を経験している。街が津波に飲まれる様子や多数の死体を目撃する,津波に流されるなどの過酷な体験をした者も多い。このため,PTSDや複雑性悲嘆,うつ病などの精神疾患を発症した者も少なくない。

    筆者は2011年10月から2012年4月まで同病院の支援活動に従事した。この間,PTSD,複雑性悲嘆の5症例に対してEMDRによるトラウマ処理を行った。PTSDの4名は2~12回の面接(0.5~3か月間)で症状はほぼ消失した。複雑性悲嘆の1名も12回の面接(3.5か月間)で,うつ症状,PTSD症状ともかなり軽減した。EMDRは,震災被災者のPTSD,複雑性悲嘆の症状を速やかに軽減し,認知を変化させる効果があると考えられた。このため,数か月間の期間限定の介入であっても,EMDRは有効な治療手段になり得ると考えられた。

  • 心理職の立場から
    上村 佳代, 入江 香, 小山 徹平, 春日井 基文, 中村 雅之, 赤崎 安昭
    原稿種別: 研究と報告
    2021 年 66 巻 3_4 号 p. 101-110
    発行日: 2021/08/15
    公開日: 2021/10/14
    ジャーナル フリー

    バウムテスト(樹木画テスト)とは投映法に分類される人格検査の一種である。本研究では,刑事精神鑑定において行われたバウムテストの結果の特徴について分析を行なった。殺人(未遂)被疑事件16例と放火(未遂)被疑事件14例の計30例において,バウムの各種サイン(筆圧,位置,枝先,樹冠の豊かさ,樹冠輪郭線の有無)について性別,知的水準,診断名,被疑事件内容の観点から検討を行なった。その結果,男性の方が女性より有意に筆圧が強かった。知的に健常な群は知的障害群と比べて有意に左寄りの位置に描く傾向があった。これらの結果から刑事精神鑑定において,女性は男性ほど自己主張や攻撃性を表現せず,知的に保たれている事例では未来志向にならないことが示唆された。被疑事件内容別に比べると,放火群は樹冠輪郭線が殺人群よりも少なく,放火事例は殺人事例と比べると外界の刺激に敏感な可能性が示唆された。また,殺人既遂群は左寄り,殺人未遂群は右寄りの位置に描く傾向があり,殺人既遂事例は過去を志向する傾向がある一方,殺人未遂事例は未来を志向する傾向が示唆された。

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