看護薬理学カンファレンス
Online ISSN : 2435-8460
2023東京
選択された号の論文の9件中1~9を表示しています
シンポジウム1
  • 三浦 由佳
    セッションID: 2023.1_S1-1
    発行日: 2023年
    公開日: 2023/07/06
    会議録・要旨集 オープンアクセス

    繰り返しの誤嚥や咽頭内の残留物は誤嚥性肺炎のリスクを高める。食事や水分摂取時だけでなく、薬剤の内服時の誤嚥や咽頭残留も高齢社会において大き な問題となりつつある。内服薬が咽頭内に残留したままであると、適切に体内に 取り込まれないという問題も生じる。自宅や施設で療養する誤嚥のリスクの高い 高齢者が安全に内服できていることを、どのような方法で確認したらよいだろう か。従来、ベッドサイドでは誤嚥や咽頭残留をアセスメントするために、視診や 聴診にもとづくフィジカルアセスメントやスクリーニングテストが行われてきた。こ れらはどこでも簡便に実施できるが、むせや声の変化などを生じない不顕性の 誤嚥や咽頭残留を判断することが難しい。

    そこで、可視化にもとづくフィジカルアセスメントの一つの方法として、超音波 検査(エコー)を用いた、誤嚥・咽頭残留の観察を提案する。近年エコー機器の 画質の改善とともに研究が進み、従来は困難だと思われていた気管や咽頭内の 部位をエコーで同定することができるようになった。気管や咽頭内の部位を同定 できるようになったことで、誤嚥物と残留物の可視化が可能となった。また、携 帯型のエコーが登場し、エコーによる観察は病院だけでなく施設・在宅の場で も広く適用可能となった。

    発表では、看護師である演者が看護学研究者、工学系研究者らとコラボレー ションし開発した、エコー画像に人工知能(AI)を導入した、誤嚥・咽頭残留の アセスメント技術について紹介する。通常、エコー画像のアセスメントには約半 年のトレーニングが必要とされる。さらに、誤嚥物や咽頭残留物の観察は複雑 な咽頭喉頭の解剖とエコー画像を結び付けて理解する必要があり、より長期間 のトレーニングを要する。しかしAI による機械学習を行うことで、誤嚥物や残留 物がエコー画像の中に存在する場合、直ちに自動で可視化することが可能であ る。そのため、エコー観察に熟達していない者でも、画像から誤嚥物のアセスメ ントができるようになる。日々の内服時において、どのような剤形で誤嚥を起こ しやすいか、どの部位に咽頭残留が起こりやすいか、ということをエコーでリア ルタイムに可視化できれば、誤嚥を予防するための薬剤の剤形の変更、残留物 を除去するための吸引といった対処が可能となる。今後、服薬支援の場面にお いてもエコーによる可視化が活用されることを期待する。

  • 眞鍋 千恵
    セッションID: 2023.1_S1-2
    発行日: 2023年
    公開日: 2023/07/06
    会議録・要旨集 オープンアクセス

    周術期の患者に睡眠障害が起こることは数多く研究され、報告されている。周術期の睡眠障害には複数のリスクファクターが存在する。そのリスクファクターの 一つである全身麻酔薬に対し、ヒトの睡眠に深く関係する概日リズムへの影響につ いて研究を行った。

    ヒトの概日リズムは、生体の生理機能に対する周期性を示す。その周期は 24.1~25.1 時間であるが、外界の 24 時間の明暗周期に合わせる「同調」という機能がある。 ヒトは、概日リズムが同調されることで、健康的で規則的な日常生活を送ることが できる。

    概日リズムは、時計遺伝子とメラトニン受容体の作用により同調されている。特 に周術期にある入院患者は、概日リズムの「同調」が障害されやすく概日リズムが 乱れることで、夜に眠り、昼に覚醒するという正常な睡眠 / 覚醒サイクルを保つこ とができないといわれている。また、全身麻酔薬により睡眠 / 覚醒サイクルが乱れ ることが、動物実験やヒトを対象とした研究で報告されている。今回、全身麻酔薬の中でも臨床現場で汎用されているセボフルランに着目し、ヒ トと同様にメラトニンが分泌されるマウスによって睡眠 / 覚醒サイクルへの影響を 明らかにした。

    マウスに 3日間セボフルランで麻酔をすると、麻酔前の推移と比較しマウスの活 動開始時刻が早まり、セボフルランがマウスの睡眠 / 覚醒サイクルに影響を及ぼす ことが明らかとなった。

    新たな知見であるこの結果から、セボフルランによる全身麻酔後の患者は、術 前と比較して入眠時刻が早まり、早朝に覚醒しやすい傾向にあると考えられる。眠 れることが当たり前であった生活から、全身麻酔により「眠るべき時間に眠れない」 生活になることは、患者にとっては大きな苦痛である。いつもと違う生理現象を体 感し、違和感や不安を覚える患者に、原因や対処方法を説明できることで、患者の 苦痛に寄り添った看護となる。「眠れていない」という現象を捉えるだけでなく、「な ぜ眠れなかったのか」という疑問に取り組み、看護師が生理学や薬理学の知識を 得て、メカニズムや作用機序を理解し行う根拠に基づいたケアは、安全性の担保 や患者と看護師の信頼関係を構築することにつながる。

    現在、周麻酔期看護師として麻酔科医と協働することで、薬剤の理解や薬剤投 与前後の患者の観察、アセスメントの重要性を再認識したため、改めて薬剤投与 の最終実施者となる看護師に期待される役割を考えていきたい。

  • 槇原 弘子
    セッションID: 2023.1_S1-3
    発行日: 2023年
    公開日: 2023/07/06
    会議録・要旨集 オープンアクセス

    人体最大の臓器である皮膚組織は、外界から身体を保護し体内への異物侵入を防ぐバリア機能をもつ。そのため、皮膚組織には化学物質などに対する代 謝機能があり、様々な代謝酵素が発現している。一方で皮膚組織は、全身作用 を目的とした経皮吸収型製剤から有効成分を吸収する部位としての機能も担う。 皮膚から吸収された薬物は直接体循環に移行するため、肝臓での代謝(初回通 過効果)の回避が可能である。また、長時間持続した有効血中濃度の維持、嚥 下困難な患者への投与、第 3 者による薬の使用状況の確認が容易といった多く の利点を有する。本邦でも多くの医療機関において経皮吸収型製剤が使用され ている。

    経皮吸収型製剤には、得られる効果に対し、「個人間差」という課題が報告さ れている。この課題に対し、我々は皮膚組織における薬物の代謝が個人間差に 関与している可能性について基礎研究から検証してきた。皮膚組織で発現する 代謝酵素には、多くの薬物の代謝に寄与するチトクロム P450 酵素(CYP)が含 まれている。先行研究では、ヒト皮膚組織において、複数の CYP 分子種の発現 が確認されており、経皮吸収製剤である女性ホルモン剤のエストラジオール、オ ピオイド鎮痛薬のフェンタニル、尿失禁・頻尿治療薬であるオキシブチニンなど の代謝に関わるCYP3A4も含まれている。CYP の発現には人種差があること が知られるが、皮膚組織におけるCYP の解析は少数例での検証にとどまってお り、日本人の CYP の特徴は明らかとなっていない。皮膚におけるCYP タンパク 質の発現レベルは肝臓よりも低く、薬物代謝への関与は低いとの見方もある。し かし、皮膚内の薬物代謝酵素の CYP が経皮吸収型製剤の薬物代謝にどの程 度関与しているのかは完全に明確化されていないため、日本人の皮膚組織を解 析しその知見を積み重ねていくことは有用だと考えた。

    そこで我々は、皮膚組織中の CYP 分子種の遺伝子発現量を解析することに よって、皮膚組織中の薬物代謝の個人間差について検証することとした。今回は その中から、肝臓ではCYP3A4の発現や活性に影響することが知られている「肥 満」と皮膚の CYP3A4 発現量の関連と、日本人における発現量の個人間差につ いての結果を中心として、これまで明らかになった知見を紹介する。

特別講演
  • 真田 弘美
    セッションID: 2023.1_SP-1
    発行日: 2023年
    公開日: 2023/07/06
    会議録・要旨集 オープンアクセス

    まずは、石川県珠洲市を代表する地震で被害にあわれた方々のお見舞い、ならびに他国から侵略、内戦などで亡くなられた方々に謹んで哀悼の意を表します。

    魔の川・死の谷・ダーウィンの海をご存じですか? 私が初めてこの言葉を知ったのは、モノづくりで壁にぶつかったときでした。これは、出川通氏による著書『技術経営の考え方~MOTと開発ベンチャーの現場から~』(光 文社、2004)で提唱されました。技術の社会実装の過程では、魔の川は①研究~② 製品開発、死の谷は②製品開発~③事業化、ダーウィンの海は③事業化~④市場・ 産業化における各難所を示します。これは企業側からの利潤を追求したの見方です が、一方、アカデミアは、いかに真実を追求するかが使命といえます。いわば目的が異 なる二つの業界が、何をゴールに、どこに向かうのか、産学連携には様々な課題があります。

    看護学は実践科学であり、新しく見出された理論や技術が現場で使われてこそ、 看護が進化します。我々看護職は、最も療養者の傍にいて、相手の立場に立ち、症 状緩和をリアルタイムに求められる職業です。いわば、対象者の肉薄するニーズを直 接見い出すことが看護研究の基本となり、現象を質・量で言語化することができます。 冒頭に触れたモノづくりの壁とは、ニーズを見い出しただけで、前述した魔の川を渡っ ていないことだと理解しました。

    看護での産学連携に求められることは? 私が最初に行った産学連携は 30 年前でした。日本の褥瘡保有率が 6%以上あったときに、現場のナースが教科書通りに 2 時間ごとに体位変換しても褥瘡が発生する現 場を目の当たりにして、その原因について調査した結果、日本人の身体に適した体圧 分散寝具が無いことが明確になりました。この結果を基に、2 層性の圧切り替えエア マットレスの構造を考え、その設計図を関係する企業に説明に回りましたが、どの会 社も看護・介護に必要な機器には興味がなく、取りあってくれませんでした。いわゆる 魔の川の渕に立っていた時です。その後、ベンチャーだった一つの企業が製品化に協 力してくれ、川をわたることができましたが、次に待ち受けた死の谷は、高額すぎて事 業化できないことでした。しかし、今では現場で当たり前のように使われる体圧分散 寝具となり、ダーウィンの海も渡ることができました。このプロセスで、私達研究者に 求められたのが、実態調査研究、臨床研究、実装研究でした。何が成功の鍵になっ たか?それは同じ目標、方法を共有することであり、それこそが看護理工学の理論で した。ここでは、ある産学連携の事例を示すとともに、その基盤となる看護理工学に ついて解説したいと思います。

シンポジウム2
  • 相川 祐里
    セッションID: 2023.1_S2-1
    発行日: 2023年
    公開日: 2023/07/06
    会議録・要旨集 オープンアクセス

    周産期は妊産婦の身体と心理、両側面からの支援が必要な時期である。そのため安心安全な出産と産後の生活を支援するには、様々な専門家の知識と経験 が必要になると考える。

    演者は、所属する済生会横浜市東部病院(以下当院)において、周産期に特化 した「ペアレンティング・サポート委員会」に参画し、多職種多機関連携活動を おこなっている。このチーム医療の目的は、妊娠期から子どもが生まれた後の生 活をイメージした養育環境の準備を支援し、新しい家族がスムーズに形成される こと、そして最終的には、子どもへの虐待を発生前から予防することと、としている。

    2007年 3月に横浜市の政策医療の一環として開院した当院は、恩賜財団 という特徴から無料定額診療事業、入院助産制度なども利用でき、経済的な理 由によって必要な医療を受ける機会が制限されないという役割も担っている。さ らに精神科病棟を併設しているという特性上、精神疾患を合併している妊産婦 も近隣の一般産科病院やクリニックから紹介されることも多くある。結果、2022 年時点では年間の総分娩件数の内、約16% にこのペアレンティング・サポート委 員会が、主に妊娠期から支援を開始している。その中で心理師もチームの一員 となり、例えば心理療法に関する教育・研修を他職種と共に企画実施し、医療 者がメンタルヘルスケアを提供した際はその相談に乗っている。医師や看護職が 各々の専門業務に専念すべき場面ではメンタルヘルスケアは心理職が担うなど、 当事者だけでなくチーム内の間をつなぐ、アクセスしやすい職種になることを心 掛けている。

    また当院には、妊婦授乳婦認定薬剤師が常駐し、妊婦・授乳婦への服薬カウ ンセリングを通じて、不安の軽減を図っている。具体的には妊娠中から使用薬剤 の疫学研究の情報を妊婦と共有し、服薬することでの胎児へのリスクと、服薬し ないことでの妊婦の病状悪化のリスクを説明し、意思決定の支援をしている。

    本シンポジウムでは、演者らが取り組む妊産婦へのメンタルヘルスケアの実際 を心理臨床の立場から報告しつつ、薬剤師等他の専門職との役割分担などを意 識した工夫と課題についても述べる。

  • 小澤 千恵
    セッションID: 2023.1_S2-2
    発行日: 2023年
    公開日: 2023/07/06
    会議録・要旨集 オープンアクセス

    近年、わが国の社会構造の変化によって、養育環境は著しく変化し、母親の育児不安やこころの問題が顕在化してきている。それに加え、2020 年より流行 しているCOVID-19 は、妊産褥婦、またその家族に多岐にわたり影響をもたらし ており、精神保健に携わる医療従事者には、今まで以上のサポートを行うことが 求められるようになってきている。周産期メンタルヘルスの中で発症率の高い周 産期うつ病は、早期発見、早期介入により、病態を改善することができると言わ れており、周産期にある女性に対して密に関わることのできる医療従事者、特に 助産師の行う支援は大変重要となる。しかし、医療従事者は妊産褥婦への支援 体制を強固にしなければならないという使命がある一方で、援助を求めている 妊産褥婦に対し、十分な支援ができていない場合もある。

    周産期ケアを行う医療従事者は、妊産褥婦の背景にある問題点を整理しなが ら、具体的にその困っている点を抽出することが重要となる。そして、心身のリス クを十分に把握し、予防的・治療的な関わりをすることで母子ともに健康な状 態で生活することができる。そのためには、周産期医療従事者が精神的不調を きたしている女性を発見する能力を身に着けることは不可欠であり、それと同時 に共感的な対応で接することや相手のペースで話をするなどの心理援助の技術 を向上させることも大切となる。周産期医療従事者が質の高い心理援助を行う ことは、周産期にある女性のみならず、乳幼児や家族にとってもより良い未来へ とつながると考えられその意義も大きい。

    今回のシンポジウムでは、助産師の行う心理支援の質の向上に向けて、必要 とされていることは何かについて考えていきたい。

  • 岡島 義
    セッションID: 2023.1_S2-3
    発行日: 2023年
    公開日: 2023/07/06
    会議録・要旨集 オープンアクセス

    妊産婦には睡眠問題を抱える者が多いことは、周知の事実である。妊娠初期~後期のいずれかの次期に睡眠障害を有する妊婦は 59% にのぼり、妊娠後 期には 80%以上の者が何らかの睡眠障害を有していることが報告されている(Moghadam et al., 2021)。睡眠障害の中で最も多いのが不眠障害であり、入眠 困難や睡眠維持困難、およびそれによる日中の眠気が特徴的である。このような 背景から、「妊娠中は眠りにくくなる」ことが一般常識となり、夜間に眠れなくても、 日中眠れるときに眠るように指導される。

    しかし、不眠障害の有病率は産前だけではなく産後でも高く、抑うつ・不安状 態を高めるリスク要因となることが縦断調査によって明らかにされている(Quin et al., 2022)。加えて、妊娠中に睡眠障害があると、出産後 6ヶ月間に産後うつ病を 発症するリスクを5.3 倍高めることも明らかにされている(Chung et al., 2018)。こ のことからも妊産婦の睡眠問題については、積極的な改善アプローチを提供す る必要がある。

    不眠障害に対しては、認知行動療法(CBT-I)が極めて有効であり、欧米では 不眠障害治療の第一選択肢に位置づけられている。CBT-Iの中核技法は睡眠ス ケジュール法(刺激制御療法と睡眠制限療法の組み合わせ)であり、その内容は 臥床時間の短縮である。通常は、4~6 回のセッション(1回 50 分程度)を行うこと で 7 割程度の不眠患者に効果が認められ、その効果は持続することが明らかと なっている(Morin et al., 1999)。近年では、digital CBT-Iも多く利用され、対 面 CBT-Iに遜色ない効果を示している。

    妊産婦の不眠症状に対してCBT-Iを実施した研究では、妊産婦の不眠症状の 改善には有効であり、産後うつ病にも一定の改善効果を示すことが報告されてい る(例えば、Manber et al., 2019)。本シンポジウムでは、CBT-Iについて紹介す るとともに、妊産婦の不眠症状に対するCBT-Iの有効性と今後の課題について 紹介する。

看護薬理学教育セミナー1
  • 合田 光寛
    セッションID: 2023.1_EL-1
    発行日: 2023年
    公開日: 2023/07/06
    会議録・要旨集 オープンアクセス

    我が国では、少子化が大きな問題となっており、出生数も年々低下している。新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の大流行の影響もあり、2022 年の出生 率は 77 万 747人となり、統計を開始した1899 年以降、初めて 80 万人以下となった。 一方、このような中で、慢性疾患を抱えながら妊娠・出産を希望する女性は多く、 母体の健康管理のために妊娠中や授乳期に薬剤を使用する機会も多くなる。ま た、計画的ではない妊娠の場合には、妊娠に気付くのが遅れるため、妊娠中に偶 発的に薬剤を使用する例もある。こうしたことから、実際には、妊娠中に何らか の薬剤が使用される例はかなり多い。

    妊娠中、授乳中の女性の薬物治療で重要な点は、「妊娠・授乳中の女性の健 康」と「胎児・乳児の健康」の双方を確保することである。催奇形性や胎児毒性 といった胎児への影響や乳児へのリスクのみを重視し、妊娠・授乳中の女性の 健康を犠牲にすることは、結果として、胎児・乳児の健康を害するリスクがある。 妊娠前から使用している薬剤のリスク・ベネフィットについて主治医と話し合い、 女性自身が使用薬について知ることが大切である。そして、看護師、助産師をは じめ女性を支える医療者が、正しい知識を持って妊婦・授乳婦に対応する必要 がある。

    本講演では、妊婦や授乳婦における医薬品のリスクマネジメントについて、以 下の内容に焦点を当てて情報提供する予定である。まず、妊娠・授乳と薬の基礎 知識として、薬物の胎盤通過性、乳汁移行性や催奇形性、胎児毒性のある薬物、 また妊娠中、授乳中の薬剤使用のリスクの考え方について解説する。次に、妊婦 や授乳婦への医薬品の適切な情報提供についても取り上げる。医薬品のリスク と利益のバランスを正確に伝えることは、患者の適切な意思決定を支援する上 で重要である。そのためには、医薬品のリスク情報を的確に収集する必要がある。 最後に、妊娠中、授乳中の女性への基本的な対応方法にも触れたいと考えている。

    妊婦や授乳婦における医薬品のリスクマネジメントは、妊娠・授乳中の女性と 胎児・乳児の安全と健康を守るために欠かせない課題である。本講演では、妊娠・ 授乳と薬の基礎知識、リスク情報の収集と活用方法、妊娠中、授乳中の女性へ の基本的な対応方法などについて、妊婦や授乳婦の安全な薬物治療をサポート するために、皆さんと情報共有したいと考えている。

看護薬理学教育セミナー2
  • 今井 徹
    セッションID: 2023.1_EL-2
    発行日: 2023年
    公開日: 2023/07/06
    会議録・要旨集 オープンアクセス

    救急外来や院内急変では重症度や緊急度の高い患者に対して、迅速かつ高度な医療が要求され、状態に応じた適切な介入が必要となる。その中で、多種 多様な薬やハイリスク薬が汎用されるため、重症患者に対する適正な薬物療法 の実施は医療者の重要な責務となる。その為には、平時から薬物療法に関する 知識をアップデートして、患者対応に困らないようにしておくことが重要と考える。

    救急外来では、様々な病態の患者に対応できるように薬の在庫管理と供給体 制を整え、必要な薬を適切なタイミングで利用できるようにしておく必要がある。 このような体制整備の段階においても、緊急時の薬物療法の理解があれば、よ り実臨床に即した準備に活かせると考えられる。また、院内急変では、看護師 が第一発見者になることが多く、患者の病状や緊急性を考慮しながら、医師へ の連絡や患者対応など、医療チームの要であるとともに最も多忙な存在となる。 そのような状況において、突然起きた想定外の事象に対して医師が慌ただしく 指示を出すが、その指示が明確でない場合もあり、重症患者に対する薬物療法 に不安を感じた経験がある看護師もいるのではないかと推察する。

    救急外来や院内急変において、看護師の役割は薬物の準備や投与だけでは なく、処置や記録、家族のケアなど多岐にわたるため、様々な領域・分野に関す る自己研鑽が必要不可欠と考える。その中で、新しい薬や治療ガイドラインが頻 繁に公表されるため、最新の知識を持つ必要があるが、情報のアップデートが 追いつかない場合があるかもしれない。本セミナーでは、救急外来や院内急変 で遭遇することの多い、てんかん重積状態、アナフィラキシー、血圧低下、高カリ ウム血症、気管挿管時の薬の使い方に絞って解説を行う。日常的に救急外来に 関与していない看護師は基本的な注意点の確認、救急集中治療に精通する看 護師は基本的事項のおさらいとして、明日からの救急外来や院内急変の薬の対 応に活かせるよう、日々看護師とともに臨床に従事している薬剤師の実体験を踏 まえてお話したいと考えている。

feedback
Top