女性の一生は、性機能の面から胎生期、小児期、思春期、性成熟期、更年期、老年期に分けられる。本セミナーでは子育てが始まる「性成熟期」から閉経を迎 える「更年期」の女性が直面する「子育て」、「更年期障害」および「婦人科腫瘍」について薬理学的知見を交えて、解説していきたい。
19 歳から 45 歳ごろまでの女性が該当する「性成熟期」において、7~8 割の女性が一度は出産・子育てを経験する。子育ての際に度々悩まされるのが、夜間な どクリニックなどが開いていない時間帯の幼児・小児の発熱である。このような場合、一般的に解熱薬のアセトアミノフェンの使用が推奨され、15 歳未満の子供にはアスピリンやロキソニンなど非ステロイド性抗炎症薬(NSAIDs)含有総合感冒薬の使用は推奨されない。本セミナーでは小児に使えない薬とその理由につい て薬理学的に解説したい。
日本人女性の平均閉経年齢は 50.5 歳であり、閉経の前後 5 年間の 45 ~ 55歳ごろを「更年期」という。この時期にエストロゲン量の低下が原因となり、様々な 症状を呈する症候群のことを「更年期障害」という。更年期障害で認められるホットフラッシュなどホルモン減少が直接的な引き金になるものに対しては、エストロ ゲンのホルモン補充療法が、うつ様症状など精神神経症状には抗うつ薬・抗不安薬が、その他の様々な症状に対して漢方薬が、それぞれ用いられている。本セ ミナーでは更年期障害で使用される各薬物について薬理学的に解説し、更年期障害の治療に関する理解を深めたい。
性成熟期から更年期にかけて婦人科腫瘍の罹患者数が増加する。その中でも 症状が出にくいなどの理由から、卵巣癌の 5 年生存率は低いままである。現在の卵巣癌治療においては、TC 療法にアバスチンを加えたレジメンが一般的である が、BRCA1/2遺伝子の変異が認められた患者(卵巣癌患者の10%)には、劇的 な治療効果が報告されているPARP 阻害剤リムパーザの使用が最近、承認された。本セミナーでは卵巣癌の概要とリムパーザなど卵巣癌治療薬について薬理 学的に解説し、今後の卵巣癌治療の可能性について考えたい。
性成熟期・更年期は人生の折り返し地点であり、この時期を心身ともに健康に迎えることができるかどうかで閉経後の人生は大きく変化すると予想される。本セミナーが女性の性成熟期~更年期を健康で豊かに過ごすための一助となれば幸いである。
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