説得的メッセージが個人の態度変容に与える影響の背景にはさまざまな調整要因がかかわっているが,近年では特に,個人の認知的志向性とメッセージ内容とのマッチングの効果が注目されている(Clarkson et al., 2011; 樋口・桑山, 2011)。本研究ではそうしたマッチングの一つとして,活性化した個人の目標と説得的メッセージの中に含まれる遂行目標との合致,すなわち合目標性の効果に注目する。制御焦点理論(Higgins, 1998)では動機づけの志向性として促進焦点と予防焦点の2つを想定し,制御焦点によって説得力を感じるメッセージの表現形態が異なることが報告されている(Lee & Aaker, 2004)。ただし,制御焦点では,賛否の両論が成り立つような議論に対していずれの意見に賛成するかについての予測が十分にできないという問題が残されている。そこで本研究では目標内容の観点から,説得メッセージの効果を検討する。個人の重視する目標は複数あり(Schwartz, 1992),重視する目標と説得メッセージの中で強調される遂行目標との間に一致が見られなければ,十分な説得効果は得られないと考えられる。っまり,説得的メッセージの中で強調される遂行目標と個人の重視する目標とが内容的に合致している場合に,合目標的でない場合よりも説得効果が高まると予想される。説得的メッセージの題材としては朝食に関する論争を取り上げる。
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