医薬品産業における研究開発の不確実性はますます高くなり,新薬を上市まで導くことが難しくなっている。本研究では,国内の大手製薬企業の基礎研究者を対象に,基礎研究の成果獲得に影響する要因について仮説探索的な実証分析をおこなった。
分析の結果,第一に,基礎研究成果を臨床研究まで繋げるために,競合他社などの外部からの模倣を回避する有用な方法として,技術優位性の構築と組織能力の蓄積の 2 点に集約されること,第二に,模倣回避には,特許保護が重要であるということ,第三に,医薬品産業では,特許による保護を促す要因として,組織能力の蓄積よりも技術優位性が主体であるということ,但し,組織能力の蓄積は,技術優位性の構築に影響を与えることが示された。
これらの分析結果を踏まえての今後の研究に関する論点は,第一に,多数の産業を対象としたクロスセクションのデータ収集と分析である。第二に,より詳細に技術優位性を築く組織能力の蓄積に関する中身を探査すること。第三に,本研究で考慮されていない変数の検討,が挙げられる。
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