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吉冨 将隆
セッションID: P5-5-6
発行日: 2024年
公開日: 2025/01/24
会議録・要旨集
フリー
【はじめに,目的】
当院では2016年より義肢装具チームを組織し,その活動の一環と
して,脊椎圧迫骨折の診断直後から医師の指示に基づき,貸出用
のジュエット型体幹装具(以下ジュエット装具)を用いて早期離床を
促す取り組みを行っている.また,八木らによると椎体骨折数と日
常生活動作能力との関係について,椎体骨折数が多いほど,日常
生活動作能力が低くなるとされている.今回,可及的早期に装具
着用と離床を行っている当院においても同様の傾向があるのかを
比較検討した.
【方法】
ジュエット装具の貸出を行い,早期離床を行った40名(81.2±7.5
歳)を入院時に医師が新規脊椎圧迫骨折と診断した椎体数に応じ
て,単椎群(33名,81.4±7.5歳),2椎群(3名,78.0±7.3歳),
多椎群(4名,81.5±6.9歳)に分類し,『年齢』『入院日数』『入院時
運動FI M『』退院時運動FI M『』退院時歩行FI M『』離床までの日数』
等について後方視的に調査した.3群間における比較をKruskal-
Wallis検定にて行い,有意水準は5%とした.
【倫理的配慮,説明と同意】
ヘルシンキ宣言に則り,研究を実施した.また,個人情報管理に
は十分に配慮した.
【結果】
3群間において,『年齢』『入院日数』『入院時運動FIM』『退院時運動
FI M『』退院時歩行FI M『』離床までの日数』全ての項目で有意差は
認めなかった.
【考察】
八木らの報告では,単椎群と多椎群の比較において,受傷前と退
院時のBarthel Index(以下BI)が多椎群にて有意に低下していた.
当院においても同様の傾向があるのであれば,多椎群において『入
院時運動FIM』『退院時運動FIM』が低下していることが予想された
が有意な低下は認めなかった.一般的に,脊椎圧迫骨折患者に対
するリハビリテーションにおける問題点として,装具完成までの安
静期間や疼痛による臥床傾向による廃用が知られており,八木ら
もこの問題について言及している.また,早期離床の重要性につ
いては,大城らにより,入院から離床開始までの日数が少ないほど,
退院時BIが高いことが示唆されている.今回,3群間の『離床まで
の日数』に有意差は認められなかったため,椎対骨折数に関わら
ず早期離床が行えていたこととなり,固定性の強いジュエット装具
を早期装着し早期離床を行ったことは,椎体骨折数の多寡に影響
されることなく日常生活動作能力の改善が得られたことに繋がって
いると考える.
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酒井 克也, 細井 雄一郎, 田邉 淳平
セッションID: P5-6-1
発行日: 2024年
公開日: 2025/01/24
会議録・要旨集
フリー
【はじめに,目的】
遂行機能障害は脳卒中後51%以上が罹患し,日常生活の再獲得
に大きな影響を及ぼす.しかし,現状,脳卒中患者における遂行
機能障害に対する評価手法や有効な介入方法に関する報告は非常
に少ない.そこで本研究では脳卒中者における遂行機能障害に対
する評価や介入手法をスコーピングレビューを用いてマッピングす
ることを目的とした.
【方法】
スコーピングレビューはPRISMAとArkseyらのガイドラインに基
づき,実施した.検索に3つのデータベースを用い,それぞれのデー
タベースのアルゴリズムに基づき検索式を構築し,論文を収集した.
一次と二次スクリーニングは2名の査読者が独立して実施し,抄録
と本文から論文を特定した.なお,2名の査読者の意見が不一致
した場合は3人目の査読者が採択か否かを決定した.包含基準は
18歳以上の脳卒中患者における遂行機能障害に関するもの,言語
は英語のものとし除外基準は動物研究,ケーススタディとした.ス
クリーニング後に特定した論文内から,年齢,対象者数,評価手法,
介入方法,介入効果を抽出し,マッピングを行った.
【倫理的配慮,説明と同意】
スコーピングレビューは倫理審査を必要としないため,実施してい
ない.
【結果】
検索の結果,1131件の論文が抽出され,包含・除外基準に基づき,
最終的に27件の論文が特定された.研究デザインは無作為化比
較試験が81.5%,パイロットスタディが11.1%であった.遂行機
能障害に対して用いられていた評価はTrail Making Test(TMT)
Part Bが70.4%,ストループテストが44.4%であった.介入方法
は認知トレーニングとVirtual Reality(VR)がそれぞれ22.2%,
非侵襲的脳刺激が14.8%であった.
【考察】
本スコーピングレビューの結果,脳卒中患者に対する遂行機能障
害に対してTMT Part Bが最も多く用いられ,その要因として短時
間で評価可能であり,障害検出の感度が高い評価方法であること
が要因として考えられた.また,介入方法は認知トレーニングが
主に報告されていた.さらに,VRや非侵襲的脳刺激に関しては,
近年急速に発展した技術であり,論文数が増加している傾向を示
していた.本レビューで得られた知見は,脳卒中患者の遂行機能
障害に対するリハビリテーションにおける意思決定に寄与すると考
えられる.
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小林 美穂
セッションID: P5-6-2
発行日: 2024年
公開日: 2025/01/24
会議録・要旨集
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【はじめに,目的】
片麻痺者の摂食に纏わる後遺障害として,臨床上,咽頭期の嚥下
困難などの症状が多く見受けられるが,一方で咀嚼の力不足や咀
嚼の偏りなどの訴えも多く聞かれる.主に片側性顔面神経麻痺や
舌下神経麻痺による咀嚼筋の機能不全や咀嚼リズムの形成不全の
影響が示唆される.
咀嚼筋の咀嚼運動におけるリズム現象に関する研究は数多く発表
されているが,片麻痺患者の咀嚼リズムに関して検証しているもの
は少ない.先行研究として,表面筋電図を用い片麻痺者の麻痺側
と非麻痺側の咀嚼時の筋収縮動態を評価し,筋収縮の特徴を検証
した際に,片麻痺患者において麻痺側と非麻痺側にて咀嚼筋の非
収縮時間に特徴的な差異を見出すことができたため,片麻痺患者
の咀嚼筋の非収縮時間と咀嚼リズムの相関性を検証した.
【方法/症例紹介,評価,リーズニング/実践内容,方法】
【対象者】
顎関節症の既往がないない脳卒中片麻痺者を対象とした.左右の
咬筋(麻痺と非麻痺)
【方法】
咀嚼ガム1枚を測定前に約1分間咀嚼させ,硬さや形状を安定させ,
軟化したガムを麻痺側と非麻痺側にて30回咀嚼させ左右咬筋の筋
動態を観察した.
【計測】
表面筋電計(TS-MYOトランクソリューション社製)を用い, 麻痺側と
非麻痺側の咬筋起始部の筋活動持続時間と非活動時間を計測した.
【検証】
筋活動量と筋収縮時間を麻痺側・非麻痺側で比較し.統計処理に
は対応のあるt検定を用いた.
筋活動量の計測には積分値を用い咀嚼時(10回)の平均値を算出
し,筋収縮時間はベースラインの平均振幅±2SDを越えたところを
筋活動開始(終了)時間とした.
【倫理的配慮,説明と同意】
本研究はヘルシンキ宣言に基づき,研究内容を説明し同意を得ら
れたものを対象とした.
【結果/介入内容と結果】
非筋収縮時間において非麻痺側と比較し麻痺側に非筋収縮時間の
標準偏差の増加,すなわちバラつきを認めた.
【考察】
片麻痺者の咀嚼時に麻痺側の咀嚼筋において,非麻痺側と比較し
非筋収縮時間の標準偏差の増加を認めた.発症後の上下肢の運動
麻痺による不良姿勢から下顎が偏位し,顎関節機能障害により咀
嚼筋にも機能障害が生じることで,麻痺側に非筋収縮時間のバラ
つきが生じ,咀嚼リズムに左右差が生じていると考察した.
【結論】
片麻痺者の咀嚼時に麻痺側の咀嚼筋において,非麻痺側と比較し
非筋収縮時間の標準偏差の増加を認めた.
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山口 智広, 橋本 祥行
セッションID: P5-6-3
発行日: 2024年
公開日: 2025/01/24
会議録・要旨集
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【はじめに】
排泄自立の有無が退院先の帰結に影響し,排泄の介助は在宅介護
の中でも負担が強いとの報告がある.片山らはトイレ移乗,トイ
レ動作,排尿管理,排便管理(以下排泄動作)の自立には認知機
能が影響していると報告している.認知関連行動アセスメント(以
下CBA)は失語症などの影響により改定長谷川式簡易知能評価ス
ケール(以下HDS-R)等の検査が困難な症例でも行動観察から認
知機能の評価が可能であるため汎用性も高い.本研究の目的は
CBAが排泄動作の予後予測に有用かを検討し,カットオフ値を検
討することである.
【対象・方法】
対象は初台リハビリテーション病院を退院した片側性テント上病
変を有し,入院時に排泄動作のいずれかに介助を必要とする(FIM
5点以下)患者( 男性47名, 女性32名, 平均年齢66.5±14.59
歳).退院時の排泄動作が自立群と非自立群に分け,入院時のFIM
(合計,運動合計,認知合計),SIASの非麻痺側上下肢,CBA,
Bedside Mobility Scale(以下,BMS),年齢,性別をt検定,
Mann-Whitney U検定,χ検定で群間比較を行った.有意差の
ある項目を独立変数とし,排泄動作の自立を目的変数とし多変量
解析を行った.各統計処理において有意水準は5%未満とした.
解析ソフトはEZR Ver1.56を使用した.
【倫理的配慮,説明と同意】
本研究は筆頭演者が所属する施設の倫理員会にて承認を得た(承
認番号2024‐03)
【結果】
単変量解析ではCBA,BMS,FIM合計,認知,運動項目,SIAS
の非麻痺側上・下肢筋力,年齢で有意差をみとめた.多変量解析
ではCBAと年齢が抽出された.ROC曲線でCBAのカットオフ値
は20点(感度0.793,特異度0.780)と算出された.
【考察】
排泄動作自立の可否にCBAが関与しており,予後予測をする因子
としてCBAの有用性が示唆された.認知機能が排泄動作自立の可
否に影響する報告はされており,今回もその結果を支持する結果
になったと考えられる.失語症や意識障害の影響でHDS-Rなどの
神経心理学的検査が行えない症例であっても回復期病棟入院時の
CBAが20点以上であれば排泄動作自立となる可能性があると考え
られる.一方,CBAは6項目に細分化され,項目による偏りが予
後予測の精度に影響している可能性が考えられるため,項目間に
差がないかなどを検討する必要がある.また,年齢は脳卒中の機
能予後に影響していることから今回の結果でも抽出されたと考え
る.
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小林 優介, 林 祐介, 小松 慎弥, 山﨑 皓太, 山本 尚明, 斉藤 哲平, 戸田 瑞貴, 佐藤 和命, 羽鳥 浩三, 藤原 俊之
セッションID: P5-6-4
発行日: 2024年
公開日: 2025/01/24
会議録・要旨集
フリー
【はじめに,目的】
脳卒中片麻痺患者の歩容異常は,慢性期においても残存し,生活
の質の低下や転倒に繋がる恐れがある.特に,遊脚期の歩容異常
は,つまずきによる転倒に関連する歩容異常であり,慢性期にお
いてはその種類と成因が検討されている.しかし,急性期におい
ては歩容異常の種類に関しても十分に検討されていない.そこで,
急性期脳卒中片麻痺患者における遊脚期の歩容異常の種類と頻度
を検討した.
【方法】
対象は2018年3月から2024年3月までに初発一側大脳半球脳卒
中で当院に入院し,片麻痺を認め,歩行許可時に徒手介助を要さ
ずに歩行が可能 (Ambulation Independence Measureスコア
5以上)かつ歩行許可時から1週以上の追跡調査が可能であった患
者のうち,合併症等の除外基準該当例を除いた25例(67.7±12.6
歳)とした.測定時期はbaseline(歩行許可日,発症後4.3±1.5日)
と退院時(baselineから2週後ないしは退院時,発症後13.4±2.6日)
とし,歩容はGait Assessment and Intervention Too(l G.A.I.T.)
の遊脚期項目を用いて評価した.解析は,両時点におけるG.A.I.T.の
各項目の失点率(失点人数を全対象者数で除した値)を検討した.
【倫理的配慮,説明と同意】
本研究計画は,対象者に紙面にて説明・同意を得て,当院の倫理
委員会の承認を受けた.
【結果】
baselineにおいて,1例以上が失点を認めた項目は8項目であり,
失点率が高い順で示すと,遊脚終期の膝関節伸展不足(88%),
遊脚期の足関節背屈不足(80%),遊脚期の股関節屈曲異常
(44%),遊脚期の体幹麻痺側側屈(28%),遊脚終期の骨盤前方
回旋不足(28%),遊脚期の股関節外旋(24%),遊脚中期の膝関
節屈曲不足(24%),遊脚期の骨盤挙上(4%)であった.退院時に
おいて,失点を認めた項目は6項目であり,失点率が高い順で示
すと,遊脚終期の膝関節伸展不足(92%),遊脚期の足関節背屈
不足(68%),遊脚中期の膝関節屈曲不足(16%),遊脚期の股関
節屈曲異常(12%),遊脚期の骨盤前方回旋不足(8%),遊脚期の
股関節外旋(8%)であった.
【考察】
発症早期に歩行が可能な急性期脳卒中片麻痺患者において,遊脚
期に認める多くの跛行のうち大半は約2週以内に減少または消失し
た.ただし,遊脚終期の膝関節伸展不足と遊脚期の足関節背屈不
足に関しては半数以上と高頻度に合併し,かつ,2週以内に消失
しにくい跛行であり,歩行評価や歩行練習の標的となり得る可能
性がある.
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田中 直樹, 矢野 博明
セッションID: P5-6-5
発行日: 2024年
公開日: 2025/01/24
会議録・要旨集
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【はじめに】
我々はこれまでに歩行感覚提示装置を用いた歩行トレーニング(以
下GTLI)の慢性期脳卒中患者に対する歩行速度の改善効果を報告
した.しかしながら,歩行リハビリテーションの対象となりやすい
回復段階の脳卒中患者に対するGTLIの効果は明らかにできていな
い.そこで,本研究は回復段階にある脳卒中患者を対象に歩行感
覚提示装置を用いた歩行トレーニングの効果を検証することを目的
とした.
【方法】
対象者は発症から6 ヵ月以内の自立歩行不能な回復期脳卒中患
者24名とし,ランダムにGTLI群と通常歩行トレーニング群(以下
CGT群)に分けた.トレーニングはそれぞれ1回20分,週5回4週
間の歩行トレーニングを実施した.歩行トレーニングは,GTLI
群では筑波大学システム情報系が開発した歩行感覚提示装置
GaitMaster 6を用いて歩行トレーニングを実施し,CGT群では
従来から一般的に行われている平行棒などを使用した歩行トレー
ニングやステッピング練習などを実施した.評価は10m歩行速度,
6分間歩行試験,麻痺側・非麻痺側下肢筋力を測定した.歩行速
度と6分間歩行距離は初回評価時,トレーニング5回終了後,トレー
ニング期間終了時に測定した.これらの測定値は初回評価時から
の変化量を算出し,GTLI群とCGT群で比較した.下肢筋力は初
回評価時とトレーニング期間終了時に測定し,各群においてトレー
ニング期間前後で比較した.
【倫理的配慮】
本研究は筆頭演者が所属する施設の研究倫理審査委員会の承認
を得て実施した.
【結果・考察】
研究終了時の歩行速度の変化量は,GTLI群0.5±0.4m/s,
CGT群0.3±0.2m/s,歩行耐久性の変化量は,GTLI群114.0±
58.6m,CGT群で47.9±42.3mとなりGTLI群で有意に高い改善
が認められた.筋力では,GTLI群の麻痺側股関節屈曲(研究開始
時5.8±4.3kg,研究終了時8.9±7.3kg)と麻痺側膝関節屈曲(研
究開始時4.8±5.7kg,研究終了時6.6±4.9kg)で有意な改善が認
められた..このことから,歩行感覚提示装置を用いた歩行トレー
ニングは,従来の歩行トレーニングよりも麻痺側下肢筋力を増強
させ,歩行速度や歩行耐久性などの歩行能力を改善させる効果が
あることが示唆された.
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森山 義尚, 島村 亮太, 廣澤 全紀, 山川 涼太, 矢田 拓也, 町田 颯斗
セッションID: P5-6-6
発行日: 2024年
公開日: 2025/01/24
会議録・要旨集
フリー
【はじめに,目的】
座位下肢荷重率は高い信頼性や,移乗や歩行能力,膝伸展筋力と
の相関が報告されている.しかし,回復期脳卒中片麻痺患者を対
象とした座位下肢荷重率の継時変化について報告はなく,座位下
肢荷重率の改善がバランスや歩行能力の改善と関連するかは不明
である.本研究の目的は回復期脳卒中片麻痺患者の座位下肢荷重
率とバランスや歩行能力との関連,座位下肢荷重率変化量とバラ
ンスや歩行能力変化量との関連を検討することとした.
【方法】
対象は回復期病棟入院時に歩行非自立の初発脳卒中片麻痺患者
31名とした.除外基準は50歳未満の者,運動機能に影響する既往・
合併症を有する者,病前歩行困難者,何らかの要因による評価困
難者とした.各対象者の入院時評価,入院1ヶ月評価より,座位
下肢荷重率,運動麻痺(Brs; Brunnstrom Recovery Stage),
感覚障害,片脚立位時間,バランス能力(BBS; Berg Balance
Scale),歩行能力(FAC; Functional Ambulation Categories)
を解析項目として抽出した.そして入院時,入院1ヶ月時点の座位
下肢荷重率と他項目の相関分析,および入院時から入院1ヶ月ま
での座位下肢荷重率変化量と他項目変化量に対し相関分析を行っ
た.相関分析は年齢,性別を共変量とし調整した.有意水準は5%
とした.
【倫理的配慮,説明と同意】
本研究はヘルシンキ宣言に則った研究であり,研究開始に当たり
所属施設の倫理委員会の承認を得た.研究対象者には研究内容,
目的について十分に説明し,書面にて同意を得た後にデータの抽
出,解析を行った.
【結果】
座位下肢荷重率と他項目との相関分析では(入院時/1ヶ月),片脚
立位(r=0.43/r=0.55),BBS(r=0.61/r=0.60),FAC(r=0.50/
r=0.63)に有意な相関を認めた.入院時から入院1ヶ月までの
座位下肢荷重率変化量と他項目変化量との相関分析では,BBS
(r=0.52),FAC(r=0.66)に有意な相関を認めた.その他有意な
相関は認めなかった.
【考察】
本研究は先行研究を支持し,座位下肢荷重率の高い者はバランス,
歩行能力が高いという結果を得た.座位下肢荷重率は座位での評
価だが,下肢に荷重をかける点は立位バランス制御や歩行と共通
するため,有意な相関を認めたと考えた.さらに本研究は変化量
の観点から,回復期脳卒中片麻痺患者において座位下肢荷重率の
改善の大きい者は,バランス,歩行能力の改善も大きいという知
見を得ることができた.
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瀧原 純, 初鹿 大祐
セッションID: P6-1-1
発行日: 2024年
公開日: 2025/01/24
会議録・要旨集
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【はじめに】
変形性膝関節症の手術の一つにOpening Wedge High Tibial
Osteotomy(以下OWHTO)がある.OWHTOは遠位骨片に脛骨
粗面を連続させて行う関節温存術であり,OWTHO後の課題の一
つに膝蓋大腿関節症の発症がある.その課題を解決する術式とし
て近位骨片に脛骨粗面を連続させて行うOpening Wedge Distal
Tuberosity Osteotomy(以下OWDTO)も施行されている.術後
早期はOWHTOよりもOWDTOの方が膝関節伸展運動において慎
重な後療法を必要とするため,術後の機能や能力面でOWHTOと
OWDTOに差が生じる可能性がある.OWHTOとOWDTOの術後
の機能や能力面について比較検討した報告を渉猟し得なかった.
【倫理的配慮】
研究はヘルシンキ宣言に基づき行われた.対象者には事前に方法・
目的・倫理的配慮を説明し書面にて同意を得た.また,同意の撤
回がいつでも可能なことを説明した.
【目的と方法】
OWHTOとOWDTOを施行した症例の身体機能,自覚症状,活
動性について術後6 ヶ月で比較検討することを目的とした.対象は
2016年10月から2021年10月までの92例のうち,重症度を合わ
せるためKellgren-Lawrence分類2のみの38例とした.検討項
目は膝伸展屈曲可動域,最大歩行速度,膝関節伸展筋力,knee
society scoreで評価した膝の症状と活動性とした.最大歩行速
度は14mの歩行路をできるだけ速く歩くように指示した時の中間
10mに要した時間から算出した.膝関節伸展筋力は多用途筋機
能評価運動装置(酒井医療株式会社,BIODEX System3)にて
膝関節70°屈曲位の最大等尺性膝伸展筋力を測定した.統計解析
はMann-WhitneyのU検定を用いた.統計処理はIBM社製SPSS
statistics Version 21を使用し有意水準5%とした.
【結果】
最大歩行速度のみ有意差を認めHTOの方がDTOよりも速かった.
【考察】
OWHTOは脛骨骨切り部を跨いだ膝蓋腱が開大部の圧着に働き
骨癒合を促進する効果が期待できる.一方,OWDTOは脛骨骨切
り部が膝蓋腱下部に設定されるため,骨癒合促進効果が期待でき
ず,脛骨粗面前方から脛骨後方までbicorticalにスリュー固定さ
れる.この点で,術後早期はOWHTOよりもOWDTOの方が膝関
節伸展運動において慎重な後療法を必要とする.今回の検討で,
術後6 ヶ月では膝伸展筋力や膝の症状,活動性に差はなかった.
歩行速度はHTOの方がDTOよりも若年者が多いことが影響した可
能性がある.今後,評価時期や対象数を増やすことを検討してい
く必要がある.
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西元 淳司, 倉橋 陸光, 玉利 光太郎, 田中 亮
セッションID: P6-1-2
発行日: 2024年
公開日: 2025/01/24
会議録・要旨集
フリー
【はじめに,目的】
近年,治療効果を判定する上で統計学的有意差ではなく,患者が
症状を許容できる状態(Patient Acceptable Symptom State:
PASS)を考慮して評価することが重要視されている.PASSは患
者自身が良好な症状であると感じているか否かを判定するアウトカ
ムツールである.人工股関節全置換術(THA)後のHip disability
and Osteoarthritis Outcome Score(HOOS)のPASS閾値の
報告は散見されるが,下位尺度別には明らかになっておらず,術
後1 ~ 2年といった長期的なPASS閾値のみが明らかとなっている.
本研究の目的は術後短期間のHOOSのPASS閾値を下位尺度別に
明らかにすることである.
【方法】
研究デザインは前向きコホート研究である.対象は変形性股関
節症に対し,片側THAを施行された患者とした.除外基準は肥
満class III,関節リウマチ,認知症,精神疾患,脳卒中,術後
合併症(深部静脈血栓,骨折),THA再置換とした.術後3 ヶ月
時点においてHOOSの下位尺度別に11件法のGlobal Rating of
Change(GRC)スケールを用いてPASSを評価した.GRCスケー
ルで+2以上を選択した場合をPASS達成群,+1以下を選択した場
合をPASS非達成群に分類した.その後に,HOOSとGRCスケー
ルによって2値化したPASS達成群,PASS非達成群で下位尺度
別にReceiver Operating Characteristic curveを作成した.
PASS閾値はYouden indexを用いて算出した.
【倫理的配慮,説明と同意】
本研究は所属大学倫理委員会の承認を得て実施した(承認番号
2022-109).対象者には紙面および口頭にて研究の目的・趣旨を
説明し,署名にて研究への参加同意を得た.
【結果】
65例のTHA患者が対象となった.術後3 ヶ月時点におけるHOOS
の下位尺度別のPASS閾値は,症状42.50%,痛み62.50%,日
常生活63.97%,スポーツ/レクリエーション40.63%,生活の
質53.13%であった.曲線下面積は,症状0.891(感度1.000,
特異度0.750,p=0.009), 痛み0.936( 感度0.966, 特異度
0.833,p<0.001),日常生活0.952(感度0.833,特異度1.000,
p=0.001),スポーツ/レクリエーション0.763(感度0.804,特異
度0.684,p=0.001),生活の質0.903(感度0.797,特異度0.833,
p=0.001)であった.
【考察】
本研究の強みは術後短期間におけるHOOSの下位尺度別のPASS
閾値が明らかになった点である.THA患者が許容できる症状の状
態を早期に判定できることは臨床家と患者の双方にとって有益であ
り,臨床現場に大きく貢献できる可能性がある.
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倉橋 陸光, 西元 淳司, 新井 智之
セッションID: P6-1-3
発行日: 2024年
公開日: 2025/01/24
会議録・要旨集
フリー
【はじめに,目的】
TKA後患者では,過活動と低活動を繰り返すような活動の変動が
疼痛を増強させることから,活動ペーシングが重要である.活動
ペーシングは1日の身体活動量と日数との関係を示す指標であり,
術後日数に応じて段階的に活動を向上するペーシング指導が望ま
しいとされている.本研究では,TKA術後3 ヶ月間における活動
ペーシングと歩数が膝関節機能障害へ与える影響を検討した.
【方法】
対象は片側TKA患者12名(平均年齢72.7±8.1歳)とした.術前と
術後3 ヶ月のKOOS,術翌日から3 ヶ月間の歩数を測定した.歩
数は7日間の移動平均を算出し,術後日数との関係をSpearman
の順位相関係数(r)で解析し,p<0.05かつr=0.7以上の者をGood
pacing群,それ未満の者をBad pacing群に分類し,KOOSと歩
数の経過を調査した.
【倫理的配慮,説明と同意】
本研究は,筆頭演者が所属する施設の研究倫理委員会の承認を
得た.対象者に対しては委員会で承認を得た説明文書を用いて説
明し,書面にて同意を得た.
【結果】
Good pacing群6名(r=0.87),Bad pacing群6名(r=0.51)で
あった.2群のKOOSの術前と術後3 ヶ月の平均スコア(Good
pacing群/ Bad pacing群)は,症状:術前(41.7%/57.1%)/術
後3 ヶ月(50.6%/76.2%),痛み:術前(32.0%/45.4%)/術後
3 ヶ月(59.3%/78.3%),日常生活:術前(55.1%/63.5%)/術後
3 ヶ月(74.0%/86.3%),レクリエーションおよびスポーツ:術前
(10.8%/15.0%)/術後3 ヶ月(40.0%/40.0%),生活の質:術前
(25.0%/21.9%)/術後3 ヶ月(39.6%/58.4%)であり,歩数は術
後1ヶ月(1008歩/1515歩)/術後2 ヶ月(2534歩/2496歩)/術
後3 ヶ月(3475歩/2455歩)であった.
【考察】
本研究の結果,Good pacing群は,術後経過日数に伴い歩数が
増加したが,術後3 ヶ月のKOOSの症状,痛み,日常生活,生
活の質の結果が不良であった.一方Bad pacing群は,3 ヶ月の
KOOSの結果がGood pacing群に比べ良好であったが,歩数が
2 ヶ月目以降で増加しなかった.Good pacing群で疼痛などの症
状の改善が少なかったことから,良好なペーシングが得られていて
も,歩数が多すぎることが症状の改善に悪影響を及ぼす可能性が
示唆された.
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和田 晃平, 倉坪 亮太, 金子 敬弘, 清水 義仁, 田中 さえ子, 關口 治
セッションID: P6-1-4
発行日: 2024年
公開日: 2025/01/24
会議録・要旨集
フリー
【はじめに,目的】
身体活動量は,疾病発生などと関連する.変形性膝関節症(膝
OA)患者においては,健常者と比較して身体活動量が低く,人工
膝関節置換術を施行しても術前と比較して術後1ヶ月の身体活動
量は増加しない.そのため,人工膝関節置換術後の身体活動量を
増加させる試みが求められている.近年,疼痛に影響を与える心
理的要因の一つとして,破局的思考が着目されている.この破局
的思考は,身体活動量の低下にも影響を及ぼすと考えられるが,
人工膝関節置換術後の身体活動量と身体機能および疼痛・破局
的思考の関連性は不明である.本研究の目的は,人工膝関節置換
術後2週の身体活動量と身体機能および疼痛・破局的思考の関係
性を明らかにすることである.
【方法】
研究デザインは横断研究で,対象は膝OAに対する人工膝関節置
換術を施行した30例(年齢76±8歳,全置換術18例,単顆置換術
12例)である.測定項目は,身体活動量,身体機能および疼痛・
破局的思考とし,術後2週目に測定を行った.身体活動量は,運
動強度3METs未満(light physical activity:LPA)および3METs
以上(moderate-to-vigorous physical activity:MVPA)の時間
を算出した.身体機能は,5回立ち上がり時間(5 STS),10m最
大歩行速度とした.疼痛はVisual Analogue Scale(VAS)を,破
局的思考はPain Catastrophizing Scale(PCS)を用いた.統計
学的検討には,Spearmanの順位相関係数を用いた.
【結果】
LPAは641.7±93.9分/日,MVPAは4.0±3.8分/日であった.
MVPAと5STS(r=-0.43,p<0.05)および歩行速度(r=0.45,
p<0.05)に有意な相関関係があったが,MVPAとVAS・PCSに相
関関係はなかった.LPAと身体機能およびVAS・PCSに相関関係
はなかった.
【考察】
3METs以上の活動には, 起立や歩行は不可欠であるため,
MVPAと5STSおよび歩行速度は相関関係を示したと考えられた.
一方で,本研究は入院中に行っており,膝関節への負荷が高い階
段昇降などの実施頻度は多くない.そのため,身体活動量と疼痛・
破局的思考は関連しなかったと考えられた.
【結論】
術後2週の身体活動量は,起立および歩行能力と相関関係であり,
疼痛・破局的思考は関係しなかった.
【倫理的配慮】
当院の倫理審査委員会の承認受けて実施した(番号 S2022017).
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北村 智紀, 鳥山 貴大, 小川 翔平, 熊谷 夏海, 櫻井 利康
セッションID: P6-1-5
発行日: 2024年
公開日: 2025/01/24
会議録・要旨集
フリー
【はじめに,目的】
大腿骨近位部骨折(以下,HF)患者では,術後早期の離床や移動
能力が短期的な歩行能力と関連することが示されている.しかし,
身体活動に焦点を当てた報告は少なく術後早期の身体活動と短期
的な歩行能力の関係は不明である.したがって,本研究の目的は
HF患者における術後3日目の身体活動と術後2週時の歩行能力の
関係を明らかにすることである.
【方法】
研究デザインは後向き観察研究とした.対象は2024年1月から4
月に当院に入院したHF患者23例とした.適格基準は65歳以上,
骨脆弱性骨折,手術を施行,受傷前に歩行自立とした.除外基準
は他部位の骨折を合併,運動麻痺の既往,荷重制限とした.調
査項目は年齢,性別,骨折型(頸部骨折・転子部骨折),術式(骨
接合術・人工骨頭置換術),Mental State Examination(以下,
MMSE),術後3日間のCumulated Ambulation Score(以下,
3-day CAS),術後3日目の身体活動,術後2週時の歩行能力と
した.身体活動の計測には3軸加速度計(オムロンHJA-750C)
を使用し,術後3日目(24時間)の1.6METs以上の活動を計測し
た.統計解析は術後2週時における歩行能力の群間比較をMann-
WhitneyのU testまたはχ2検定を実施した.統計ソフトはSPSS
を使用し,有意水準は5%とした.
【倫理的配慮,説明と同意】
本研究はヘルシンキ宣言に基づいて実施した.個人情報は匿名化
しプライバシーを保護した.
【結果】
対象者の年齢は88.0±5.6歳,性別は男性4例,女性19例,骨折型
は頸部骨折14例,転子部骨折9例であった.術後2週時に歩行が
自立していたのは9例(以下,歩行自立群),自立していなかったのは
14例(以下,非自立群)であった.歩行自立群では年齢が低く(r=0.48,
p=0.02),MMSEの点数が高く(r=0.70,p<0.01),身体活動が多
かった(r=0.53,p=0.01).一方,性別(φ=0.10,p=0.51),骨折
型(φ=0.09,p=0.49),術式(φ=0.08,P=0.50),3-day CAS
(r=0.44,p=0.05)には有意差を認めなかった.
【考察】
HF患者では身体活動が術後2週時の歩行能力に関係していた.一
方で3-day CASは術後2週時の歩行能力に関係しなかった.以上
のことから,術後早期に短期的な歩行予後を予測するには“できる
活動”よりも実際に“している活動”を評価することが重要だと考え
た.本研究の限界は単変量解析に留まっている点である.今後は
多変量解析を用いて身体活動が短期的な歩行能力に関連するかを
明らかにする必要がある.
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~コンコーダンスモデルを通じて得られた1考察~v
廣瀬 アヤ, 阿部 肇
セッションID: P6-2-1
発行日: 2024年
公開日: 2025/01/24
会議録・要旨集
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【目的】
コンコーダンスモデルは「服薬に関し患者の考えを尊重する話し合
いを経て,患者と医療者が到達する合意」と定義され,患者主体型
医療の重要性が認識される昨今,薬剤師を中心に展開されている.
一方,従来の理学療法は医療者が主導し患者は受け取るというコ
ンプライアンスの概念が残っており,視座の転換と具体的な方策
検討が必要であると考えた.
今回,類稀な自己変革への強い意志を持ち,外来診療終了後2年
間に渡り主体的に理学療法を実践し続けた症例を経験した.その
原動力を解明し,一般患者への臨床適応の方策を探る事を目的と
した.
【症例】
50歳代男性,研究職.脛骨高原骨折術後5 ヶ月時点でHohlの治
療成績判定基準「良」,真田らの学習意欲尺度最高得点.
【介入内容】
外来診療終了後の機能改善を目的としたホームエクササイズ(以下
Home ex.)を,コンコーダンスモデルに準じて患者と協議し,合
意を得た上で指導した.
【臨床経過】
学習意欲が高いため歩行動画供覧後の問題提起に対し,自主的に
解剖学,運動学の学習を行いレポート提出してきた.更に疾患に
関する知識を元に実行の意義への理解が深まり,治療方針の決定
場面では活発なディスカッションが可能であり,医療者との合意
が容易となった.Home ex.を開始すると,多忙のため時間的制
約が実行の阻害要因となっており,自己解決方法として実行可能
性が高い日常生活動作に取り込み習慣化する事で,機能改善に有
効な実施量確保と継続を容易にした.
結果,実行時間は1日30分から120分に拡大し,開始3 ヶ月で「優」
となり24 ヶ月経過の現在も自主的に継続している.
【考察】
患者の主体性に必要な条件は,問題点を自己解決し得る疾患に関
する十分な知識を有する事.実行可能性が高い内容と方法である
事が分かった.
よって一般患者への方策はデジタル教材を活用し個々の理解度に
応じて疾患に関する学習意欲を引き出す為の教示をする事.患者
背景と生活習慣を考慮した日常動作で,毎日気軽に行える理学療
法として提案する事とし,展開を進めている.
【結論】
実行の意義理解を促し,日常生活を通じて継続的に行える理学療
法を提案する事は,患者の主体性と意欲を導く原動力になる可能
性があり,この実現には医療者側の指導に対する意識変革が重要
であると考えられた.
【倫理的配慮と同意】
倫理委員会の承認を得て患者に文書で説明し同意を得た.
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熊谷 夏海, 鳥山 貴大, 北村 智紀, 櫻井 利康
セッションID: P6-1-6
発行日: 2024年
公開日: 2025/01/24
会議録・要旨集
フリー
【はじめに,目的】
大腿骨近位部骨折(以下,HF)患者では,骨折型や術後の骨折部
の安定性を考慮し,術後に荷重制限が必要になることがある.術
後の荷重制限は退院時の運動機能に影響することが予測される
が,一定の見解は得られていない.本研究では,急性期と回復期
のケアミックス病院におけるHF患者の術後荷重制限が運動機能の
回復に与える影響について検討した.
【方法】
研究デザインは後ろ向き観察研究とした.2019年1月~ 2023年
12月に当院で加療したHF患者は1662例であった.そのうち,保
存加療68例を除き,術後に荷重制限が設けられた117例を対象と
した.年齢の影響を考慮し75歳以上(以下,高齢群:58例)と74
歳未満(以下,若年群:59例)に分類した.対照群の抽出には傾向
スコア・マッチングを用いた.背景因子は年齢,性別,MMSE,
入院前M-FIMを調整した.調査項目は術後1週M-FIM,退院時
M-FIM,入院期間とした.統計解析は高齢群と若年群のそれぞ
れに対して,荷重制限の有無による群間比較をMann-Whitney
U検定を用いて実施した.
【倫理的配慮,説明と同意】
本研究はヘルシンキ宣言に基づいて実施した.個人情報は匿名化
しプライバシーを保護した.
【結果】
傾向スコア・マッチングの結果,高齢群55例,若年群27例ずつ
がマッチングされた.群間比較の結果を荷重制限有り/荷重制限
無しの順に示す.高齢群の術後1週M-FIMは25.0 [18.5-33.0] 点
/35.0 [22.5-47.5] 点であった(p=0.02).退院時M-FIMは37.5
[22.2-58.5] 点/43.0[ 24.0-72.5] 点であった(p=0.25).入院
期間は36.0 [23.5-49.5] 日/21.0 [18.5-31.0] 日であった(p<
0.01). 若年群の術後1週M-FIMは70.0 [51.5-75.5] 点/69.0
[48.5-84.5] 点であった(p=0.55).退院時M-FIMは82.0 [77.5-
85.5] 点/84.0 [80.0-88.0] 点であった(p=0.22).入院期間は
26.0 [18.0-42.5] 日/ 21.0 [16.0-29.5] 日(p=0.09)であった.
【考察】
HF患者の術後の荷重制限が運動機能の回復に与える影響を調査
した.高齢群では荷重制限が設けられることで運動機能の回復が
遅れ,入院期間が延長した.一方,若年群では荷重制限の影響は
なかった.つまり,HF患者における術後の荷重制限は高齢群の運
動機能の回復に影響するが,若年群には影響しないことが判明し
た.今回の結果は,術後リハビリテーションや退院マネジメントを
実施する上で有益な情報となった.
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久保 大輔, 大川 竜矢, 金子 真人
セッションID: P6-2-2
発行日: 2024年
公開日: 2025/01/24
会議録・要旨集
フリー
【はじめに,目的】
Evidence-based Practice(EBP)に対する態度は,多面的な心
理的要因である.EBPに対する否定的な態度は,診療ガイドライ
ン(CPG)の活用を阻害する医療者の心理的要因の一つであるが,
過去の報告においてEBPに対する態度の多面性は十分に考慮され
ていない.本報告の目的は,CPGの活用を支援する教育の前後に
おける理学療法士(PT)のEBPに対する態度を多面的に検討するこ
とであった.
【症例紹介,評価,リーズニング】
対象者は,20歳代の女性PT2名であった.本教育の期間は,
2020年4月~ 2022年3月であった.教育形態は,講義形式と
ワークショップ形式とした.教育内容は,EBPの5ステップ([1]
疑問の定式化,[2]情報収集,[3]批判的吟味,[4]適用,[5]評
価)に沿って行われた.[1]疑問の定式化の学習項目には,CPG
とEBPの重要性,臨床疑問の種類,実症例に基づいたPatient-
Intervention-Comparison-Outcomeへの定式化が含まれた.
[2]情報収集には,文献データベースの検索法(検索コマンドやフィ
ルター機能等)が含まれた.[3]批判的吟味には,系統的レビュー,
無作為化比較対照試験,エビデンス総体の確実性,バイアスリス
クの評価が含まれた.[4]適用では,意思決定の種類,共同意思
決定が含まれた.
EBPに対する態度は, 日本語版Evidence based practice
attitude scale(EBPAS-J)を使用して,介入前,介入後に測定した.
EBPAS- J は,「要請」,「魅力」,「開放性」,「かい離性」の4 項目から
構成される質問紙であり,点数が高いほどEBPに対する態度が肯
定的であることを示す.
【倫理的配慮,説明と同意】
本報告おいて,対象者にはヘルシンキ宣言に基づき,個人情報は
特定できない形式で発表することを十分に説明し,書面にて同意
を得た.
【結果】
EBPAS-Jの結果を介入前-介入後の順に示す.合計点は,A氏:
8.9-10.8,B氏:9.8-9.3であった.要請は,A氏:2.0-2.7,B氏:
2.7-1.7であった.魅力は,A氏:2.8-3.3,B氏:2.3-2.3であった.
開放性は,A氏:1.3-2.0,B氏:1.5-2.0であった.かい離性は,
A氏:2.8-2.8,B氏:3.3-3.3であった.
【考察】
介入後において,新しい治療を使用する意欲の程度を示す「開放性」
は,2名のPTに肯定的な変化を認めた.本教育はクライエントの
価値観やニーズを考慮し,CPGやEBPを適合するための基礎的な
知識を含めていたことが,「開放性」の肯定的な変化の理由の一つと
して考えられた.
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鈴木 幸宏
セッションID: P6-2-3
発行日: 2024年
公開日: 2025/01/24
会議録・要旨集
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【はじめに】 新人指導者は,指導者一人の負担が大きい・経験年数が浅い・ 経験的指導など多くの問題点を抱えており,新人指導者を支援 することが重要である.そこで,当クリニックで行ったGoogle classroomを利用した新人指導者支援の実際を紹介する. 【方法】 対象は,新人の指導を担当した経験年数3年目と9年目の理学療 法士2名とした.令和5年4月から令和6年3月までの12 ヶ月間, Google classroomを利用した新人指導者支援を実施した.指導 開始前にポートフォリオ・自己調整学習・経験学習などの教育学研 修を行い,開始時に指導者のキャリアプランのために1年後と5年 後の目標を記載する「ゴールシート」,3 ヶ月ごとに個人目標と指導 目標設定のための「目標シート」を作成した.1ヶ月ごとに目標のス トレッチ・進捗確認と相談・内省の促進・ポジティブ・フィードバッ クの4因子12項目からなる「経験学習チェック」をチェックし1ヶ月 間の指導の振り返りを行った.新人指導者の評価として4 ヶ月ごと に効果的な教育支援・精神的支援・専門職のモラル・モデル機能・ キャリア支援の5因子32項目からなる「理学療法士のメンタリング 行動尺度」を利用した. 【倫理的配慮】 対象者に口頭にて同意を得て,ヘルシンキ宣言に基づきプライバ シーの侵害がないように十分配慮した. 【結果】 経験年数3年目の指導者の理学療法士のメンタルリング行動尺度は (4 ヶ月目:79点,8 ヶ月目:68点,12 ヶ月目:76点)であった. 経験年数9年目の理学療法士のメンタルリング行動尺度は(4 ヶ月 目:73点,8 ヶ月目:68点,12 ヶ月目:76点)であった. 【考察】 両名共に,8 ヶ月目に理学療法士のメンタリング行動尺度の点 数が低下した.最初の4 ヶ月は新人教育指導するための時間が 十分に与えられた中での新人指導を行うが,4 ヶ月を過ぎてから は,新人も単位を算定するようになり,通常業務に加えての新人 指導となるため,指導者自身が十分に指導しきれなかったのでは ないかと考える.12 ヶ月目で向上したのは,通常業務の中で新 人指導との両立ができてきたからではないかと考える.Google classroomを利用することで,振り返りの習慣化や定期的な評価 による指導を客観視することができると考える.以上のことより, Google classroomは新人指導者の支援の一助になると考える.
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山根 達也, 新宮 かおり, 竹渕 謙悟, 安齋 一也, 浅倉 靖志, 樋口 大輔, 佐藤 江奈, 篠原 智行
セッションID: P6-2-4
発行日: 2024年
公開日: 2025/01/24
会議録・要旨集
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【はじめに,目的】
群馬県の新型コロナウイルス感染症流行期における臨床実習指導
者講習会(以下,講習会)の講習形式は,全国ならびに県内の感染
状況を鑑みて,各開催校が対面形式(以下,対面)かオンライン形
式(以下,オンライン)かを判断していた.今後のより良い講習会の
開催を考慮するうえでの判断資料とするためにアンケート調査を実
施した.
【方法】
対象は令和4年度(10回分)および令和5年度(8回分)の群馬県の
講習会を受講した592名とした.講習形式(対面もしくはオンライ
ン)や満足度(1 ~ 5点,高得点ほど満足度が高い)とその理由,講
習会に関する要望や改善案についてアンケート調査を実施し,対
面群とオンライン群に分けて比較検討した.
【倫理的配慮,説明と同意】
アンケートの主旨を文書と口頭にて説明し,回答は任意とした.
氏名を含む個人情報を含まず,無記名で実施した.
【結果】
アンケートの回答率は56.7%(対面/オンライン:156/180名)で
あった.講習形式(対面/オンライン)は令和4年度が2/10回,令
和5年度が8/0回であった.満足度は対面群が4.3±0.7点,オンラ
イン群が3.9±0.7点であり,オンライン群に比べて,対面群が有
意に高かった(p<0.05).効果量はr=0.27で中等度の違いであっ
た.満足度に関連する自由記載は,対面群が「議論がしやすかった」,
「他の参加者のリアクションを見やすい」などで,オンライン群が「移
動時間がなく負担が少ない」,「目が疲れた」,「パソコンの扱いなど
個人差があり議論の時間が減ってしまう」などが挙がった.要望や
改善案は,「講義と演習時間のバランス調整」,「世話人からの演習
前の十分な導入説明」などが挙がった.
【考察】
対面およびオンライン形式の学習効果を比較した報告(服部,
2022)では,講義系授業におけるオンライン形式の有効性につい
て言及している一方,実技系授業においては対面形式に分がある
としている.実技系授業に相当する演習においてオンライン群で
は難渋する意見がみられたことからも,オンライン形式よりも対面
形式の方が講習会の高い満足度に繋がっている可能性が示唆され
た.また,現行の臨床実習指導者講習会では既に演習の方が長く
設定されているものの,それらの時間の構成比をより演習優位に
改定したり,世話人のスキルを高めることで,オンライン形式の講
習会の満足度を向上させる可能性がある.
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松井 剛, 右田 正澄, 小野田 公, 堀本 ゆかり
セッションID: P6-2-5
発行日: 2024年
公開日: 2025/01/24
会議録・要旨集
フリー
【目的】
エンプロイアビリティは,「雇用する(Employ)」と「能力(Ability)」
を組み合わせた概念で,「雇用される能力」,または「雇用可能性」
と訳されている.近年,養成校から臨床現場への移行に必要な能
力が検討されつつある.このような背景を鑑み報告者らは「理学療
法士・作業療法士のエンプロイアビリティ尺度」を開発した.本研
究では,出身養成校別に尺度データの違いがあるか確認した.
【方法】
対象は免許取得後一年未満の新卒理学療法士および作業療法士
とした.方法はWebアンケートとした.専門学校と大学に分類し,
両群の差の検定は尺度から抽出された5因子(組織から雇用される
力,情動的知能観,医療現場への組織適応,すすんで学ぶ態度,
論理力)および総合得点についてF検定とt検定を用いた.有意水準
は5%とした.
【倫理的配慮,説明と同意】
本研究は,国際医療福祉大学倫理審査委員会の承認を得て実施
した(承認番号:22-lfh-053).
対象者には,研究背景や目的,方法,および倫理的配慮を文書に
よる説明を行い,参加同意を得た.
【結果/介入内容と結果】
アンケートの参加総数は,657名であった.その内訳は,専門学
校修了者が3年制183名,4年制142名,男性164名,女性161
名,平均年齢22.7±2.8,大学修了者は,332名男性145名,女
性187名,平均年齢22.6±1.3であった.検定の結果,5因子およ
び総合得点で両群間に有意差を認めなかった.
【考察】
開発した尺度の5因子の得点および総合得点において,専門学校
と大学の出身者で有意差を認めなかった.就職後,出身の養成校
種別に違いが見られないことは,養成校で実施されているキャリ
ア教育の成果に遜色がないことが予想される.しかし,尺度得点
が低い者には配慮が必要である.集団としてのキャリア教育に加え,
尺度得点をモニタリングしながら個別的な指導が必要であると考
える.開発した尺度項目は,職場適応の側面から見ても重要な視
点であるため,重ねての検証を行いたい.
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~リハビリテーションモデルを組織管理に落とし込めるか~
氣田 俊輔
セッションID: P6-2-6
発行日: 2024年
公開日: 2025/01/24
会議録・要旨集
フリー
【はじめに,目的】
当院リハビリテーション部門(以下,組織)は2024年4月現在41名
の療法士が在籍している.管理者である当方は2022年8月より当
院へ赴任して,現在の職位に勤めている.組織管理経験も乏しく,
当初より迷う局面が多々存在した.当然,組織内でもその迷いに
伴った様々な問題も生じた.組織学関連論文や図書などを参考に
学習を進めてみたが,当方の疑問に直結する事項も少なく,悶々
と過ごす日々であった.その中で,自身の理学療法士としての初
心に振り返ると,患者様へのリハビリテーション(以下,リハ)支援
と組織管理の類似性に気付いた.今回,リハモデルを参考にした
組織管理の実践を以下に報告する.
【実践内容,方法】
組織を対象患者様と置換.リハは患者様ニーズに合わせた目標を
設定することから始まる.目標達成に向け,患者様の機能や能力
などを評価して問題点抽出をする.組織運営も同様,法人や施設
のニーズに合わせ,明確な目標設定から開始.日々生じているコ
ンフリクト,個人や部門の業務量や労務状況を患者様同様,コミュ
ニケーションに重点を置き,問題点抽出に取り組んだ.患者様の
身体機能などから目標達成に向けた予後予測すること同様,組織
管理においても抽出された問題点の中から実現可能な期間を設定
して各部門や個人へタスクとして依頼.リハにおける定期評価と重
なる組織評価は,各実績や勤怠管理など数値を用いて客観的に把
握.リハ実施計画の説明同様,組織進捗状況として部門リーダー
会議や組織ミーティングの中で定期的にフィードバックした.
【倫理的配慮】
本報告はヘルシンキ宣言に基づき,個人に不利益を与えることが
ないよう配慮した.
【結果】
所属法人のノルマ達成による組織業績上昇と,組織離職率低下の
傾向がみえた.
【考察】
組織管理の最大の目的は,対象患者様ニーズの実現であると考え
る.実現に際しては,組織に所属しているスタッフの労働管理が
重要である.各施設も多様であり管理に明確な正解はなく,当院
にて実践している管理方法が適切か否かの判定は難しい.管理者
は常に疑問と葛藤の中で,着実に所属施設の目標や,さらには前
述した大きな目的である対象患者様に安心,安全なリハを提供で
きる組織構築を実現する必要がある.当院での今後については,
客観的な指標により,対象患者様の満足度とスタッフ個人の内観
を関連付けた評価も構築していく必要性を強く考えている.
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渡辺 裕樹
セッションID: P6-3-1
発行日: 2024年
公開日: 2025/01/24
会議録・要旨集
フリー
【はじめに,目的】
当院では近隣大学病院でOSSCS(整形外科的選択的痙性コント
ロール手術)を実施されたCP児が,術後に外来リハ開始となる例
が多い.荷重開始時期に近くリハ量を増加させる事も考慮したい
時期でもあるがご家族負担や,マンパワー的に十分な外来リハ提
供量を確保しにくいとも感じている.種々の報告から小児リハ提供
施設は郊外が少ない事が言われており,当院と同じ課題を持つ病
院もあると思われる.23区外の市中病院で担当したOSSCS術後
のCP児に対する外来リハ内容と経過を,方法・効果についての検
討,課題を共有する事を目的に報告する.
【症例紹介・評価・リーズニング】
3歳9か月男児.痙直型脳性両麻痺.GMFCS:Ⅱ.屋内移動は
四つ這い・膝歩きが主.まれに伝い歩き.右下肢の内向きが強い
挟み足・足尖歩行.独歩では停止不可.諸々の要因から高頻度の
外来リハは難しい事,術後は活動量が低くなる可能性がある事が
考えられたため術前に患者や家族との信頼関係を構築する事,自
発的に動くきっかけを与える事,実施が容易な在宅での練習(以下
HE)を提案すると共にご家族にリハ介入前後での変化を説明するこ
とで動機付けとする事を意識した.
【倫理的配慮・説明と同意】
保護者に書面・口頭にて本報告の同意を得た.
【介入内容と結果】
術後約1か月後から約2週に1回の外来リハを再開し主に足底を接
地した状態での運動学習や体幹筋・股関節外旋・伸筋に対しての
賦活を狙い,興味関心にそった動作にて訓練を実施した.訓練前
後で側方動揺の減少・ニーインの減少・足尖歩行の改善が見られ,
変化を動画や写真にて説明し,ご家族の理解を深めながらHEを
提案した.術後一時的に活動性は術前より低下したが術後6か月
時点で歩容・立位の改善,独歩での機会が増加し,物を両手で運
ぶ・ボールを蹴る・歩行で立ち止まるといった動作が確認された.
GMFMゴール総合点(歩行・走行とジャンプ)術前:33%.術後6か月:
49%
【考察】
現時点ではOSSCSとリハの効果は肯定的に捉えられる.十分な介
入頻度が確保出来ない中,ご家族のアドヒアランスが得られた事
により,活動性が向上した事,HEを実施出来た事,術前に信頼
関係が作れたため,術後に訓練や家族指導に注力できた事などが
1要因として挙げられる.今後は他サービスとの情報の共有・連携
と小児リハに携われる人材や環境の増加が望まれる.
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中山 優, 成田 雄一, 小沼 裕紀, 榎本 菜々絵, 内海 邦雄, 宮川 倖実, 東 竜舞, 佐野峯 真輝, 鍋田 一騎, 玉館 秀恵
セッションID: P6-3-2
発行日: 2024年
公開日: 2025/01/24
会議録・要旨集
フリー
【はじめに,目的】
脳血管障害とパーキンソンニズムの関係性はCritchleyにて示唆さ
れ,基本型で(筋固縮,仮面様顔貌,小刻み歩行,嚥下障害,自
発性低下)が一般的に挙げられる.今回,誤嚥性肺炎,脳血管
性パーキンソンニズム(以下VPD),アルツハイマー型認知症(以下
AD)から自発性が低下した状態から意思疎通が改善し,一部介助
量が軽減した症例を経験したため,報告する.
【症例紹介,評価,実践内容】
元々,VPDとADの影響があり,介護にて在宅生活していた.X年
Y月Z日にご家族の介護負担軽減目的でレスパイト入院となった.
入院当初は,基本動作やADL動作は中等度介助,協力動作もあ
り会話による意思疎通は流暢であった.Y月+1ヵ月に誤嚥性肺炎
を発症し,既往のADの悪化も重なり体動困難となった.Y月+2 ヵ
月時に療養病棟へ転棟となったが,基本動作やADLは全介助で
あった.
JCSはⅡ-30,ADASは68点,嚥下障害(従命困難によるRSST実
施不可)もあり経口摂取は困難であった.また,MASは全般的4
点と筋緊張からの可動域制限が強く認めた.
これに対し,3 ヶ月間の週4日に及ぶ車椅子離床で特殊感覚と体
性感覚への入力を行った.加えて立位・歩行訓練では,2人介助
にて下肢への荷重感覚入力を行い,体幹伸筋の緊張亢進に対して
は関節可動域訓練,自動介助運動を用いた筋緊張コントロールを
実施した.
【論理的配慮・説明と同意】
発表にあたり,患者の個人情報とプライバシーの保護に配慮し,
本人・家族に十分な説明を行ったうえで同意を得ている.
【結果】
JCS-はⅠ-2となり,覚醒度や自発性に改善が見られ,ADASは50
点,RSST 6回/ 30秒となり痰量が減少した.筋緊張のコントロー
ルも改善により10分ほど座位保持可能となり,病棟生活内でも,
基本動作時に体幹を回旋するなどの協力動作が得られ,基本動作・
ADL介助量が軽減した.
【考察】
ADとVPDによる自発性低下や四肢・体幹の筋緊張亢進に対して
定期的な車椅子離床や反復的な立位訓練,歩行訓練による感覚
刺激の促通によって自発性や筋緊張に軽減が見られ,協力動作の
獲得や基本動作・ADL介助量軽減に繋がったと考えられた.
【結論】
ADやVPD患者の無動や筋緊張異常に対して介入を行い長期間の
車椅子離床や立位,介助歩行による感覚入力がADL動作の協力
動作増加に寄予した.
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トイレ動作に着目した介入
八木 康造, 法山 徹, 大竹 朗
セッションID: P6-3-3
発行日: 2024年
公開日: 2025/01/24
会議録・要旨集
フリー
【はじめに,目的】
今回,小脳出血後,多様な阻害因子により介入困難な症例に対し
て,トイレ動作が離床意欲向上の一助になった為報告する.
【症例紹介,評価,リーズニング】
症例60歳代女性.小脳出血(右虫部及び半球)に対し開頭血腫除
去術施行.30病日に当院転院.悪心,頭痛,機能性便秘による
腹痛の訴えがあり介入が困難であった.31病日での初期評価は,
JCS 3,随意運動の障害なし,指鼻試験,踵膝試験陽性,BBS
0点,HDS-R 8点,MMSE 8点,FIM 22点であった.脱衣行為
を認め抑制衣を使用,転倒・転落があり体幹抑制,排泄は24時
間おむつ内であった.症例は高次脳機能障害に加え,悪心,頭痛,
腹痛を認め,ADLの改善には難渋することが推察された.トイレ
へ行けるようになりたいとの希望があり,トイレ動作への介入が離
床意欲向上の一助になると考えた.
【倫理的配慮,説明と同意】
本研究は,筆頭演者が所属する施設の倫理審査委員会にて承認
を受け,研究の実施においてはその趣旨を患者と家族に口頭と書
面にて説明し,同意を得た後に行った.
【介入内容と結果】
症例と目標設定を行い,ベット周囲に設置でき,体調に合わせて
実施できるポータブルトイレでの排泄を目標とした.介入では,座
位や立位の機会が確保できるように介助した.46病日にポータブ
ルトイレを開始したが排泄は無かった.57病日自らポータブルト
イレを指し排泄の意思表示と排便あり.60病日頃悪心,頭痛が
軽減し一日3回の排泄へ変更.87病日歩行器歩行開始.92病日
抑制衣から病衣へ変更.108病日日中のみ歩行器を使用し介助に
て自室内トイレで排泄,111病日一人でトイレへ行こうとして転倒し,
ポータブルトイレでの排泄へ変更.
退院時評価では,JCS 3 ,FIM 47点となった.身体機能検査では,
SARA 13点 ,BBS 8点.神経心理学的検査では,HDS-R 11点,
MMSE 17点,FAB 10点,BADS及びTMTpartA 検査不可であっ
た.排泄は日中ポータブルトイレ介助,夜間はおむつ,移動は車
椅子介助となった.128病日に施設入所となった.
【考察】
本症例は,悪心や頭痛により30病日後も離床困難であった.症例
と目標設定を行い,ポータブルトイレを使用した排泄動作練習を
行った.PTの視点で座位や立位の機会を確保し,病棟と連携する
ことで,しているADLの改善に至ったと考えた.排泄動作を通し
て離床意欲の向上がみられ,更衣動作への意欲や他患との交流も
行えるようになったと考えた.
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竹原 祥平
セッションID: P6-3-4
発行日: 2024年
公開日: 2025/01/24
会議録・要旨集
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【はじめに】
脳性麻痺児の粗大運動能力の経過において,Hannaの曲線では
運動機能のピークは6 ~ 8歳とされている.第9回日本小児理学
療法学会学術大会にて,学齢期後半であっても,GMFM-66と
ADLが改善した脳性麻痺・アテトーゼ児の症例報告を行った.今
回2症例の前向き研究を行い,同様の結果を得たため報告する.
【症例紹介と経過】
症例1)脳性麻痺・痙直型右片麻痺,GMFCSレベルⅡ,13歳
10 ヵ月.知的レベルは3歳6 ヵ月.11歳9 ヵ月よりボイタ治療を開
始した.介入当初の移動は独歩,片脚立位可能.ADLは食事自立,
更衣は要介助,Jasperは自立度81点.GMFM-66スコアは12歳
2 ヵ月時に58.56であった.13歳0 ヵ月の最終評価時では,ADL
は食事における食形態や更衣が向上し,Jasper自立度が85点,
GMFM-66スコアが69.63に向上した.
症例2)脳性麻痺・痙直型両麻痺,GMFCSレベルⅣ,15歳10 ヵ
月.知的レベルは5歳6 ヵ月で,14歳0 ヵ月よりボイタ治療を開始
した.介入当初は左下の寝返りのみで移動が可能で,ADLは全
介助,Jasper自立度は69点,14歳2 ヵ月時のGMFM-66スコア
は38.08であった.15歳9 ヵ月での最終評価時には,移動レベル
が四つ這い・つかまり立ち可能となり,電動車椅子で自走し,車
椅子とトイレ・ベッド移乗は自立~軽度介助レベルに改善した.
Jasper自立度は97点,GMFM-66スコアは45.56に改善した.
【考察】
運動レベル・タイプの異なる学齢期後半の脳性麻痺児であっても,
粗大運動機能とADLに変化がみられた.ボイタ法は,運動の質
を変えることを大切にしている治療法であり,2症例において,運
動の質の改善を目標とし,理学療法時は動作練習としては行わ
ず,可能となった動作を病棟生活に般化したことでGMFM-66と
Jasperの変化に結びついたと考える.学齢期後半であっても,運
動の質にアプローチすることは価値があり,獲得した機能を生活
でいかせるよう多職種連携し,習慣にすることが重要である.
【倫理的配慮,説明と同意】
茨城福祉医療センター倫理委員会の承認を得て(課題番号36号),
患者・家族に趣旨を説明し,同意を得た.
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~歩行獲得し在宅復帰に至った一例~
木村 聖哉, 岩淵 裕和
セッションID: P6-3-5
発行日: 2024年
公開日: 2025/01/24
会議録・要旨集
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【はじめに】
小脳出血では強い眩暈や吐気を伴う事が多く理学療法の早期介入
にあたり阻害因子となりやすく難渋すると言われている.本症例に
おいても強い眩暈と吐気が出現したが,他方で症状の経過に合わ
せた理学療法により,ADL概ね全介助レベルから歩行器歩行見守
りレベルまでの改善を認めたため以下に報告する.
【症例紹介】
70歳代女性.元々ADL自立レベル.診断名は左小脳出血.第1
病日に発症し急性期病院入院し保存的加療で経過も眩暈や吐気に
より離床困難.リハビリテーション継続目的で第15病日に当院回
復期病棟へ転院.既往歴は糖尿病,高血圧症.
【評価】
意識清明.協調機能検査において左側優位に運動失調を認め
る.Scale for the Assessment and Rating of Ataxia(以下
SARA):27/40.Trunk Control tes(t 以下TCT):24/100.
基本動作は運動失調と体幹機能低下により全介助.Functional
Balance Scale(以下FBS):1/56点.Functional Independence
Measure(以下FIM):運動項目16点/認知項目31点.
【倫理的配慮】
ヘルシンキ宣言に基づき,本人,家族に発表の目的,方法等を説
明し自由意思に基づく同意を得た.
【介入内容と結果】
介入当初は運動失調の影響,また眩暈や吐気が強くベッド上寝た
きりで基本動作・ADLの多くに全介助を要していた眩暈や吐気が
消失するまでは二次的合併症(廃用)の予防に向けたベッド上での
自動運動,重錘を用いた協調運動などベッド上で実施できる訓練
から開始.眩暈や吐気が軽減してきた第29病日より支持物を使用
した離床開始し,ティルトテーブルを使用した抗重力位での運動
療法へ移行した.第70病日には平行棒内や歩行器歩行訓練開始.
第177病日に自宅退院.退院時,協調検査にて運動失調軽減も左
側に軽度残存認める.SARA:18/40点.TCT:100/100点.
FBS:33/56点.基本動作見守りレベル,短距離歩行器歩行見守
りレベル.FIM:運動項目62点/認知項目31点.
【考察】
症状が強く離床困難な時期にはベッド上でのアクティブな運動に加
え,軽減してきた時期からは症状に合わせて体幹機能に応じた段
階的な離床や運動療法を実施した.これらがスムーズな機能回復に
繋がり歩行の獲得やADLの向上に繋がったと考える.
また認知機能が問題なく,自覚症状を伝える事ができた事で運動
負荷量を調整し進行できた事も機能改善した要因と考える.
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永野 加奈子, 片見 奈々子, 小笠原 浩気
セッションID: P6-3-6
発行日: 2024年
公開日: 2025/01/24
会議録・要旨集
フリー
【目的】
当院の理学療法(以下PT)処方基準は,在胎29週未満,出生体
重800g未満,脳室内出血(以下IVH),脳室周囲白質軟化症(以
下PVL),先天性疾患,慢性肺疾患(以下CLD)の他,鎮静が付き
にくいなどで相談があった児に対してスクリーニングを実施し,PT
処方を検討することとしている.近年スクリーニングが実施できて
いない状況があり,処方の傾向を把握し基準見直しの一助とする
ことを目的に調査を実施した.
【方法】
2021年1月~ 2022年1月までに当院のNICU,GCUに入院した
全児を対象とし,カルテ情報から後方視的に調査した.調査項目
は在胎日数/出生体重/退院時体重/口唇口蓋裂/咽頭・喉頭軟
化症/気道狭窄症/呼吸窮迫症候群(以下RDS)/胎便吸引症候
群(以下MAS)/肺の低形成/ CLD /一過性多呼吸(以下TTN)/
無呼吸/呼吸デバイス使用の有無と使用期間/先天性疾患(染色
体異常,心疾患)/ IVH / PVL /視力,聴力,消化管障害/哺
乳開始日齢とした.PT処方群と非処方群の2群に分け各項目にお
いて対応のないt検定を行なった.
【倫理的配慮】
当院倫理委員会の承認を得て実施した.
【結果】
全対象513例のうちPT処方は47例であった.現行の処方基準で
PT処方があったのは出生体重800g未満11/11例,在胎29週未満
16/17例,IVHで2/3例,PVL5/9例,染色体異常3/5例,心疾
患20/95例,CLDで10/10例であり,概ね処方基準通りに処方が
あり,処方基準外での処方は15例であった.群間比較ではPVL,
咽頭・喉頭軟化症,気道狭窄症,MAS,肺の低形成,CLD,
TTN,無呼吸,在胎日数,哺乳開始日齢で有意差を認めた(p<
0. 05).
【考察】
PT処方群における呼吸障害保有率は95%で,呼吸障害を有する
ことで自律神経系が安定せず,鎮静の付きにくさからPT処方に繋
がっている可能性が考えられ,以前スクリーニングの対象となって
いた要因を反映しているのではないかと考える.スクリーニングが
実施できていない現状では,呼吸障害に関してはCLDのみでなく,
咽頭・喉頭軟化症,気道狭窄症,MAS,肺の低形成,TTN,無
呼吸も処方基準の項目に追加を検討する必要性がある.
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-部位および損傷組織を踏まえた検討-
江戸 優裕, 菊池 咲葵, 松尾 真輔, 島田 美恵子
p.
191-
発行日: 2024年
公開日: 2025/01/24
会議録・要旨集
フリー
【はじめに,目的】
関節弛緩性(JL:Joint Laxity)はメディカルチェックの項目として
一般的であるが,スポーツ傷害との関係については否定的な報告
も散見される(北堀.2019;河原.2010).見解が分かれる一要
因として,身体の部位や損傷組織を踏まえた検討がなされていな
い点がある.
そこで, 本研究ではJLとスポーツ傷害の既往歴(PH:Past
History)との関係を部位別・損傷組織別に明らかにすることを目
的とした.
【方法】
対象は一般的な大学生399名(平均年齢19.8±1.4歳:男性181名・
女性218名)であった.
JLは東大式JLテスト(中嶋.1984)で評価した.手・肘・肩・膝・
足は左右各0.5点,脊柱・股は1点とし,合計点をJLスコアとした.
PHは過去5年間にスポーツ中に受傷したものをアンケートで収集
した.姫野の報告(2016)を基に損傷組織別(骨・関節・筋・その他)
に分類し,各回数を求めた(PH回数).
JLスコアとPH回数は部位別(上肢・下肢・体幹)でも集計し,相関
分析と群間比較を行った(有意水準5%).
【倫理的配慮,説明と同意】
本研究はヘルシンキ宣言に従い,研究機関の倫理委員会の承認後
(No. 2022-26)に実施した.対象者には研究内容の説明後,書
面で同意を得た.
【結果】
JLスコアは男性より女性で高かったが(男:1.8±1.4 /女:2.7±1.5
点),部位別では下肢のみ有意な性差がなかった.PHは対象者全
体で延べ799件(Mdn=1,IQR=3)あり,足関節捻挫(270件)が
最多だった.
年齢・性別を制御したJLスコアとPH回数の偏相関分析の結果,
いずれの項目にも明らかな相関を認めなかった(|r|≒0.1).
JL有無・年代・性別を要因としたPH回数の3元配置分散分析の
結果,骨損傷はJL無し群で多く(無:0.3±0.7/有:0.1±0.5件),
体幹の骨損傷は男性で多かった.
【考察】
JLが男性より女性で高いことは多くの先行研究(Quatman.
2008)を追認したが,下肢には明らかな性差がないことは新知見
であった.PHの発生状況は大学スポーツ協会の報告(2022)と概
ね一致した.
JLスコアとPH回数の相関はいずれの部位・組織でも認めなかった
ものの,骨損傷はJL無し群で多かった.このことから,JLが低い
と骨に力学的負荷が集中しやすい可能性は無視できないが,因果
関係や体幹損傷の性差は受傷機転を踏まえた慎重な議論が必要
である.また,JLに筋タイトネスが併存することを問題視する報
告もあるため(菊池.2024),今後より多角的な検討が期待される.
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豊岡 毅, 對馬 栄輝, 杉浦 史郎, 中村 恵太, 大山 隆人, 石崎 亨, 大森 康高, 高田 彰人, 岡本 弦, 西川 悟
セッションID: P6-4-2
発行日: 2024年
公開日: 2025/01/24
会議録・要旨集
フリー
【はじめに,目的】
足関節内反捻挫では足部の外返し筋力が低下すると報告されてい
る.しかしながら,健常者における外返し筋力の参考値は見られず,
年齢や性別,スポーツ活動の有無による影響も不明なため,目標
設定に参考となる筋力値を提供することが困難となっている.今
回の研究目的は,一般市民を対象に各年代における外返し筋力を
測定することで,症状回復の目標となる参考値を算出することであ
る.
【方法】
対象は当院のスタッフ,高校生バスケットボール選手,佐倉地域
の高齢者サロンで体操教室に参加されている高齢者,及び佐倉マ
ラソン大会に来場した一般市民合計185名とした.測定項目は日
本語版Cumberland Ankle Instability Tool(CAIT)と足部筋力
として外返し筋力とした.外返し筋力の測定方法は徒手筋力測定
装置ミュータスF-1(アニマ社製)と独自に作成した足部固定器具を
用いて,等尺性筋力を測定した.測定回数は左右とも2回ずつ測定
し体重で除した数値の平均値を採用した.対象の包含基準は両足
ともCAITが25点以上の112名を解析対象とした.統計手法は,外
返し筋力を目的変数とし,各年代,性別,スポーツ活動の有無を
独立変数とした多元配置分散分析を適用した.
【倫理的配慮,説明と同意】
本研究は当院倫理委員会の承認を得て開始し,対象者に口頭で説
明を行い同意を得た上で測定した.(倫理番号2455)
【結果】
各年代の外返し筋力(kgf/BW)は20歳未満0.26±0.08,20代
0.27±0.06,30代0.26±0.07,40代0.30±0.07,50代0.21
±0.06,60代0.20±0.06,70代0.20±0.07,80代0.17±
0.04となり40代と50代及び40代と70代の間に有意差を認めた
(p<0.05).性別は男性0.27±0.07,女性0.20±0.07となり有意
差を認めた(p<0.05).スポーツ活動の有無では有意差を認めな
かった.
【考察】
50代以降の外返し筋力が低下していた理由は,加齢による一般的
な筋力低下と類似していると考えた.また性別による差もその他
の筋力と同様に筋肉量の影響であると考えた.スポーツ活動の有
無による差は,本研究の対象者にマラソンランナーが多く含まれて
おり,足関節を極端に活用する動作は少ないという特性が現れた
と考えた.
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佐野 求, 内之倉 真大, 関口 貴博
セッションID: P6-4-3
発行日: 2024年
公開日: 2025/01/24
会議録・要旨集
フリー
【はじめに,目的】
アルティメット競技は足関節の外傷・障害が多いことが報告されて
いる.しかし先行研究は選手の主観的な要素が含まれているアン
ケート調査によるものであるため,外傷・障害の詳細については不
明な点が多い.本研究の目的はアルティメット競技における外傷・
傷害の特徴を明らかにすることである.
【方法】
対象は2005年~ 2024年までに当院を受診したアルティメット競
技者71名とした.診療記録診療より①性別②年齢③競技レベル
④外傷・傷害の部位(体幹・上肢・下肢)⑤診断名⑥手術歴と術式
を後ろ向きに調査した.
【倫理的配慮,説明と同意】
本研究は当院倫理委員会の承認を得た.なお,本人には趣旨を説
明し同意を得た.
【結果】
①性別は男性39人,女性32人であった.②年齢は男性が平均
年齢25.5±8.2歳であり,10代が22%,20代が55%,30代が
13%,40代が10%であった.女性は21.0±4.2歳であり,10代
が53%,20代が41%,30代が6%,40代が0%であった.③競
技レベルは趣味・余暇レベルが男性46%,女性17%であり,アマ
チュアレベルが男性48%,女性83%,プロが男性6%,女性0%
であった.④外傷・障害の部位は男性が体幹8%,上肢20%,下
肢72%であった.女性が体幹7%,上肢13%,下肢80%であった.
⑤診断名は全て部位の中で男女ともに前十字靭帯損傷が多く,そ
れぞれ男性7人,女性10人であった.⑥手術歴は手術ありの男性
が12人(31%)であり,手術部位は下肢が最多の10人であり,その
内7人が前十字靭帯再建術であった.女性は手術ありが14人(37%)
であり,手術部位は下肢が最多の13人と最多を占め,10人が前十
字靭帯再建術であった.
【考察】
本研究結果より,アルティメット競技の外傷・障害の特徴として20
代,下肢に多いことが明らかとなった.この結果は先行研究と同
様の傾向であった.診断名,手術歴においては男女共通して前十
字靭帯損傷とその再建術が多く占め,先行研究では明らかとなっ
ていなかった特徴が得られた.下肢疾患,なかでも前十字靭帯損
傷が多かった要因としてはフライングディスクをキャッチする瞬間
のジャンプおよびカッティング動作などを繰り返すことがアルティ
メットの競技特性であることが示唆される.しかしながらその詳細
は明らかではないため,今後はその要因や発生機序に関して調査
を進めていきたい.
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岡本 紗季, 牧原 由紀子, 鵜澤 寛伸, 西田 裕介
セッションID: P6-4-4
発行日: 2024年
公開日: 2025/01/24
会議録・要旨集
フリー
【はじめに,目的】
慢性足関節不安定症(以下,CAI)の歩行時筋活動では先行研究で
見解が一致していない.本研究では外反足を有するCAI有症者の
歩行時筋活動の特徴を明らかにすることを目的に,健常脚とCAI
脚の足部角度と筋活動を比較した.
【方法】
CAI判別はCumberland ankle instability too(l 以下,CAIT)を
用いた.後足部角度は裸足で片脚立位にて計測した.長腓骨筋,
前脛骨筋,ヒラメ筋,内側腓腹筋に表面筋電図の電極を貼付し,
足底にフットスイッチを貼付して,対象者の快適速度にて約10m
の普通歩行を行った.計測した筋電データは各筋別に解析を行っ
た.歩行周期を10%ごとに分け,各セグメントで平均を算出した.
統計解析にはCAIT,後足部角度,筋活動量について対応のないt
検定にて有症脚と健常脚での群比較を行い,有意水準は5%未満
とした.
【倫理的配慮,説明と同意】
本研究は,国際医療福祉大学にて倫理審査委員会の承諾を受け
た (申請番号:23-Ig-72) .実験を行う際には対象者に十分な説
明を行い,同意を得た上で実施した.
【結果】
対象者(21.5±1.4歳)は23名であり,22脚はCAIに該当し21脚
は健常であった.CAITは,CAI有症脚は19.0±5.1点,健常脚は
28.2±1.7点であった(p<0.05).片脚立位時後足部外反角度は
CAI有症脚12.3±2.0°,健常脚は10±2.6°であり(p<0.05),CAI
有症脚は全て足部外反位だった.長腓骨筋の平均筋活動量では
セグメント10(遊脚期終期付近)にてCAI有症脚が有意に増加した
(p<0.05).前脛骨筋ではセグメント6(前遊脚期付近)にてCAI有
症脚が有意に増加した(p<0.05).ヒラメ筋は全セグメントにて有
意差は示されなかった (n.s.).内側腓腹筋ではセグメント5(立脚
終期付近)にてCAI有症脚が有意に減少した(p<0.05).
【考察】
立脚期にCAI有症脚長腓骨筋の筋活動増加がなかった理由は,立
脚時に足部外反位だった可能性が高いため,内反制動機能として
の長腓骨筋の働きが少なかったと考えた.前脛骨筋は,内側縦アー
チ維持のため前脛骨筋の活動が増加したと考えた.片脚立位時に
後足部外反位であった影響で足関節底屈による推進力を得られず,
内側腓腹筋が過度に活動したため立脚周期で筋活動量が増加した
と考えた.ヒラメ筋の筋活動は歩行中の足部内外反による受動的
な短縮・伸長には影響されない可能性が考えられた.以上のこと
から,CAIは足部を外反と内反に分類することによって症状をより
詳細に理解できると考えた.
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藤原 柊司, 大平 勇人, 小原 来夢, 中嶋 隆行, 山下 剛司
セッションID: P6-4-5
発行日: 2024年
公開日: 2025/01/24
会議録・要旨集
フリー
【はじめに,目的】
近年,クリニカルパス(CP)の導入により人工股関節全置換術
(THA)後の在院日数短縮が図られており,過去の報告では,CP
導入によりTHA後患者の在院日数や歩行開始日数の短縮などの効
果が報告されている.当院では2023年1月より導入しており,在
院日数19日を目標とするCPを用いている.CP導入による在院日
数短縮により,退院時の身体機能低下や入院時とは異なる歩行様
式での退院となる可能性が考えられる.そのため,本研究の目的
は当院におけるCP導入がTHA後患者の術後身体機能に及ぼす影
響を明らかにすることとした.
【対象,方法】
当院でTHAを施行した症例を対象とした.CP導入以前の従来群
とCP導入後にCP内で退院可能であったCP群について,在院日
数と術前・退院時の歩行様式,患者背景因子として年齢,性別,
BMI,患者立脚型評価として日本整形外科学会股関節疾患評価
質問表(JHEQ),身体機能因子としてTimed Up and Go test
(TUG),10m歩行テスト,5回椅子立ち上がりテスト(SS-5)を術
前および退院時に実施し比較検討した.また,JHEQは各下位項
目および合計点数を検討した.統計解析は各検討項目に対して,
カイ二乗検定,t検定,Mann-WhitneyのU検定を実施した.有
意水準は5%未満とした.
【倫理的配慮,説明と同意】
本研究は当法人倫理審査委員会の承認を受け,対象者へ十分な説
明を行い,同意を得て実施した.
【結果】
従来軍は50例,CP軍は63例であり患者背景因子に優位さは
なかった.在院日数は従来郡21.2±11.1日,CP群15.3±2.2 日
(p<0.01)でCP群にて有意に短かった.術前歩行様式(独歩/杖/
歩行器)は従来群(37例/ 10例/ 3例),CP群(48例/ 9例/ 6例)
であり,術前の歩行様式や患者立脚型評価,身体機能因子に有意
差はなかった.退院時歩行様式は従来群(38例/ 10例/ 2例),
CP群(49例/ 13例/ 1例)であった.退院時JHEQ痛みは従来群
19.5±5.1点,CP群21.4±5.7点(p=0.03)であり,CP群にて有意
に良好であった.退院時の歩行様式やその他JHEQ各項目,身体
機能因子に有意差はなかった.
【考察,結論】
CP群にて在院日数が有意に短縮し,退院時JHEQ痛みの項目に
おいて有意に良好であった.CP導入はTHA後患者在院日数の短
縮,術後早期の疼痛改善につながる可能性が示唆された.
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栗原 靖, 大杉 紘徳, 桑江 豊
セッションID: P6-4-6
発行日: 2024年
公開日: 2025/01/24
会議録・要旨集
フリー
【はじめに,目的】
足関節捻挫(捻挫)は再発率の高いスポーツ傷害であり,スポー
ツ復帰判断につながる評価指標は重要となる.片脚ジャンプ着地
(single leg drop jump landing test:SDL)は力学的負荷を判
断する一動作で,なかでも,衝撃緩衝係数(loading rate:LR)
はSDL時の力学的負荷を定量的に評価する指標として用いられる.
LRは高値で強い衝撃が加わり,低値で衝撃吸収性が良好と解釈
される.捻挫後のスポーツ復帰判断においても,LRの評価指標
を考慮していく必要性が考えられるが,有用性における統一した見
解に至っていない.本研究は,捻挫後のスポーツ復帰判断として
LRの有用性を示していくための基礎データとし,LRと捻挫発症と
関連する足部力学因子との関連性を検証することを目的とした.
【方法】
対象は若年健常成人男性17名(21.7±2.7歳)とした.運動課題は
SDLとし,三次元動作解析装置(Coretex6,200Hz)と床反力計
(テック技販,1000Hz)を用いた.接地時の床反力値よりLR(床
反力鉛直成分最大値(Fz max)/接地時からFz maxに至る時間/
体重)を求め,また,接地時からFz max時までの接地側下肢関節
角度変化量を算出した.足部力学因子は,接地後の長腓骨筋の最
大張力値および到達タイミングを採用し,筋骨格モデル動作解析
ソフト(nMotion musculous)にて抽出した.分析は,LRと長腓
骨筋の抽出パラメータおよび下肢関節角度変化量との関連性につ
いて実施した.
【倫理的配慮,説明と同意】
対象者には,研究の計画について口頭および文書で説明し,同意
を得た.本研究は所属先倫理委員会の承認を得て実施した(番号
25N230016).
【結果】
長腓骨筋の最大張力値の到達タイミングは,LRと負の相関を認め
た(r=-0.672).LRと関連する因子として,股関節屈曲・膝関節屈曲・
足関節背屈角度変化量に負の相関がみられた(r=-0.632 -0.649,
- 0. 489).
【考察】
長腓骨筋活動の反応時間の遅延は,捻挫発症の関連因子になるこ
とが報告される.本研究結果はこれを支持するものであり,LRの
特性が捻挫後のスポーツ復帰判断における評価指標となる可能性
が示唆された.また,LRは下肢関節角度変化量との相関関係を
示した.本研究では明らかにできないが,接地直後のわずかなタ
イミングでの変化のため,フィードフォワードによる影響が生じた
可能性がある.今後,これらの検証を含め,捻挫後のスポーツ復
帰判断となるLRの有用性を分析していく.
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市川 美月, 佐藤 孝嗣, 高野 圭太, 井上 靖悟, 忽那 岳志
セッションID: P6-5-1
発行日: 2024年
公開日: 2025/01/24
会議録・要旨集
フリー
【はじめに,目的】
随意収縮と機能的電気刺激(FES)の併用は下垂足における前脛骨
筋(TA)の随意性向上に有効である(小林ら,2016).一方,随意
収縮が生じない下垂足患者に対する介入法は少ない.今回,TAの
随意収縮は困難であったが,ペダリング運動中に筋活動が生じた
下垂足患者を経験した.そこで,ペダリング運動中にFESを併用
する介入を実施した結果,TAの随意性と歩行能力の改善を認めた
ため経過を報告する.
【症例紹介,評価,リーズニング】
本症例は令和5年X月Y日に転倒し,右大腿骨頸部骨折を受傷後,
その場で3日間体動困難となり右腓骨神経麻痺が生じた80歳代女
性である.当回復期病棟入院時(Y +54日),右TAの 徒手筋力検
査(MMT)は0であり随意収縮を認めなかった.歩行はオルトップ
AFOLHを着用しフリーハンドで軽介助を要した.理学療法では,
ペダリング運動,歩行,筋力トレーニングを中心に実施したが,
右TAのMMTや歩行介助量に変化を認めなかった.6分間歩行テ
ストでは90mと低値を示し,躓きも頻回に認めたことから,右TA
の随意性低下が,歩行安定性や連続歩行に影響していることが考
えられた.一方,ペダリング運動時の筋電図評価では,右下肢を
引き上げる相(下肢屈曲相)で右TAの筋活動を認めた.さらに,歩
行練習と比較し安全に持続的な運動が可能であった.そこで,こ
れまで通常練習では変化を認めなかったTAの賦活を図る目的で,
ペダリング運動時にFESを併用する介入を実施した.
【倫理的配慮,説明と同意】
本人へ本介入の目的,発表の趣旨を十分に説明し,書面にて同意
を得た.
【介入内容と結果】
介入はY +96日より6週間行った.ペダリング運動は,本症例の
快適歩行のリズムに類似させるため,回転数を44-55回転/分に
設定し,10分間行った.FESは,随意性向上を目的に,周波数は
100 Hz,パルス幅は100 μsと,痛みに耐えうる最大強度で右
TAを刺激した.刺激タイミングは筋活動を認めたペダリング運動
中の右下肢屈曲相とした.結果,右TAのMMTは,介入1週間後
に1となり,6週間後に2に改善した.6週間後の6分間歩行テスト
は175mに向上し,躓き回数は1回に減少し,見守りで可能となった.
【考察】
安全で持続可能なペダリング運動中にFESを併用することで,TA
の随意性が向上し,歩行能力が改善した可能性が考えられる.
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甲賀 駿, 村中 晃
セッションID: P6-5-2
発行日: 2024年
公開日: 2025/01/24
会議録・要旨集
フリー
【はじめに】
片麻痺者の異常歩行パターンとして立脚中期以降に膝関節が伸展
するRecurvatum Knee Patternがある.今回,Recurvatum
Knee Patternを呈した片麻痺者に対して筋力増強運動と課題指
向型アプローチを実施した結果,歩容の改善を認め,病棟内歩行
が自立に至った症例を経験したため報告する.
【症例紹介】
80歳代男性. 右橋傍正中部領域に梗塞巣を認めBranch
Atheromatous Diseaseと考えられた.病前ADLは自立,自動
車運転もされていた.
【倫理的配慮,説明と同意]
本症例報告はヘルシンキ宣言に沿ったものであり,発表の趣旨に
ついて本人に説明し,同意を得た.
【経過と評価】
前医で静注血栓溶解療法が施行され, 第16病日に当院へ
入院となった. 入院時, 意識は清明,Stroke Impairment
Assessment Se(t 以下SIAS)は58点,Brunnstrom Recovery
Stage(以下BRS)は下肢Ⅳ,筋緊張・表在・深部感覚は正常,
Manual Muscle Test(以下MMT)は麻痺側ハムストリングス・
前脛骨筋は2,下腿三頭筋は2-であった.歩行は平行棒内で軽
介助を要し,第40病日にT字杖歩行が近位監視レベルとなったが
Recurvatum Knee Patternを呈した歩容となっていた.
【介入内容と結果】
下腿三頭筋を中心とした下肢の筋力増強運動,麻痺側立脚中期
~後期の荷重移動とForefoot Rocker機能を意識したステップ
練習(課題指向型アプローチ)を実施した結果,第109病日時点
でSIASは66点,BRSは下肢Ⅵ,MMTはハムストリングス・前
脛骨筋・下腿三頭筋で4と身体機能の向上が得られた.また,
Recurvatum Knee Patternが改善し,病棟内歩行は自立となっ
た.
【考察】
本来,下腿三頭筋は立脚後期において過度な背屈と下腿の前
方への崩れを予防しているとされている.しかし,本症例では
下腿三頭筋の筋力低下により前述の機能が破綻し,代償として
Recurvatum Knee Patternが出現していると考えた.これらの
仮説に対して筋力増強運動と課題指向型アプローチを中心とした
治療を行い,筋力の向上と立脚中期~後期における下腿本来の動
きが自律的に組織化されることを促した結果,歩容の改善を認め,
病棟内歩行が自立に至ったと考えた.
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池田 千紘, 村中 晃
セッションID: P6-5-3
発行日: 2024年
公開日: 2025/01/24
会議録・要旨集
フリー
【はじめに】
脳卒中の理学療法において歩行能力の再獲得は重要な目標のひと
つであり,なかでも歩行速度は歩行レベルや活動範囲の広狭を決
定する因子といわれている.今回,短下肢装具(以下AFO)と四点
杖を用いた2動作前型歩行練習により歩行速度が向上した慢性期
重度片麻痺症例を経験したため報告する.
【症例紹介】
70歳代女性.X年,右人工骨頭周囲骨折後のリハビリ目的で当院
へ入院となった.治療は保存療法が選択され受傷から5週間免荷
であった.既往歴はX-3年に左被殻出血,X-2年に右大腿骨頸
部骨折により人工骨頭置換術が施行された.
【倫理的配慮,説明と同意】
本報告はヘルシンキ宣言に沿ったものであり,発表の趣旨について
本人に説明し,同意を得た.
【経過と評価】
全荷重での歩行練習は第57病日から許可された.この時点で骨折
の悪化はなく動作時痛は軽快していた.しかし,既往の重度片麻
痺(Brunnstrom Recovery Stage:上肢Ⅱ,手指Ⅱ,下肢Ⅲ)と
廃用症候群の影響により歩行は手すりを使用した3動作揃え型で
連続歩行距離は15mだった.歩容は立脚初期に踵接地が得られず
extension thrust patternを呈していた.その他,本人持ちの
金属支柱付きAFOはダブルクレンザック足継手が採用されていた
が背屈-10°固定となっていた.
【介入内容と結果】
足関節に-20°の背屈制限を認めたが荷重下では可動域の拡大が得
られたためAFOの背屈角度を段階的に0~5°まで調整した.そのう
えで麻痺側股関節の伸展と足関節の背屈位を強調した非麻痺側下
肢のステップ練習を反復した.歩行練習はAFOに加え四点杖を使用
し,踵接地の確立と2動作前型での歩行を意識した.これらの結果,
第74病日の歩行速度は12.8m/minとなり,本人・家族からは受傷
前と同レベルまで歩行は改善していると聞かれた.また,第102病
日の歩行速度は26.8m/min,連続歩行距離は200mまで拡大した.
【考察】
慢性期片麻痺者であっても下肢筋力や歩行関連指標の改善が可
能であると報告されている.特に2動作前型での歩行練習は麻痺
側下肢筋活動の増大をもたらし,歩行能力向上に寄与するトレー
ニングであることは既知の事実となっている.本症例においても
AFOと四点杖を用いることで歩行の難易度調整が図られ2動作前
型での歩行練習が実施でき,歩行速度が向上したと考えた.
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~後方視的研究~
横溝 千紘, 村山 尊司, 森田 信乃
セッションID: P6-5-4
発行日: 2024年
公開日: 2025/01/24
会議録・要旨集
フリー
【目的】
近年ニューロモデュレーション技術が発展し,神経活動を調整す
る治療法が脳卒中リハビリテーションに活用されている.反復性
経頭蓋磁気刺激(rTMS)は,運動皮質の興奮性を調整する方法と
して臨床成果が報告されている.手指運動麻痺が軽度な脳卒中患
者に対し興奮性を促通させるrTMS後に改善した報告がある一方,
手指の分離運動が困難な例に対するrTMSの治療効果とその適応
性は議論が分かれている.本報告は,当センターで実施した脳卒
中重度上肢麻痺に対するrTMSの介入前後の変化を後方視的に分
析したものである.
【方法】
対象は当センターでrTMS治療を受けた脳卒中片麻痺患者のうち
上肢Brunnstrom StageがⅡ~Ⅲの8名とした.運動誘発電位
(MEP)の検出がある5名(MEP+群)と検出がない3名(MEP- 群)に
分類した.rTMSの刺激法はシーターバースト刺激(TBS)とし,刺
激パターンを群によって変えた.MEP+群には損傷側運動野への
間欠的TBS(iTBS),MEP-群には非損傷側運動野へ持続的TBS
(cTBS)を実施した.rTMS終了直後にOT訓練を併用し,週5
回,3週間実施した.rTMSの治療期間の前後に計測した,Fugl-
Meyer Assessment( 以下FMA),Action Research Arm
Tes(t 以下ARAT)のスコアを比較した.
【倫理的配慮】
rTMSの治療及び,本研究報告は,当センター倫理委員会の承認
を受け,対象者への説明と同意のもと実施した.
【結果】
全例で,rTMS実施期間及び終了後に有害事象や副作用を認めず,
rTMS治療を完遂していた.iTBSを実施したMEP+群全例(5名)
にFMA,2名にARATの改善を認めた.cTBSを実施したMEP-群
3名のうち,1名でスコア変化がなく,2名でFMA,1名でARATに
もスコア改善を認めた.
【考察】
MEPの有無がrTMSの刺激法の指標となり,MEPを認める場合は
損傷側半球への刺激が有効であるとされる.重度上肢麻痺を対象
とした本研究において,MEPを認めた例は損傷側半球へのiTBS
で機能改善があり,有効であることを示した.その背景因子として
残存する運動野からの出力を賦活させたことが考えられる.一方,
MEPを認めない例はcTBSによる機能改善が観察されたが,半球
間抑制機構の不均衡是正作用による,従来から推定されているメ
カニズムに基づく効果との可能性がある.重度麻痺例へのrTMS
は,MEPの有無により刺激方法を選択することで運動機能の改善
効果に影響を与える可能性があるが,MEPを認めない重度麻痺例
に対する刺激方法については,今後も議論が必要である.
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~後方視的研究~
森田 信乃, 村山 尊司, 横溝 千紘
セッションID: P6-5-5
発行日: 2024年
公開日: 2025/01/24
会議録・要旨集
フリー
【目的】
反復経頭蓋磁気刺激(rTMS)は,近年,脳卒中患者の下肢麻痺へ
の適応報告が増えており,運動麻痺の重症度などの因子を考慮し
た最適な介入方法について議論が続いている.慢性期の下肢麻痺
軽度例では効果が得やすいとの報告があるが,重度麻痺例に対す
る適応報告は少なく症例研究の蓄積が必要である.当センターで
実施した脳卒中下肢麻痺例に対するrTMSの介入前後の変化を重
度麻痺例含め後方視的に分析したので報告する.
【方法】
対象は当センターでrTMS治療を受けた脳卒中片麻痺患者7名とし
た.rTMSの刺激法は間欠的シーターバースト刺激を用い,損傷側
半球の下肢運動野領域を刺激した.rTMS終了後にPT訓練を併用
し,週5回,3週間実施した.rTMSの治療期間の前後に計測した
Fugl-Meyer Assessment下肢項目(以下,FMA),Berg Balance
Scale(以下,BBS),10m歩行速度のMCID(Minimal Clinically
Important Difference)を超える変化を認めた例数をカウントした.
rTMS介入直前のFMAスコアから軽度例(1名),中等度例(3名),
重度例(3名)の3群に分類しデータを観察した.定性的評価として
rTMS実施後の内省報告や運動・動作の観察を記録した.
【倫理的配慮】
rTMSの治療及び,本研究報告は当センター倫理委員会の承認を
受け,対象者への説明と同意のもと実施した.
【結果】
発症からのrTMS開始日数は28 ~ 83日であった.FMAでは中等
度例・重度例各1名に変化を認めた.BBS(MCID:5点),10m歩
行速度(MCID:0.19m/s以上の速度変化)では軽度例・重度例各
1名,中等度例2名で変化を認めた.rTMS実施直後に軽度例1名,
中等度例2名に「足が軽い」など動かしやすさを表す内省が聴取さ
れた.
【考察】
これまでに下肢麻痺の重症度別にrTMS効果の相違を明確に示し
た報告はない.本報告の軽度例では明らかな改善と即時的な内
省報告が確認でき,rTMSの有効性を支持する症例である.中等
度・重度例ではFMAの改善に比べ,動作に関連する検査スコアに
影響を及ぼした.これはFMAで評価する運動麻痺の分離性の促
進までは伴わないが,下肢神経筋の出力の活性化に伴う下肢機能
の向上に寄与している可能性がある.今回,最も興味深い見解は
重度例においても改善したケースを認めたことであり,症例により
rTMSが有効であることを示す所見である.重度例のrTMSの適応
例については,発症病日や刺激方法など,幾つかの要因を整えた
前方視的研究の必要がある.
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原田 剛志, 辻 哲也, 土方 奈奈子, 上野 順也, 小西 信子, 栁沢 拓臣, 小林 大祐, 中嶋 康記, 小島 隆嗣, 藤田 武郎
セッションID: P6-6-1
発行日: 2024年
公開日: 2025/01/24
会議録・要旨集
フリー
【はじめに,目的】
本邦の局所進行食道癌に対する標準治療は,術前DCF療法を併
用した根治切除術である.近年,高齢者では化学療法中の脆弱性
の進行を伴う骨格筋量喪失は生存期間に影響する可能性が報告さ
れているが,術前DCF療法に関する情報は限られている.本研究
の目的は,高齢局所進行食道癌患者における術前DCF療法中の
骨格筋量変化と術後生存期間との関連性を検討することである.
【方法】
本研究は,単施設後方視的観察研究である.対象は,2016年か
ら2020年の期間で術前DCF療法後に根治的切除術を受けた65
歳以上の局所食道癌患者とした.SliceOmaticを用いて術前DCF
療法前後の第三腰椎高位のCT画像からSkeletal muscle Mass
Index(SMI)変化率を算出した.SMI変化率と3年全生存期間(OS)
hazard比の量反応性を確認するためspline曲線を作成した.SMI
変化率のOSに対するcutoff値をLog-rank検定のΧ二乗値が最大
となる値と定義し,Cox比例hazard modelを用いて多変量解析
を実施した.SMI喪失率と術後再発との関連性はLog-rank検定
にて検討した.有意水準を両側p<0.05と定めた.
【倫理的配慮,説明と同意】
本研究は,ヘルシンキ宣言に則り,筆頭著者所属施設の倫理審査
委員会の承認を得て実施された (No. 2019-075) .本研究は後
方視研究の性質のため,opt-outにて対応している.
【結果】
解析対象症例は111例であり,平均年齢は70.6歳,男性は87例
(78%)であった.DCF療法前後の平均SMIは43.4,40.3 cm2/
m2であり,平均SMI変化率は-6.8%であった.SMI変化率とOS
hazard比のspline曲線では,SMI -9%以上では喪失に伴いhazard
比が上昇する量反応性の傾向を認めた.SMI変化率のcutoff値は
-9%と定義され(Χ二乗値:4.2,p=0.040),-9%以上のSMI喪失
は,OSに有意な影響を認めた [調整済hazard比2.359 (95%信頼
区間1.024 to 5.433),p=0.044].-9%以上のSMI喪失は,9%
未満のSMI喪失と比較し,3年再発イベント率は高い傾向を示した
が,有意な関連性を認めなかった(51% vs. 31%,p=0.073).
【考察】
本研究により,高齢局所進行食道癌患者の術前DCF療法中の
平均SMI変化率は-6.8%であり,-9%以上のSMI喪失はOSに
影響する可能性が示唆された.我々は,先行研究にて術前補助
化学療法(NAC)中の骨格筋量喪失は不活動性および低栄養に
起因する可能性を明らかにした.次のステップとして,NAC中の
Prehabilitation介入のfeasibility試験を行う予定である.
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坂口 聡, 木本 龍
セッションID: P6-6-2
発行日: 2024年
公開日: 2025/01/24
会議録・要旨集
フリー
【はじめに,目的】
胃がん患者の術後合併症は生命予後に重要な影響を与えるため,
術前の理学療法(以下PT)が重要である.したがって合併症のリス
ク因子を踏まえた術前PTが推奨されている.特に運動耐容能が
低い患者には,運動療法を含むPTが効果的であることが報告され
ている.本報告では,運動耐容能が低い84歳の女性患者に対す
る術前PTの事例を紹介し,その効果を検証する.
【症例紹介,評価,リーズニング】
症例は進行性胃がんstageⅣ,多発肝臓転移を有する84歳女性.
既往歴は骨粗鬆症と腰椎圧迫骨折であった.術前ADLは屋内では
自立歩行が可能であり,屋外では両杖を使用していた.食物のつ
かえ感と嘔吐の症状が出現し,精査治療目的で入院した.1病日
から術前PTを開始し,12病日目に病名を告知された.24病日に
腹腔鏡下胃空腸吻合術を実施し,25病日から術後PTを開始した.
術後の合併症はなく41病日に自宅退院された.
【倫理的配慮,説明と同意】
本学会で症例報告することについて,患者に口頭および文書で説
明し,同意を得た.
【介入内容と結果】
術前PTプログラムは,呼吸リハビリテーションと生活指導を基本
に,低強度の有酸素運動とレジスタンストレーニングを組み込ん
だ.有酸素運動は,初期には6分間のウォーキングを2セット実施
し,その後,徐々に運動時間を延長し,1週間ごとに10分間2セット,
15分間2セットと進めた.レジスタンストレーニングでは,スクワッ
トとカーフレイズを中心に,初期は10回2セットから開始し,週ご
とに回数を増やし,最終的には20回2セットを実施した.術前3
週間で6分間歩行距離は262mから388m,SPPBは6点から10点
に改善した.EQ-5D-5Lスコアは1週間ごとに測定し0.59,0.89,
0.85,1.0に変化した.
【考察】
本症例において実施した運動療法は,6分間歩行距離やSPPB,
QOLの向上を示した.低強度の運動療法であっても高齢で身体機
能が低下した症例に対しては有効であったと思われる.またQOL
の向上は運動耐容能や身体機能の改善と密接に関連しており,心
理的な影響も大きい.特に,術前PT期間中に病名告知が行われ,
この告知が一時的なQOLの低下をもたらした可能性がある.しか
し長期的には,運動療法による体力向上が患者の精神的な耐性と
回復力を高めることに寄与していることが示唆される.
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髙橋 佳暉, 錦織 忠博, 鈴木 希衣子, 佐藤 和命, 羽鳥 浩三, 藤原 俊之
セッションID: P6-6-3
発行日: 2024年
公開日: 2025/01/24
会議録・要旨集
フリー
【はじめに,目的】
好酸球性多発血管炎性肉芽腫症(EGPA)は心臓病変や消化器病
変等が合併すると予後不良であり,神経障害等の後遺症を残す可
能性がある.EGPAに対する運動療法の効果について一定の見解
を得られてなく,また本症例は重症例であったが復職に至れたた
め,理学療法経過と介入および復職について報告する.
【症例紹介,評価,リーズニング】
バスと電車で通勤し,週5日デスクワーク中心にフルタイムで仕事
をしていた50歳代男性.現病歴は入院日(X日)の1か月前から下肢
の疼痛,X-1週から足底のしびれと歩行困難を認めており,心臓
病変,消化管出血,肺症状,腎症状,脳梗塞,多発性単神経炎
を合併したEGPAで入院した.治療はパルス療法後,X+4日から
プレドニン(PSL)が1mg/kg(75mg)投与された.理学療法開始
時(X+2日)の理学所見は,しびれは両下腿から遠位に認め,母趾
関節位置覚は両側重度鈍麻,筋力(R/L)は徒手筋力検査(MMT)
で股関節2/2,膝関節3/3,足関節背屈3/1,底屈2/2,握力(R/
L)は18.8/11.9kg,歩行はサークル歩行器で中等度介助,バラン
ス能力はBerg balance scale(BBS)で12/56点であった.問題
点はEGPAによる感覚障害および筋力低下,歩行障害,バランス
能力低下と考えた.
【倫理的配慮,説明と同意】
ヘルシンキ宣言および症例報告に関する患者プライバシー保護に
関する指針に準じて,対象者に説明を行い,書面にて同意を得た.
【介入内容と結果】
PSLは慎重に引き下げられていたため,理学療法介入は血液検査
および自覚症状を確認し,過負荷に注意をして筋力増強運動,バ
ランス練習,動作練習を実施した.退院時の理学所見は,しびれ
は両足趾に認め,母趾関節位置覚は両側軽度鈍麻,筋力(R/L)
はMMTで股関節4/4,膝関節5/5,足関節背屈4/1,底屈2/2,
握力(R/L)は21.8/15.3kgと改善を認め,歩行はオルトップ装着
にて片側ロフストランド杖で自立(快適歩行速度:0.8m/s),階段
昇降は片手支持で1足1段にて可能,バランス能力はBBSで39/56
点であり,PSL が30mgにてX+82日に自宅退院となった.X+89
日にバスと電車による通勤で復職し,退院1か月後に入院前と同等
の作業量および勤務時間で業務可能となった.
【考察】
仕事をしていた50歳代男性が重症のEGPAを発症した.医学的管
理により入院期間が長期となったが,自宅退院および復職を目指
した理学療法介入を行った結果,身体機能の向上を認めたことが
復職に至れたと考える.
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成田 春香, 遠原 まりえ, 佐久間 藤子
セッションID: P6-6-4
発行日: 2024年
公開日: 2025/01/24
会議録・要旨集
フリー
【はじめに】
大腿骨腫瘍用人工骨頭置換術は,多くの筋が切離,再建され,通
常の人工骨頭置換術と比較して,機能回復が遅く,ADLの回復に
時間を要す.がん治療再開のためには,速やかなADL拡大,早期
自宅復帰が望まれる.今回,転移性骨腫瘍対にする大腿骨腫瘍
用人工骨頭置換術を施行され,自立歩行を獲得した症例を経験し
たので報告する.
【症例紹介】
症例は50代男性.X年7月食道胃接合部腺癌(cT3N1M0 stage
Ⅲ)に対する胸腔鏡下食道亜全摘+胃管再建+頸部吻合+腸瘻造
設術施行.29日目に退院した.退院時の歩行能力は,室内フリー
ンド歩行,屋外は距離に応じて車いすを併用した.翌月には右大
腿骨近位部転移性骨腫瘍による病的骨折を合併し,骨腫瘍切除+
腫瘍用人工骨頭置換術が施行された.
【倫理的配慮,説明と同意】
発表に際し,ヘルシンキ宣言に基づき,本症例に発表の趣旨を口
頭と書面を用いて説明し,同意を得た.
【介入内容と結果】
自宅内歩行自立,早期自宅復帰後通院加療開始を目標にリハビリ
テーションを開始.術後,荷重制限なし,1回20 ~ 40分の理学
療法を,1日2回,週5回実施した.術後1日目理学療法士が介助
し車椅子乗車開始,離床時間を十分確保する為,病棟看護師とも
離床訓練を実施した.術後3日目平行棒内より歩行訓練開始した.
術後7日目固定式歩行器歩行まで獲得できた時点で,病棟での歩
行訓練を看護師付き添いで開始した.病棟内固定式歩行器歩行自
立後は,患者へ具体的な歩行距離,頻度を示し,自主トレーニン
グの実施を指示した.退院時期には院内片側ロフストランド杖使
用にて歩行自立,屋外は両側ロフスト杖を使用,距離に応じて車
いすを使用した.短距離ならフリーハンドでの移動が可能,二足
一段での階段昇降自立となった.日常生活において,洗体の一部
や靴下の着脱に介助を要したが,術後17日目に自宅退院,近隣外
来リハビリテーションへ通院しながら,退院翌月より当院外来化
学療法を開始する事が出来た.
【考察】
転移性骨腫瘍術後は,外来通院にて,速やかにがん化学療法を
開始する必要があり,短期間での自宅復帰の実現が求められる.
本症例では担当理学療法士の関わりにとどまらず,チームで情報
を共有し,個別訓練の時間を十分確保できた事,看護師による
離床への協力体制,そして患者自身の自主的な取り組みを促す指
導,これらがタイミング良く効果的に実施でき,速やかに自立歩行,
自宅復帰に結び付いたと考える.
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小西 信子, 原田 剛志, 上野 順也, 小林 大祐, 三本木 光, 柳沢 拓臣, 中嶋 康記, 土方 奈奈子
セッションID: P6-6-5
発行日: 2024年
公開日: 2025/01/24
会議録・要旨集
フリー
【目的】
ECOG Performance status(PS)は全身状態の指標であり,化
学療法の適格基準や予後予測因子として用いられているが,5段
階の主観的な評価であり,有害転帰を必ずしも予想できない可能
性がある.Short Physical Performance Battery(SPPB)は
身体機能を簡便に評価するためのテストで,がんリハビリテーショ
ン領域のOutcomeとして用いられているが,切除不能癌患者にお
いてSPPBが,予後指標となるかは不明である.本研究の目的は,
切除不能癌患者におけるリハビリテーション紹介時のSPPBと生命
予後との関連を明らかにすることである.
【方法】
本研究は単施設後方視研究である.対象は2020年から2023年
までに当科に紹介され,初回評価時にSPPBを測定した緩和ケア
病棟入棟者を除く切除不能癌患者とした.SPPB total scoreの
中央値をカットオフとしてSPPB低値群(LS群)とSPPB高値群(HS
群)の2群に分けた.主要評価項目である全生存率に対するLSの
影響をLog-rank検定およびCox回帰分析にて検討した.Cox回
帰分析では既知の予後規定因子として年齢,性別,予後不良癌,
PS,Body Mass Index(BMI),Charlson Comorbidity Index
(CCI), 化学療法治療歴,modified Glasgow Prognostic
Score(mGPS)の変数を選択し,2値化したのち多変量解析(強制
投入法)を行った.統計的有意性はp<0.05に設定した.
【倫理的配慮,説明と同意】
本研究は筆頭演者が所属する施設の研究倫理審査委員会にて承
認を受けたオプトアウトを用いて実施された.
【結果】
解析対象者は119名であり,平均年齢は71.6±9.0歳,男性は75
例(63%),SPPBは中央値6.0点(四分位範囲(IQR)=4.5-9)であ
り,LS群は66例,HS群は53例であった.生存期間は中央値93
日(IQR=30-209)であり1年全生存率は27%であった.LS群は
HS群と比較して有意に1年生存率が低かった(10% vs 21%,p
=0.017).LS群は既知の予後因子から独立して1年生存率に有
意に影響していた(調整済みハザード比(HR)=1.62,95%信頼区
間:1.03-2.51,p=0.035).一方でPSは有意差を認めなかった
(HR=1.47,95%信頼区間:0.76-2.84,p=0.242)
【考察】
がんリハビリテーション適応の切除不能癌患者においてはPSの
評価だけではなく,より詳細に身体機能を評価できるSPPBを併
用することで生命予後を鋭敏に反映できる可能性がある.今後は
SPPBの低下の要因や経過について調査する予定である.
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鈴木 文太, 筧 慎吾, 廣部 千花, 磯野 恵理, 上野 敦子, 瀬尾 幸子, 若林 秀隆
セッションID: P6-6-6
発行日: 2024年
公開日: 2025/01/24
会議録・要旨集
フリー
【はじめに】
白血病症例において,急性硬膜下血腫に手術ではなく保存的加療
を行った報告は少ない.今回,急性骨髄性白血病(AML)の加療
中に外傷後急性硬膜下血腫を合併し,保存的加療での救命後に
歩行獲得し自宅退院した症例を経験した.
【症例経過】
70歳代の男性.身長159 cm,体重52.9 kg,BMI 20.9.AML
と診断されazacitidine + venetoclax療法を2コース実施し,X-7
日目退院時の日常生活動作は自立していた.X日に寛解導入療法
目的で再入院し,X+1日に抗がん剤内服加療と理学療法が開始と
なるが,軽度意識障害を認め自宅内での転倒歴があり,同日のCT
で左急性硬膜下血腫(15 mm)と診断された.汎血球減少(WBC
2,910 /μL,Hb 7.1 g/dL,PLT 23,000 /μL)を認め, 手術
リスクが高くBest Supportive Careの方針となった.安静度は
床上であり,Barthel Index(BI):10点( 食事5点, 更衣5点),
Glassgow Coma Scale:E3V4M6,握力(右/左):9.9 kg/8.3
kg,Brunnstrome stage:上肢Ⅴ,下肢Ⅳであった.収縮期血
圧140 mmHg以下で管理し,自動運動を開始した.X+20日から
安静度が拡大し,耐久性向上のため病棟看護師と車いす座位時間
の延長を共有した.X+35日に血液学的寛解を確認し継続加療と
なり,血腫は緩徐に吸収されていることから,自宅退院を目標に
X+43日から歩行器歩行を開始した.また,栄養管理は入院日より
食事介助のもと経口摂取が可能であり,X+2 ~ 41日まで中心静脈
栄養も併用し,一日栄養摂取量は平均1,700 kcalを維持していた.
最終介入時は,注意障害のためBI:90点(歩行10点,階段5点),
握力:20.1 kg/18.5 kg,片脚立位(右/左):8.65 秒/10.0 秒,
体重:55.0 kg.X+75日に自宅退院となった.
【考察】
白血病に伴う頭蓋内出血の予後は不良であり,30日以内の死亡率
が 63.9 %とする報告もある.本症例が保存的加療で杖歩行を獲
得し自宅退院となった要因は,①主治医や病棟と密な連携による
病期に応じた理学療法プログラムの修正,②中心静脈栄養と経口
摂取を併用した栄養管理,③初発治療期からの身体機能の維持
が挙げられる.予後不良と判断された症例においても,早期から
の理学療法と多職種連携を行うことで,歩行獲得できる可能性が
ある.
【倫理的配慮,説明と同意】
ヘルシンキ宣言に基づく倫理配慮のもと,患者本人および家族に
対し,本発表の趣旨や協力と取り消しの自由,人権擁護と個人情
報の保護などについて書面にて説明し,同意を得た.
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-装具療法後進組織における執念の現状打破-
五月女 宗史
セッションID: P7-1-1
発行日: 2024年
公開日: 2025/01/24
会議録・要旨集
フリー
【はじめに,目的】
脳卒中理学療法において,急性期から積極的に長下肢装具を用い
て立位・歩行トレーニングを行うことが推奨されている.長下肢装
具は備品ではなく患者個々に適合したオーダーメード治療用長下肢
装具が望ましい.しかし,急性期病院である当院では長らく備品
使用にとどまっていた.オーダーメード治療用長下肢装具作製に向
けた組織体制構築を行い,2024年5月よりセントラルKAFOサー
ビスを導入し実践するに至った.組織体制構築に向けた取組みを
報告する.
【実践内容,方法】
当法人の理学療法士に対して実態調査を行い,課題を明確化した.
調査の結果,卒前後ともに学習機会は少なく知識・技術ともに不
足しており,有効性を感じつつも学習機会が不十分であることが
分かった.調査後,組織体制構築に取組んだ.具体的には疾患
別対応チームの再編,認定理学療法士を中心にした装具チームの
発足,院内研修会における学習機会の充実化,院外研修参加支
援の構築を行った.また,パシフィックサプライ株式会社の協力
を得てオーダーメード治療用長下肢装具作製・実践のための研修
会を定期的に行った.
【倫理的配慮,説明と同意】
実態調査において目的と趣旨を文章で説明し,得られたデータは
調査目的以外に使用しないこと,個人情報漏洩に注意することを
説明し,アンケートの回答をもって同意を得たと判断した.また,
症例に対しては,発表の目的と意義について十分に説明し,口頭
及び書面にて同意を得た.
【結果】
継続的な普及啓発活動を行った結果,当法人の承認を得てオー
ダーメード治療用長下肢装具作製の体制が構築され,セントラル
KAFOサービスを利用開始した.装具作製に携わる経験を有する
理学療法士が皆無であったため,装具作製因子に関する多くの報
告を参考にして作成した評価シートを活用し,かつ備品を使用し
た歩行動画や脳画像所見を用いた装具カンファレンスで着討議し,
装具作製の判断を適切に行うようにした.これらの取組みからオー
ダーメード長下肢装具作製とより効果的な理学療法実践を展開す
るに至った.
【考察】
実態調査によって課題を明確化し,それに伴う組織体制を構築す
ることができた.今後の当院の課題として,装具作製に向けより
適切な理学療法評価や介助手技の向上があげられ,また広義の
課題として入院期間短縮化が進む状況での回復期病院とのシーム
レスな装具連携があげられる.
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舛森 健太, 添田 遼, 和田 夏樹
セッションID: P7-1-2
発行日: 2024年
公開日: 2025/01/24
会議録・要旨集
フリー
【はじめに,目的】
脳出血の一症例を通じて下腿ベルクロにマグネットロックスライ
ダー(商品名:マグネットロックスライダー,オットーボック社)を採
用したプラスチック型短下肢装具(P-AFO)とマジックテープ式の下
腿ベルクロのP-AFOで着脱時間の違いを明らかにすること.
【症例紹介,評価,リーズニング】
右被殼出血で当院回復期病棟に入院した60代女性.当院入院
後(第36病日)に金属支柱付き長下肢装具を作製し,第60病日に
短下肢装具へカットダウンして使用した.身体機能と退院後の生
活のためにP-AFOの作製を検討し,当院備品のマジックテープ式
のP-AFOを第145病日から167病日で入院生活中に使用した.第
157病日,退院後の生活のためにマグネットロックスライダーを採
用したプラスチック型AFOを作製した.マジックテープ式よりも着
脱が楽になったという症例からの話から,着脱時間を第177病日
に計測した.計測時のFunctionnal lndependence Measure運
動項目は69点,左上肢・手指・下肢の運動麻痺は上田式12段階
片麻痺機能検査grade 1・1・4,認知機能はMini-mental State
Examination 30点,注意機能はTrail Making Test-A 266秒,
B 380秒,半側空間無視はBehavioural Inattention Test 137
点であった.装着時間は装具が足部に触れた瞬間から装着後装具
から手を離すまでを,取り外し時間は手が装具に触れた瞬間から
装具が足部から離れる瞬間までを測定した.それぞれの装具は12
日以上使用していた.
【倫理的配慮,説明と同意】
本症例報告にあたり,当院臨床研究倫理審査小委員会の承認を得
た.
【入内容と結果】
マグネットロックスライダー式P-AFOは装着が48.1秒,取り外しが
18.5秒だった.マジックテープ式P-AFOは装着が108.7秒,取り
外しが23.7秒であった.マグネットロックスライダー式P-AFOはマ
ジックテープ式P-AFOよりも着脱時間が速かった.
【考察】
マグネットロックスライダーを使用したP-AFOはベルクロの操作が
簡易となることで着脱時間を短縮する可能性がある.これは患者
や介護者の日々の装具着脱の負担を軽減し,そのための練習時間
を削減することで歩行練習等へ時間を費やせる可能性を有すと考
える.
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松元 涼悟, 横島 もも, 石川 茂幸, 小牧 俊也, 松本 恭徳, 諸冨 伸夫
セッションID: P7-1-3
発行日: 2024年
公開日: 2025/01/24
会議録・要旨集
フリー
【はじめに,目的】
脳卒中治療ガイドライン2021において, 長下肢装具( 以下,
KAFO)を用いた早期からの立位・歩行練習は強く推奨されている.
重度脳卒中片麻痺患者において,KAFOを用いた歩行練習は有効
であり,本人用の治療用装具の作製が望ましいとされている.一
方で脳卒中発症からKAFO作製までの期間がFIM運動項目の利得
に与える影響については散見される程度である.本研究は,脳卒
中発症からKAFOの作製期間がFIM運動項目の利得に与える影響
について再検証した.
【方法】
対象は,2020年4月1日から2023年3月31日までに当院回復期リ
ハビリテーション病棟(以下,回復期)に入院しKAFOを作製した
脳卒中片麻痺患者15名(平均年齢59.9±10.7歳,脳出血12名,脳
梗塞3名)とした.KAFOの作製時期が脳卒中発症から30日以内
の患者7名(男性5名,女性2名)と30日以降の患者8名(男性3名,
女性5名)の2群間に分け,後方視的にデータ抽出を行い回復期で
の入棟時と退院時のFIM運動項目の利得の比較検討を行った.統
計解析にはEZRを使用し,Mann-WhitneyのU検定で2群間の比
較を行った.有意水準はいずれも5%未満とした.
【倫理的配慮,説明と同意】
本研究ではヘルシンキ宣言に基づいて,個人情報が特定できない
ように十分に配慮した.
【結果】
KAFOの作製時期がFIM運動項目の利得に与える効果の比較検討
において,KAFOの作製時期が発症から30日以内の群は中央値
41.0点(32.5点-52.5点)の改善であり,30日以降の群は中央値
37.5点(21.5点-46.7点)の改善であり,有意差は認められなかっ
た(P>0.05).
【考察】
本研究では,脳卒中発症からKAFOの作製期間がFIM運動項目の
利得に与える効果について有意差は認められなかった.FIM運動
項目の利得が低値であった症例は,注意障害や遂行機能障害,記
憶障害等の高次脳機能障害を合併している傾向があった.また,
高次脳機能障害を合併していない,あるいは改善した症例では
KAFOの作製が30日以内,30日以降に限らずFIM運動項目の利
得は高値である傾向があった.当院ではリハビリテーション科医
師,義肢装具士,理学療法士で週1回装具診察を行っている.今
後は,多職種で総合的な判断を行い,作製を検討する必要がある
と考えられる.
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富澤 直人, 川内 颯, 柴﨑 隆次
セッションID: P7-1-4
発行日: 2024年
公開日: 2025/01/24
会議録・要旨集
フリー
【はじめに】
本症例は後腹膜脂肪肉腫により右大腿神経,右腸骨筋を合併切
除し,L2 ~ L4領域のMMT0,感覚脱失から歩行困難となってい
た.歩行獲得に向けてリハビリテーションの実施,両側支柱付き
膝硬性装具(以下,膝装具)の作製,導入を検討した.
【症例紹介】
●年齢:60代 ●性別:男性 ●主病名:後腹膜脂肪肉腫術後
●現病歴:右鼠径部痛,右下肢感覚障害が出現し受診.生化学検
査にて脱分化型脂肪肉腫再発の診断.後腹膜悪性腫瘍切除術で
右腸腰筋,右大腿神経,右腸骨静脈を合併切除し,術後の廃用
症候群にてリハビリ目的で当院転入院となる.
● 病前ADL:自立.車の運転・仕事をしていた. ●入院時
ADL:車椅子主体に一部介助~自立.
●介護度:要介護2 ●本人HOPE:歩けるようになり,自分のこ
とはなるべく自分で行いたい.
●NEED:実用的な移動手段の獲得
【理学療法評価】
●関節可動域:制限部位なし ●MMT:右L2 ~ L4領域0 他
5 ●表在感覚:右L2 ~ L4 脱失
●歩行能力:ピックアップ歩行器歩行見守り.右膝ロッキングで膝
折れを制御し,膝折れ予防を意識しながら歩行している.
●問題点:①歩行中の膝折れと膝折れに対する予防意識が必要
②反張膝による2次的合併症の発生リスク
③安全な歩行手段の制限 ④歩行での活動範囲の狭小
【目標】
本人の想定する生活像や実用的な歩行手段の獲得を目指すには膝
装具の作製,着用が望ましい.
作製する目的:①膝折れの予防と歩行に対する安心感を得る ②
2次的合併症の予防 ③歩行手段の選択肢増加 ④歩行での活動
範囲の拡大
【論理的配慮,説明と同意】
本症例発表は筆頭演者が所属する施設の所定の審査機関にて承
認を受けた.
【介入内容と結果】
●介入内容
・膝装具の作製 ・膝装具の着脱練習 ・膝装具着用,非着用
での歩行練習 ・膝装具を使用した段差昇降練習
・床上動作練習 ・自主トレーニング指導
●結果
・屋内外の移動手段をピックアップ歩行器歩行,T字杖歩行,独歩
歩行を環境に合わせて個人で選択し,自立歩行を獲得に至った.
・生活動作場面で不慣れな動作に膝装具を着用することで安心し
て動作を行うことが出来るようになった.
【考察・まとめ】
本症例は膝装具を作製したことで,膝折れの予防と不安の解消,
2次的合併症の予防を図れ,症例のHOPEである実用的な歩行手
段の獲得に至った.
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~備品用装具と備品調整用装具,本人用装具での比較~
早川 友美, 鈴木 龍太郎, 宮本 博久, 神林 拓朗, 中島 弘
セッションID: P7-1-5
発行日: 2024年
公開日: 2025/01/24
会議録・要旨集
フリー
【はじめに】
近年,脳卒中ガイドラインへの認識が広まり,急性期病院では備
品装具を使用し立位・歩行練習を行なっている.しかし,備品装
具では下肢のアライメントや周径などにより適合が得られず,歩行
に影響することを経験する.今回,備品用長下肢装具(以下,備品用)
とタオルを使用しカフと周径部の間隙を調整した備品調整用長下
肢装具(以下,備品調整用),本人用長下肢装具(以下,本人用)の
違いについて,歩行観察をもとに運動学的な視点から歩きやすさ
にどう影響するか検討した.
【対象と方法】
対象は右視床出血を発症した40代女性,35病日目にて長下肢装
具を用いて平行棒内歩行監視に至った.Brunnstrom Recovery
Stage左下肢Ⅲ,表在深部感覚重度鈍麻,Gross Muscle Test
左下肢屈曲3伸展4.
使用機器はデジタルビデオカメラ,マーカーは肩峰と股関節,膝
関節に貼付した.対象者には備品用と備品調整用,本人用をそれ
ぞれ装着,平行棒内歩行を行わせた.そして,麻痺側立脚期の矢
状面を計測し,歩きやすさを聴取した.
分析は動画を静止画に変更しImageJを用いて立脚期の股関節角
度を算出,歩行周期は目視にて確認した.また,歩行速度とケイ
デンスを求めた.
【倫理的配慮】
今回の発表に際して,患者より検討の趣旨と内容の説明を十分に
説明した上で同意を得た.
【結果】
荷重応答期での股関節角度の変化量は備品用1°,備品調整用3°,
本人用10°.歩行速度は備品用0.32m/秒,備品調整用0.38m/秒,
本人用0.54m/秒.ケイデンスは備品用60.43歩/分,備品調整用
78.06歩/分,本人用87.37歩/分.本人用にて歩きやすいとの発
言が聞かれた.
【考察】
本症例において備品用や備品調整用は,荷重応答期での股関節
角度の変化量は小さく,股関節に貼付したマーカーは荷重応答期
にて留まっていた.カフと周径部に間隙により適合が不十分である
ことが,股関節の動揺を生じさせ重心の前方移動が乏しくなった
と考える.一方で本人用の股関節角度の変化量は大きい結果となっ
た.本人用として採型し作製したため適合が良く,下肢全体が一
体となって動いたことで倒立振り子モデルに近づいたためと考え
る.急性期の片麻痺者に対する立位・歩行練習において備品装具
は有用であるが,備品装具を調整するも適合が不十分である場合,
運動学に影響することがある.そのため,早期に本人用装具を作
製し,運動学に基づく歩行練習を提供する必要があると考える.
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藤田 武士
セッションID: P7-1-6
発行日: 2024年
公開日: 2025/01/24
会議録・要旨集
フリー
【はじめに】
当院は,外来にて退院後の活動性を評価し,装具の検討,作成す
る場合も多い.今回,回復期病棟時,裸足歩行で屋内自立するも,
退院後に見守りが必要な症例に対して,外来で屋外歩行を視野に
装具を処方し,歩行能力の向上が見られたことを報告する.
【症例紹介】
60歳代男性.左被殻出血による右片麻痺を呈している.発症5カ
月から外来開始.初回PT評価:Br.stageⅡ-Ⅲ-Ⅲ,深部感覚重度
鈍麻,下肢MAS 1,BBS 33/56, FIM 86/126,移動(歩行)は5,
階段は1.屋内は裸足と杖で歩行し,屋外は車椅子で移動.裸足
と杖で実施した10m歩行は66秒,歩行速度0.15m/s.足関節底
屈位で接地し,立脚相に下腿の前傾は出現せず,反張膝,右骨盤
の後方回旋及び立脚時間の短縮を認めた.
【倫理的配慮,説明と同意】
今回の発表に際して,症例及びご家族へ書面にて説明,同意を得て
いる.
【介入経過と結果】
PTは週3回,1回3単位実施.右立脚相での支持性向上と足関
節底屈防止を目的に長下肢装具,金属支柱付き短下肢装具(以下
AFO)を併用し介入.
外来開始3 ヶ月:裸足歩行による下腿三頭筋の筋緊張亢進の抑
制と立脚期の反張膝改善,安定性確保を目的にAFOを作成.作
成後の経過は10m歩行実施時に3軸加速度計(AYUMIEYE,株
式会社早稲田EHA製)を使用し患者とも共有した.結果,BBS
47/56,AYUMIEYEは10m歩行37.77秒, 歩行速度0.26m/s,
歩幅18.2cm,root mean square平均(以下RMS)23.118,歩
行周期ばらつき時間0.369秒であった.
外来開始7ヶ月:たわみを利用した踏み返し補助,それによる推
進力及びクリアランスの向上を目的に,身体障碍者手帳を利用
しSHBを作成. 結果,BBS 49/56,AYUMIEYEは10m歩行
19.09秒,歩行速度0.52m/s,歩幅40.8cm,RMS 4.622,歩
行周期ばらつき時間は0.082秒.家族と屋外歩行が可能になるな
ど,活動範囲の拡大を認めた.
外来終了時(開始後1年):Br. stage Ⅳ-Ⅳ-Ⅳ,深部感覚軽度鈍麻,
下肢MAS 1+,BBS 49/56,FIM 113/126,移動(歩行)は6,階
段は6.AYUMIEYEは10m歩行15.47秒,歩行速度0.65m/s,歩
幅42.3cm,RMS 5.220,歩行周期ばらつき時間0.063秒となった.
【考察】
退院による環境変化で歩行状況が変化した際,能力が低下する場
合がある.その変化に対応し安定性を確保する際,裸足歩行可能
であったとしても装具の検討は必要と考える.またAFOは麻痺側
の立脚期,SHBは立脚終期から前遊脚期の向上と身体機能にあ
わせて段階的に作成し,屋外自立に至った.退院後も外来にて生
活に即した装具を検討できる環境は重要であると考える.
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白井 誠
セッションID: P7-2-1
発行日: 2024年
公開日: 2025/01/24
会議録・要旨集
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【目的】
多系統萎縮症(MSA)では,筋萎縮性側索硬化症(ALS)に比べて
意思伝達手段の支援に関する報告は少ない.今回,当社住宅型施
設のMSA療養者一症例を対象に意思伝達手段の支援経過につい
て,後方視調査を実施した.
【方法】
対象は60歳代,女性,MSA-P,気管切開術後,胃瘻造設後,
経過86 ヶ月であった.調査は当施設入居~退所までの22 ヶ月間
とし,意思伝達手段の支援経過を記録から読み取った.支援では
訪問系のリハ専門職と住宅系の職員が主導権を持ち進めていた.
意思伝達手段はADLでの主な手段とし「推移,使用期間,阻害要因,
支援内容」を抽出した.阻害要因は支援で問題となった機能障害,
次段階へ移行した要因とした.
【倫理的配慮,説明と同意】
ヘルシンキ宣言に基づき,対象者には説明をした上で同意を得た.
また,本研究は筆頭演者が所属する施設代表の承認を受けた.
【結果】
意思伝達手段の推移・使用期間は,発語・2 ヶ月→指差し文字盤・
5 ヶ月→透明文字盤・14 ヶ月→身体表現・1ヶ月であった.補助
手段として,透明文字盤と同時期に意思伝達装置・10 ヶ月を使用
した.阻害要因では「気管切開,構音障害,動作緩慢,動作時振
戦,眼瞼痙攣,頚部ジストニア,発動性低下」が抽出された.支
援は環境調整「レティナ・ワンウェイバルブ,フィンガーボード,フ
リック式文字盤,スイッチ入力制御,キューサイン」,身体調整「徒
手的介入(開眼),ポジショニング」であった.
【考察】
神経難病の意思伝達手段の支援ではALSでの検討が進んでおり,
意思伝達装置の適合がこの中核となっている.今回のMSAでは意
思伝達装置は補助手段に止まり,他の手段の確保が重要であった.
阻害要因ではALSは筋力低下が中心であるが,MSAでは「動作緩
慢,動作時振戦,眼瞼痙攣,頚部ジストニア,発動性低下」など
が抽出された.今後もMSA特有の阻害要因に対して問題解決を
進めたい.
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齋藤 孝義, 右田 正澄, 佐藤 南, 前田 佑輔
セッションID: P7-2-2
発行日: 2024年
公開日: 2025/01/24
会議録・要旨集
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【はじめに,目的】
本学では,授業内で小田原市の公共道路を利用した「車いすによ
る道路走行実習」を行っている.この実習の目的は,市内の駅周
辺及び小田原城を有する城址公園を車いすで移動し,障がい者及
び介助者の体験を通し生活環境の重要性を学ぶことである.実習
終了後は参加学生から意見を集約し,小田原市にバリアフリーに
対する意見書及および改善案を提出している.本発表はその取り
組みを報告する.
【実践内容,方法】
実施日時は2024年4月22日(月)14:40 ~ 18:00の前期必修科
目である生活環境学内であり,参加者は本学理学療法学科在学中
の3年生83名及び引率教員4名であった.実習形態は,83名の学
生を8班に分け,引率教員は1名で2班を担当し,各班に2台車いす
を用意した.当日は14:40から2班ずつ(約20名)が本学を出発し,
後続の班は5分程度の間隔を空けて出発した.小田原警察署の指
示により,交差点等には安全確認要員を設置し,実習を行ってい
ることを周囲に示すために全員実習着を着用した.
小田原の地はその歴史から坂道や段差が多数存在する.そのため,
実習コースは小田原駅構内を通り,小田原城を有する小田原城址
公園を通って本学に戻る全長3㎞とした.実習中,学生は患者役,
介助者役,見守り役を交代で体験した.
【倫理的配慮,説明と同意】
学生には実習の内容を学会に発表する説明を事前に行った.発表
の際,個人が特定されないように配慮するとともに本件に関して
了承がない場合も学業の成績や今後の学生生活に一切の影響を与
えないことを説明した.その後,実習に参加した全員に了承を得た.
【結果】
学生からは,段差の解消や障がい者でも利用しやすい自動販売機
の設置等市内のバリアフリー化したほうが良いと思われる箇所の
意見が多く挙がった.全8班から挙がった意見を報告書としてまと
め,バリアフリーに対する意見書及および改善案として小田原市へ
提出した.
【考察】
本実習で,車いすの操作を学ぶだけでなく小田原市という特徴的
な環境が高齢者,障がい者,車いす使用者にとって身近な困難が
あることを体験できたと考える.このような体験は理学療法士に
なった後も住宅改修等で役立つと考えられる.今後もこの取り組
みを続けていく.
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