保育学研究
Online ISSN : 2424-1679
Print ISSN : 1340-9808
ISSN-L : 1340-9808
特集号: 保育学研究
50 巻, 3 号
―特集 保育実践と保育環境―
選択された号の論文の17件中1~17を表示しています
第1部 特集論文
<総説>
原著<論文>
  • 竹井 史
    2012 年 50 巻 3 号 p. 242-251
    発行日: 2012/12/25
    公開日: 2017/08/04
    ジャーナル フリー
    幼児にとっての土遊びは人間形成においてとりわけ重要な活動の一つである。本研究は,レーザー分析,走査型電子顕微鏡(SEM)による工学的な手法を中心として,園庭の土環境における客観的資料を得ることで環境改善の方策を得ることを目的とした。本研究を通じ,明らかになったのは,子どもの遊びが活性化される土環境には,粘土及びシルト(微砂)成分が含まれていることである。さらに,園庭の土環境が均質化されつつある現代の園庭には粘土,シルトの含まれた土環境の設置が望まれるが,その土環境は,河川プラントから排出される粘土質土の利用によって改善される可能性が示された。
  • ―表現行為を可能にする自然材と道具の関係性―
    石倉 卓子
    2012 年 50 巻 3 号 p. 252-262
    発行日: 2012/12/25
    公開日: 2017/08/04
    ジャーナル フリー
    園庭での自然材の遊びにおいて,幼児の表現行為を可能にしている道具や場について整理した。特に,自然材と道具との関係性に着目し,そこから生まれる表現行為について考察を加えた。道具を使うことが多かった水・砂や土・雪や氷の遊びでは,自然材と道具の特性が幼児の表現行為を規定する場合があることを確認した。水の遊びでは「流す」「溜める」「つなげる」,砂や土の遊びでは「入れる」「溜める」「混ぜる」,雪や氷の遊びでは「入れる」「押し固める」「載せる」という表現行為が多く見られ,それぞれの遊びに必要な道具の傾向性をとらえて環境を構成する必要があることを述べた。
  • ―絵本コーナー内の場と読み方―
    山田 恵美
    2012 年 50 巻 3 号 p. 263-275
    発行日: 2012/12/25
    公開日: 2017/08/04
    ジャーナル フリー
    幼稚園の絵本コーナー内の場所(家具配置),設定(絵本の表紙の見え方)と幼児の絵本の読み方の関係を検討した。場所と読み方の関係からは,絵本コーナーには2人が並んで絵本を広げられる大きさのテーブルと,姿勢や子ども同士の位置関係をフレキシブルに変えられるくつろげるスペースの両方が必要であることが示された。絵本を介した他児との相互作用が見られ,様々な絵本の共有の仕方に柔軟に対応できる空間を用意しておくことが重要であるといえる。設定としての表紙の見えの効果については,実際に読まれる本の多くは表紙が見えるように置かれている本であり,特にコーナーが居場所として定着していない子にとってはディスプレイに飾られた絵本があることがコーナーの利用に効果を持つことが示された。
  • ―KJ法による保育者記録の分析を通して―
    亀山 秀郎
    2012 年 50 巻 3 号 p. 276-286
    発行日: 2012/12/25
    公開日: 2017/08/04
    ジャーナル フリー
    本研究は,幼稚園における稲作の意義を保育者の記録から検討する。本研究では,3年間,2箇所の幼稚園において91名の年長児の4,451件の記録から検討した。その結果,稲作に関する記録を90件抽出した。そして抽出した記録をKJ法で分析した結果,「田んぼでの体験」,「成長や変化への気付き」,「農具の扱い方の気付き」,「ワラの特徴への気付き」,「自作のお米の味わい」といったカテゴリーに分類された。個々のカテゴリーと記録から,以下の3点の意義が見出された。1)稲作をする過程で感情を伴った体験ができること,2)稲作を通して多様な気付きができること,3)稲作が幼児の生活と結び付くこと。さらに,稲作の実践上の課題についても明らかにした。
  • ―モノの役割に焦点をあてて―
    松本 博雄, 松井 剛太, 西宇 宏美
    2012 年 50 巻 3 号 p. 287-297
    発行日: 2012/12/25
    公開日: 2017/08/04
    ジャーナル フリー
    本研究の目的は,幼児期の協同的経験を取り上げ,それを支える保育環境作りにおけるモノの役割・機能を明らかにすることであった。香川大学教育学部附属幼稚園の3歳児クラスと4歳児クラスの2事例を対象に分析した。その結果,次の2点が明らかになった。第1に,モノの特性が,子ども間に育まれる協同的な経験を制約しうるということである。例えば,ブロックのように定型の想像を生むモノは,追究・創造に至るまでの魅力は見出しにくいことがわかった。第2に,協同へのプロセスは幼児期において年齢を越えて見られるが,そこにおけるモノの機能の仕方は,年齢によって様相が異なるということである。したがって,保育者はそのモノの機能に配慮して導入の場面を考える必要がある。
  • 汐見 稔幸, 村上 博文, 松永 静子, 保坂 佳一, 志村 洋子
    2012 年 50 巻 3 号 p. 298-308
    発行日: 2012/12/25
    公開日: 2017/08/04
    ジャーナル フリー
    本研究は,乳児保育室の空間構成が子どもの行為や保育者の意識にあたえる影響について,アクションリサーチ的手法を取り入れて明らかにしたものである。0歳児高月齢クラス13名の乳児を自由遊び時間にビデオ観察し,行動の解析を行った。その結果,空間構成の変化とともに乳児の遊びに「落ち着き,集中し,じっくり」とした変化が認められた。また保育者には,子どもの変容を通じて自らの保育を振り返り,環境構成に対する意識の変化が見られた。これらのことから,乳児保育において空間構成は,子ども行為及び保育者の意識に大きく関わることが明らかになった。本研究は,保育の質を高める手法となりうる可能性を示唆していると考える。
  • 境 愛一郎
    2012 年 50 巻 3 号 p. 309-319
    発行日: 2012/12/25
    公開日: 2017/08/04
    ジャーナル フリー
    本研究の目的は,「境」としてのテラスは,幼児にどのような用途で活用され得るのかを明らかにするとともに,それらの用途は,周辺の場所や活動との間にどのような関係性を有するのかを検討することである。本研究では,幼稚園における観察によって収集した事例を質的に分析した。その結果,「境」としてのテラスは,幼児に<幼稚園の玄関口>,<屋内との連続空間>,<屋外との連続空間>,<遊び場>,<開放的な空間>,<活動猶予空間>の6用途で活用される場所であることが示された。また,この6用途は,【園生活のジャンクション】,【あいまい性】というテラスの性質を中核として,周囲の場所をも巻き込みながら,相互に関係性を有することが明らかとなった。
第2部 委員会報告
第12回国際交流委員会企画シンポジウム報告
災害時における保育問題検討委員会企画シンポジウム報告
第3部 保育の歩み(その2)
英文目次
編集後記
奥付
feedback
Top