タウリンリサーチ
Online ISSN : 2434-0650
Print ISSN : 2189-6232
8 巻, 1 号
選択された号の論文の5件中1~5を表示しています
  • 伊藤 崇志, グエン ホアン カン, 村上 茂
    2022 年8 巻1 号 p. 5-6
    発行日: 2022年
    公開日: 2024/09/20
    ジャーナル オープンアクセス
    肺感染症は肺および全身に炎症を引き起こし、骨格筋の衰弱など全身の重篤な症状を伴うことがある。N-クロロタウリン(タウリンクロラミン;TauCl)は細胞内で抗炎症作用を示すが、In vivo 実験に関する情報はほとんどない。 我々は、大腸菌由来のリポ多糖(LPS)誘発肺炎に対するTauCl の抗炎症作用を評価した。TauCl の腹腔内投与によりLPS により誘発される肺炎および一部の炎症性サイトカインの産生が抑制された。さらに、TauCl 投与により骨格筋萎縮が緩和された。 以上の結果より、TauCl の腹腔内投与が生体内で急性肺炎に関連した肺および全身の炎症を抑制することが示唆された。
  • 宮﨑 照雄, 本多 彰
    2022 年8 巻1 号 p. 7-10
    発行日: 2022年
    公開日: 2024/09/26
    ジャーナル オープンアクセス
    骨格筋における脂肪酸エネルギー代謝では、TCA回路で消費される以上のアセチル CoA(AcCoA)が ミトコンドリア内で生成されるため、遊離 CoA の減少に伴う代謝低下を招く恐れがある。長鎖脂肪酸 β 酸化では、カルニチンが生成された AcCoA のアセチル基をアセチルカルニチン(ACT)に転換する事 で、ミトコンドリア内の CoA 量を制御する。タウリンには、酢酸(アセチル基)をN-アセチルタウリン(NAT)に転換する作用がある事と、持久性運動時により骨格筋や血液中で NAT 量が増加する事から、タウリンにもミトコンドリア内の AcCoA と CoA のバランスを制御する作用があると考えられる。本研究では、マウス C2C12 筋管細胞による検証で、タウリンは短鎖脂肪酸(酢酸)を NAT に、カルニチンは長鎖脂肪酸を ACT に転換する事で、ミトコンドリア内の AcCoA の過剰な蓄積を防ぎ、円滑なエネルギー代謝を維持している事が明らかとなった。
  • 薩 秀夫, 後藤 祐輔, 嶋中 花, 井前 正人, 村上 茂, 和多利 研二, 若林 俊一, 朴 聖俊, 中井 謙太, 清水 誠
    2022 年8 巻1 号 p. 11-13
    発行日: 2022年
    公開日: 2024/09/26
    ジャーナル オープンアクセス
    タウリンは腸管上皮モデル Caco-2 細胞においてレドックス制御に関与する TXNIP の mRNA 発現を亢進し、その亢進は転写レベルで制御されていることを報告している。本研究では、タウリンによるTXNIP 転写活性亢進の作用機序について、プロモーター解析を中心に検討を進めた。その結果、TXNIPプロモーター領域の+200/+218 領域にタウリン応答配列が存在することが明らかとなった。さらにバイオインフォマティクス解析より転写因子 Ets-1 の関与が推定され、実際に Ets-1 がタウリンによって活性化され、TXNIP 転写活性を亢進することが示唆された。
  • 村上 茂, 舟橋 耕平, 玉川 夏希, 有馬 寧, 伊藤 崇志
    2022 年8 巻1 号 p. 14-16
    発行日: 2022年
    公開日: 2024/09/26
    ジャーナル オープンアクセス
    タウリンはストレプトゾトシン(STZ)誘発 1 型糖尿病マウスにおいて、血糖値の上昇を抑制した。糖尿病マウスでは肝臓のグリコーゲン量が減少し、血中ケトン体が顕著に増加したが、タウリンの 8 週間投与によりこれらの変化は抑制された。タウリンは肝臓の糖新生に関連する酵素の発現に影響を与えなかったが、肝臓の糖輸送体(GLUT2)の mRNA発現を有意に増加させた。正常マウスでのマイクロアレイ解析では、タウリン投与は肝臓のグリコーゲン合成に関連した遺伝子発現を増加させた。タウリン投与はまた、糖尿病マウスの肝臓、腎臓およびすい臓における酸化ストレスの増加を抑制した。以上 の結果から、タウリンの 1 型糖尿病抑制効果のメカニズムとして、肝臓の糖代謝異常の改善と抗酸化作用の関与が示唆された。
  • 松岡 慶弥, 川ノ口 潤, 長岡 伸征, 山本 晃久, 有馬 寧
    2022 年8 巻1 号 p. 17-18
    発行日: 2022年
    公開日: 2024/10/01
    ジャーナル オープンアクセス
    タウリン(2-アミノエタンスルホン酸)は魚介類や頭足類だけではなく、哺乳類にも多く含まれる遊離アミノ酸の一つである。生体内において、タウリンは脳の発達と神経細胞の生存に必要不可欠な栄養素であると考えられている 1。また、既に報告されている浸透圧調節、タンパク質リン酸化の調節、カルシウム調節、抗酸化、膜安定化、胆汁酸抱合、脂質 代謝、グルコース調節など、さまざまな作用が知られている 2。さらにタウリンは、脂質過酸化(LPO)生成物を減らす重要な役割を果たし、それにより細胞を組織の損傷から保護すると報告されている 3。他にも近年では、L-グルタミン酸誘発神経毒性に対する神経保護作用を発揮するなど、重要な生理機能に有することも明らかとなった 4。 伝統医学の一つである鍼灸は、古来より特定の体の部位(ツボ)への刺激により全身の生理機能が調節できるとされ、特に局所や全身での鎮痛や抗炎症、様々な疾患や不定愁訴に対する治療法として知られている。近年では、社会的敗北ストレスモデルマウスへの鍼刺激が、低下した脳内の神経栄養因子の発現を回復させることが報告されており 5、中枢神経系に対する鍼灸の神経保護効果が注目されている。しかしながら、鍼灸の作用機序や効果を発揮するメカニズムに関する研究報告は少ない。本稿では、これまでに報告されている脳虚血に対する鍼灸とタウリンに関連した研究を紹介する。
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