タウリン(2-アミノエタンスルホン酸)は魚介類や頭足類だけではなく、哺乳類にも多く含まれる遊離アミノ酸の一つである。生体内において、タウリンは脳の発達と神経細胞の生存に必要不可欠な栄養素であると考えられている 1。また、既に報告されている浸透圧調節、タンパク質リン酸化の調節、カルシウム調節、抗酸化、膜安定化、胆汁酸抱合、脂質
代謝、グルコース調節など、さまざまな作用が知られている 2。さらにタウリンは、脂質過酸化(LPO)生成物を減らす重要な役割を果たし、それにより細胞を組織の損傷から保護すると報告されている 3。他にも近年では、L-グルタミン酸誘発神経毒性に対する神経保護作用を発揮するなど、重要な生理機能に有することも明らかとなった 4。 伝統医学の一つである鍼灸は、古来より特定の体の部位(ツボ)への刺激により全身の生理機能が調節できるとされ、特に局所や全身での鎮痛や抗炎症、様々な疾患や不定愁訴に対する治療法として知られている。近年では、社会的敗北ストレスモデルマウスへの鍼刺激が、低下した脳内の神経栄養因子の発現を回復させることが報告されており 5、中枢神経系に対する鍼灸の神経保護効果が注目されている。しかしながら、鍼灸の作用機序や効果を発揮するメカニズムに関する研究報告は少ない。本稿では、これまでに報告されている脳虚血に対する鍼灸とタウリンに関連した研究を紹介する。
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