タウリンリサーチ
Online ISSN : 2434-0650
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6 巻, 1 号
選択された号の論文の19件中1~19を表示しています
  • 八田 秀雄
    2020 年 6 巻 1 号 p. 6-9
    発行日: 2020年
    公開日: 2021/09/20
    ジャーナル オープンアクセス
    糖は運動の主エネルギー源だが、貯蔵糖であるグリコーゲンの体内総量は500g程度と多くはない。グリコーゲンが減ると単に主エネルギー源の低下という以上に、筋収縮を阻害することから、長時間運動の有力な疲労の原因となる。我々はタウリンの長時間運動の抗疲労効果についてマウスを用いて検討してきた。その結果タウリン摂取マウスは長時間運動後の自由運動量が高く、筋グリコーゲンの再合成が高まっていることがわかった。そのメカニズムとして、グルコース取り込みの促進や糖分解と利用の抑制によっていることが示された。そこで長時間運動後の回復をタウリンが促進することが考えられる。
  • 芳賀 穣, 伊藤 智子, 中村 康平, M M Gonzales, 李 凰玉, 廣野 育生, 佐藤 秀一
    2020 年 6 巻 1 号 p. 10-12
    発行日: 2020年
    公開日: 2021/09/20
    ジャーナル オープンアクセス
    コイやマダイ、ヒラメではシステインスルフィン酸脱炭酸酵素(CSD)活性が低いため、体内でタウリンを合成できないと考えられてきたが、各々システイン酸経路(マダイ)やシステアミン経路(コイ、ヒラメ)によりタウリンを合成できることが明らかとなった。さらに、マダイでは植物性原料による腸管損傷や炎症、それに伴うサイトカインの発現増加が起こるが、タウリンの添加により、これらの症状が緩和されることが明らかとなった。
  • 浅野 敦之, 牛山 愛
    2020 年 6 巻 1 号 p. 13-15
    発行日: 2020年
    公開日: 2021/09/20
    ジャーナル オープンアクセス
    精子や卵子は制限時間内に様々な体内環境を通過し受精や発生を完了しなければならない。この間、あらゆる変化はストレスに変換され細胞に襲いかかる。これに対し、転写翻訳機能を欠く精子は、自己に予め組まれた機能あるいは細胞外因子を防御機構に利用する。 タウリンは雌雄の生殖器道内腔液に豊富に存在する主要アミノ酸であり、細胞内浸透圧調整、細胞内シグナリング、細胞膜安定化、細胞内カルシウムなど様々な機能があることは知られている。また古くから体外培養系に添加剤として用いることで受精発生機能の向上が認められるが、その分子メカニズムはよく分かっていない。本稿では生殖を中心にタウ リンの機能的役割を紹介する。
  • HOANG KHANH NGUYEN, 前山 小百合, 村上 茂, 伊藤 崇志
    2020 年 6 巻 1 号 p. 16-17
    発行日: 2020年
    公開日: 2021/09/20
    ジャーナル オープンアクセス
    海藻にはタウリンや多様なタウリンの誘導体が含まれることが知られている。タウリンには多くの生理作用や健康効果があることがよく知られているが、タウリン誘導体に関する知見はほとんどない。N-メチルタウリン(以下、NMT)は紅藻に含まれるタウリン誘導体の一つで、本実験では経口投与したNMT の体内動態を解析し、マウスの体内に効率よく吸収されることを分かった。また、NMT の持続的なNMT の摂取により、多くの組織に移行することが明らかになった。
  • 秋田 天平, 細井 泰志, 伊藤 崇志, 福田 敦夫
    2020 年 6 巻 1 号 p. 18-19
    発行日: 2020年
    公開日: 2021/09/20
    ジャーナル オープンアクセス
    タウリンは胎生期及び生後発達期の脳内に豊富に存在しており、以前の我々の研究で、タウリンには胎生期大脳皮質発達過程での錐体神経前駆細胞の移動を適切に制御する役割があることが判明している。今回タウリントランスポーター(TauT)欠損により、胎生期からタウリンが枯渇したマウスでの生後の錐体神経発火活動を解析したところ、興奮性刺激入力中の神経発火頻度は抑えられつつも、強い入力中の連続発火はむしろ維持されやすくなっていることが判明した。
  • 渡部 美穂, 細井 泰志, 秋田 天平, 伊藤 崇志, 福田 敦夫
    2020 年 6 巻 1 号 p. 20-22
    発行日: 2020年
    公開日: 2021/09/20
    ジャーナル オープンアクセス
    中枢神経系における細胞内タウリンの生理的役割を明らかにするために、細胞内にタウリンを取り込むタウリントランスポーター(TauT)を欠損させたTauT ノックアウトマウスを用いて、細胞内タウリンの枯渇が抑制性神経伝達に及ぼす影響を調べた。その結果、TauT ノックアウトマウスの大脳皮質感覚野の錐体細胞ではGABAA 受容体を介した微小抑制性シナプス後電流の振幅が低下しており、GABAA受容体電流の最大振幅の低下がみられた。また、GABAA 受容体のシナプス後膜での発現量の低下が認められた。さらに、GABAA 受容体の膜発現を制御するβ3 サブユニットのプロテインキナーゼC によるリン酸化が減少していた。以上より、TauT により神経細胞内に取り込まれたタウリンはプロテインキナーゼC によるGABAA 受容体β3 サブユニットのリン酸化を促進し、GABAA受容体の抑制性シナプス後膜への移行を維持していることが示唆された。
  • 石橋 賢, 阪東 勇輝, 佐藤 康二, 福田 敦夫
    2020 年 6 巻 1 号 p. 23-25
    発行日: 2020年
    公開日: 2021/09/20
    ジャーナル オープンアクセス
    タウリンは大脳皮質発達期の脳に高濃度で存在し、GABAA 受容体の持続的活性化を介して皮質層構造構築の調節因子として働くことが示されてきた。本研究でタウリンの皮質板細胞に対する影響を検討したところ、細胞内Ca2+濃度の上昇がタウリン濃度依存性に観察された。この作用がタウリンの薬理学的作用によるものなのか、タウリンが引き起こす興奮性のノイズコンダクタンスによるものなのか検討するため、ダイナミッククランプによる計測を実施したところ、タウリンノイズコンダクタンスのみでも細胞内Ca2+濃度の上昇が観られた。このことからタウリンは、GABAA受容体の持続的活性化により細胞内Ca2+濃度の上昇を引き起こし皮質層構造構築の調節に関与する可能性が示された。
  • 中村 康平, MM Gonzales, 伊藤 智子, 益田 玲爾, 佐藤 秀一, 芳賀 穣
    2020 年 6 巻 1 号 p. 26-27
    発行日: 2020年
    公開日: 2021/09/20
    ジャーナル オープンアクセス
    昨年度の報告で、ヒラメ稚魚においてシステアミン経路が存在する可能性が示唆された。ヒラメ稚魚ではタウリンの投与によりシステインスルフィン酸経路の中間産物であるシスタチオニンが減少することが知られている。しかし、システアミン経路に同様のフィードバック機構があるかは不明である。そこで、本研究ではヒラメ稚魚にシステアミンおよびタウリンを併用投与し飼育した。その結果、システアミンとタウリンの併用添加区で魚体中のタウリン含量はタウリン単独添加区より高くなり、システアミンジオキシゲナーゼの遺伝子発現に他の試験区と変化はなかった。これらのことから、システアミン経路はタウリンによるフィードバック制御を受けないことが示唆された。
  • 三浦 征, 小峰 昇一, 宮下 菜緒, 時野谷 勝幸, 今野 雅生, 川津 俊輔, 大森 肇
    2020 年 6 巻 1 号 p. 28-31
    発行日: 2020年
    公開日: 2021/09/20
    ジャーナル オープンアクセス
    一過性レジスタンス運動後に血中タウリン濃度が低下する可能性が示唆されている。本研究では、運動前後および運動1-4 日後の血中タウリン濃度を測定し、血中タウリン濃度の経時的変化を分析した。さらに、血中タウリン濃度と血中筋損傷マーカーの相関分析を行い、レジスタンス運動後に血中タウリン濃度が低下する機序に迫った。その結果、運動2、 3日後に運動直後と比較して血中タウリン濃度は低下した。また、筋損傷マーカーであるLDH と血中タウリン濃度に正の相関関係が認められたことから、血中タウリン濃度は筋損傷に応答する可能性が示唆された。
  • 小林 雄晟, 黒川 宏美, 松井 裕史, 小峰 昇一, 大森 肇
    2020 年 6 巻 1 号 p. 32-34
    発行日: 2020年
    公開日: 2021/09/20
    ジャーナル オープンアクセス
    がん細胞は正常細胞と比較して活性酸素種(ROS)レベルの変化に脆弱である。そこで胃粘膜正常細胞とそのがん様変異株の細胞増殖に対して、タウリンの抗酸化作用がどのような影響を及ぼすのかを検討した。ラット胃粘膜上皮細胞RGM1 とそのがん様変異株RGK1 を用いて、培養後の各細胞のプレート内に0-500mM のタウリンを添加し、24 時間培養して細胞毒性試験を行った。続いて同様に培養したプレート内で対照群と任意の濃度に定めたタウリン添加群に分け、約18 時間培養後、細胞全体とミトコンドリア中のROS 濃度を測定した。200mM のタウリン濃度ではRGM1 の細胞生存率に変化はなく、RGK1では有意に低下していた。またその濃度下でのRGK1 の細胞全体とミトコンドリア中のROS 濃度は対照群と比較しタウリン群でそれぞれ有意に減少していた。この時、がん細胞内ではROS レベルの低下によるアポトーシスが発生した結果、がん細胞が減少していたものと推察される。
  • 宮﨑 照雄
    2020 年 6 巻 1 号 p. 36-38
    発行日: 2020年
    公開日: 2021/09/20
    ジャーナル オープンアクセス
    哺乳類のタウリン合成経路において、ヒポタウリンからタウリンの生成を触媒する酵素は、長年、同定されていなかった。本反応は、酸素を必要としないNAD 依存性のhypotaurine dehydrogenase によるとされていたが、本酵素の精製には至っていなかった。本年発表されたノックアウトマウスとin vitro実験での検証を示した論文にて、Flavin-containing Monooxygenase 1 (FMO1)が、NAD(P)H 依存的にヒポタウリンの酸素添加反応を行うタウリン合成酵素であると報告された。
  • 伊藤 崇志
    2020 年 6 巻 1 号 p. 39-42
    発行日: 2020年
    公開日: 2021/09/20
    ジャーナル オープンアクセス
    近年、海外での拡張型心筋症患者のエクソーム解析や大規模なゲノムワイド関連解析から、拡張型心筋症に関連したタウリントランスポーター(TauT,SLC6A6)遺伝子に関する遺伝子多型やレアバリアントが相次いで同定されており、ヒトの拡張型心筋症の発症にもタウリン欠乏が関連することが明らかにされつつある。
  • 羅 成圭
    2020 年 6 巻 1 号 p. 43-46
    発行日: 2020年
    公開日: 2021/09/20
    ジャーナル オープンアクセス
    日本において糖尿病は国民病と言えるほど罹患者の多い疾患であるが、タウリンには糖尿病による高血糖状態を改善する効果がある。骨格筋はインスリンや運動(筋収縮)の作用で血糖を取り込み、血糖値を低下させる重要な器官である。本稿では「膵臓からのインスリン分泌」と「骨格筋における血糖取り込み」にタウリンが及ぼす影響についてまとめた。 タウリンは、膵臓からのインスリン分泌や、インスリンシグナル関連因子、そして糖輸送体GLUT4 の発現量を高めるようだ。しかし、タウリンがインスリン標的器官である骨格筋における血糖取り込みに及ぼす影響ついては十分に研究されておらず、タウリンが骨格筋の血糖取り込みを高める機序については、これから更なる研究が必要である。
  • 川ノ口 潤, 高木 健, 山本 晃久, 長岡 伸征, 有馬 寧
    2020 年 6 巻 1 号 p. 47-49
    発行日: 2020年
    公開日: 2021/09/20
    ジャーナル オープンアクセス
  • 村上 茂
    2020 年 6 巻 1 号 p. 50-53
    発行日: 2020年
    公開日: 2021/09/20
    ジャーナル オープンアクセス
    加齢や紫外線照射は皮膚のバリアを傷害して皮膚の機能を低下させ、長期的にはしみやしわの原因となる。タウリンは、表皮の顆粒層から有棘層上部に局在し、浸透圧調節物質として表皮の水分維持や細胞の容量調節において重要な役割を担っていると考えられている。加齢や紫外線照射により皮膚のタウリン量は減少するが、培養細胞やヒトでの検討から、タウリン補給が皮膚の機能回復に有効であることが示されている。最近、タウリンが表皮のタイトジャンクションの構成タンパク質に直接影響を与え、その機能を増強する可能性も報告されている。
  • 宮﨑 照雄
    2020 年 6 巻 1 号 p. 54-56
    発行日: 2020年
    公開日: 2021/09/20
    ジャーナル オープンアクセス
    タウリン枯渇食供与ネコでは、後天的な生体中タウリン欠乏に伴い胆汁酸へのタウリン抱合率が低下する。また、肝臓におけるタウリン修飾ミトコンドリア(mt)-tRNA 量も顕著に減少し、ミトコンドリア活性が低下した。さらに、ミトコンドリアの胆汁酸合成(コレステロール異化)酵素であるCYP27A1の発現が有意に減少し、その代謝産物である27 ヒドロキシコレステロール量も有意に減少した。その結果、胆汁中の胆汁酸濃度が減少し、胆汁酸組成も大きく変化(コール酸>ケノデオキシコール酸)した。後天的なタウリン欠乏により、mt-tRNA タウリン修飾不全に伴うミトコンドリア機能低下が生じ、肝臓におけるコレステロール代謝に異常をきたすことが明らかとなった。
  • 山下 剛範, 加藤 俊宏, 磯貝 珠美, 小松 悠太, 具 然和, 有馬 寧
    2020 年 6 巻 1 号 p. 57-61
    発行日: 2020年
    公開日: 2021/09/20
    ジャーナル オープンアクセス
    放射線曝露は放射線治療や自然災害による放射線事故によって引き起こされることがある。しかし、放射線防護剤は放射線曝露前に投与が必要であり原子力発電所事故後のヒトへの放射線被ばくには対応できない。したがって、放射線曝露後の投与で正常組織の損傷を低減することができる創薬の開発が急務である。放射線曝露はDNA 損傷を増加させ造血および胃腸システムへの損傷を引き起こす。そのなかでも腸陰窩上皮細胞は放射線曝露に敏感であり、放射線により誘導されるアポトーシスにより粘膜の損傷が引き起こされることがよく知られている。タウリンは、抗酸化作用、抗炎症作用、抗アポトーシス作用を含むいくつかの重要な生理学的機能を有する硫黄含有有機酸である。 このためタウリンは、放射線防護剤および放射線緩和剤として使用するための魅力的な候補であるようであるが、放射線誘発細胞損傷に対する緩和機構は、現時点ではまだ明らかではない。今回はタウリンの放射線誘発細胞損傷緩和機構に関する我々の研究結果の中から、タウリンの取り込みに関連するタウリントランスポーター発現、アポトーシスの鍵となる酸化DNA 損傷ならびに炎症性サイトカインの機能的変化について報告する。
  • 薩 秀夫
    2020 年 6 巻 1 号 p. 62-64
    発行日: 2020年
    公開日: 2021/09/20
    ジャーナル オープンアクセス
    食品として摂取されたタウリンは、主に腸管上皮に発現するタウリントランスポーターによって吸収される。本研究では、腸管上皮におけるタウリントランスポーターを介したタウリン吸収の特性およびその制御、またタウリンの腸炎症に対する予防作用の可能性を示した。また腸管上皮モデル細胞を用いてタウリンによる遺伝子発現制御の網羅的解析をおこない、TXNIP のmRNA 発現がタウリンによって顕著に亢進することを見出すとともに、タウリンがTXNIP を介してグルコース取込抑制やAMPK 活性化など細胞機能を制御することを見出した。
  • 石倉 恵介
    2020 年 6 巻 1 号 p. 65-68
    発行日: 2020年
    公開日: 2021/09/20
    ジャーナル オープンアクセス
    骨格筋中のタウリン濃度は、他のアミノ酸に比べて高濃度で、血中のタウリン濃度もまた他のアミノ酸に比べて高濃度である。一過性のレジスタンス運動で、骨格筋・血漿タウリン濃度は影響を受けない。一過性の長時間運動によって、骨格筋のタウリンは血中へ放出されるとの指摘がある。ラットへの長時間運動負荷で、骨格筋タウリン濃度は減少する報告 が多いものの、血中タウリン濃度は変化を示せていない。また、ヒトにおいては、長時間運動後の血中タウリン濃度の上昇は一致しているものの、骨格筋タウリン濃度は変化がない。タウリンの慢性投与は、ラットの骨格筋タウリン濃度を上昇させるが、ヒトでは変化が認めらていない。
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