タウリンリサーチ
Online ISSN : 2434-0650
Print ISSN : 2189-6232
3 巻, 1 号
選択された号の論文の16件中1~16を表示しています
  • 羅 成圭, 前田 清司, 川中 健太郎 , 今井 智子, 宮川 俊平
    2017 年 3 巻 1 号 p. 6-8
    発行日: 2017年
    公開日: 2019/11/11
    ジャーナル オープンアクセス
    一過性に持久性運動をおこなうことによって、血 液中のタウリン濃度が増加するということが報告さ れている 1,2。そこで我々は、運動誘発性疲労時にも 体液中のタウリン濃度が増加している可能性がある と考え、唾液中のタウリン濃度の変化が運動誘発性 疲労のマーカーとなる可能性を検証した。我々はま ず、疲労したアスリートの唾液をメタボロミクスに て網羅的に解析し、いくつかの代謝産物とともに唾 液中タウリンが増加していることを見出した。また、 既存の運動誘発性疲労マーカーとして知られている 唾液中分泌型免疫グロブリン A(sIgA)の変化と比 較検討したところ、唾液中sIgAが低下するときに唾 液中タウリン濃度が有意に増加することを確認した。 これらの結果は、唾液中タウリンが新規運動誘発性 疲労マーカーとなる可能性を示すものであると考え られる。
  • 石倉 恵介, 宮川 俊平, 竹越 一博, 大森 肇
    2017 年 3 巻 1 号 p. 9-11
    発行日: 2017年
    公開日: 2019/11/11
    ジャーナル オープンアクセス
    ヒトへのタウリン投与が長時間運動時の血漿アミ ノ酸濃度へ及ぼす影響を検討した。非鍛錬者(n=16) に、タウリン投与条件と非投与条件の各条件におい て 2 時間の自転車漕ぎ運動を負荷した。投与条件で は 1 週間 1 日 6g のタウリンを経口投与し、運動前 後に血糖値、血漿アミノ酸濃度を測定した。その結 果、運動後の血糖値は非投与条件で運動前に比べて 低下し、投与条件ではこの血糖値低下が有意に抑制 された。タウリン投与によって血糖維持効果が認め られた群(効果群、 n=11)と効果が認められなかっ た群(非効果群、 n=5)に分けたところ、非効果群 では長時間運動後に血漿スレオニン・セリン・グリ シン・フェニルアラニン濃度が低下したが、効果群 ではこの低下が有意に抑制された。タウリン投与に よる長時間運動時の血糖維持に、タウリンがこれら 糖原生アミノ酸動態に影響を及ぼしていることが示 唆された。
  • 小野 鮎子, 川﨑 安都紗 , 武永 敬明 , 村上 茂
    2017 年 3 巻 1 号 p. 12-14
    発行日: 2017年
    公開日: 2019/11/11
    ジャーナル オープンアクセス
    非アルコール性脂肪性肝疾患(Non-alcoholic fatty liver disease: NAFLD)モデルとして高脂肪食 負荷マウスを用い、タウリンの肝臓への脂肪蓄積に 対する作用を検討した。また、抗酸化作用に注目し、 タウリンの作用メカニズムを調べた。12 週間の高脂 肪食負荷により、肝機能の低下、肝臓への脂肪蓄積 と酸化ストレスの増加が見られたが、これらの変化 はタウリンの 12 週間混餌投与により改善された。 タウリンは NAFLD抑制作用を有し、抑制メカニズ ムの 1つとして抗酸化作用の関与が示唆される。
  • 福野 修平, 長井 克仁, 小西 廣己
    2017 年 3 巻 1 号 p. 15-17
    発行日: 2017年
    公開日: 2019/11/11
    ジャーナル オープンアクセス
    我々のグループは主に抗がん剤で誘発される副作 用の軽減に関する研究を行ってきた。その中で、ア ントラサイクリン系の抗腫瘍性抗生物質であるドキ ソルビシン (DOX) による急性肝障害は、タウリン を併用することにより軽減されることを見出した。 また、タウリンによる肝保護効果には酸化的ストレ スおよびアポトーシスの抑制が関与している可能性 を示した。
  • 福田 敦夫
    2017 年 3 巻 1 号 p. 18-20
    発行日: 2017年
    公開日: 2019/11/11
    ジャーナル オープンアクセス
    母体から胎仔に経胎盤的に移行して胎仔脳の細胞外 環境に漂うタウリンが、胎仔神経細胞内にタウリント ランスポーターで取り込まれてリン酸化酵素 WNK1-SPAK/OSR1のカスケードを活性化し、その基質 である Cl-トランスポーター(KCC2/NKCC1)をリン酸化し て機能を調節する。その結果、脳におけるもっとも重要 な抑制性伝達物質であるγ-アミノ酪酸(GABA)の、 胎生期における特異的な作用を規定する胎仔型の Clホメオスタシスを維持する。また、タウリンによる胎 仔・新生仔脳の持続的なGABAA受容体刺激作用は、 新たに発生した神経細胞の移動や GABA 神経伝達 の調節因子として働く。以上から、母体由来タウリン は、胎仔脳の細胞内外で機能し、その正常な発達に必 須の液性因子である。すなわち、経胎盤的母子間情報 伝達因子として、タウリンが極めて重要な役割を持つこ とを示唆している。
  • 家森 幸男, 相良 未木 , 森 英樹, 森 真理
    2017 年 3 巻 1 号 p. 21-23
    発行日: 2017年
    公開日: 2019/11/11
    ジャーナル オープンアクセス
    脳卒中の病因解明の為、脳卒中を遺伝的に確実に 発症するラット SHRSP を開発し、脳卒中が魚・大 豆などの高蛋白食で予防出来る事、魚に多いタウリ ンが降圧と脳卒中予防効果を有する事、SHRSP か ら開発したモデルの動脈硬化をタウリンが予防する 事を実証した。
  • 川﨑 安都紗, 小野 鮎子, 水田尚志 , 神谷 充伸, 大脇 豊, 大脇 豊弘, 伊藤 崇志, 村上 茂
    2017 年 3 巻 1 号 p. 24-26
    発行日: 2017年
    公開日: 2019/11/11
    ジャーナル オープンアクセス
    海藻にはタウリンが含まれていることが知られて いるが、詳細な分析データは見当たらない。本研究 では、天然のタウリン供給源として海藻に着目し、 福井県若狭湾にて採取した37種類の海藻について、 タウリンを含む遊離アミノ酸含量を分析した。その 結果、紅藻類がタウリンを多く含み、特にフノリの タウリン含量が高いことが明らかとなった。また、 紅藻類を原料とするエゴネリや寒天などについても タウリン含量を分析したが、これらの加工製品では タウリンを含むアミノ酸はほとんど検出されなかっ た。本研究結果から、フノリは天然のタウリン供給 源として有用と考えられる。
  • 平 修, 常山 幸一, 川崎 安都紗, 小野 鮎子, 前川 昭, 伊藤 崇志, 宮崎 照雄, 城本 淳, 小林 春輝, 大森 肇, 片野 肇 ...
    2017 年 3 巻 1 号 p. 27-29
    発行日: 2017年
    公開日: 2019/11/11
    ジャーナル オープンアクセス
    イメージング質量分析(MS)により、マウス筋肉 組織中の「どこ」にタウリンが局在するのかを視覚 的に解析した。本報ではラット脚部より採取した、 ヒラメ筋、腓腹筋、足底筋の凍結切片を用いて、タ ウリンと分岐鎖アミノ酸である、バリン、ロイシン、 イソロイシン、リジンの局在を解析した。
  • 伊藤 崇志
    2017 年 3 巻 1 号 p. 30-32
    発行日: 2017年
    公開日: 2019/11/11
    ジャーナル オープンアクセス
    タウリントランスポーター欠損マウス(TauTKO マウス)における検討からタウリン欠乏によって運 動耐用能の低下や骨格筋萎縮、ミトコンドリア異常 など骨格筋の異常が生じることが明らかにされてお り、タウリンは骨格筋の恒常性に重要であると考え られる。一方でタウリンには浸透圧の調節や蛋白質 高次構造の安定化など多彩な生理機能があり、欠乏 によってあらゆる細胞内シグナル伝達経路の変化を 起こすと考えられる。今回、タウリン欠乏によるシ グナル伝達変動に関する検討についてこれまで得ら れた知見を紹介する。
  • 加藤 俊宏 , 伊藤 崇志 , 山下 剛範 , 操 米田, 馬 寧
    2017 年 3 巻 1 号 p. 33-35
    発行日: 2017年
    公開日: 2019/11/11
    ジャーナル オープンアクセス
    タウリンは含硫アミノ酸の一種で、タウリント ランスポーターノックアウト(以下、TauTKO) マウスは野生型マウスと比較して寿命が短く、小 さい体長を示す。体長は骨の形成に影響を受ける ため、TauTKO マウスならびに野生型マウスの大 腿骨を用いて、骨組織の観察を行った。TauTKO マウスの骨組織は野生型マウスと比較して、皮質 骨厚・海綿骨厚の低下、骨密度の低下がみられた。 これらから、タウリンは骨量の維持に関与する可 能性が示唆された。
  • 宮﨑 照雄 , 佐々木 誠一 , 豊田 淳, 白井 睦 , 池上 正 , 松﨑 靖司, 本多 彰
    2017 年 3 巻 1 号 p. 36-38
    発行日: 2017年
    公開日: 2019/11/11
    ジャーナル オープンアクセス
    タウリンの生理学的意義を解明するため、タウリ ン合成能が欠損しているネコへのタウリン枯渇食供 与によるタウリン欠乏動物モデルの作製を試みた。 既報の方法に則って調合したタウリン枯渇食をネコ に30週間供与した。血液中タウリン濃度は、枯渇 食供与開始1週後より顕著に減少し、1ヶ月後には、 ほぼ欠乏状態となった。供与 30 週後に採取した脳 (大脳、小脳、海馬)、肝臓、心臓、骨格筋(ヒラメ 筋、腓腹筋)においても、タウリン濃度は欠乏状態 であった。生体内タウリンの欠乏に伴い、眼症状(瞳 孔散大、眼球混濁、眼脂増加)や口腔内症状(歯肉 炎、う蝕)、心筋異常(拡張性心筋症)、肝障害(炎 症、脂肪化、線維化)、骨格筋変性(中心核、炎症、 細胞変性など)が観察された。タウリン合成能が欠 損しているネコへのタウリン枯渇食供与により、タ ウリンの病態生理学的意義の解明研究へ利用できる タウリン欠乏モデルを作製できた。
  • 薩 秀夫, 権藤 祐輔 , 和多利 研二 , 清水 誠
    2017 年 3 巻 1 号 p. 39-41
    発行日: 2017年
    公開日: 2019/11/11
    ジャーナル オープンアクセス
    著者らはこれまで腸管とタウリンの相互作用につ いて研究を進め、腸管上皮モデル細胞を用いてタウ リンの腸管吸収に関わるタウリントランスポーター (TAUT)の特性・制御を明らかにするとともに、腸炎 症に対するタウリンの予防・軽減作用を報告してき た。本研究ではタウリンの遺伝子レベルでの作用機 序を明らかにすることを目的とし、タウリンがヒト 腸管上皮モデル細胞における遺伝子発現全般に対す る作用を、DNAマイクロアレイを用いて解析した。 その結果、タウリンは thioredoxin interacting protein(TXNIP)の mRNA発現を顕著に亢進する ことが見出され、さらに TXNIP のタンパク質レベ ルでの発現亢進も確認された。また TAUT の基質で あるβ-アラニンやGABAはTXNIPのmRNA発現 に影響を与えなかったことから、タウリンによる TXNIP 発現亢進はタウリンの構造に極めて選択的 であることが示唆された。さらにタウリンは TXNIP のプロモーター活性を亢進することが明らかとなり、 これよりタウリンは転写レベルで TXNIP の発現を 亢進することが示唆された。
  • 豊田 淳 , 後藤 達彦 , 友永 省三
    2017 年 3 巻 1 号 p. 42-44
    発行日: 2017年
    公開日: 2019/11/11
    ジャーナル オープンアクセス
    日本はストレス社会であり、うつ病患者数が増加 傾向にあるが、抗うつ薬の開発は苦戦していると言 われる。私共は食によるうつ病予防法を確立するた め、うつ病の栄養および代謝特性の解明を目指して おり、うつ病モデルである慢性社会的敗北モデルを 用いて研究している。本研究では、社会的敗北モデ ルマウスやラットのメタボローム解析を中心に行っ た。その結果、社会的敗北ストレスはタウリン代謝 に影響する可能性が示唆された。そこでラットへタ ウリンを 4 週間投与したところ、海馬の MAP キナ ーゼなどのリン酸化シグナルが影響を受け、行動実 験では抗うつ作用が認められた。よって、本研究に より、うつ病発症とタウリンの関係が推察された。
  • 山下 剛範, 加藤 俊宏 , 具 然和 , 馬 寧
    2017 年 3 巻 1 号 p. 45-47
    発行日: 2017年
    公開日: 2019/11/11
    ジャーナル オープンアクセス
    我々は、小腸損傷により致死に至る高線量放射線 曝露でマウス小腸粘膜組織中のタウリントランスポ ーター発現が低下することを明らかにした。しかし、 異なる放射線量曝露ではどのような変化がもたらさ れるのか不明である。本研究では、低線量放射線曝 露がマウス小腸組織中のタウリントランスポーター 発現に高線量放射線曝露とは異なる変化をもたらす こと。タウリントランスポーター発現と抗酸化効果 との関連の可能性について報告する。
  • 片川 まゆみ, 福田 昇
    2017 年 3 巻 1 号 p. 48-50
    発行日: 2017年
    公開日: 2019/11/11
    ジャーナル オープンアクセス
    健康成人及び高血圧自然発症ラット(SHR/Izm)に タウリン、マグネシウム(Mg)を経口介入し、血管内 皮前駆細胞(EPC)機能、酸化ストレス、血清脂肪酸 分析を行った。ヒト及び SHR/Izm において、タウ リン、Mg 介入共に EPC 機能と抗酸化力は有意に増 加した。脂肪酸分析では、ヒトへのタウリン介入で ミリストレイン酸が有意に増加し、SHR/Izmへタウ リンとMgを同時に負荷すると、減少していたDHA は有意に増え、逆に増加していた分画が減少し WKY/Izm の状態に近づいた。タウリンや Mg は、 ヒト及びSHR/Izmにおいて酸化ストレスを抑制し、 EPC機能を増加させ、高血圧性血管障害の予防とし て有効と考えられた。
  • 海老名 慧 , 小峰 昇一 , 宮﨑 照雄, 青木 海 , 城本 淳 , 宮川 俊平 , 大森 肇
    2017 年 3 巻 1 号 p. 51-53
    発行日: 2017年
    公開日: 2019/11/11
    ジャーナル オープンアクセス
    タウリン投与は、ラットにおける長時間運動による血糖低下を抑制し、疲労困憊に至るまでの運動時間を延長させることが報告されている。またその作用機序として、肝臓における糖新生亢進の可能性が示唆されている。本研究では、長時間運動により生じる低血糖に対するタウリンの作用機序の一つとして、糖新生の関与を明らかにする目的で、タウリン投与後のラットにピルビン酸負荷試験を行った。ピルビン酸負荷直後に上昇する血糖値は、非投与群で、 負荷 30 分後に減少を始め初期値に復する傾向を示 すのに対し、タウリン投与群では、120 分まで減少 せずに維持された。本研究により、タウリンの血糖値低下抑制の機序として、上昇した血糖値を元に戻すフィードバック機序を抑制する作用、あるいは、インスリン非依存的な糖新生を亢進させる作用が関 与している可能性が示唆された。
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