タウリンリサーチ
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1 巻, 1 号
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タウリン研究と産業利用の歴史
  • 村上 茂
    2015 年1 巻1 号 p. 7-8
    発行日: 2015年
    公開日: 2019/09/20
    ジャーナル オープンアクセス
    本項では、19 世紀に発見されたタウリンの生理・薬理作用がどのように解明されてきたか、またタウリンの持つ薬理作用を利用し、医薬品などへの産業利用がどのように進められてきたかについて、歴史を振り返る。また、タウリン研究の今後の課題についても述べる。
  • 伊藤 崇志
    2015 年1 巻1 号 p. 9-11
    発行日: 2015年
    公開日: 2019/09/20
    ジャーナル オープンアクセス
    我々のグループは主に心臓や骨格筋におけるタウリンの病態生理学的意義を解析する目的でタウリントランスポーター欠損マウスを作製し、解析を行ってきた。その中で、組織タウリン合成能が極めて低い心臓及び骨格筋において組織タウリンの欠乏に伴い機能的及び形態的異常を見出した。また、近年、このマウスが加齢依存的な組織異常を呈し、さらに、寿命が短くなることを見出した。このことから、組織タウリンが寿命と関連する可能性があると考えている。
  • 家森 幸男, 森 真理, 相良 未木, 村上 茂
    2015 年1 巻1 号 p. 12-15
    発行日: 2015年
    公開日: 2019/09/20
    ジャーナル オープンアクセス
    遺伝的に脳卒中を必発する脳卒中易発症高血圧自然発症ラット(SHRSP)でもタウリン(T)が高血圧、脳卒中の発症を抑制する事実から、世界各地で24 時間尿を採取し、T/クレアチニン(C)比が肥満、高血圧、高脂血症のリスクと逆相関し、T 摂取とリスク軽減との関係を示した。
  • 福田 昇, 片川 まゆみ, 家森 幸男
    2015 年1 巻1 号 p. 16-18
    発行日: 2015年
    公開日: 2019/10/01
    ジャーナル オープンアクセス
    血管内皮前駆細胞(EPC)は血管傷害の修復を行い、その寿命は酸化ストレス病態で短くなり、EPC の血管修復機能低下が最終的に心血管病を引き起こすと考えられる。今回WHO-CARDIAC 研究で得られた心血管病を予防するタウリン、マグネシウム摂取についてヒトと高血圧ラットSHR でのEPC 機能に及ぼす影響を検討した。ヒトの介入試験において、タ ウリン、マグネシウム摂取は共に酸化ストレス度を減少させEPC 機能を有意に増加した。SHR のEPC機能はWKY に比し低下していたが、マグネシウムおよびタウリン負荷共にEPC 機能を改善が認した。タウリンやマグネシウムの摂取は血管障害の予防として有効であり、抗老化食生活として推奨されると考えられた。
  • 藤林 幸輔, 若狭 稔, 高野 信太郎, 河合 康幸, 梶波 康二
    2015 年1 巻1 号 p. 19-21
    発行日: 2015年
    公開日: 2019/10/01
    ジャーナル オープンアクセス
    タウリン合成能の低いネコやキツネなどの種では、タウリンの欠乏や利用障害を生じると拡張型心筋症の様相を呈すると言われている。そこで我々は、ヒトの不全心におけるタウリンの役割を明らかにする目的で、拡張型心筋症患者における血漿タウリン濃度を測定し、心機能との関係を比較検討した。心機能が比較的保たれているコントロール群では、タウリンと心エコー上の心機能パラメーターの間に有意な関連は認められなかったが、拡張型心筋症群では血漿タウリン濃度と左室駆出率( rS=0.369,p=0.0040)、内径短縮率(rS=0.367, p=0.0040)および左室収縮末期径(rS=-0.282, p=0.030)にそれぞれ有意な相関を認めた。以上より拡張型心筋症において血漿タウリン濃度は、心機能や病状の進展を反映するバイオマーカーとなり得ると考えられた。
  • 恒川 雅洋, 王 淑民, 加藤 俊宏, 馬 寧
    2015 年1 巻1 号 p. 22-25
    発行日: 2015年
    公開日: 2019/10/01
    ジャーナル オープンアクセス
    シスプラチン(CDDP)は多様な悪性腫瘍の治療に用いられている。副作用として重篤な腎障害を起こすことが知られている。タウリンには抗炎症作用および抗酸化作用があると報告されている1。本研究では、CDDP 誘導性腎障害ラットを用いてタウリンの腎臓における局在変化・酸化ストレスの側面からタウリンの腎臓保護作用について検討した。HE 染色においてCDDP-Low 群とCDDP-High 群では近位尿細管の上皮細胞に壊死・脱落・刷子縁の消失が認められた。CDDP-Low+Tau 群とCDDP-High+Tau 群の近位尿細管の上皮細胞の病理変化はそれぞれCDDP-High 群とCDDP-Low 群と比べて壊死の軽減が認められた。免疫組織染色においてCDDP-High 群で8-OHdG とCD68 の発現の増強が認められ、CDDP-High+Tau 群では8-OHdG とCD68 の発現は減弱していた。タウリンの局在についてはCDDP-Low 群とCDDP-High 群では近位尿細管にタウリンの局在が観察できなかった。Control群とCDDP-Low+Tau 群、CDDP- High+Tau 群では近位尿細管にタウリンの局在が認められた。以上より、タウリンはCDDP 誘導性腎障害に対して抗炎症作用による近位尿細管の細胞保護に寄与していると考えられる。
  • 竹内 俊郎
    2015 年1 巻1 号 p. 25-27
    発行日: 2015年
    公開日: 2019/10/01
    ジャーナル オープンアクセス
    海水魚は淡水魚とは異なり、システインスルフィン 酸脱炭酸酵素(CSD)活性が弱く、メチオニンからタ ウリンを合成する能力が劣ることから、飼料へのタウ リン添加が必須である。飼料中にタウリンが少ないと ヒラメでは摂餌行動に異常がみられ、マダイでは体色 が黒ずんでしまう。また、これまで海水魚はカゼイン などの精製飼料では成長や飼料効率が劣り、飼育でき ないとされてきたが、飼料中にタウリンを添加するこ とにより、優れた成長を示し、精製飼料にタウリンを 添加する必要があることが明らかになった。
  • 田淵 久大
    2015 年1 巻1 号 p. 28-29
    発行日: 2015年
    公開日: 2019/10/01
    ジャーナル オープンアクセス
    我々は抗体産生能力の高い細胞を樹立するために細胞工学的手法による独自の細胞改変をおこなっている。生産培養後期に発現が亢進される遺伝子に着目することで、今まで以上に蛋白を高生産できるハイポテンシャルな細胞を樹立した。タウリントランスポーター (TAUT)を強制発現することにより、抗体高産生なCHO 細胞株の構築が可能になった。
  • 砂田 芳秀, 大澤 裕, 太田 成男
    2015 年1 巻1 号 p. 30-32
    発行日: 2015年
    公開日: 2019/10/01
    ジャーナル オープンアクセス
    tRNA は転写後に様々な化学修飾を受けているが、最近tRNAの修飾異常が病態に関与する疾患が注目されている1。tRNA のタウリン修飾はwobble 塩基の正確な翻訳に重要な役割を果たすが、われわれはミトコンドリア病の一つであるMELAS で、ミトコンドリアDNA の一塩基変異によりtRNA のタウリン修飾が欠損することを見いだした2-4)。本研究では タウリン添加によりMELAS モデル細胞におけるミトコンドリア機能が改善すること、2 例のMELAS患者にタウリン補充療法(12g/日)タウリンを添加すると、長期間にわたり脳卒中様発作が抑制されることを見いだした。
  • 宮﨑 照雄
    2015 年1 巻1 号 p. 33-35
    発行日: 2015年
    公開日: 2019/10/01
    ジャーナル オープンアクセス
    空腹時や持久性運動時では、肝臓の脂質代謝が亢進し、肝臓にて酢酸が生成され、骨格筋等でエネルギー産生に利用される。近年、アルコール代謝にて生じる酢酸により、タウリンがアセチル化され、N-acetyltaurine(NAT)として尿へ排泄される事が明らかとなった。そのため、持久性運動時でも同様に、NATが生成され、尿へ排泄される事が推測される。フルマラソンや持久走による検討の結果、持久性運動により血中NAT濃度が上昇した。上昇したNATの血清濃度は、運動1日後までに元の値に回復しており、運動後にNATが尿へ排泄されるためである事が確認された。培養細胞の検討により、NATは、細胞外から取り込まれた酢酸がタウリンをアセチル化して排泄する事が確認され、運動中のエネルギー消費の中心的組織である骨格筋でもNATを生成する可能性が示唆された。持久性運動中には、脂質代謝が亢進し、酢酸(アセチル基)が過剰に生じる。タウリンは、この運動中に過剰に生じた酢酸からNATを生成し、速やかに酢酸を体外へ(尿)排泄させる役割を果たしている事が考えられる。
  • 羅 成圭, 赤澤 暢彦, 崔 英珠, 竹越 一博, 大森 肇, 前田 清司
    2015 年1 巻1 号 p. 36-38
    発行日: 2015年
    公開日: 2019/10/01
    ジャーナル オープンアクセス
  • 薩 秀夫, 清水 誠
    2015 年1 巻1 号 p. 39-41
    発行日: 2015年
    公開日: 2019/10/01
    ジャーナル オープンアクセス
    筆者らのグループでは、腸管とタウリンの相互作用について研究を進めてきた。腸管上皮モデル細胞を用いて、腸管上皮におけるタウリンの吸収に関わるタウリントランスポーター(TAUT; SLC6A6)の特性ならびに各種要因によるTAUT 制御・調節について明らかにしてきた。またタウリンが腸管上皮モデル細胞と活性化マクロファージモデル細胞を用いたin vitro 炎症モデル系において抗炎症作用を示すことが見出され、実際にデキストラン硫酸ナトリウム(DSS)誘導大腸炎モデルマウスを用いたin vivo モデル系においてもタウリンは大腸炎を軽減することを明らかにした。これよりタウリンは、腸管においてTAUT を介して吸収されるとともに大腸炎を改善することが示唆された。
  • 細井 公富
    2015 年1 巻1 号 p. 42-43
    発行日: 2015年
    公開日: 2019/10/01
    ジャーナル オープンアクセス
    我々は水産重要種であるマガキを用いて、貝類におけるタウリン生合成について解析を行っている。これまで貝類がタウリンを豊富に蓄積することは広く知られていたにもかかわらずその由来は明確ではなかったが、貝類も自らがシステインからタウリンを生合成していることが明らかとなってきた。我々はマガキからタウリン生合成に関与する酵素の遺伝子を同定し、その高塩分ストレス応答性を明らかにするとともに、生合成経路の代謝物の定量を行い、マガキが高塩分ストレスに応答したタウリン生合成活性を有する可能性を見いだした。
  • 赤沼 伸乙, 久保 義行, 細谷 健一
    2015 年1 巻1 号 p. 44-46
    発行日: 2015年
    公開日: 2019/10/01
    ジャーナル オープンアクセス
    我々は網膜細胞や肝実質細胞においてタウリンの輸送を担う分子実体解明を目的に研究を推進してきた。これまでに、タウリンの消化管吸収や腎再吸収過程にはsolute carrier family (SLC) 6A に属するtaurine transporter (TauT/SLC6A6) が少なくとも一部関与することが報告されている。循環血液と網膜とを隔てる血液網膜関門(BRB)、そして網膜グリアで あるMüller 細胞におけるタウリン輸送には、小腸や腎臓と同様にTauT の関与が示唆された。一方、肝臓におけるタウリン輸送にはTauT ではなく、γ-amino butyric acid transporter 2 (GAT2/SLC6A13) が関与することが示唆された。TauT とGAT2 とではタウリンに対する親和性が異なることから、タウリンの生体内における有益作用を効果的に発揮させるための摂取法を確立する上で、本知見の応用が期待される。
  • 笠岡(坪山) 宜代
    2015 年1 巻1 号 p. 47-49
    発行日: 2015年
    公開日: 2019/10/01
    ジャーナル オープンアクセス
    我々は、近年の日本における肥満・生活習慣病増加の解決策を見いだす事を目的として、魚介類に含まれる栄養素であるタウリンと肥満・生活習慣病発症の関連を検討してきた。生体内でのタウリン合成系の律速酵素であるシステインジオキシゲナーゼ(cysteine dioxygenase, CDO)の遺伝子5’転写調節領域には、脂肪細胞の分化に関わる転写因子のコンセンサス配列が存在することを見出した。また、マウスの脂肪組織ではCDO mRNAが高レベルで発現していること、脂肪細胞にCDO を強制発現させると培養液中のタウリン量が増加する事を示した。さらに、肥満動物では脂肪組織のCDO mRNAが減少し、タウリン不足状態であり、食事にタウリンを添加すると肥満発症が抑制され、基礎代謝が増加、脂肪組織での脂肪の分解に関わる遺伝子発現が増加している事を見出した。このことから、脂肪組織でもタウリンが合成される事、脂肪組織に脂肪が蓄積しすぎるとタウリン合成が低下してタウリン不足の状態になり、タウリンが持つ脂肪燃焼作用が発揮出来ずに肥満が更に加速するという悪循環が生じる可能性があると考えている。
  • 西園 祥子, 福田 亘博, 村上 茂
    2015 年1 巻1 号 p. 50-52
    発行日: 2015年
    公開日: 2019/10/01
    ジャーナル オープンアクセス
    本研究では、タウリン食による肝臓におけるコレステロールエステル(CE)の蓄積・分泌の低下と脂肪酸酸化の関係を明らかにする目的で単離肝臓灌流法を用いて実験を行った。高コレステロール食Wistar 系雄ラットに5%タウリンを含む食餌を14 日間与えた。肝臓は単離後、37℃で25%洗浄赤血球、1.5%アルブミン及び25mM グルコースを含むKrebs-Henseleit 緩衝液(pH 7.4)で4 時間灌流した。外因性脂肪酸として灌流開始時に[1-14C]オレイン酸を100 μmol、その後1 時間当たり90 μmol を連続的に添加した。タウリン食は、血清及び肝臓のCE 濃度を有意に低下させた。ケトン体生成及び外因性脂肪酸のケトン体への取り込みは、4 時間の灌流中、対照群と比較してタウリン食群で常に高値を示した。特に、[1-14C]オレイン酸のケトン体への取込み増加は有意であった。肝臓ミトコンドリアのカルニチンパルミトイルトランスフェラーゼ活性も有意に亢進した。一方、タウリン食は、外因性脂肪酸の肝臓におけるCE への取込み及びCE の肝臓からの分泌を有意に減少させた。以上のように、タウリン食は肝臓CE の濃度及びその分泌を低下させ、一方脂肪酸酸化を亢進させた。このような脂肪酸の酸化系への代謝亢進とCE への取込み減少がタウリンによる血清及び肝臓CE 濃度低下と関連していることが示唆された。
  • 海老名 慧, 小峰 昇一, 大野 貴弘, 時野谷 勝幸, 石倉 惠介, 松井 崇, 羅 成圭, 宮﨑 照雄, 宮川 俊平, 征矢 英昭, 大 ...
    2015 年1 巻1 号 p. 53-55
    発行日: 2015年
    公開日: 2019/10/01
    ジャーナル オープンアクセス
    タウリン投与が長時間運動時の血糖低下を抑制する機序として肝糖新生に着目し、遊離アミノ酸(FAA)の動態を検討した。8 週齢のF344 雄ラットをタウリン投与群(Tau)と非投与群(Con)に分け、さらに両群を運動前群、120 分運動群に分けた。Tau群では走行中の血糖低下が抑制された。タウリン投与は肝のG6Pase 活性を上げ、Thr、Ser、Gly を下げた。運動後、Con 群の筋Thr、Ser が上昇し、Tau 群では不変だった。逆に肝ではTau 群のThr、Ser が上昇し、Con 群では不変だった。Con 群では運動中の血糖低下に抗うために糖新生が行われたが、Tau 群では運動前から糖新生が惹起され、運動中の血糖低下を抑制した可能性がある。
  • 大森 肇, 小峰 昇一, 三好 貴士, 松井 崇, 石倉 恵介, 羅 成圭, 宮﨑 照雄, 正田 純一, 宮川 俊平, 征矢 英昭
    2015 年1 巻1 号 p. 56-58
    発行日: 2015年
    公開日: 2019/10/01
    ジャーナル オープンアクセス
    頸静脈カニュレーションを用いて長時間走行中の経時的採血を可能にし、血糖の推移に及ぼすタウリン投与の影響を詳細に検討した。ラットに3%タウリン水溶液を3 週間投与し、3 時間絶食後にトレッドミル走(21.7m/min)を負荷した。疲労困憊時間は非投与群よりタウリン投与群で延長した。中盤以降の大きな血糖低下がタウリン投与群で抑制され、80分から160 分にかけて両群間に有意差を認めた。非投与群の走行序盤では血糖と疲労困憊時間に負の相関または傾向が見られ、走行中盤から正の相関へと転じた。タウリン投与群ではこの局面変化が遅く現れた。タウリンの事前投与が長時間運動の中盤以降の血糖低下を抑制し、それが疲労困憊時間に強く影響することを初めて明らかにした。
  • 石倉 恵介, 宮﨑 照雄, 松坂 賢, 羅 成圭, 宮川 俊平, 大森 肇
    2015 年1 巻1 号 p. 59-62
    発行日: 2015年
    公開日: 2019/10/01
    ジャーナル オープンアクセス
    骨格筋の糖代謝ならびにセリン・グリシン・スレオニンのアミノ酸代謝の遺伝子発現に及ぼすタウリン投与の影響を明らかにすることを目的とした。ラットへ2 週間タウリンを経口投与し、腓腹筋内側頭白色部の遺伝子発現をDNA マイクロアレイ法にて網羅的に解析を行った。その結果、タウリン投与によって、骨格筋の糖代謝ならびにセリン・グリシン・スレオニンのアミノ酸代謝には影響を及ぼさなかった。タウリン投与のエネルギー代謝への影響は骨格筋よりむしろ肝臓など他の臓器への作用が関連する可能性が示唆された。
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