タウリンリサーチ
Online ISSN : 2434-0650
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2 巻, 1 号
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  • 伊藤 崇志
    2016 年2 巻1 号 p. 6-8
    発行日: 2016年
    公開日: 2019/11/11
    ジャーナル オープンアクセス
    サルコペニアは老化とともに起こる筋力や筋肉量の低下を指し、超高齢化社会においてその予防や治療の開発のニーズが高まっている。我々は以前報告したようにタウリントランスポーター欠損マウスにおいて、骨格筋中のタウリンの欠乏とともに骨格筋老化が促進されることを見出しており、タウリンがサルコペニアに対して有効な物質であることが示唆される。タウリン欠乏と骨格筋老化促進との関連性を明らかにするために、トランスクリプトーム解析を行った。本稿では、トランスクリプトーム解析およびそのデータに基づくパスウェイ解析の結果から明らかになったタウリンの骨格筋における役割について紹介する。
  • 山下 剛範, 加藤 俊宏, 恒川 雅洋, 具 然和, 馬 寧
    2016 年2 巻1 号 p. 9-11
    発行日: 2016年
    公開日: 2019/11/11
    ジャーナル オープンアクセス
    タウリンによる放射線防護効果に関する研究は、1960 年代より行われている。しかし、その詳細なメカニズムは不明な点が多い。我々は、タウリンの細胞内への取り込みを行うタウリントランスポーターに着目した。放射線曝露モデルマウスを用いて検討を行ない、放射線照射によりタウリントランスポーター発現が低下することを明らかにした。
  • 平 修, 川崎 安都紗, 小野 鮎子, 片野 肇, 村上 茂
    2016 年2 巻1 号 p. 12-15
    発行日: 2016年
    公開日: 2019/11/11
    ジャーナル オープンアクセス
    イメージング質量分析(MS)により、マウスに経 口投与したタウリンが体内の「どこ」に局在するの かを視覚的に解析した。本報ではイメージング MS の解説も踏まえ、体外から取り込まれたタウリンを どのような手順で視覚化するのかを詳しく論じたい。
  • 恒川 雅洋, 王 淑民, 加藤 俊宏, 山下 剛範, 馬 寧
    2016 年2 巻1 号 p. 16-18
    発行日: 2016年
    公開日: 2019/11/11
    ジャーナル オープンアクセス
    シスプラチン(CDDP)は多様な悪性腫瘍の治療に用 いられている。副作用として重篤な腎障害を起こすこ とが知られている 1,2。CDDPを投与することでタウリ ントランスポーター(TauT)の down regulation に関与 する遺伝子 p53 の発現が増強するという報告がある [3-6]。本研究では、CDDP誘導性腎障害ラットを用い てタウリン投与によるTauT とp53の発現について検 討する。CDDP誘導性腎障害ラットモデルをCDDP投 与量とタウリン投与の有無によって 6 グループに分け て作成した。その後病理切片を作成し、TauT および p53 を免疫組織化学法にて染色し観察した。TauT で は Control 群において近位尿細管と集合管に強い発現 を確認した。タウリン非投与群の近位尿細管ではTauT の発現が減少した。タウリン投与群では、TauT の発現 に改善が見られた。p53 では Control 群において近位 尿細管にわずかに発現が認められた。タウリン非投与 群では p53 の発現が増加した。タウリン投与群では p53の発現が抑えられた。CDDP誘導性腎障害ラット にタウリンを投与すると p53 の発現が抑えられ、細胞 膜に TauT が多く発現することを確認した。また、タ ウリンを与えた場合に尿細管のタウリンの局在が増加 することが分かっている。タウリンは CDDP投与によ る p53の発現を低下させることで、細胞膜の TauT 発 現の減少を抑える。そのために、近位尿細管のタウリン濃度が維持されて細胞膜保護作用を発揮したと考え られる。CDDP誘導性腎障害に対してタウリンは p53 を抑制することによって腎保護作用を発揮しているこ とが示唆された。
  • 加藤 俊宏 , 恒川 雅洋 , 山下 剛範 , 馬 寧
    2016 年2 巻1 号 p. 19-21
    発行日: 2016年
    公開日: 2019/11/11
    ジャーナル オープンアクセス
    我々はこれまでにシスプラチン(以下、CDDP)投 与後の薬剤性腎損傷に酸化ストレスによるDNA損 傷が関わり、タウリンは抗酸化作用により薬剤性腎 損傷を軽減することを見出してきた。本実験は薬剤 性腎損傷モデルラットを用いて CDDP のニトロ化 ストレスによる腎損傷メカニズムとタウリンの保 護作用を検討した。 本実験により薬剤性腎損傷にニトロ化ストレス による DNA 損傷が関わり、タウリンはiNOSの発 現を抑制することによりニトロ化DNA損傷を軽減 することを見出した。これにより、タウリンの薬剤 性腎損傷保護作用の機序を確認した。 CDDP は悪性腫瘍に対して一般的に使用される 薬剤であるが副作用が強く、その予防法は大量輸液 療法のみであった。我々が見出したこれらの知見か らタウリンが CDDP の副作用予防に有用である可 能性が示唆された。
  • 小野 鮎子, 川﨑 安都紗, 高橋 正和, 村上 茂
    2016 年2 巻1 号 p. 22-24
    発行日: 2016年
    公開日: 2019/11/11
    ジャーナル オープンアクセス
    in vitro の非アルコール性脂肪性肝疾患 (Non-alcoholic fatty liver disease: NAFLD)モ デルとして使用されている脂肪酸負荷HepG2細 胞を用い、肝細胞の脂肪蓄積に対するタウリンの 作用を検討した。HepG2 への脂肪酸添加は、細 胞内の脂肪蓄積量、活性酸素種(ROS)産生、 過酸化脂質量を有意に増加させたが、タウリンは 0.01~3 mMで、用量依存的に肝細胞への脂肪蓄 積を抑制し、細胞内 ROS 産生も抑制した。 NAFLDの進展には、酸化ストレスや炎症反応が 関与していることから、タウリンは肝細胞におけ る脂質代謝改善作用に加え、ROS 産生の抑制に よる酸化ストレス軽減作用により、脂肪蓄積を抑 制している可能性が示唆された。
  • 川﨑 安都紗 , 小野 鮎子, 水田 尚志, 神谷 充伸, 村上 茂
    2016 年2 巻1 号 p. 25-27
    発行日: 2016年
    公開日: 2019/11/11
    ジャーナル オープンアクセス
    タウリンの供給源として海藻に着目し、若狭湾で 採取した海藻のタウリン含量の分析を行った。紅藻、 褐藻、緑藻のうち紅藻はタウリン含量の高いものが 多く、褐藻類と緑藻類ではタウリン含量は低値であ った。その他の遊離アミノ酸についても、海藻の種 類により含有量の差が認められた。
  • 家森 幸男 , 相良 未木, 森 英樹, 森 真理
    2016 年2 巻1 号 p. 28-30
    発行日: 2016年
    公開日: 2019/11/11
    ジャーナル オープンアクセス
    栄養がゲノムを超える力のある事は、遺伝的に脳 卒中を百パーセント発症する脳卒中易発症高血圧 自然発症ラット(SHRSP)でさえ、魚や大豆蛋白で 脳卒中が予防される実験成果で証明された。この事 実がヒトでも応用可能である事が、WHO-国際共 同(CARDIAC)研究で、24 時間尿の魚や大豆のマ ーカー、タウリン、イソフラボン、さらに大豆など 種実食に多いマグネシウムを測定して証明された。 タウリン、マグネシウムは海の幸で縄文時代まで常 食されていた栄養源、生活習慣病の皆無であった食 生活の現代的復活に健康長寿への道がある。
  • 海老名 慧 , 山本 大介 , 石倉 惠介, 小峰 昇一, 宮﨑 照雄, 大野 貴弘, 宮川 俊平, 大森 肇
    2016 年2 巻1 号 p. 31-33
    発行日: 2016年
    公開日: 2019/11/11
    ジャーナル オープンアクセス
    先 行 研 究に よ る と 、高 脂 肪 食 (High Fat Diet:HFD)由来の肥満マウスにおいて、血中のタ ウリン濃度が低下することが報告されている 1。本 研究では、HFD 摂取により肥満したマウスの白色 脂肪組織(White Adipose Tissue:WAT)中でタウ リン濃度が減少するのか、またその肥満マウスが継 続的に持久性トレーニングを行うことで肥満が抑 制され、WAT 中のタウリン濃度が改善するのかに ついて検討した。 本研究では、WAT 中のタウリン濃度が肥満によ り減少することを初めて明らかにした。しかし、持 久性トレーニングの時間や強度が不十分だったた めか、肥満は改善されなかった。HFD 肥満マウス の WAT 中のタウリン濃度の低下は、不十分な持久 性トレーニングでは抑制されないことが示された。
  • 村上 茂
    2016 年2 巻1 号 p. 34-36
    発行日: 2016年
    公開日: 2019/11/11
    ジャーナル オープンアクセス
    さまざまな動物モデルを用いて、タウリンの抗肥 満作用が明らかにされてきた。タウリンの抗肥満作 用には、脂質代謝改善作用、抗炎症作用、ミトコン ドリアの機能維持作用、中枢作用などが関係してい ると考えられる。健常な小型の脂肪細胞はタウリン 合成活性が高いが、肥満動物の肥大した脂肪細胞で はタウリン合成能が低下し、これに伴い血中タウリ ン量も減少することが知られており、タウリン欠乏 と肥満の関連も示唆されている。一方、ヒトにおけ るタウリンの抗肥満作用は研究例が少なく作用も 明確ではない。
  • 八田 秀雄, 高橋 祐美子
    2016 年2 巻1 号 p. 37-39
    発行日: 2016年
    公開日: 2019/11/11
    ジャーナル オープンアクセス
    タウリンが持久的運動後のエネルギー代謝に与 える影響を検討した。マウスに 25m/min の速度で 90 分のトレッドミル走行を行わせ、運動直後にタ ウリンを与えた条件で自由運動を行わせたところ、 回復 3 時間までの総自由運動量がタウリン投与群 で水投与群より有意に高かった。そこでタウリンが 持久的トレーニング運動後の代謝に対して影響を 与え、疲労回復を促進する可能性が高いことがわか った。これを受けて同じ 90 分間の持久的運動後に タウリンを与えて安静を保ち、回復期に筋など組織 を採取して検討した。その結果、回復 2時間におけ る前脛骨筋のグリコーゲン濃度がタウリン群が対 照群よりも有意に高かった。また運動後にグルコー スを与えた条件で回復 1 時間の血中グルコース濃 度の低下がタウリン群で有意に早かった。さらに同 条件での回復 2 時間の前脛骨筋中基質濃度につい てメタボローム解析を行った結果、解糖系の律速段 階の1つであるホスホフルクトキナーゼ以降の中 間基質がタウリンで有意に低かった。したがって持 久的運動後のタウリン投与で筋グリコーゲンの再 合成が促進されることがわかった。そしてこのこと にはタウリンによって糖取り込みの促進や糖分解 の低下が起きていることが関係していることが示 唆された。
  • 羅 成圭, 崔 英珠, 赤澤 暢彦, 大森 肇, 前田 清司
    2016 年2 巻1 号 p. 40-42
    発行日: 2016年
    公開日: 2019/11/11
    ジャーナル オープンアクセス
    本稿では、健常者における経口タウリン摂取が血 管内皮機能に及ぼす効果を、安静時および運動時に 分けて概説する。我々はまず、2週間の経口タウリ ン摂取(6 g/day)は、健常者の血管内皮機能を僅か ながら、有意に向上させることが初めて見出した。 次に、運動誘発性血管内皮機能の低下に対するタウ リン摂取の効果を検証したものの、2週間のタウリ ン摂取(6 g/day)では高強度レジスタンス運動によ る血管内皮機能の低下を抑制できないことが明ら かになった。本稿で示すこれらの結果は、少なくと も安静時においては、健常者においてもタウリン製 剤、もしくはタウリンを多く含む魚介類や海藻類の 摂取は血管内皮機能を良好に保つために有効であ ることを示していると考える。
  • 中村 優歩, 宮﨑 照雄 , 大野 貴弘, 羅 成圭 , 海老名 慧, 菅澤 威仁 , 竹越 一博 , 宮川 俊平, 本 ...
    2016 年2 巻1 号 p. 43-44
    発行日: 2016年
    公開日: 2019/11/11
    ジャーナル オープンアクセス
    これまで我々は、ヒト持久性運動における血中・ 尿中 N-acetyltaurine(NAT)濃度の有意な増加を 確認している。NAT は、アルコール代謝などの際 に過剰に産生される酢酸によってタウリンがアセ チル化されて生じ、尿排泄される。我々の培養細胞 における検討では、骨格筋においても酢酸とタウリ ンから NAT が生成されて、細胞外へ排泄されるこ とが確認されている。このことから、持久性運動で 増加する血中・尿中 NAT は、骨格筋で生成されて いることが推測される。しかし、実際に運動を行っ た生体の骨格筋中において、NAT が生成されてい るかについては不明である。その点を明らかにする ために、本研究では、ラットを用いて検討を行った。 その結果、疲労困憊までの高強度持久性運動によっ て、血中 NAT濃度の有意な増加と共に、骨格筋(ヒ ラメ筋)NAT 濃度の有意な増加が確認された。ま た、血中 NAT 濃度と骨格筋 NAT 濃度には有意な 正の相関関係があったことから、血中 NAT 濃度の 増加は、骨格筋 NAT 濃度の増加に依存しているこ とが示唆された。以上より、タウリンは持久性運動 時に、骨格筋内に過剰に取り込まれた酢酸を NAT に変換して細胞外に排出し、最終的には尿排泄する ことで、骨格筋内における酢酸の過剰蓄積を防ぐ役 割を担っていると推測される。
  • 石倉 恵介, 中村 祐介, 辻 明宏 , 宮﨑 照雄 , 宮川 俊平 , 大森 肇
    2016 年2 巻1 号 p. 45-49
    発行日: 2016年
    公開日: 2019/11/11
    ジャーナル オープンアクセス
    本研究は、トレーニング期に食事を制限したとき の体重、骨格筋湿重量およびに骨格筋アミノ酸濃度 動態に及ぼすタウリン投与の影響を明らかにするこ とを目的とした。ラットをタウリン投与群と非投与 群の 2群に分け、持久的トレーニングと 50%の食事 制限を 3週間負荷した。トレーニング期の食事制限 による体重減少に両群管の差を認めなかったが、タ ウリン投与は、体重当たりの骨格筋湿重量を減少さ せた。また、タウリン投与は、骨格筋タウリン濃度 を高め、反対に骨格筋から他のアミノ酸を放出させ、 アミノ酸濃度を低下させる拮抗調整作用を有するこ とが推察された。
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