日本腰痛学会雑誌
Online ISSN : 1882-1863
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7 巻, 1 号
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〔特別講演〕
〔特集〕腰痛症における体幹筋力測定の意義と臨床応用
  • 松平 浩, 山崎 隆志, 滝川 一亮, 荒井 勲, 星地 亜都司, 中村 耕三
    2001 年 7 巻 1 号 p. 49-54
    発行日: 2001年
    公開日: 2008/07/10
    ジャーナル フリー
    患者と整形外科医にアンケートで人体図の腹背側面に“どこが痛ければ腰が痛いと表現するか”との質問票に回答を求めた.患者は腰痛既往のある270名,医師は3年以上整形外科を専門としている62名を対象とした.患者,医師ともその表示パターンは以下の4型に分けられた.1型:背側においてその局在の下限が腸骨稜を越えない腰背部単独型,2型:下限が腸骨稜を越えるが殿部の近位1/2を越えない上殿部型,3型:下限が殿溝まで及ぶ全殿部型,4型:下限が殿溝を越える下肢型.その内訳は患者で1型62%,2型27%,3型8%,4型3%,医師では1型39%,2型48%,3型11%,4型2%であった.背側のみならず上前腸骨棘周囲などの腹側にも表示のあった回答者が患者の10%,医師の3%にみられた.個人の考える腰痛部位は殿部の扱いを含めさまざまなため,JOAスコアを用いて腰痛,下肢痛の治療成績評価をする際は,腰の範囲を明確にする必要があると思われた.
  • 川口 善治, 金森 昌彦, 石原 裕和, 大森 一生, 野口 京, 木村 友厚
    2001 年 7 巻 1 号 p. 55-59
    発行日: 2001年
    公開日: 2008/07/10
    ジャーナル フリー
    本研究はMRIでとらえられる椎間板変性,椎間板ヘルニアなどの異常所見と腰痛との関連を調べ,これらMRIにおける異常所見の腰痛に対するsensitivityとspecificityを求めた.20歳代の看護科学生および医学科学生120名を対象とし,アンケートによる腰痛調査を行った.同時に腰椎MRIを撮像し,椎間板変性,椎間板ヘルニア,Schmorl結節の有無を調べた.その結果,腰痛群で椎間板変性が著しく椎間板ヘルニアの頻度が高かった.しかし,それらの所見の腰痛に対するsensitivityとspecificityは高くなかった.以上より,椎間板変性や椎間板ヘルニアと関連する腰痛としない腰痛を鑑別するには注意を要すると思われ,今後は対象者の訴える腰痛をさらに詳細に分析することにより,椎間板が原因で生じる腰痛の特徴を知ることが可能になると考えられた.
  • 矢吹 省司, 菊地 臣一
    2001 年 7 巻 1 号 p. 60-64
    発行日: 2001年
    公開日: 2008/07/10
    ジャーナル フリー
    看護婦に対するアンケートの結果から,「肩こりと腰痛を有する症例」や「肩こりに合併する腰痛」の特徴,そして「腰痛を合併する肩こりとはどんな肩こりか」を検討した.肩こりを有する208例を,腰痛の有無により「腰痛合併あり」群と「腰痛合併なし」群に分けて比較検討した.その結果,肩こりとともに腰痛を合併している症例の特徴は,①肩こりや腰痛の他にも何らかの愁訴を有する.②肩こりの治療を受けたことがある.そして,③本人は,睡眠不足やパソコンが肩こりに関連していると考えている,というものであった.すなわち,「肩こりを有する症例に合併する腰痛」とは,肩こり患者が有する多彩な症状の1とつとしての腰痛であると考えられる.また,肩こりとともに腰痛を合併している例とは,睡眠不足やパソコンと関連した,治療を要する程の肩こりを有している症例である,と考えられる.
  • 白木原 憲明, 岩谷 力, 飛松 好子, 大井 直往, 吉田 一成, 漆山 裕希, 近藤 健男
    2001 年 7 巻 1 号 p. 65-72
    発行日: 2001年
    公開日: 2008/07/10
    ジャーナル フリー
    目的:高齢者の腰背部痛と,身体的状態,ADL遂行能力,生活満足度との関連を調査した.対象:東北農村部O町の65歳以上の高齢者78名を対象とした.方法:腰背部痛の程度により3群に分けて群間比較を行った.統計解析はSPSSを用いた.測定項目:年齢,身長,体重,膝痛の有無,立位胸椎,腰椎側面レントゲン像による胸椎後彎角,腰椎前彎角,腰仙角,胸腰椎圧迫骨折椎体数,胸腰椎椎間腔狭小化数,骨塩量(踵骨乾式超音波骨評価装置,アロカ社AOS-100による音響的骨評価値にて測定)とアンケートによるADL,QOL調査とした.結果:腰背部痛と関連のあった因子は,年齢,膝痛の有無,骨塩量,圧迫骨折椎体数,腰椎前弯角,腰仙角,ADL(体力,歩行能力,社会参加),QOL(人の役に立つ)であった.考察:高齢者の腰背部痛は,加齢,膝痛,骨粗鬆症による脊柱変形と関連し,さらに,体力の低下,歩行能力の低下,社会参加の制限と「役に立たない」という自己評価の低下と関連があった.
  • 松本 學, 木下 厳太郎, 白木 孝人, 常深 健二郎, 丸岡 隆
    2001 年 7 巻 1 号 p. 73-78
    発行日: 2001年
    公開日: 2008/07/10
    ジャーナル フリー
    病院はあらゆる職種の人々が働いているところである.当院職員765名を対象にアンケート調査を行い,腰痛の危険因子を分析し,腰痛の予防と対策について検討した.回答は646名84%から得られた.腰痛は518名80%(看護婦292名,医師43名,コワーカー80名,事務63名,ビル管理40名)にみられた.腰痛は放置や家にて安静にする程度のものが多く,作業中に腰痛のため休憩が必要な人は5人1%であった.休職歴を有する人は52名10%で,入院歴があるものは11名2%であった.手術歴のあるものはいなかった.概して腰痛は軽度であると思われた.腰痛を増強させる姿勢は各職種の作業特性を反映していた.腰痛の改善・予防は個人の意識改革も必要であるが,作業環境の改善や予防教育などの検討も必要と思われた.
  • 稲岡 正裕, 米延 策雄, 山本 利美雄, 多田 浩一
    2001 年 7 巻 1 号 p. 79-88
    発行日: 2001年
    公開日: 2008/07/10
    ジャーナル フリー
    異なる業種間で,腰痛の発生頻度や背景因子の有意性を比較検討するために,VASとPDによる腰痛の定義を設定した.養護施設の教職員1,821人と,製造業従事者1,383人を対象とした.現在腰痛ありは養護群32%,製造群49%,腰痛の経験のあるものは養護群83%,製造群61%であった.明確な腰痛群(単純回答腰痛あり,VAS1点以上,腰部にPDを確認)は養護群30%,製造群39%,非腰痛群(単純回答腰痛なし,PDで腰痛なしを確認)は養護群43%,製造群31%であった.PDは6つのパターンに分類した結果,上肢の症状を伴う腰痛は製造群に多く出現する傾向を認め,下肢痛を伴う腰痛は養護群に多く出現する傾向を認めた.背景因子の中で,年齢,身長,体重に有意性を認めなかったが,腰痛は40代,50代に出現頻度が高く,BMI 25以上の肥満,既往歴,他疾患の合併などは腰痛発生の危険因子として有意性を認めた.
  • 若森 真樹, 土井 龍雄, 大久保 衞, 大槻 伸吾
    2001 年 7 巻 1 号 p. 89-93
    発行日: 2001年
    公開日: 2008/07/10
    ジャーナル フリー
    食品および生活雑貨の受注販売会社の配送配達作業従事者,平成9年度365名,平均年齢31.4歳,平成10年度360名,平均年齢31.9歳,平成11年度362名,平均年齢32.1歳(すべて男性)に対し,作業状況を調査し,腰痛その他の障害の危険因子を分析し対策の立案,実施の資料とした.その結果から職場体操を作成し指導した.また,作業方法,姿勢の改善指導し,体力測定を行った.さらに職場リーダの養成や腰痛検診および腰痛体操教室を実施した.その結果,腰痛を訴える者は62.7%から47.2%,医師による腰痛検診の結果,所見なし30.5%から90.2%と改善した.体力測定結果は筋,筋持久力テストでは有意に向上した.この企業においては作業環境改善や省力化を中心とした対策を講じてきたが顕著な改善は得られなかった.今回,成果が得られた要因は作業状況を調査し予防と治療,また個体的要素と作業環境要素から作業や職場に適した対策を立案,実施し,教育やサポート体制の整備などを包括的に行ったことによるものと考えられた.
  • 萱岡 道泰, 伊地知 正光
    2001 年 7 巻 1 号 p. 94-99
    発行日: 2001年
    公開日: 2008/07/10
    ジャーナル フリー
    某企業関連施設での腰痛に対するアンケート調査の結果と外来診療状況をまとめて報告する.男性では69.3%に,女性では60.9%に腰痛経験があった.男性で就業年数別に腰痛経験をみると,半年から1年の層で66.3%と高率となっていた.腰痛を起こしやすい姿勢や動作についての知識については,知らないものと覚えていないものが60%を占めていた.治療の内容と施設別にみると,手術加療者,施設内整形外科,整形外科,民間医療受診者の順で理解度が高く,また就業年数とともに習得されていた.腰痛による外来受診者の通院状況は,1週間以内で約70%を占めていた.通院回数は,1∼55回(平均3.2±5.7回)で,手術を要したものが4名(0.9%)であった.年齢層別にみると,有意差はないものの25歳以上で外来受診者が増加し,1カ月より長期の通院割合も増加していた.以上のことから,新入社員に対する早期の教育がまず重要と考えられた.
  • 帖佐 悦男, 田島 直也, 松元 征徳, 黒木 浩史, 後藤 啓輔
    2001 年 7 巻 1 号 p. 100-104
    発行日: 2001年
    公開日: 2008/07/10
    ジャーナル フリー
    職業性腰痛の疫学を各職種に従事している2,778名を対象にアンケート調査を行い,特に職種と腰痛の関係について検討した.アンケートの結果から腰痛歴の既往を約半数に認め,職場での発症が最も多かった.現在の腰痛に関しては,運輸職,看護職で腰痛との因果関係があると回答した者が多かった.発症状況では,徐々に発症したものは看護職や事務職に多く,急に発症したものは保安職や運輸職に多かった.腰痛発症の要因として,特に中腰作業,運転作業や重量物の取り扱いや介護作業が考えられた.腰痛発症と従事年数との関係では,看護職は初年度から腰痛の発生が高く,また業務との因果関係がありとの回答が多かった.この結果から,特に作業姿勢や作業関係などに関する指導や腰痛の予防に対する啓発を行う必要がある.
  • 菅田 吉昭, 今井 健, 石井 秀典, 小西 明, 角南 義文
    2001 年 7 巻 1 号 p. 105-109
    発行日: 2001年
    公開日: 2008/07/10
    ジャーナル フリー
    神経根ブロックがどのような症例に対し奏功したかを検討した.平成11年に当院で入院加療を行った腰椎椎間板ヘルニア189例を対象とした.男151例,女38例で,入院時平均年齢は45.2歳(16∼81歳)であった.入院時JOA score,ヘルニアのレベル,脱出部位とmigration,ブロック効果,予後について検討した.神経根ブロックは,平均1.31回(最大3回)施行し,神経根ブロックによる副作用,症状の増悪を認めた症例はなかった.神経根ブロックにて症状の著明な改善がみられなかった76例と,退院後症状の増悪を認め7例が当院で,1例が他医にて手術加療を受けた.傍正中型でmigrationの小さい症例および外側型の症例は神経根ブロックの効果が持続せず,手術を要する傾向がみられた.神経根ブロックは,正中型とmigrationの大きい症例についてはより効果的な治療法と思われた.
  • 伊藤 博志, 高山 瑩, 岩間 徹, 木下 朋雄
    2001 年 7 巻 1 号 p. 110-113
    発行日: 2001年
    公開日: 2008/07/10
    ジャーナル フリー
    腰部や下肢の痛みに対し,神経ブロックやトリガーポイント注射を併用した効果について報告する.症例は,男32例・女31例の計63例で,受診時の年齢は平均65.6歳であった.使用薬剤は,1%塩酸“ピバカインと時に,リン酸デキサ“タゾン1.9∼3.8 mgを併用し,痛みが消失あるいは軽減していた期間と痛みの改善率について調査した.痛みの評価はNRS 5点法を用い,ブロック前後のペインスコアより改善率を求めた.痛みのNRSは,平均2.4点がブロック後は平均0.7点,改善率は73%で,痛みが消失あるいは軽減していた期間は平均8.1日間であった.改善率が60%以上は,63例中53例84%で,悪化例は1例もなかった.鎮痛剤と比較し,局麻薬は極めて安全性が高く副作用は少ない.複数の神経ブロックやトリガーポイント注射の併用は,有効な手段で一時的な除痛でも患者の満足度は高く,増加する高齢者の腰部や下肢の痛みに対し,極めて有効な方法と考える.
  • 朱 寧進, 中井 修, 進藤 重雄, 水野 広一, 大谷 和之, 肱黒 泰志, 山浦 伊裟吉
    2001 年 7 巻 1 号 p. 114-119
    発行日: 2001年
    公開日: 2008/07/10
    ジャーナル フリー
    1997年∼2000年10月まで当科にて入院加療した下肢症状を伴い,画像上腰椎黄色靱帯腫瘤を認めた19例(男性11例,女性8例)について検討した.入院時平均年齢は65.3歳(39∼82歳),罹患椎間はL2/3; 2例,L3/4; 4例,L4/5; 9例,L5/6; 1例,L5/S; 3例であった.下肢症状は神経根症が9例,馬尾症が10例であった.単純X-P上椎間に不安定性を12例で認めた.脊髄造影,椎間関節造影とその後のCTは腫瘤の局在と大きさを知るうえで有用であった.MRI像はT1等輝度,T2高輝度,環状の造影を示すものが最も多かった.手術を17例に施行したが,いずれも手術成績は良好であった.病理学上,ガングリオン11例,肉芽組織3例,血腫2例,滑膜嚢腫1例であった.腰椎黄色靱帯腫瘤は黄色靱帯が硬膜の後方にあり,椎間関節の前内側関節包を形成するという解剖学的特徴を反映し,椎間の不安定性による靱帯の変性が腫瘤形成の促進因子と考えられた.
  • 彌山 峰史, 古沢 修章, 安念 悟, 宮崎 剛, 吉澤 今日子, 馬場 久敏
    2001 年 7 巻 1 号 p. 120-125
    発行日: 2001年
    公開日: 2008/07/10
    ジャーナル フリー
    胸腰椎移行部は脊髄と馬尾が混在し,同部位の障害によって脊髄上位・下位ニューロンの混在した症状を呈することがある.下肢の筋萎縮,筋力低下,腱反射の減弱および消失を特徴とするepiconus syndromeを呈した8症例について検討した.診断までの期間は1週間∼10年に及び,下位腰椎椎間板障害,変形性膝関節症と診断されていた例もあった.知覚障害はL4以下の領域にみられ,責任病巣はT10-11:1例,T11-12:2例,L1:3例,L1-2:2例であった.epiconus syndromeは,胸腰椎移行部に脊髄,円錐上部,円錐部,馬尾が隣接すること,個体間で脊髄円錐末端の高位が異なることより症状が多彩である.また,L4神経根がT12-L1の脊髄実質より分枝することにより,知覚障害がL4以下に認められることも特徴である.胸腰椎移行部の病変を的確に把握し,早期に治療を行うことが重要と考えられた.
  • 元村 拓, 金森 昌彦, 信清 正典
    2001 年 7 巻 1 号 p. 126-131
    発行日: 2001年
    公開日: 2008/07/10
    ジャーナル フリー
    単純X線像における椎間板腔の高さ,あるいはその断面積がMRIにおける変性度を反映し得るかを検討した.対象は外来患者45人(平均年齢:49.4歳)である.MRIにおけるL3/4およびL4/5高位の椎間板変性をSchneidermanの分類で評価し,単純X線側面像における椎間板腔の測定法として,(A法)本来の椎間板の前方a,中央b,後方cの和を椎体の前後径dで割る方法.(B法)骨棘を含めた椎間板の前方a ’,中央b’,後方c’の和を骨棘を含めた椎体の前後径d’で割る方法.(C法)画像解析により椎間板の面積S1と椎体の面積S2を測定し,そのピクセル比で比較する方法の3つを使用した.その結果A法およびB法ではMRIにおける椎間板変性の程度と呼応していることが分かった.Schneiderman分類における“marked”あるいは“absent”のcut-off値は約0.6∼0.7と考えられた.
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