日本腰痛学会雑誌
Online ISSN : 1882-1863
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8 巻, 1 号
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〔特別寄稿〕
〔特集〕腰痛の疫学調査の理論と実際について
〔特集〕骨粗鬆症と腰痛
  • 佐藤 光三, 石河 紀之
    2002 年8 巻1 号 p. 53-57
    発行日: 2002年
    公開日: 2008/07/10
    ジャーナル フリー
    骨粗鬆症患者の急性腰背痛は主として圧迫骨折に起因し,慢性腰背痛は後弯による筋筋膜性疼痛が多い.圧迫骨折のMRIはT1で低輝度,T2で高輝度を示し,新鮮骨折の描出に鋭敏であるのでX線写真で骨折と判断しがたい場合特に有用性が高い.偽関節は慢性疼痛の原因となり,そのX線像では骨折線が前屈位で縮小ないしは消失し伸展位で拡大する.MRIではT1低輝度,T2高輝度と明瞭化する.Gd造影所見は骨折椎のviabilityを反映するので骨癒合の予後判定にも役立つ.したがって,圧迫骨折の治療では,MRIを参考にして体幹ギプスのような強固な外固定を行うことにより高い癒合率が得られる.また,単純X線写真での骨硬化像の出現はMRIの正常化より早く,しかも腰背痛の経過を反映しやすい.
  • 森 諭史
    2002 年8 巻1 号 p. 58-63
    発行日: 2002年
    公開日: 2008/07/10
    ジャーナル フリー
    骨粗鬆症女性患者101名の脊椎X線撮影を行い脊柱変形と椎体圧迫骨折数と生活体力の関連について検討した.円背群の圧迫骨折数は非円背群より多かったが,円背がなくても圧迫骨折のある例,圧迫骨折がなくても円背のある例が存在した.円背群は非円背群に比べて腰椎前弯角が高く,起居動作能力は低下していた.円背があり腰椎前弯がない群の圧迫骨折数は他の群より多く,仙骨が腰椎前弯あり群より後傾し,生活体力では腰椎前弯あり群より起居・歩行動作能力が低下していた.圧迫骨折のある円背群の生活体力が最も低かった.圧迫骨折により生活体力は低下するがそれに円背を伴うと生活体力はさらに低下していた.立位姿勢は,胸椎後弯が増強すると腰椎の前弯が増強し,さらに進行すると全後弯となり,骨盤後傾と膝関節の屈曲で姿勢を保持する.筋力が十分でないと姿勢保持は破綻し,杖などの補助具が必要となる.今回の検討では姿勢保持の代償アークが大きくなるほどADLの低下が著しかった.
  • 武政 龍一, 山本 博司
    2002 年8 巻1 号 p. 64-70
    発行日: 2002年
    公開日: 2008/07/10
    ジャーナル フリー
    骨粗鬆症に伴う腰痛は,主に圧迫骨折の新たな発生による急性期疼痛と,骨癒合が障害された偽関節あるいは遺残高度後弯変形による慢性期疼痛に分けられる.神経障害を伴わないこれらの病態に対しては,従来保存療法が適用されてきたが,それでは対処困難な場合も少なくないことが認識されてきた.われわれはbioactiveで骨親和性の高いリン酸カルシウム骨ペーストを経椎弓根的に骨折椎体内に注入する低侵襲の骨折修復術を開発し,臨床応用を行ってきた.これまで本法を行い3カ月以上経過観察できた症例は,新鮮圧迫骨折19例,遷延治癒・偽関節が17例であり,全例で術後早期からの著明な除痛が得られ,術中に得られた圧潰椎体の整復状態は術後わずかに矯正損失するのみで良好に保持できており,早期の運動性の回復と後療法の簡略化に役立っていた.本法は骨粗鬆症性椎体骨折やその関連病態による腰背部痛に対して,有効な治療法の1つになり得ると考える.
〔特集〕腰椎椎間板ヘルニア治療のクリニカルパス
  • 坪内 俊二, 岩橋 徹, 稲田 充, 南谷 千帆, 鈴木 信治
    2002 年8 巻1 号 p. 71-76
    発行日: 2002年
    公開日: 2008/07/10
    ジャーナル フリー
    腰椎椎間板ヘルニアに対する顕微鏡下椎間板ヘルニア摘出術は,侵襲が少なく術後の早期離床が可能で治療成績も安定しているため整形外科の中でもクリニカルパス(CP)を行うのに最適な疾患・方法の1つである.今回CP導入後の50例を対象として治療成績,入院期間,バリアンスを調査し,発生したバリアンスがこれらに与える影響について検討した.CPの導入は医師個人の経験による治療を廃しEBMに基づいた治療体系の標準化を行い,医療チーム全体で患者の治療を行うことにより医療事故を防ぎ患者中心の医療を行うためのものという考えが重要であるが,現実的には整形外科ではただでさえ長くなる傾向にある在院日数の短縮は取り組まねばならない重要問題である.その際に術前期間をいかに短縮し,また術後経過に問題がある症例に対して患者中心に考えていかにそれに対処するかがCPを円滑に進めるうえで重要と考えられた.
  • 荒井 勲, 山崎 隆志, 松平 浩
    2002 年8 巻1 号 p. 77-82
    発行日: 2002年
    公開日: 2008/07/10
    ジャーナル フリー
    ラブ法手術を受けた42例を対象とし,パス導入前後で患者を2群に分け,術後入院日数,後療法,入院費総額,術後成績を比較し,パス導入による効果を検討した.当院のパスは術後用で,術後2日目で立位,10日目で抜糸,14日目で退院となっている.パス導入により,術後立位までの平均日数は,2.5日から2.0日と短縮し,術後入院日数は,パス導入により平均18.8日から13.8日と有意な短縮効果があった.入院費総額は,平均90.5万円から76.2万円に減少し,有意な費用削減効果を認めた.各主治医別の術後入院日数は,入院期間の長い医師と短い医師との較差がパスにより減少していた.すなわち,漫然と後療法を行っていた医師がパスの導入により減少したことが考えられ,またそれが入院期間短縮の大きな要因となっていると考えられた.パスの使用前後で術後成績の差は認められず,ラブ手術後の入院治療の標準化にパスは有効であると考えられた.
  • 沼沢 拓也, 末綱 太
    2002 年8 巻1 号 p. 83-88
    発行日: 2002年
    公開日: 2008/07/10
    ジャーナル フリー
    クリニカルパスを導入し腰椎椎間板ヘルニア治療を効率よく行っていく過程で,入院日数の短縮は重要な課題である.そこで過去のデータを検討し,術後入院日数に対する危険因子の検討を行った.過去6年間に腰椎開窓術およびヘルニア摘出術を施行し,1年以上経過観察をした症例のうち自宅退院した87例(男56例,女31例)を対象とした.術後入院日数は平均22.6日であり性差は認められなかった.術後入院日数は年齢と有意な相関を示したが,術前JOAスコアとは相関していなかった.術後長期入院例ではLSCS合併による症状残存例や合併症治療併用例など年齢と関連した症例が多く,統計学的には40歳以上の症例が4週間以上入院する危険因子と考えられた.2001年3月より6症例にクリニカルパスを導入し期待される入院期間の短縮は得られているが,今後生じるVarianceと危険因子との関連を調べることは,クリニカルパス導入に際して重要である.
  • 2002 年8 巻1 号 p. 89-96
    発行日: 2002年
    公開日: 2008/07/10
    ジャーナル フリー
    腰椎椎間板ヘルニア摘出術に対するクリニカルパス(以下,CP)の有用性と課題について検討した.CP導入後の158例(平均46.5歳)を調査対象とした.退院(術後10∼14日)のバリアンスは,術後21日以降と規定した場合6.9%に発生しており,要因はヘルニア再発が2例,症状改善の遅延が6例,社会的適応で入院継続を希望が2例その他であった.術後在院日数は,CP導入後が平均14.8日で,導入前の17.5日に比べ短縮がみられた.アンケートによるCPの意義についてはおおむね良好であったが,“ベルトコンベアに乗せられているように感じた”や“経過の遅れに対する不安”などの意見が存在した.CPにより,インフォームド・コンセントの充実と医療業務の標準化はある程度達成でき,入院期間の短縮にも効果が認められた.しかし画一的な活用は規制感や不安感を与える問題があった.バリアンスをある程度許容した柔軟な活用が望ましい.
〔投稿論文〕
  • 橋本 伸朗
    2002 年8 巻1 号 p. 97-105
    発行日: 2002年
    公開日: 2008/07/10
    ジャーナル フリー
    腰椎椎弓切除術のパスの使用状況について報告する.対象は1998年9月∼2001年7月までに,腰椎椎弓切除術を行った58例(男31例:女27例),平均年齢70.7歳である.疾患は腰部脊柱管狭窄症38例,腰椎辷り症13例,脊髄腫瘍7例であった.パスの退院基準を独歩,入院期間は術後4週間と設定した.術後は早期離床・装具非使用とした.このパスを一定期間使用した結果を検討し,入院期間の再設定を行った.4週間の設定では平均術後入院期間28.2日.3週間の設定では平均術後入院期間21.0日,さらに2週間の設定では平均術後入院期間は14.1日と短縮された.術後成績もJOA score改善率でみると,72.5%(4週パス),81.0%(3週パス),79.8%(2週パス)と,悪化はなかった.今回の経験より,パスを使用することにより腰椎椎弓切除術において,治療成績を悪化させることなく入院期間の短縮が可能であることが証明された.
  • 兵藤 弘訓, 佐藤 哲朗, 佐々木 祐肇
    2002 年8 巻1 号 p. 106-114
    発行日: 2002年
    公開日: 2008/07/10
    ジャーナル フリー
    いわゆる「ぎっくり腰」の中で,MR像から推定した椎間板内への局所麻酔剤の注入によって除痛が得られたものを椎間板性と定義し,その特徴と発症機序を検討した.いわゆる「ぎっくり腰」で来院した23例中,椎間板性と診断されたのは16例(70%)であった.平均年齢は36歳と比較的若かった.日常の何気ない動作で発症した症例が10例(63%)と多かった.腰部中央を含む両側性腰痛が8例(50%)であり,傍脊柱筋に圧痛がない例が11例(69%)と多かった.単純X線像で椎間板の高度狭小化像を呈する例はなかった.椎間板造影像では後方線維輪までの放射状断裂が全例にみられたが,硬膜外腔への流出像は2例(13%)にしかみられなかった.T2強調MR像では椎間板の変性が全例にみられ,うちgradeⅢ(Gibson分類)が15例(94%)であった.造影MR像では椎間板後縁に明らかな造影領域が10例(63%)にみられた.椎間板性「ぎっくり腰」の多くは,放射状断裂を呈する中等度の変性椎間板において,椎間板後方線維輪の肉芽あるいは瘢痕組織に置換された無症候性断裂部位に,体動による再断裂が生じることで発症していると思われる.
  • 伊藤 友一, 平本 典利
    2002 年8 巻1 号 p. 115-119
    発行日: 2002年
    公開日: 2008/07/10
    ジャーナル フリー
    この研究の目的は,65歳以上の高齢者における腰下肢痛の有病率と日常生活動作(ADL)の困難度を明らかにすることである.人口約5万のS市の3地区を選定した.そこに住む65歳以上の全住民640人のうち調査可能な623人を対象とした.整形外科医が直接検診し以下の項目を調査した.1カ月以上の治療を要した腰痛の既往,過去1カ月の腰下肢痛の有無と程度,ADLの困難度である.腰痛の既往は28.9%にあった.腰下肢痛を有していたのは58.6%であった.腰下肢痛と年代には関連はみられなかったが,腰下肢痛は女性に多い傾向がみられた.寝返りが困難なのは12.2%,立ち上がり動作が34.2%,中腰・立位保持が33%,洗顔が1.7%,長時間坐位が13.4%,重量物挙上#が48%,歩行動作が困難は33.9%であった.高い有病率とADLの困難度より今後は腰下肢痛に対する予防や治療対策が必要である.
  • 佐藤 公昭, 安藤 則行, 永田 見生
    2002 年8 巻1 号 p. 120-125
    発行日: 2002年
    公開日: 2008/07/10
    ジャーナル フリー
    骨粗鬆症性脊椎圧迫骨折後の遅発性麻痺に対して強固なinstrumentを用いずに後方除圧椎体間固定を行った.症例は女性6例で,平均年齢76(69∼86)歳,経過観察期間25(7∼57)カ月,骨折部位はL2が2例,T12・L1・L4・L5が各1例であった.手術方法は,後方進入で脊柱管内に突出した椎体後縁を切除し,椎間板および軟骨板を切除,得られた棘突起と椎弓を椎体間に移植した.関節リウマチの1例は腸骨片を移植した.5例にはinstrumentは用いず,1例に棘突起wiringを追加した.後療法は1週間以内に歩行を許可し,術後約4カ月間コルセットによる外固定を行った.術後全例に部分的な症状の改善が得られ,屋内でのADLは自立していた.本法は,instrumentに起因する合併症がなく,活動性の低下した高齢者に対して症例を選べば選択肢の1つとなり得る手術方法と考えられる.
  • 高山 瑩, 伊藤 博志
    2002 年8 巻1 号 p. 126-130
    発行日: 2002年
    公開日: 2008/07/10
    ジャーナル フリー
    腰部の術後母趾痛に対して鎮痛剤や麻薬にも抵抗した例に母趾と第2趾の間で中足骨基底部周辺にトリガーポイント注射を行ったところ,偶然にも著効を得た.この部分が深腓骨神経ブロックとなったわけである.腰痛,下肢痛などを主訴とする腰部変性疾患の患者でこむら返りを伴っている22症例に対し,深腓骨神経ブロックを1∼3回施行した.使用薬剤は1%塩酸メピバカインに,0.5 mgのリン酸デキサメタゾンを加え,計5 mlとし,注射針は25Gか27Gを使用した.高齢者の夜間のこむら返りに対しては,従来より十分な対応はほとんどされていない.下腿や足趾のこむら返りには深腓骨神経ブロックが著明な効果を呈した.
  • 菅田 吉昭, 今井 健, 石井 秀典, 小西 明, 角南 義文
    2002 年8 巻1 号 p. 131-134
    発行日: 2002年
    公開日: 2008/07/10
    ジャーナル フリー
    腰部脊柱管狭窄症に対し神経根ブロックを施行し,その効果および予後に関する因子について検討した.入院加療を行った腰部脊柱管狭窄症114例中,神経根ブロックを施行した46例(男23例,女23例)を対象とした.入院時JOA scoreを29点満点で評価し,脊髄造影所見,外側陥凹前後径について検討した.また,側弯例については,症状側が凸側か凹側について比較検討した.入院時JOA scoreは,予後良好群は平均17.2点,予後不良群は平均13.6点で両群間に有意差を認めた(P<0.01).外側陥凹前後径は,予後良好群は平均0.516 cm,予後不良群は平均0.486 cmで両群間に有意差を認めた(P<0.01).側弯については,凹側の予後が不良となる傾向がみられた.ブロック効果のない症例の予後は不良であった.脊髄造影で砂時計型以上の狭窄を有する症例は予後不良となる傾向がみられ,JOA scoreでは15点,外側陥凹前後径は0.500 cmが予後の目安となると考えられた.
  • 青木 一治, 友田 淳雄, 上原 徹, 鈴木 信治, 坪内 俊二
    2002 年8 巻1 号 p. 135-140
    発行日: 2002年
    公開日: 2008/07/10
    ジャーナル フリー
    腰椎椎間関節症(以下,LFS)に対する腰椎屈曲運動の効果を,運動前に撮影した立位側面X線像と臥位最大伸展X線像から検討した.対象は神経根症状がなく,腰椎伸展時に疼痛が増強し,画像所見を考慮してLFSと診断し,腰椎屈曲運動を行った外来患者35名であった.運動の結果,腰痛が消失したものと軽減したものとを合わせると,88.6%に有効であった.立位側面X線像で比較すると,腰痛の消失,軽減,変化なしの順で,posterior projectionを除いて,伸展方向の角度が増加していた.効果のみられないものでは,腰椎の前弯が最初から増強していることが分かった.臥位最大伸展X線像で比較すると,腰痛が変化なし,軽減,消失の順に可動域は増加しており,消失したものでは伸展可動域に余裕があった.このように臥位最大伸展で可動域が増す者は,屈曲運動の効果が得られる傾向にあった.
  • HASHIGUCHI Hiroshi, Shirai Yasumasa, Nakayama Yoshihito, Miyamoto Masa ...
    2002 年8 巻1 号 p. 141-145
    発行日: 2002年
    公開日: 2008/07/10
    ジャーナル フリー
    Microdiscectomy was performed on 75 patients (54 males and 21 females with an average age of 35.0 years at operations) diagnosed with lumbar disc herniation. The disc herniations were located as follows: L1-2; 1, L2-3; 2, L3-4; 9, L4-5; 46, and L5-S1; 17. All patients exhibited herniation at a single level. The average follow-up period was 64.4 months. The postoperative outcomes were evaluated according to the Japanese Orthopaedic Association scoring system for lumbar disease and Hirabayashi’s improvement rate. Postoperatively, the average JOA score improved from 12.1 to 26.7 points. Hirabayashi’s improvement rate was 86.4%. A recurrence of same level disc herniation was observed in 3 patients. We conclude that microdiscectomy provided satisfactory postoperative outcome in majority cases. Average intraoperative blood loss was 36.5g. Postoperatively, only 6.7% complained of low back pain, suggesting that this procedure was less invasive. Microdiscectomy has some problems such as a postoperative treatment program and possible recurrence of herniation. However, since microdiscectomy is less invasive and obtains satisfactory postoperative outcomes, it is still considered to be an effective procedure.
  • 金村 在哲 在哲, 佐藤 啓三, 栗原 章, 井口 哲弘, 笠原 孝一, 伊藤 研二郎
    2002 年8 巻1 号 p. 146-152
    発行日: 2002年
    公開日: 2008/07/10
    ジャーナル フリー
    体幹の回旋運動を考慮した挙上運搬動作を模倣し,表面筋電計を用いて体幹筋の筋活動量を計測した.また同様の動作を腰部固定帯を装着して行い,その有用性を検討した.対象は健常成人男性20名で,各対象の膝の位置から6.8 kgの負荷重量を体幹を回旋させ,側方へ50 cm,肩の高さまで挙上させた.この動作を左右10回ずつ行い,左右の脊柱起立筋と腹斜筋の筋活動量を表面筋電計を用いて計測した.1回の動作における左右の脊柱起立筋と腹斜筋の平均筋活動量を計算し,%MVCで各群間を比較した.脊柱起立筋と腹斜筋間では有意に脊柱起立筋の%MVCが大きく,平均4.6倍の筋活動量を示した.また腰部固定帯の装着により%MVCは有意に小さくなり,脊柱起立筋では14.6%,腹斜筋では18.9%筋活動量が減少した.回旋を加えた挙上運搬動作でも脊柱起立筋に対する負荷が大きく,腰部固定帯の装着は,その負荷を軽減させる効果があった.
  • 2002 年8 巻1 号 p. 153-159
    発行日: 2002年
    公開日: 2008/07/10
    ジャーナル フリー
    養護学校教職員の腰痛の実態について,連続してアンケート調査を行うことによって,腰痛の程度や発生頻度を縦断的に検討した.さらに,慢性腰痛保持者の背景因子について,危険因子としての有意性を検討した.大阪府立の養護学校教職員(定数2,879人)を対象とした.有効回答の総数は,2000年4月は1821人,2001年3月は1,825人(回収率63%)であった.腰痛の定義を,明確な腰痛とは,単純回答にて腰痛ありと答え,しかもVASが1点以上で腰部にPDを確認できるものと規定した場合,養護学校教職員の全体としての腰痛の発生頻度は2000年には30%,2001年は31%と異なる調査時期においても同等の発生率を示した.個々の追跡調査では,2回の調査において,連続して明確な腰痛を訴えたものは24%に留まった.連続して腰痛を訴える群と腰痛を訴えない群を比較すると,危険因子として,年齢,体型は有意性を認めなかったが,他疾患の合併や既往に有意性を認めた.腰痛の疫学調査において,縦断的な追跡調査は,職業性腰痛における慢性腰痛保持者の実態や危険因子を追究するうえで有用であった.
  • 奥野 徹子
    2002 年8 巻1 号 p. 160-165
    発行日: 2002年
    公開日: 2008/07/10
    ジャーナル フリー
    重症者の介護者は近年では成人となった重症者を抱え,前屈姿勢が持続するために慢性腰痛,急性腰痛が起こりやすくなっている.介護者の腰痛検診にJOAスコアを用い,腰椎のX線検査を行ったので報告した.対象は重症者施設の看護師,介護員,指導員,保育士の87名でJOAスコア,腰椎3方向のX線写真,肥満度の計測を行った.年齢は23∼63歳(平均45歳),勤続年数の平均は14年であった.JOAスコアの平均は25.6点で自覚症状なしは18%,時に軽い腰痛ありが40%,それに下肢痛を伴ったのが21%であった.X線所見の有無と腰痛との関連性はなかったが,年齢別に3群に分けると,50歳以上では明らかに変形性脊椎症,椎間板腔狭小化,腰椎すべり症が増加していた.腰痛防止のために介助時の姿勢に注意するとともに,椅子を改良して抱える回数を減らすことが大切である.
  • 吉田 徹, 見松 健太郎, 笠井 勉
    2002 年8 巻1 号 p. 166-172
    発行日: 2002年
    公開日: 2008/07/10
    ジャーナル フリー
    骨粗鬆症性脊椎骨折例で治療の経過中にX線像で骨折椎体にvacuum現象を呈した12例(男1例,女11例,平均年齢75.6歳)について調査した.平均経過観察期間は9カ月.骨粗鬆症性椎体骨折での椎体vacuum現象は,胸,腰椎移行部にみられ,椎体骨折発症後平均2.3カ月で発現した.骨折治療期間に脊柱後弯を矯正することを目的に脊柱の伸展運動や仰臥位で臥床していた例に発現する傾向があった.椎体癒合不全は,脊柱の伸展運動の制限と仰臥位臥床の禁止の保存療法で骨折椎体のvacuum像消失し,疼痛も消失したのが6例,vacuum像縮小し,疼痛消失したのは2例,vacuum像あるが疼痛軽減したのが4例であった.
  • 牧野 均, 白土 修
    2002 年8 巻1 号 p. 173-178
    発行日: 2002年
    公開日: 2008/07/10
    ジャーナル フリー
    健常者(女性14名,平均年齢20.3歳)および慢性腰痛症患者(女性67名,平均年齢61.1歳)を対象に,体幹筋力と呼吸機能の関係を評価した.健常者では,体幹筋力と呼吸機能に統計学的な相関はなかった.比較対照群として,腰痛を呈さない変形性股・膝関節症患者(女性67名,平均年齢61.2歳)を抽出し,腰痛群と比較した.その結果,腰痛群では呼吸機能が優れており,特に予備呼気量が有意に高値であった.原因として,腰痛群では体幹支持性向上のために常時腹横筋を用いて呼吸コントロールしており,その結果として腹横筋を使用する予備呼気量の増加へ結びついたと考察した.今後,体幹筋評価・訓練の一環として,腹横筋への配慮が必要と考える.
  • 李 一浩, 夫 徳秀, 草野 芳生, 圓尾 宗司, 青木 康夫
    2002 年8 巻1 号 p. 179-187
    発行日: 2002年
    公開日: 2008/07/10
    ジャーナル フリー
    クリニカルパスを導入にあたって,過去5年間の顕微鏡視下腰椎椎間板ヘルニア摘出術例を検討した.対象は63例,年齢14∼60歳(平均35.7歳)に対して,手術内容,入院期間,安静度,術後検査と処置,術前後JOA scoreなど検討した.入院期間平均27.3日,術前術後JOA scoreそれぞれ平均15.8点と25.4点で,平均改善率は71.1%であった.抜糸までの期間平均11.3日,抗生剤点滴期間平均6.2日であった.術後坐位までの日数の2日以内群と3日以上群で比較するとJOA score の改善率に有意差はなく安静度の早期化が可能であった.術後の抗生剤の点滴期間も7日以上の群と7日未満の群に分けて検討したが,術後抜糸日数に有意差がなかったことより冗長な抗生剤投与を制限する根拠となり得た.このように手術例の検討とCDCガイドラインを参考にクリニカルパスを作成した.
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