日本腰痛学会雑誌
Online ISSN : 1882-1863
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12 巻, 1 号
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巻頭言
ランチョンセミナー
Special contribution
特集 作業関連性 (職業性) 腰痛2006
  • 高橋 和久
    2006 年 12 巻 1 号 p. 29-33
    発行日: 2006/10/31
    公開日: 2007/08/31
    ジャーナル フリー
    作業関連性腰痛 (職業性腰痛) は, 欧米のみならずわが国においても, 就業者個人および社会にとって重大問題である. 多くの研究により, その発症には身体的因子のみでなく, 心理社会的因子が関与することが示されている. 本症に対しては, 腰痛発症のメカニズムの解明, 腰痛予防のための作業環境の整備, 作業内容やスケジュールの調整, 就労者の心理社会的面を考慮した腰痛の重症化や慢性化の予防, 慢性腰痛に対する有効な治療法の開発などが大切である.
  • 萱岡 道泰
    2006 年 12 巻 1 号 p. 34-38
    発行日: 2006/10/31
    公開日: 2007/08/31
    ジャーナル フリー
    厚生労働省では, 「職場における腰痛予防対策指針」を策定し, 中でも健康管理については, 「重量物取扱い作業, 介護作業等腰部に著しい負担のかかる作業に常時従事する労働者に対し, 配置前およびその後6月以内ごとに定期に腰痛に関する健康診断を実施すること」としている. 腰椎のX線検査については, その必要性には判断に苦慮する. エビデンスに基づく論文で, 「X線学的所見は将来の腰痛やそれによる障害発生をなんら予測できない」とされており, 将来の腰痛予測を目的とするのであれば, 健診における腰椎X線検査は不要と考える. 本邦では, 整形外科医と産業医の協力による, EBMに基づいた研究調査はほとんど施行されていない. 今後, 腰痛予防を目的として, どの産業医も腰痛を評価できるシステムを整形外科医が作成し, より多くの情報を集めることが重要である.
  • ―セラピストの立場から―
    坂本 親宣
    2006 年 12 巻 1 号 p. 39-43
    発行日: 2006/10/31
    公開日: 2007/08/31
    ジャーナル フリー
    作業関連性腰痛 (職業性腰痛) は各種の業務や労働作業によって発症するものであり, 労働に関連して発症する疾病のなかで最も多く, 現在もなお社会的・経済的に大きな問題である. セラピストとして作業関連性腰痛の予防に対してアプローチするには, ただ単に体幹, 下肢の筋力や関節可動域といった身体機能について着目するだけではなく, 職場の環境整備, 作業姿勢の指導, 労働衛生教育などが必要となる. そこで理学療法士や作業療法士は医師, 看護師, メディカルソーシャルワーカーなどの多くの専門職と連携を図りながら, 作業関連性腰痛の予防に関するチームアプローチを行っていくことが重要である.
  • ―医師の立場から―
    稲岡 正裕
    2006 年 12 巻 1 号 p. 44-49
    発行日: 2006/10/31
    公開日: 2007/08/31
    ジャーナル フリー
    作業関連筋骨格系障害の中で最も重要な問題の一つである作業関連性腰痛においては, 作業形態, 作業環境, 社会的要素, 個人の身体的・心理的要素などのいずれにおいても危険因子が存在することが, 製造業従事者や養護学校教職員の腰痛の実態調査から確認できた. 作業関連性腰痛により就業時はもとより, 日々の生活そのものに苦痛や制限を強いられることは, 個人並びに社会全体にとって不幸なことである. 腰痛の発生頻度が高いと判断された集団や職場においては, 数々ある危険因子のどの危険因子が高いかを調べ, 直接的な対策が必要である. 腰痛を訴える労働者の診療においては, 腰部局所に対する診察, 診断, 治療とともに, 職種や職場の環境に配慮した, 生活指導, 運動療法, 装具療法などによる腰痛予防策のきめ細かい指導が必要である.
  • 甲田 茂樹
    2006 年 12 巻 1 号 p. 50-54
    発行日: 2006/10/31
    公開日: 2007/08/31
    ジャーナル フリー
    産業保健では作業関連性腰痛を減らすためのアプローチとして主に作業環境管理, 作業管理, 健康管理の三本柱が重視される. 具体的には, 腰痛症発症に関連した要因, すなわち, 振動や寒冷曝露などの環境要因, 重量物取り扱いや作業姿勢, 労働時間などの作業条件要因, 腰痛検診に代表される作業者自身の健康管理要因をコントロールすることが, 職場において実施される産業保健活動にあたる. しかしながら, 腰痛症の発症には多くの要因が複雑に関与しているため, 作業に応じて, 極端にいえば, 職場に応じて, 多元的かつ効果的なアプローチを実施する必要がある. そのためにも, 産業保健従事者は職場における腰痛症のリスク要因の同定と要因ごとの関与の仕方の把握を適切に行い, これらの結果に基づいて改善・対策を実施し, その後, 改善・対策を評価しなければならない. このようなアプローチが作業関連性腰痛の場合には強く求められる.
特集 腰痛に対する各種保存治療―私はこうしている ブロック療法―
  • 大鳥 精司, 中村 伸一郎, 高橋 弦, 鮫田 寛明, 村田 泰章, 花岡 英二, 守屋 秀繁, 高橋 和久
    2006 年 12 巻 1 号 p. 55-60
    発行日: 2006/10/31
    公開日: 2007/08/31
    ジャーナル フリー
    われわれはラットL5/6椎間板を支配する神経がL2後根神経節に入ることを示してきた. 今回, ヒト腰椎椎間板性腰痛に対し, L2ルートブロックの効果について検討した. 1995年 : 症例はL4/5, L5/S1の椎間板性腰痛を呈する33例であった. 全例, L2ルートブロック (1%リドカイン1.5ml ) を行った. 2000年 : 症例はL4/5, L5/S1の椎間板性腰痛を呈する68例であった. ランダムにL2ルートブロックとL4またはL5ルートブロックを行った. 結果, 1995年 : 注射前のVASは5.0に対し15分後のVASは0.8と有意差を認めた. 効果時間は平均20.7日であった. 2000年 : L2ルートブロック前VASは8.0に対し15分後VASは4.3, L4またはL5ルートブロック前VASは7.8に対し15分後VASは3.4と両ブロックともに同様に有意差を認めた. L4またはL5ルートブロックの効果期間は平均8日であるのに対しL2ルートブロックの効果時間は平均13日であり有意にL2ルートブロックの効果時間が長かった. 椎間板性疼痛に対するL2ルートブロックは有効であることが示された. L4またはL5ルートブロックも短期的には有効であるが, (1) 麻酔薬が直接椎間板に効いてしまっている, (2) 椎間板支配の神経が同高位の後根神経根に支配されている可能性が示唆された.
  • ―腰痛に対する腰部交感神経節ブロックの位置付け―
    大谷 晃司, 菊地 臣一, 紺野 慎一, 矢吹 省司, 五十嵐 環, 二階堂 琢也
    2006 年 12 巻 1 号 p. 61-66
    発行日: 2006/10/31
    公開日: 2007/08/31
    ジャーナル フリー
    腰仙椎部退行性疾患が疑われ, 当科における腰下肢痛の診断・治療体系に従って神経根ブロック, 椎間関節ブロック, 仙腸関節ブロック, あるいは腰部交感神経節ブロックなどにより腰痛の分析が行われた236名を対象とした. 最多年代層は, 60歳台であった. 結果 : (1) 下肢痛を伴う腰痛の65%, 殿部痛の82%が, 下肢症状の原因である罹患神経根ブロックで症状が消失した. (2) 下肢痛を伴わない腰痛の22%, 殿部痛の80%が神経根ブロックで症状が消失した. (3) 非神経根性腰痛と診断された症例のうち, 腰部交感神経節ブロックあるいは第2腰神経根ブロックにより腰痛が消失し, 非髄節性の腰痛と診断された症例は約40%存在した. 結論 : 非髄節性の腰痛が約40%存在することから, 非髄節性の腰痛の診断や治療を行ううえで, 腰部交感神経節ブロックは必要な手技の一つである.
  • 五十嵐 孝, 平林 由広, 瀬尾 憲正
    2006 年 12 巻 1 号 p. 67-71
    発行日: 2006/10/31
    公開日: 2007/08/31
    ジャーナル フリー
    エピドラスコピー, 硬膜外腔内視鏡は難治性の腰下肢痛を有する患者に対する診断法および治療法の1つである. 本法の特長は, (1) 侵襲度の低い方法であること, (2) 硬膜外腔の肉眼的観察所見が得られること, (3) 直視下の潅流, 洗浄, 癒着剥離が行えること, (4) 病変部位への確実な薬剤投与が期待できること, (5) 本法施行後の硬膜外ブロックの十分な広がりが期待できることである. この方法は, 我が国をはじめ米国, 英国, 独国, 豪州, 韓国などで難治性の腰下肢痛をもつ患者の診断治療に応用され, 椎間板ヘルニア, 脊柱管狭窄症, Failed Back症候群などで有用性が報告されている. 今後, 本法は難治性腰下肢痛に対する診断治療法の一つとして, 重要な位置を占めるようになると考えられる.
  • 金子 和生, 田口 敏彦
    2006 年 12 巻 1 号 p. 72-76
    発行日: 2006/10/31
    公開日: 2007/08/31
    ジャーナル フリー
    腰椎変性疾患に対する保存的治療としての, 神経根・椎間関節ブロックについて報告する. 神経根ブロックは神経根性疼痛を有する患者に対して行っており, 責任神経根の同定も可能となるが, 馬尾障害例における効果は期待できない. 神経根ブロックは保存的治療として約50%の症例で有効であり, 高齢者, ブロックの効果時間が長い症例が多かった. 椎間関節ブロックは腰椎椎間関節性の疼痛の診断と治療に用いているが, 椎間関節性の疼痛であると診断された症例で, 後内側枝ブロックで効果がある症例では後内側枝の電気焼灼術も考慮している. 本法は約70%の症例で効果を認めるが, 約25%の症例では後内側枝ブロックで効果があるにもかかわらず電気焼灼術後の効果を認めず, 手技上の問題や心因性の要素の関与を考慮する必要があった.
  • 菅 尚義, 宮崎 昌利, 吉田 省二, 三原 茂
    2006 年 12 巻 1 号 p. 77-84
    発行日: 2006/10/31
    公開日: 2007/08/31
    ジャーナル フリー
    急性期腰痛に対する硬膜外ブロックについて手技, 合併症, 効果について検討した. 体位は腹臥位をとり傍正中法で刺入している. 傍正中法は解剖学的に刺入が容易で患側に確実に注入しやすい. 薬液が注入した側に有効に作用するのは, 硬膜外背側正中部にmedian foldが存在するためと考えられる. 注入レベルは硬膜外造影で調べると, 責任レベルより尾側から注入した方が障害神経への薬液の接触が広かった. 重症の合併症は認めなかったが, 硬膜穿刺を2%に認め, 対処法としては再穿刺による生食20 ml の硬膜外注入が頭痛発生の予防に有効であった. 効果についてはQOLはRDQ得点からRDQ偏差得点を求めた. 腰痛, 下肢痛, シビレ, 仕事についてはVASで判定した. また平林法にてブロック4週目の改善率を求めた. RDQ偏差得点は, ブロック前が37.9, 後は46.6で50点には達しなかった. 改善率はRDQ得点と腰痛で約34%であった.
特集 骨粗鬆症性椎体圧迫骨折に対する低侵襲手術―私はこうしている―
  • 齊藤 文則, 高橋 啓介, 鳥尾 哲矢, 桑沢 安行, 野本 智永
    2006 年 12 巻 1 号 p. 85-90
    発行日: 2006/10/31
    公開日: 2007/08/31
    ジャーナル フリー
    【目的】骨粗鬆性椎体偽関節に対する経皮的骨セメント椎体形成術の治療報告. 【対象】症例は15例16椎体, 罹患高位は胸腰椎 (T11~L2) 15椎体, 腰椎 (L3) 1椎体. 男性2例, 女性13例, 平均年齢73歳. 経過観察期間は平均29カ月. 遅発性脊髄麻痺を7例に認めた. 【結果】手術時間は平均42分. 術中, 術後の全身合併症はない. 術直後, 全例腰背部痛は改善. 遅発性麻痺例も全例軽快 (MMT 1~2→3~5). 経過中, 隣接椎の圧潰を63%に認めた. 1年以上の経過観察例で, 注入椎は隣接椎体間で架橋形成を認めた. 【考察】本法は手術時間も短く, 疼痛も劇的に改善し有用である. しかし, 多くの症例で隣接椎の圧潰を認め問題である. また, 骨セメントに骨親和性がなくとも注入椎は周囲の架橋形成で安定化した. 遅発性麻痺例では椎体形成術のみで麻痺の改善が得られることから, 麻痺の発生には偽関節部の動的圧迫の要素が強いと考えられた.
  • 中野 正人, 平野 典和, 高木 寛司, 頭川 峰志
    2006 年 12 巻 1 号 p. 91-98
    発行日: 2006/10/31
    公開日: 2007/08/31
    ジャーナル フリー
    骨粗鬆症性脊椎骨折治療の新たな選択肢としてリン酸カルシウム骨ペースト (以下, CPC) を損傷椎体に注入し力学的に強化し修復を図る椎体形成術が適用されている. CPCの最大の利点は骨親和性や生体活性を有していることである. 現在椎体内注入後3日で非損傷椎体と同等の強度になるものが使用され, 注入に際しては造影剤なしで透視可能なことや, 硬化する際に発熱しないなどの特性がある. 骨粗鬆症性椎体脊椎骨折に対して低侵襲手技とするため経皮・経椎弓根的に椎体内の整復操作や空洞形成, 病巣掻爬を行い, CPC注入術を適用してきた. 術後2年以上の臨床結果において, 骨粗鬆症性脊椎圧迫骨折, 破裂骨折, および癒合不全に対するCPC経皮・経椎弓根的椎体形成術は, 良好な臨床成績を示した.
  • 松崎 浩巳
    2006 年 12 巻 1 号 p. 99-106
    発行日: 2006/10/31
    公開日: 2007/08/31
    ジャーナル フリー
    骨粗鬆性脊椎骨折に対して充填材料にHA Blockを用いて椎体形成術を施行した. 手術法は開発したツールを用いて経椎弓根的に骨折部を整復してインサーターを介してHAブロックを充填することにより骨折部を整復固定した. 術後2カ月で14%に矯正損失が発生したが, 除痛効果は著明であった. HAブロックが椎体外に逸脱した例があったが問題は認められなかった. 肺梗塞や脊柱管への流出がなく極めて安全な充填材料であった. 本法の適応は圧迫骨折と扁平破裂骨折に有効である. 技術的には, 椎体の前壁に海綿骨でしっかりした壁を作ることが重要である. 本術式は小侵襲であり, 骨粗鬆症性骨折に適応されるべきものであることを強調したい.
投稿論文
  • ―Prospective Study―
    竹谷内 宏明, 竹谷内 克彰
    2006 年 12 巻 1 号 p. 107-114
    発行日: 2006/10/31
    公開日: 2007/08/31
    ジャーナル フリー
    本研究の目的は, 慢性腰痛に対するカイロプラクティック治療の有効性について, アウトカム指標を用いて明らかにすることである. 2005年度に竹谷内クリニックを受診した患者のうち, 一定の条件を満たした慢性腰痛患者の50例 (男性13例, 女性37例, 平均年齢48.6歳) を対象とした. 初診時治療前と最終経過観察時において, 腰痛の程度をVAS値, 腰痛関連機能障害をRoland-Morris Disability Questionnaire (RDQ) で評価した. さらに, 腰痛関連機能障害の重症度を評価した. その結果, 腰痛VASとRDQスコアは治療前に比べて優位な改善を示した. また, 腰痛関連機能障害の重症度も改善傾向が認められた. この事実は, カイロプラクティック治療が慢性腰痛に有効である可能性を示唆している. 今後は, より質の高い臨床研究を行い, カイロプラクティックの慢性腰痛に対する有効性を明らかにする必要がある.
  • 池田 章子, 篠原 晶子, 有福 浩二, 鹿谷 洋志, 瀬良 敬祐, 矢部 嘉浩
    2006 年 12 巻 1 号 p. 115-119
    発行日: 2006/10/31
    公開日: 2007/08/31
    ジャーナル フリー
    当院で行っている「腰痛クリニック」の治療効果と理学療法の効果について調査した. 対象者81名において, 初診時と6カ月後の臨床症状 (VAS・JOAのADLスコア・FFD) および理学療法 (運動・生活配慮) の実施状況について比較検討した. 結果, 指導した運動については70.4%, 生活配慮については92.3%が継続していた. 臨床症状においては, VAS・ADLスコア・FFDとも有意に改善がみられた. 運動の影響はADLスコアにみられたが, 生活配慮の影響はみられなかった. 今回の調査結果より, 腰痛患者に対する運動療法はADLの改善に効果があり, また「腰痛クリニック」は患者の腰痛治療に対するモチベーションの向上に効果があり, 目標とする「腰痛の自己管理の習得」がしやすいと推測された.
  • 遠藤 健司, 駒形 正志, 木村 大, 田中 英俊, 田中 惠, 山本 謙吾
    2006 年 12 巻 1 号 p. 120-126
    発行日: 2006/10/31
    公開日: 2007/08/31
    ジャーナル フリー
    日常診察において, MRIなどの画像診断に異常がないにもかかわらず, 頑固な腰痛や下肢痛を訴える患者に遭遇することがある. それらの1つの原因に脊髄終糸の過緊張によって発症する脊髄終糸症候群 (Tight filum terminale : 以下TFT) があることが報告されている. 今回, TFTの診断の1つとして, 体幹および頚部の前屈動作により疼痛を誘発させるTFT誘発テストについて検討した. TFT患者群において, 立位TFT誘発テスト陽性率は96.4%, 座位TFT誘発テスト陽性率96.4%, 腰椎椎間板ヘルニア患者群において立位で33.3%, 座位で3.3%, 腰部脊柱管狭窄症で立位2.4%, 座位0%, 正常群で立位0.8%, 座位0%であった. これらの結果よりTFT誘発テストがTFTの診断に有用であることが示唆された.
  • 豊田 耕一郎
    2006 年 12 巻 1 号 p. 127-129
    発行日: 2006/10/31
    公開日: 2007/08/31
    ジャーナル フリー
    骨粗鬆症性椎体骨折の局在診断, 高位診断に棘突起叩打痛が有用かを検討した. (対象) 65歳以上の女性68例を対象とした. 新鮮単椎体骨折39例で, 非椎体骨折例は29例である. (方法) 腹臥位で, 疼痛部位と棘突起叩打痛の再現性の認められた高位にマーキングを行いX線写真を撮像した. 疼痛点の有無と局在, 骨折高位との一致率, 叩打痛の有無, 骨折高位の一致率について検討した. (結果) 疼痛点陽性例は27例40%であり, 感度0.64, 特異度0.93であった. 棘突起叩打痛陽性例は20例29%と少なく, 偽陰性例も多く, 感度0.36, 特異度0.79であった. 骨折例での棘突起叩打痛の骨折高位との一致は12例60%であったが, χ2検定は高位との関連性を認めなかった. (考察) 棘突起叩打痛は骨粗鬆症性新鮮椎体骨折の早期高位診断には有用性は低いと考える. 叩打痛がなくても椎体骨折を疑い早期にMRI検査を行うことも肝要である.
  • 草野 芳生, 森山 徳秀, 山中 一浩, 橘 俊哉, 岡田 文明, 糸原 仁, 圓尾 圭史, 吉矢 晋一
    2006 年 12 巻 1 号 p. 130-135
    発行日: 2006/10/31
    公開日: 2007/08/31
    ジャーナル フリー
    腸腰筋膿瘍は, 抗生物質の進歩や栄養状態の改善により比較的稀な疾患とされている. 今回われわれは化膿性脊椎炎からの続発性と考えられる4例の治療に難渋した腸腰筋膿瘍を経験した. 症例は女性2例, 男性2例, 平均年齢は57歳であった. 起炎菌としては, MSSA 1例, MRSA 1例, 肺炎球菌1例, 同定不能例1例であった. 治療は全例に腸腰筋膿瘍の掻爬を行ったが, そのうち3例は椎体病巣掻爬と固定術の追加手術を必要とした. 化膿性脊椎炎からの続発性と考えられる腸腰筋膿瘍は, 渉猟し得た限り本邦での報告は51例であった. 20%に椎体の病巣掻爬が必要であった. 自検例においても, 3例が椎体の病巣掻爬を加えなければならなかった. 易感染性宿主で敗血症に陥った症例, 再発例や遷延例, 保存療法の無効例や進行性の麻痺の存在, 単純x線上病巣周辺に著しい骨硬化を示すような症例に対しては椎体, 椎間板の郭清および固定術が必要であると考える.
  • 森本 忠嗣
    2006 年 12 巻 1 号 p. 136-142
    発行日: 2006/10/31
    公開日: 2007/08/31
    ジャーナル フリー
    【緒言】近年の本邦の整形外科における腰痛評価法の動向を調査した. 【対象・方法】2000~2004年に日本脊椎脊髄病学会雑誌に掲載された抄録から, 腰痛関連研究における腰痛評価法を調査した. 対象抄録は手術例と, 病態評価などのそれ以外に分けて調査した. JOAスコア以外の腰痛評価法は, 痛みの評価法, 機能評価法と心理面の評価法で大別した. 【結果】最多評価法は, JOAスコアで73.6%であった. ついで, 痛みの評価法が45%であり, 機能評価法は8.4%, 精神心理学的評価法は3.0%であった. 高橋らの1989~1998年での検討ではJOAスコアが97.6%と大部分を占め, VASが1.0%であった. 【考察】JOAスコア以外の多彩な腰痛評価法の使用が増加してきていた. その中身は多面的な評価の増加および患者からの評価の増加である. 多面的評価の中身は, 痛みの評価自体の多面化, 機能評価・心理的評価の増加である.
  • 設楽 正彰
    2006 年 12 巻 1 号 p. 143-148
    発行日: 2006/10/31
    公開日: 2007/08/31
    ジャーナル フリー
    中国鍼を用いた電気刺激療法は, 坐骨神経ブロックの刺入部位と同じ左右の坐骨神経が梨状筋部より出てくる部位 (針灸の秩辺穴 : BL54) に経皮的に三寸の中国針を刺入して下肢への放散痛を得た後, その針に低周波の電気を15分間通電して治療する方法である. VASにて909症例の除痛効果を判定した結果, 74.9%が改善していることがわかった. この治療の長所は局所麻酔剤を使わないために安全でかつ治療後安静をとらせる必要がないことであり, また症状の原因となる疾患を考慮することなく治療ができる点である. しかし優れた除痛効果があるので診断が遅れないように注意しなければならない. 考えられる短所としては刺入部の痛み, 出血, 硬結形成, 神経損傷, 感染などであるが, 頻度は非常に少ない. 薬物療法と併用すればこの方法は安全でかつ有効な補完療法である.
  • 松井 誠一郎
    2006 年 12 巻 1 号 p. 149-155
    発行日: 2006/10/31
    公開日: 2007/08/31
    ジャーナル フリー
    神経症状を伴わない腰痛43例において, 疼痛部位と疼痛誘発動作との関係について調べた. 下位腰椎傍脊柱部は椅子から立ち上がる動作で, 上位腰椎傍脊柱部は座位または立位の保持で, 中間部分の腰椎傍脊柱部は前屈で, それぞれ疼痛が誘発される傾向にあった. 椅子からの立ち上がり動作では, ある時点で腰仙部の前弯が強くなり, 下位腰椎の内在筋が強く収縮するため下位腰椎傍脊柱部に疼痛を生じるものと考えられた. 座位・立位の保持では, 姿勢保持のために頻繁に筋収縮が行われるが, その理由として骨盤を基準としたときにモーメントの大きい上位の筋群により大きな負担がかかりその部位に筋疲労をきたしやすいものと考えられた. 前屈姿勢において, 腰椎の各部のコンプライアンスが同じであると仮定すれば, 固定端であるL1やL5よりも中間部分の変位が大きいと考えられるので, 中間部分の腰椎傍脊柱部に疼痛を生じやすいものと推測された.
  • 石井 耕士, 青田 洋一, 上杉 昌章, 山下 孝之, 新村 高典, 齋藤 知行
    2006 年 12 巻 1 号 p. 156-161
    発行日: 2006/10/31
    公開日: 2007/08/31
    ジャーナル フリー
    脊柱管内椎間関節嚢腫に対する嚢腫穿刺・吸引治療の報告は少ない. われわれは椎間関節嚢腫4例に対し椎間関節穿刺・吸引を施行し, その有効性を調査した. 対象は2005年2月以降当院で治療した43~85歳までの男性2例, 女性2例で腰椎除圧術後に嚢腫発生した1例以外はすべて非手術例であった. 透視下に22G神経ブロック針を椎間関節へ刺入し吸引施行, 穿刺前と穿刺4週後および最終追跡調査時のVASとJOAスコアで評価した. 4例中3例でVASの明らかな改善を認め, うち1例のみ吸引可能であった. VASが改善した1例で16週後のMRIで嚢腫の増大を認め, 手術施行した. 1例を除く吸引不能3例中有効例は1例のみで, その有効性は限定的と思われた. しかし手技が容易で低侵襲のため手術不能例や手術前治療として考慮できると考えた. また, 吸引可能であった1例は除圧術後症例であり, 除圧術高位に発生する嚢腫と椎間関節の交通性は除圧術既往のない嚢腫と比較して, 交通性の差異があると考えた.
  • ―牽引療法とホットパックでの検討―
    添田 幸英, 菊地 臣一, 矢吹 省司, 菊田 京一
    2006 年 12 巻 1 号 p. 162-166
    発行日: 2006/10/31
    公開日: 2007/08/31
    ジャーナル フリー
    今回, 腰痛症に対する保存療法で汎用される物理療法のうち, 牽引療法と温熱療法 (ホットパック) の効果を明らかにする目的で, それぞれの治療前後における脊柱起立筋内の総ヘモグロビン量を測定した. 対象は10例であり, 全例が男性である. 最多年代層は30歳代であった. これらの症例に対し, 牽引療法とホットパックを施行して, その前後での脊柱起立筋内の総ヘモグロビン量の変化を, 腹臥位と立位前屈位で2分間測定した. その結果, 牽引後の腹臥位, そしてホットパック施行後の腹臥位と立位前屈位で総ヘモグロビン量は有意に増加していた. 腰痛に対する物理療法の治療効果発現の機序は, 脊柱起立筋の筋血流増加にある可能性がある.
  • ―診療情報提供書の調査結果から―
    佐藤 公昭, 永田 見生, 朴 珍守, 山田 圭, 横須賀 公章
    2006 年 12 巻 1 号 p. 167-173
    発行日: 2006/10/31
    公開日: 2007/08/31
    ジャーナル フリー
    2000年1月~2004年12月までの5年間に腰部脊柱管狭窄症の診断で手術を行った233例を対象として, 診療情報提供書と外来診療録の記載から, 手術前の薬物療法の内容を調査した. 処方薬の記載があったのは166例で, 最も多く記載されていた薬剤は非ステロイド抗炎症薬の112例であった. 次いでプロスタグランジン製剤107例, ビタミンB12製剤82例であり, 以下ワクシニアウイルス接種家兎炎症皮膚抽出液41例, ビタミンE製剤38例, 睡眠薬・抗不安薬・抗うつ薬29例, 筋弛緩薬22例, 漢方薬12例の順であった. 記載されていた薬剤数は2剤が53例 (31.9%) と最も多く, 次いで3剤の45例 (27.1%), 1剤のみが32例 (19.3%) であった. 132例 (80.7%) の症例には複数の薬剤が併用されていた. 臨床の現場では2~3剤の併用が行われることが多いといえるが, その有効性は十分明らかにはされていない.
  • ―Randomized controlled trialによる検討―
    酒井 義人, 松山 幸弘, 岡本 晃, 石黒 直樹
    2006 年 12 巻 1 号 p. 174-179
    発行日: 2006/10/31
    公開日: 2007/08/31
    ジャーナル フリー
    慢性腰痛患者に対するMcKenzie法の効果をRCTにより評価した. 対象は6カ月以上持続する下肢症状のない男性慢性腰痛患者50例で, ランダムにMcKenzie法を行ったA群25例 (45.1歳) と, 行わなかったB群25例 (43.1歳) に分けた. 2, 4週後に疼痛評価をJOAスコア, VAS, Facial rating scale (FRS), SF-36で評価し, 腰椎伸展・屈曲中の腰背筋酸素化を近赤外分光器 (NIRS) で評価した. 治療前JOAはA, B群でおのおの21.3/19.6点, VAS : 45.0/46.7と差を認めず, FRS, SF-36でも差は認められなかった. JOA改善率は有意差は認めなかったが4週後のVASではA群13.9, B群28.4とA群で改善を認めた (p<0.05). FRS, SF36では有意な改善は認めなかった. NIRSではOxy-Hb, Deoxy-Hb, SdO2いずれも治療前後で有意差を認めなかった. 1カ月での疼痛評価および腰背筋酸素化におけるMcKenzie法の有効性は, VAS以外ではSF36をはじめ疼痛およびADLの改善は差を認めず, 腰痛の改善とともにみられる酸素化改善も認めないことから, ケアの対する満足度を示している可能性が高いと考えられる.
  • 穴吹 弘毅
    2006 年 12 巻 1 号 p. 180-183
    発行日: 2006/10/31
    公開日: 2007/08/31
    ジャーナル フリー
    当院を腰下肢痛で来院した106例を対象とした. 男性71例, 女性35例, 年齢は14~72歳 (平均35歳) であった. まず初診時腰椎伸展運動を5回行い, 次に腰椎屈曲運動を5回行った. その都度運動直後の腰痛の変化, 可動域の変化からMcKenzie exercise (ME) を使用し, 腰痛を分類した. Extension exercise (Ext.) にて反応 (+) : 71例 (67%), 反応 (-) : 35例, Ext.にて反応のない35例のうちFlexion exercise (Flex.) にて反応 (+) : 15例 (14%), 反応 (-) : 20例 (19%)であった. Ext.にて効果 (+) の71例全例にMRIにて椎間板変性かLDHを確認できた. Flex.の効果 (+) の15例中, MRIにて7例にLDH (+), 8例にLDH (-) であった. 腰痛の評価・分類・治療にとってMcKenzie法が1つの有用な手段であると確信している.
  • 本田 淳, 青田 洋一, 山下 孝之, 馬場 紀行, 伊藤 りえ, 齋藤 知行
    2006 年 12 巻 1 号 p. 184-189
    発行日: 2006/10/31
    公開日: 2007/08/31
    ジャーナル フリー
    軟性Flexion Braceの臨床成績を検討した. 対象は腰部脊柱管狭窄症の22例 (男11例, 女11例), 平均年齢は71歳 (60~87歳) であった. 調査項目はJOAスコア, 連続歩行距離, VAS (0~100) による腰痛, 下肢痛, 下肢しびれの評価, 単純X線立位側面後屈位の腰椎前弯角を装具装着前後で評価した. JOAは平均9.8点から11.8点と改善し平均改善率は38.4%であった. 連続歩行距離は249~700mと有意に改善した. VASにて下肢痛, 下肢しびれの2項目で有意な改善が認められた. また単純X線では装具により後屈は平均7.7° (1~17°) 制限されていた. 軟性Flexion Braceは重量300g程度でいわゆるダーメンコルセットタイプなので, 携帯にも便利であり, 患者も装着感に不満がなかった. 短期臨床成績も良好な結果が得られた.
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