日本腰痛学会雑誌
Online ISSN : 1882-1863
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14 巻, 1 号
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巻頭言
ランチョンセミナー
  • 高橋 和久
    2008 年14 巻1 号 p. 11-16
    発行日: 2008年
    公開日: 2008/12/22
    ジャーナル フリー
    腰痛疾患に対する薬物療法は保存的治療の基本であり,中心的な薬剤は非ステロイド性抗炎症薬(NSAIDs)である.この他,筋緊張の強い患者には筋弛緩薬,心因性の要素の認められる患者には精神安定薬,抗うつ薬などを使用することもある.薬物の使用にあたっては,その作用·副作用,などの特徴を理解するとともに個々の患者の病態,愁訴,年齢,疼痛の程度,全身状態などを考慮することが大切である.本稿では,腰痛に使用される薬物および今後の展望について概説した.
特別企画 腰部脊柱管狭窄症の病態
  • 佐藤 公昭, 永田 見生, 芝 啓一郎, 小西 宏昭, 前田 健
    2008 年14 巻1 号 p. 17-22
    発行日: 2008年
    公開日: 2008/12/22
    ジャーナル フリー
    腰部脊柱管狭窄診断サポートツールの妥当性を検証し,九州·沖縄版簡易問診票の有用性について検討した.腰·下肢症状を有す50歳以上の外来患者201例(腰部脊柱管狭窄症116例,他疾患85例)を対象に,本サポートツールと簡易問診票の双方を用いた調査を実施した.簡易問診票から得られたデータは樹形モデルを用いて解析を行った.本サポートツールの特異度は53.6%と開発時のデータよりやや低いものの,感度は97.4%と高く,スクリーニングを行う上で信頼性の高いツールであることが検証された.一方,簡易問診票のデータをもとに作成した樹形モデルを用いると感度は89.7%,特異度は70.6%であり,簡便で有用なツールになることが明らかとなった.
  • 鈴木 秀和, 遠藤 健司, 小林 浩人, 田中 英俊, 田中 惠, 山本 謙吾
    2008 年14 巻1 号 p. 23-27
    発行日: 2008年
    公開日: 2008/12/22
    ジャーナル フリー
    腰部脊柱管狭窄症の病型と脊柱矢状面アライメントの関係を検討した.対象は腰部脊柱管狭窄症患者93例で,馬尾性間欠性跛行の有無により馬尾型と神経根型に分け,単純X線立位全脊柱側面像についてC7 plumb lineとS1椎体上縁の後上隅角との距離(距離B),腰椎前弯角(LLA),骨盤傾斜角(PA)について検討した.病型は馬尾型53例(平均66.7歳),神経根型40例(平均67.0歳)であった.距離Bは馬尾型平均57.6 mm,神経根型平均40.3 mmで差を認め,年齢別基準値より大きかった.LLAは馬尾型平均18.8°,神経根型平均22.4°で馬尾型が小さく,PAは馬尾型平均27.2°,神経根型平均22.7°と馬尾型が大きかった.馬尾型腰部脊柱管狭窄症患者では神経根型と比較して体幹前傾,骨盤後傾が認められた.
  • 今野 俊介, 宮本 雅史, 元文 芳和, 青木 孝文, 劉 新宇, 伊藤 博元
    2008 年14 巻1 号 p. 28-33
    発行日: 2008年
    公開日: 2008/12/22
    ジャーナル フリー
    間欠性跛行を主訴とする混合型または馬尾型の症状を有する腰部脊柱管狭窄症手術例41例(L群)と腰部や末梢神経に障害がない頸髄症症例54例(C群)に対して脛骨神経刺激体性感覚誘発電位検査を施行した.胸腰椎移行部棘突起上で記録され,S1仙髄後角が起源とされるLp電位はL群のうち37例,C群52例で記録可能であり,その頂点潜時はL群で遅延していた.Lp電位潜時と身長との間には正の相関があったが,Lp電位潜時と年齢との間には相関がみられなかった.身長とLp電位潜時を説明変数に用いた判別分析で両群は有意に鑑別され,その敏感度は72%,特異度は80%であった.Lp電位潜時が遅延していることは脊柱管狭窄症の馬尾神経障害を反映していると考えられ,Lp電位潜時と身長とを考慮することにより馬尾の機能障害を無侵襲で客観的に評価することが可能であり,腰部脊柱管狭窄症の機能診断の指標として有用になると考えた.
  • 山内 かづ代, 山下 正臣, 古志 貴和, 鈴木 宗貴, 江口 和, 折田 純久, 高橋 和久, 大鳥 精司
    2008 年14 巻1 号 p. 34-39
    発行日: 2008年
    公開日: 2008/12/22
    ジャーナル フリー
    腰部脊柱管狭窄症では,硬膜管の圧排が強い症例ほど神経学的症状が重症化する傾向にあり,神経学的所見と画像上の狭窄部位の高位が一致しない症例が存在する.腰部硬膜管内は馬尾であり,馬尾は神経根の集まりであるという解剖学的構造に一因が考えられる.脊髄造影にてtotal blockまたはsubtotal blockを呈した高度狭窄例に限定し,腰部脊柱管高度狭窄例において,神経学的所見と画像所見の高位の相違をretrospectiveに比較検討した.手術施行した腰部脊柱管狭窄症例中,脊髄造影像でtotal blockまたはsubtotal blockを呈した高度狭窄例38例を対象とした.神経学的所見は,疼痛·感覚障害,筋力低下について,画像所見は脊髄造影像における最狭窄部位を画像障害高位と評価し,神経学的障害高位と画像障害高位の相違を比較検討した.神経学的所見と脊髄造影所見の高位不一致例は13例34.2%,その詳細はL3/4狭窄によるL5障害が最多であり,臨床上重要と考えられた.
  • 鳥畠 康充
    2008 年14 巻1 号 p. 40-44
    発行日: 2008年
    公開日: 2008/12/22
    ジャーナル フリー
    腰椎神経根ブロック(RB)には神経根への炎症鎮静·血流増加作用に加えて,下肢の血行を改善する作用がある.そこで,腰部脊柱管狭窄(LCS)に下肢虚血を合併した間欠跛行に対しRBが有用であるかを検討した.独自の診断基準に合致した合併型間欠跛行患者23例(男性22·女性1,平均年齢75.6歳)において,サーモグラフィーを用いてRB前後の皮膚温度を測定したところ,RB前28.9±2.6℃,RB後31.4±2.5℃で平均2.5℃有意に上昇した.RB後の治療法は,保存的治療:15例(65%),血管手術:6例(27%),腰椎手術:1例(4%),腰椎·血管バイパス手術両者施行1例(4%)であった.保存的治療群(n=15)において,間欠跛行距離は治療前242±153m,治療3カ月後350±285mで有意に延長したが,ABIに有意な変化はなかった.合併型間欠跛行の保存的治療においてRBは有用と思われた.
特集 腰痛の基礎研究
  • 高橋 和久
    2008 年14 巻1 号 p. 45-49
    発行日: 2008年
    公開日: 2008/12/22
    ジャーナル フリー
    本稿では,椎間板性腰痛に関する基礎研究について概説する.腰椎椎間板には以下の特徴がある.椎間板は,傍脊椎交感神経により非髄節性に,また洞脊椎神経により分節性に神経支配されている.腰椎椎間板は二分軸索神経に支配されている可能性がある.髄核が線維輪外側に接すると,線維輪表面の神経に損傷を生じ,椎間板内への神経ingrowthを生じる可能性がある.NGF依存性の神経がラットの椎間板では優位であり,髄核が神経伸張を促進する可能性がある.腰椎固定術は変性椎間板内への神経のingrowthを抑制し,CGRP免疫反応性ニューロンの割合を減少させる可能性がある.椎間板性腰痛には内臓痛的な性質がある.
  • 西田 康太郎, 金山 修一, 高田 徹, 前野 耕一郎, 黒坂 昌弘, 土井田 稔
    2008 年14 巻1 号 p. 50-57
    発行日: 2008年
    公開日: 2008/12/22
    ジャーナル フリー
    腰痛とそれに関連する疾患群は社会的にもいまだ重要な位置を占める.その原因の一つとして,椎間板の変性に由来するものが考えられているが,病態など不明の部分も多い.椎間板には免疫特権が存在することが近年の研究により証明され,この免疫特権を能動的に維持する機構を担うものとして髄核にはFas ligandと呼ばれる膜表面蛋白が発現している.変性した椎間板においてはFas ligandの発現が減少していることが証明され,免疫特権と椎間板変性の関連が示唆された.また,椎間板ヘルニアとは免疫特権を有する髄核組織が宿主免疫に暴露された状態であるとも理解されうる.椎間板組織とマクロファージの共培養を行った実験では,疼痛発現物質であるIL-6の産生が共培養により刺激されることが証明され,椎間板ヘルニア発症の機序として髄核組織に対する宿主の免疫応答が関与していることが示唆された.以上の知見は椎間板の免疫特権と腰痛性疾患には密接な関連があることを示している.
  • 横須賀 公章
    2008 年14 巻1 号 p. 58-62
    発行日: 2008年
    公開日: 2008/12/22
    ジャーナル フリー
    近年の加速する高齢化社会において,椎間板変性の発症機序を解明·整理することはますます重要となり,臨床および基礎分野においてさまざまな研究が行われている.そこで,今回われわれは最近注目されている老化関連物質である終末糖化産物(AGEs)と椎間板変性の関係について検討し,髄核におけるaggrecan分泌がAGEsの濃度かつ作用時間依存性に減少することを明らかにした.さらに,炎症性サイトカイン(IL-1β)が椎間板細胞のRAGE発現を上昇させることを確認しており,炎症による椎間板変性の悪性サイクルの可能性を示唆した.現在のところ,この機序がAGE化タンパクによる直接的な作用なのかRAGEを介する作用なのかは明確にされていないが,いずれにせよ,AGEsの蓄積が生体内のさまざまな場所で,加齢性疾患の原因となっている可能性は大きい.
  • 岩品 徹, 酒井 大輔, 渡邊 拓也, 檜山 明彦, 大見 博子, 芹ヶ野 健司, 持田 讓治
    2008 年14 巻1 号 p. 63-69
    発行日: 2008年
    公開日: 2008/12/22
    ジャーナル フリー
    当教室では椎間板変性に対する新たな治療として椎間板内細胞移植療法を考案し臨床応用化に向けてさまざまな分野での検討を行っている.今回,臨床応用の最終段階のvivoの実験としてbeagle犬を用い,大型動物における細胞移植療法の有用性,臨床現場での手技の確立を目的に調査したので,その結果と臨床応用化に向けた現況を含め報告する.Beagle犬11頭を無処置(NC)群,変性処置(D)群,細胞移植(Tx)群の3群に分け,D群とTx群に椎間板変性処置を行い,Tx群は変性処置後活性化髄核細胞を透視下で椎間板内へ注入し,·線,MRI,組織染色で評価した.結果は画像上,組織学的にもTx群がD群に比べ椎間板変性が抑制され,細胞移植療法の著しい効果が示された.また,今回大型動物を用いることで,この手法が臨床応用可能であることが確認された.
  • 川口 善治, 関 庄二, 阿部 由美子, 木村 友厚
    2008 年14 巻1 号 p. 70-75
    発行日: 2008年
    公開日: 2008/12/22
    ジャーナル フリー
    腰痛の原因は多因子であるが,一つのターゲットとして腰椎椎間板疾患(腰椎椎間板変性や椎間板ヘルニア)が考えられている.腰椎椎間板疾患の発症にはこれまで,環境要因によるものが主体であると考えられていたが,近年遺伝的素因の重要性が指摘されるようになってきた.すなわち疫学的手法を用いた研究では,腰椎椎間板疾患には家族集積性があることが示されている.また,一卵性双生児の椎間板の形態は非常に類似していることが知られている.このように腰椎椎間板疾患には遺伝的素因があるという多くのデータを受け,本疾患がいくつかの遺伝子多型および,ある遺伝子変異と関連することが相次いで報告されてきた.これまでに報告のある椎間板疾患関連の遺伝子は,大きく分けると三つの概念に分類される.·椎間板構成成分に関連する遺伝子:·型コラーゲン遺伝子(COL9A2,COL9A3)とアグリカン遺伝子(AGC1),·細胞外基質の合成および,分解酵素に関連する遺伝子:MMP-3遺伝子,·他の結合組織(主に骨,軟骨)に関連する遺伝子:ビタミンDレセプター遺伝子(VDR遺伝子)である.しかし,腰椎椎間板疾患の疾患感受性遺伝子を同定しようとするこれまでの研究においては,3つの大きな問題点があった.これらは,·腰椎椎間板疾患の定義が曖昧であること,·caseとcontrolの絶対数が不足していること,そして最大の問題は·機能解析がなされていない,すなわちなぜ問題となる遺伝子異常が腰椎椎間板疾患を引き起こすのかというメカニズムが全くわかっていないことであった.われわれ,理化学研究所,慶應義塾大学,京都府立医科大学,富山大学の研究グループはこの点をクリアし,cartilage intermediate layer protein(CILP)遺伝子が腰椎椎間板疾患の代表である腰椎椎間板ヘルニアの原因遺伝子であることを見つけ,2005年に報告した.その後もこの分野の研究の発展はめざましく,年々新しい報告がなされ知見が蓄積されつつある.さらに最近では炎症のmediatorであるIL-1やIL-6の遺伝子多型が,腰痛や下肢痛と関連している可能性が報告されている.本発表では,腰椎椎間板疾患の疾患感受性遺伝子について,これまで明らかになっている知見を解説し,腰痛の原因に迫る研究の展望と問題点について述べる.
投稿論文
  • 鮫田 寛明, 岡本 弦, 宮坂 健, 守屋 秀繁, 小林 健一
    2008 年14 巻1 号 p. 76-79
    発行日: 2008年
    公開日: 2008/12/22
    ジャーナル フリー
    インストゥルメンテーションを用いない腰椎後側方固定術(以下PLF)を行った36例の検討を行った.男性28例,女性8例で手術時年齢は平均53.2歳であった.疾患は腰椎変性すべり症17例,腰部脊柱管狭窄症9例,腰椎椎間板ヘルニア4例,腰椎分離すべり症4例,腰椎分離症2例であった.経過観察期間は平均4年3カ月.PLFの骨癒合率は86.1%であった.PLF片側群は両側群に比べ有意に骨癒合率の低下を認めた.移植骨に局所骨を使用した群は採骨した群よりも骨癒合率が低かった.PLF固定椎間数別の骨癒合率は2椎間固定群は1椎間固定群に比較し骨癒合率の低下を認めた.本術式は手術時間が短く低侵襲に行える点で有利であると考えられる.
  • 大鳥 精司, 横手 幸太郎, 齋藤 康, 高橋 和久
    2008 年14 巻1 号 p. 80-86
    発行日: 2008年
    公開日: 2008/12/22
    ジャーナル フリー
    腰部脊柱管狭窄症は,高齢社会における腰痛の原因として重要であり,また適切な治療法によりその症状を改善することができる.一方,内科へ通院する高齢患者における本症の頻度ならびに臨床症状の特徴については不明な点が多い.千葉大学糖尿病代謝内分泌内科シニア外来へ通院する高齢慢性疾患患者51名を対象に,「腰部脊柱管狭窄症の診断基準とQOL評価に関する研究班」の腰部脊柱管狭窄症診断サポートツールの原理に基づくアンケート調査を実施した.対象者のうち24名(47.1%)が,脊柱管狭窄症の疑診に相当する7点以上のスコアを示した.スコア7点以上で整形外科を受診した患者の57.1%が脊柱管狭窄症と確定診断された.確定診断を受けた患者で最も高頻度にみられた臨床症状は「間欠跛行(87.5%)」と「前屈での下肢症状軽減(62.5%)」であった.これら二大症状の両方を併せもつ場合,少なくとも55.6%に腰部脊柱管狭窄症が存在した.比較的簡便な方法を用いて,内科外来へ通院する高齢患者の脊柱管狭窄症をスクリーニングできる可能性がある.
  • 酒井 義人, 松山 幸弘, 伊藤 全哉, 石黒 直樹, 岡本 晃
    2008 年14 巻1 号 p. 87-95
    発行日: 2008年
    公開日: 2008/12/22
    ジャーナル フリー
    腰痛男性患者106例(年齢43.5歳)に対しMcKenzie法を行い,4週後にJOAスコア,VAS,SF-36を評価し,伸展·屈曲中の腰背筋の酸素化を近赤外分光法(NIRS)で評価し,酸素化ヘモグロビン(Oxy-Hb),脱酸素化ヘモグロビン(Deoxy-Hb),組織酸素化率(SdO2)を計測した.前屈障害型61例,後屈障害型45例であった.前屈障害型で腰椎屈曲時のDeoxy-Hb増加およびSdO2低下が有意であった.VASおよびSF-36でのPF,RP,BPの改善は有意に後屈障害型で良好であった.運動療法後はNIRS測定で前屈障害型で腰椎伸展時のOxy-Hbが有意に増加していた.これは前屈障害型における治療効果を反映すると考えられ,前屈障害型における筋性要素の関与が示唆された.しかし4週での運動療法の効果は後屈障害型で顕著であり,前屈障害型では運動療法のみではなく筋力増強訓練などの併用が望ましいと考える.
  • 森本 忠嗣
    2008 年14 巻1 号 p. 96-101
    発行日: 2008年
    公開日: 2008/12/22
    ジャーナル フリー
    SLRテスト陽性(以下,SLR(+))の定義が明記してある文献(和文32編,英文28編,整形外科教科書から20編)を調査した.SLRテストは手技により自動と他動に分類され,さらに使用目的により疼痛評価,筋力評価,柔軟性評価に細分類され,SLR(+)の定義は評価者によりさまざまであった.とりわけ,疼痛評価の場合,SLR(+)とする疼痛誘発部位は腰部,下肢,坐骨神経痛などであり,角度も70~80度以下と多様であった.本研究よりSLR(+)の定義は目的や疼痛部位によりさまざまであり教科書レベルでも統一された定義がないことが明らかになった.そのため,SLR(+)の定義を明確にしていない報告の解釈には注意が必要である.反面,SLR(+)の定義の多様性は,SLRテストが腰下肢痛の誘発テストとして感度が高く,幅広い病態評価が可能な手技であることの反映と思われた.
  • 篠原 晶子, 池田 章子, 矢部 嘉浩
    2008 年14 巻1 号 p. 102-107
    発行日: 2008年
    公開日: 2008/12/22
    ジャーナル フリー
    当院で行う腰痛専門外来「腰痛クリニック」の長期的な効果について検討を行った.方法は,初診から1年以上を経過した症例に対して郵送によるアンケートを行い,症状の変化(VAS,ADLスコア)と腰痛の再発状況について調査した.アンケートの回答は141例中89例から得られ,回収率63.1%であった.対象者89例の平均年齢は45.2歳(22~73歳)で,初診から調査までの期間は平均3年であった.疾患名は,椎間板障害が77.5%であった.腰痛クリニック初回時から調査時までの症状の推移は,VASおよびADLスコアいずれも有意に改善がみられ,腰痛クリニック終了時の改善された状態は維持されていた.腰痛の再発は62例(70%)に認められたが,そのうち病院を受診したのは14例で,病院の受診状況からみると対象者の75例(84%)が自己対応できていた.当院で行う「腰痛クリニック」は,腰痛に対する自己対応が獲得でき,その効果は長期的に期待できるものと考えられた.
  • 加藤 慎也, 中村 潤一郎, 山田 勝崇, 三ツ木 直人, 齋藤 知行
    2008 年14 巻1 号 p. 108-111
    発行日: 2008年
    公開日: 2008/12/22
    ジャーナル フリー
    腰部脊柱管狭窄症(以下LCS)に対し腰椎棘突起縦割進入法による椎弓形成術(以下縦割法)を施行した症例について術後MRIにて多裂筋の輝度変化を調査した.対象は縦割法を施行した13例27椎間.1椎間の手術は4例,2椎間4例,3椎間6例であった.MRIのT2WIで多裂筋の輝度変化の程度を4段階に分類した(Grade 0:変化なし,1:多裂筋の術前低輝度であった箇所が高輝度に変化した割合が50%以内,2:50%以上80%未満,3:80%以上)その結果,術後MRIでGrade 2, 3になった割合は1椎間で25%,2椎間で32.5%,3椎間で46.7%であった.これより手術椎間が多くなると,侵襲が大きく,またretraction timeも長くなるためMRIで傍脊柱筋の輝度変化がより生じたと考えられた.
  • 穴吹 弘毅
    2008 年14 巻1 号 p. 112-114
    発行日: 2008年
    公開日: 2008/12/22
    ジャーナル フリー
    当院を腰下肢痛で来院した130例を対象とした.男性92例,女性38例,年齢13~72歳(平均32歳)であった.初診時,全例外来にて立位腰椎屈曲·伸展どちらの動きで痛みがあるかを調査した.さらにマッケンジー法の伸展·屈曲どちらのエクササイズで効果があったかを調査した.腰椎伸展体操で効果のあった80例中,初診時屈曲のみで腰痛あり群は1例のみであり,他の79例(99%)は初診時伸展で痛みが生じていた.また腰椎屈曲体操にて効果のあった24例中初診時伸展のみで腰痛ありは1例のみであり,他の23例(96%)は初診時腰椎屈曲で痛みが生じていた.本研究から,マッケンジー法による腰痛治療は,初診時腰痛のある方向へ運動すると効果が高いことが判明した.
  • 亀山 顕太郎, 上野 倫史, 岩永 竜也
    2008 年14 巻1 号 p. 115-121
    発行日: 2008年
    公開日: 2008/12/22
    ジャーナル フリー
    本研究の目的は,端坐位後屈時における腰痛の有無と骨盤の動きを比較し,関連性を明らかにすることである.対象は,端坐位での後屈時に腰痛がある患者10名(p+群)と,疼痛のない患者10名(p-群)とした.はじめに,端坐位での骨盤前傾角度を左右とも水平角度計で測定した.次に端坐位のまま後屈するように指示を与え,疼痛の有無を確認すると同時に骨盤前傾角度を測定した.端坐位での骨盤前傾角度は,有意差がなかった.後屈時の骨盤前傾角度は,p+群はp-群に比べ有意に後傾していた.また,p-群はすべて両側5°以上だったのに対し,p+群は10例中7例が両側または片側が5°未満であった.結果より,端坐位での痛みのない後屈動作を行うには,少なくとも5°以上の骨盤前傾角度が必要であり,後屈時に腰痛が生じる患者に対し,端坐位での後屈時痛の有無と骨盤前傾角度を評価することは有用であることが示唆された.
  • 三浦 雄一郎, 福島 秀晃, 森原 徹, 鈴木 俊明
    2008 年14 巻1 号 p. 122-128
    発行日: 2008年
    公開日: 2008/12/22
    ジャーナル フリー
    腰椎椎間板ヘルニアと診断された慢性腰痛症患者2名に対し,歩行時における体幹筋の筋活動について表面筋電図を測定し,健常群と比較,検討した.症例Aでは内腹斜筋の筋活動は歩行周期を通して平坦化していた.また,腰背筋筋活動パターンは立脚期中期,遊脚期にも筋活動が増加し,多相性を呈した.常時腰背筋の筋緊張を高めることが脊柱可動性低下の一要因であると考えられた.症例Bにおける歩行時の腰背筋筋活動パターンは左側多裂筋,最長筋,腸肋筋ともに多相性パタ-ンを呈した.運動療法後は最長筋,腸肋筋,多裂筋ともに健常群のパターンに類似したが,多裂筋は立脚期中期および遊脚期中期の筋活動増大が残存した.ラセーグ徴候陽性,SLR角に変化を認めなかったことからブレーキング作用が生じたと考えられる.慢性腰痛症患者に対して表面筋電図を用いて問題点を明確にすることが運動療法の内容,治療効果判定を判断するために重要であると考える.
  • 遠藤 健司, 康 玉鵬, 鈴木 秀和, 小林 浩人, 田中 英俊, 山本 謙吾
    2008 年14 巻1 号 p. 129-133
    発行日: 2008年
    公開日: 2008/12/22
    ジャーナル フリー
    腰椎椎間板ヘルニア患者の全脊柱アライメントを計測し,体幹前傾傾向のある群と前傾傾向のない群を比較検討した.全体の約50%で体幹前傾傾向が存在していた.前傾群では,前屈制限,下肢伸展挙上制限が強く,JOAスコアは低値で,約半数に側弯を合併していた.矢状面アライメントは,前弯の減少,骨盤の後傾が顕著であった.体幹前傾を認める腰椎椎間板ヘルニアは重症例が多く,腰椎―仙椎は矢状面で直線化しており,腰椎骨盤周囲の筋緊張が強いことが示唆された.
  • 井村 貴之, 高相 晶士, 中澤 俊之, 成瀬 康治, 高平 尚伸, 糸満 盛憲
    2008 年14 巻1 号 p. 134-139
    発行日: 2008年
    公開日: 2008/12/22
    ジャーナル フリー
    腰部脊柱管狭窄症(LCS)15例,腰椎椎間板ヘルニア(LDH)6例,頚椎症性脊髄症(CSM)5例,腰椎分離症(SL)1例,特発性側弯(SC)2例の29例に対し髄液中のTNFα,IL1β,IL6,IL8,MMP3濃度を測定した.疾患別の濃度比較に加え硬膜管の圧迫度別に濃度を検討した.結果はIL6,IL8,MMP3は測定できたが,他の項目は低値で測定不能であった.SCに比べLCSでIL6,IL8,MMP3は増加傾向であった.神経因性疼痛を有するLCS,LDHは,疼痛を有さないSL,SCに比べIL6,IL8,MMP3は増加傾向であった.また脊柱管圧迫度が増すにつれてIL6,IL8,MMP3は増加していた.髄液調査時は保存治療後で慢性期にあたるため,神経因性疼痛を有する症例でも炎症早期に発現するTNFα,IL1βの上昇はなく,IL6,IL8およびMMP3のみが観察され,この原因として硬膜管の機械的圧迫により炎症性サイトカインが放出されたと考えられる.
  • 岡田 文明, 森山 徳秀, 山中 一浩, 橘 俊哉, 糸原 仁, 井上 真一, 吉矢 晋一
    2008 年14 巻1 号 p. 140-144
    発行日: 2008年
    公開日: 2008/12/22
    ジャーナル フリー
    腰椎分離症に対してpedicle screwとhookによる固定術の5例の治療経験をした.男2例女3例,平均年齢は23歳である.診断はL5分離症が2例,L5分離すべり症が1例,L4,5分離症が2例であった.評価方法は術前後のJOA score,腰痛score,平林の改善率,骨癒合率,就労やスポーツ復帰などのADLを評価した.結果としてJOA scoreは平均17.6点から26.4点へ,腰痛scoreは平均1点から2.4点へ改善した.平林の改善率は平均78.7%であった.骨癒合に関しては両側片側ともあわせると7高位中7高位100%と全例で骨癒合を認めた.術後のADL評価では5例中4例で少なくとも術前のスポーツや仕事に復帰した.術後,右腎部痛が出現した28歳L5分離症では,右L5/S1の椎間関節の開大を認めた.固定下位の椎間関節の不適合であり,今後注意を要する障害である.この症例を経験して以来Hookにcompressionをかける際,鉗子で棘突起を引き下げるように工夫している.
  • 2-year minimum follow up of decompression alone
    Masashi Takaso, Toshiyuki Nakazawa, Takayuki Imura, Moritoshi Itoman, ...
    2008 年14 巻1 号 p. 145-158
    発行日: 2008年
    公開日: 2008/12/22
    ジャーナル フリー
  • 佐々木 伸洋, 上田 茂雄, 梅林 猛, 木原 俊壱, 寳子丸 稔
    2008 年14 巻1 号 p. 159-163
    発行日: 2008年
    公開日: 2008/12/22
    ジャーナル フリー
    軟性装具は腹圧を持続的に上昇させることで,脊柱の支持性を増す目的がある.われわれは,上腹部,下腹部両方のより広い面で腹壁に圧を掛けうる装具を開発した.従来の一枚ベルトのコルセット(以下D)と,当院で開発したライーブフィット-(竹虎,日本),(以下RF)でベルトに掛かる圧を測定し検討を行った.対象は健常成人男性8例,女性10例に行い,対象者に対しD,RFの両方を装着し圧を測定した.RFは骨盤帯と腹部帯のそれぞれでDと同様に腹壁に対し圧を掛けることができ,BMI25以上の肥満者は優位に高い圧が腹部帯および骨盤帯にも掛かっていた.RFは,Dに比較し広い範囲で腹壁に対して圧を掛けることができており,腹圧上昇の程度が同様である場合,装着者に対し負担の少ないものと考えた.特に腰痛をきたしやすい腹部が突出した肥満者の場合,下腹部にもベルトを巻くことによって,1枚ベルトのようにベルトが上にずれあがることが少ないのではないかと考えた.
  • Self-assessment bending scale
    Hidenori Akaha, Ko Matsudaira, Katsushi Takeshita, Hiroyuki Oka, Nobuh ...
    2008 年14 巻1 号 p. 164-169
    発行日: 2008年
    公開日: 2008/12/22
    ジャーナル フリー
    Finger-floor distance (FFD), which represents trunk flexibility, is a reliable assessment of lumbar impairment. Although this measurement is easy to test, it is difficult to adopt in a large, epidemiological study because it requires examiners. As an alternative, we developed a simple self-assessment bending scale (SABS). The purpose of the present study was to investigate the validity and reliability of the SABS. The SABS has 7-point grading scheme: (1) Fingertips can not reach beyond the knees; (2) Fingertips can reach beyond the knees but the wrists can not; (3) Wrists can reach beyond the knees, but fingertips can not reach the ankles; (4) Fingertips can reach the ankles, but not the floor; (5) Fingertips can touch the floor; (6) All of the fingers can reach the floor; and (7) Palms can reach the floor. We measured the FFD and SABS in 55 healthy volunteers. SABS assessments were made and documented independently by the subject and examiner. The SABS highly correlated with the FFD (r =0.95). Kappa statistics for the SABS grades given independently by the subjects and the examiner were high at 0.98. These findings suggest that the SABS may be used as an alternative to FFD measurements in epidemiological studies.
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