日本腰痛学会雑誌
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10 巻, 1 号
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〔教育研修医講演〕
〔特集〕慢性腰痛
〔特集〕腰椎変性すべり症の手術と腰痛
  • 伊東 学, 鐙 邦芳, 三浪 明男, 須田 浩太, 金田 清志, 藤谷 正紀
    2004 年 10 巻 1 号 p. 40-45
    発行日: 2004年
    公開日: 2008/02/06
    ジャーナル フリー
    腰椎変性すべり症に対する手術治療は,神経障害に対する後方脊柱管除圧術と不安定性に対する脊椎固定術である.しかしながら,どのような不安定椎間に脊椎固定術が必要か,どのような場合固定術を必要としないか,またどの内固定金属がよいかといった疑問は十分に解明されてはいない.本稿では,腰椎変性すべり症の不安定動態特性をシネラジオグラフィーで検討した.そして,当科で1990年代半ばまで施行してきた北大式compression-distraction rod system(北大式combined system)の長期臨床成績を検討した.その結果,変性すべり症は,回旋運動より並進運動が主体であった.北大式combined systemの長期臨床成績は良好であったが,術前後弯変形がある症例では術後の矯正位の保持が困難であった.本病態に対する除圧単独,固定術併用,内固定金属の選択は,今後の重要な検討事項であり,大規模での臨床研究が急務である.
  • 川原 範夫, 富田 勝郎, 村上 英樹, 羽藤 泰三
    2004 年 10 巻 1 号 p. 46-55
    発行日: 2004年
    公開日: 2008/02/06
    ジャーナル フリー
    1995~2000年の間に当科の腰椎変性すべり症ストラテジーで進行期,もしくは末期でも不安定性,後弯のある第4/5腰椎変性すべり症の40例に対してPLIFを施行した.経過中に2例が死亡し,38例について直接検診した.追跡率は100%である.パーキンソン病などを合併した4例を除外した34例の成績を評価した.平均経過観察期間は6年10カ月であった.JOA点数は術前14.3点が経過観察時25.5点(改善率38.9~100%,平均74.5%)であった.% slipは18.8%が10.9%に減少し,slip angle(前弯を+)は2.1度から6.3度となり,前弯が獲得されていた.34例中32例に椎体と移植骨との間に骨梁の連続性を認めた.第3/4腰椎椎間板には15例で椎間板狭小化,すべり,不安定性,椎間板ヘルニアの発生などの隣接椎間板変性を認め,そのうち症状を呈した2例に再手術を行った.当科のストラテジーで進行期もしくは末期で,かつ不安定性や後弯を呈する症例に対してPLIFを行うことで中期の安定した成績を得ることができる.
  • 矢吹 省司, 菊地 臣一, 紺野 慎一
    2004 年 10 巻 1 号 p. 56-59
    発行日: 2004年
    公開日: 2008/02/06
    ジャーナル フリー
    本研究の目的は,除圧術にGraf制動術を併用しX線学的な不安定性を安定化させることが,Graf制動術を併用しないで除圧術のみを行った群と比較して,術前から存在する腰痛が明らかに改善するか否かを明らかにすることである.対象は,すべり椎間の除圧術にGraf制動術を併用した手術を受け3年以上経過した46例である(Graf群).すべり椎間の除圧術のみを行った42例を対照とした(対照群).除圧術にGraf制動術を併用することにより,①術後腰痛残存例の頻度を減少させる,②すべり率の進行を抑制できる,③椎間可動域を減少させる,④術後合併症発生の可能性がある,⑤腰痛の程度,下肢症状の程度や再燃の頻度,JOAスコアに関しては明らかに有効とはいえない,ことが判明した.
  • 松平 浩, 山崎 隆志, 星 和人, 竹下 克志, 星地 亜都司, 中村 耕三
    2004 年 10 巻 1 号 p. 60-68
    発行日: 2004年
    公開日: 2008/02/06
    ジャーナル フリー
    Ⅰ度L4変性すべり症(L4/5狭窄)に対し,1997~1999年に行った椎弓切除+instrumentationを併用したPLF(A)19例と,2000年以降に行った除圧術(L4棘突起をL字に切離して尾側へ翻転し,椎間関節は可及的に温存した拡大開窓後,棘突起は復元)単独(B)17例の2年後成績を比較した.両群の背景因子(年齢,性別,JOA score,すべり率,椎間可動角など)に統計学的有意差はなかった.JOA scoreは両群とも有意に改善したが,A群の方が成績は劣っており,合併症(感染,椎弓根screw逸脱,隣接椎間狭窄が各1例)が原因であった.術前のB群における画像上の背景因子から,すべり率25%以内,前後屈すべり率差15%以内,椎間可動角20°未満,前屈時後方開大角10°未満の本症に対しては,椎間関節を含む後方要素を可及的に温存しかつ十分な除圧を行えば,固定術を併用しなくても対応が可能であると思われた.
  • 田中 信弘, 藤本 吉範, 大石 芳彰, 伊東 祥介, 越智 光夫
    2004 年 10 巻 1 号 p. 69-74
    発行日: 2004年
    公開日: 2008/02/06
    ジャーナル フリー
    われわれは腰椎変性すべり症に対し,原則として固定術は併用せず腰椎安定性を温存しつつ手術用顕微鏡下の部分椎弓切除術を行っている.今回本術式の治療成績を検討し,腰痛対策について考察した.腰椎変性すべり症手術例44例(男性23例,女性21例),手術時平均年齢66歳(45~82歳)を対象とした.JOA scoreは術前平均13.7点から術後平均23.1点に改善した.術後のすべり率の増強は軽度であり,再手術例は1例のみであった.不安定性を伴う高度のすべり症に対しては固定術を要すると思われるが,椎間関節を温存しつつ適切に除圧を行えば,多くの症例では除圧術のみで対処可能であり,腰痛の増強も生じないと思われた.本術式は固定術に比べ低侵襲であり,特に高齢者に対する低侵襲手術としての意義は大きいと思われた.
  • 馬場 久敏, 内田 研造, 中嶋 秀明, 小林 茂, 佐藤 竜一郎, 角山 倫子
    2004 年 10 巻 1 号 p. 75-80
    発行日: 2004年
    公開日: 2008/02/06
    ジャーナル フリー
    腰椎変性すべり症の単一椎間固定の痛み軽減効果について考察した.患者のすべり椎間の評価では矢状面での前方転位(translation)と回転(rotation)を注意深くX線学的に評価したうえで治療法を決定する.gradeⅠ,Ⅱのものでは椎間孔部除圧を含めた除圧と後側方固定でも一般によい結果が得られ得る.rotation角度の増加した gradeⅡ,Ⅲのものには椎弓根screwingとPLIFが望ましいのではないかと考えられた.この2つの大きな考え方で短期的にはよい結果が得られている.
投稿論文
  • 穴吹 弘毅
    2004 年 10 巻 1 号 p. 81-85
    発行日: 2004年
    公開日: 2008/02/06
    ジャーナル フリー
    慢性腰痛症に対して苓姜朮甘湯と桂枝茯苓丸の合方を使用し著効した3例を経験したので若干の考察を併せて報告する.対象は,外来にて3カ月以上さまざまな保存治療を行ったが,症状が改善せず難治性であった3例である.男性1例,女性2例,平均年齢は78歳であった.薬剤投与後,定期的に腰痛,下肢痛,しぴれに関してVAS(Visual Analog Scale)で評価した.3例とも投与後1~2週で腰痛は著明に改善した.下肢痛,しびれに効果はなかった.苓姜朮甘湯の投与目標である,腰以下の冷え,頻尿と効果に関連はなかった.苓姜朮甘湯の証は,水滞と関連しているといわれているが,関連がなくとも著効した.臨床症状から推察すると,McKenzieの難治性内障症候群が主に関与する慢性腰痛症に効果があることが判明した.これが,即すべての慢性腰痛症の特効薬になるとはいえないが,水滞,血には西洋医学的治療は効果が少ないことから,使用してみても良いと考える.
  • 若江 幸三良, 武者 芳朗, 小林 俊行, 水谷 一裕
    2004 年 10 巻 1 号 p. 86-89
    発行日: 2004年
    公開日: 2008/02/06
    ジャーナル フリー
    酸メキシレン(商品名メキシチール®,以下MX)は,リドカイン様構造を有する不整脈治療薬として,臨床で使用されているが,腰痛疾患の坐骨神経痛に使用したので,報告する.症例は22例,年齢は41~82歳(平均66歳)で,対象疾患は脊柱管狭窄症9例,腰椎圧迫骨折5例,腰椎椎間板ヘルニア5例,すべり症3例であった.MXを300 mg/日,1日3回毎食後服用させた.評価は,投与前と投与1,3週後のVASで行った.対象22例のうち,罹病期間で1カ月以上8例,1カ月未満14例であった.胃腸障害などの副作用の3例を除いた19例中,VASの低下が1週以内の改善9例,3週間以内の低下が7例,不変3例と19例中16例(84.2%)にVASの低下をみた.坐骨神経痛患者の治療薬の1つとして効果を期待できると思われた.
  • 増山 茂, 澤口 毅, 西村 立也, 森永 敏生, 高澤 雅至, 内藤 充啓
    2004 年 10 巻 1 号 p. 90-94
    発行日: 2004年
    公開日: 2008/02/06
    ジャーナル フリー
    :Nachemsonの報告により腰椎術後の半座位は禁忌とする考えが流布している.これは正しいのか.作用・反作用の観点から理論的に検討した.その結果,①半座位では,back restの有無で椎間板にかかる負担が全く異なる.②Nachemsonの報告は,筋力増強訓練下の負荷であり,back restなしの状態である.この時,椎間板より上位の体重をW,体軸の傾斜をαとすると,椎間板にかかる負担はW(sinα+√3 cosα)となる.三角関数の合成により,30°で2W,90°で1Wとなるカーブが得られ,Nachemsonの報告とおおむね一致する結果が得られた.③腰椎術後の半座位は,大抵back restありの状態で,椎間板にかかる負担はサインカーブに従う.④術後椎間板への負担を徐々に増やす意味で,back restの角度を日々上げる方法は理にかなっている.
  • 伊藤 友一, 武田 陽公
    2004 年 10 巻 1 号 p. 95-99
    発行日: 2004年
    公開日: 2008/02/06
    ジャーナル フリー
    この研究の目的は,介護士における腰痛の実態を明らかにしその予防に役立てることである.アンケート調査を行い,腰痛があると答えた男性14人,女性26人,平均年齢43歳を対象とした.直接検診後,腰椎立位単純X線写真,MRIの撮像を行った.また,アンケート結果から得られた腰痛に関連すると思われる不良姿勢につき電気角度計を用いて腰椎屈曲角度を連続的に測定した.検診の結果,神経学的に明らかな異常がみられた例はなかった.また,ADLに支障をきたすほどの器質的疾患を有する者はいなかったが,痛みの感じ方には個人差があることがわかった.腰椎分離が3人,隅角解離が2人にみられた.MRIで椎間板の輝度変化は,個人により軽度から高度の変化までさまざまな所見を示した.MRIで椎間板の後方突出が6人にみられた.電気角度計の計測より,一部の介護作業姿勢が腰椎に影響を及ぼしていることが示唆された.介護士の腰痛症予防には,作業環境の改善が必要である.
  • 横尾 直樹, 牧田 浩行, 山下 孝之, 本田 淳, 斎藤 知行
    2004 年 10 巻 1 号 p. 100-106
    発行日: 2004年
    公開日: 2008/02/06
    ジャーナル フリー
    プロのクラシックバレエダンサー163名(男性40名,女性123名)を対象に,腰痛についてのアンケート調査を施行し,男女の比較を中心に検討した.バレエ開始年齢は男性平均11.5歳,女性5.3歳,バレエ歴はそれぞれ16.0年,21.8年と女性が有意に長かった.また,週の平均練習時間は男性10.5時間,女性11.1時間と差を認めなかったが,年間の公演回数はそれぞれ33.6回,11.9回と男性が有意に多かった.男性の87.9%,女性の91.7%に腰痛の経験があり,そのうち男性の55.2%,女性の37.7%がバレエに支障のある腰痛であった.腰痛による休職率は男性24.1%,女性11.7%であったが,医療機関への受診率はそれぞれ11.3%,8.3%と,ともに低率であった.腰痛を誘発する動作は,男性ではリフトやジャンプの着地時が多く,女性では腰椎伸展時が最も多かった.今回の調査では約90%のバレエダンサーに腰痛を認めた.腰痛の程度は男性がより重度で,運動量や運動強度の違いが関係していると考えられた.
  • 土田 敏典, 赤崎 外志也, 青木 優, 相場 知宏, 釜下 厚則
    2004 年 10 巻 1 号 p. 107-110
    発行日: 2004年
    公開日: 2008/02/06
    ジャーナル フリー
    【目的】高齢者の胸腰椎移行部圧迫骨折に対し,今回新たに作製したDamen-Jewett型軟性コルセットを用い治療した.【対象および方法】対象は胸腰椎移行部圧迫骨折の7例で,平均76.7歳であった.治療方法は,1~2週間の安静臥床後,Damen-Jewett型軟性コルセットを装着し起立歩行訓練を開始した.治療成績を腰痛疾患のJOA-score,X線学的に損傷椎体の楔状率を評価した.【結果】全例腰痛は軽減し,元の歩行状態に復帰した.JOA-scoreは受傷直後平均10.4点から調査時平均22.1点となった.椎体楔状率は72.8%から69.2%となった.【考察および結論】今回,新たに作製したDamen-Jewett型軟性コルセットは,Damen型軟性コルセットの腹圧上昇効果とJewett型軟性コルセットと同様の脊椎支持安定効果を併せ持ち,軽く装着が容易で腹帯をはずすことで腹部を圧迫しなくなった.
  • 松本 學, 鴻生 楊, 米田 信介, 井上 真一
    2004 年 10 巻 1 号 p. 111-115
    発行日: 2004年
    公開日: 2008/02/06
    ジャーナル フリー
    当院では1998年4月より単純X線写真,DXA,pQCTなどによる骨粗鬆症の精査を月に1回行ってきた.2002年12月よりペインドローイング(以下PD)およびVASを加えて骨粗鬆症と腰痛の関係を検討したので報告する.骨粗鬆症診断基準を満たした女性52名,年齢は54~84歳平均70.8歳である.背椎圧迫骨折の有無で2群に分けX線分類,DXA(腰椎)値,痛みの部位(PD),および程度(VAS)を比較検討した.椎体圧迫骨折群(以下F群),椎体圧迫骨折なし群(以下P群)は27名・25名,平均年齢70.8歳・67.3歳,最高身長と現在の身長差は平均4.2 cm・2.6 cm,閉経は平均48.3歳・50.3歳であった.X線分類では,F・P群それぞれⅠ度1名・6名,Ⅱ度10名・16名,Ⅲ度16名・3名であった.骨折部位はT6からL5まで平均2.3椎体であった.F群は全例が骨粗鬆症に対する治療癧があり,P群は16名(64%)が骨粗鬆症の治療を受けていた.F群とP群の間では年齢,身長差,BMD,VAS値に有意差がみられた.
  • 見松 健太郎, 吉田 徹, 笠井 勉
    2004 年 10 巻 1 号 p. 116-120
    発行日: 2004年
    公開日: 2008/02/06
    ジャーナル フリー
    腰椎変性すべり症に対し1塊椎弓切除,除圧,PLLAピンによる椎弓形成術を行った.その考え方と成績の報告である.症例は過去5年間のすべり度10%以上の手術症例68例である.方法は,年齢,性別,術前後の腰JOA,すべり度,すべり椎間の可動域,1椎間当たりの手術時間,術中出血量,術中合併症などを調べた.結果,男22例,女46例で平均65.3±9.7歳であった.術前後のすべり度は20.1±6.7%,22.3±7.3%で少々進行した.術前後の腰JOAは18.1±4.4,27.9±1.9で改善率は90.7%で良好であった.これらの症例のうちPLIFを行ったすべり度23%以上の10例と行わなかった10例を特に抽出して比較した.この2群間ではすべり椎間のすべり度や可動性に有意差がなかった.また,椎間関節にPLLAピンを刺入した62例中47例75.8%に関節の固定,制動性が得られた.当手術法ではすべり椎間の十分な除圧,安定性が得られた.術後成績は良好であった.
  • 西村 行政
    2004 年 10 巻 1 号 p. 121-126
    発行日: 2004年
    公開日: 2008/02/06
    ジャーナル フリー
    腰椎変性すべり症では,術者による除圧術式の違いが術後経過や成績に影響を及ぼす可能性がある.今回,筆者が一定の術式で手術した症例を対象とし,除圧術単独例と固定術併用例の術後3年以上の成績を調査した.除圧群が53例,固定群が11例,手術時年齢は69.4歳と64.9歳,術後経過は4年8カ月と4年7カ月であった.それぞれの術前と調査時のJOA score(自他覚所見)の推移は,除圧群が6.5点から13.1点で改善率79.4%,固定群が6.1点から14.4点で改善率92.5%であった.腰痛scoreは除圧群が1.6点から2.7点,固定群が1.1点から2.7点であった.つまり,除圧術単独でもほぼ良好な成績が得られ,固定術の適応はかなり限定できるといえる.除圧群の中に改善不良例が5例存在した.それらは,経過中に圧迫骨折にて腰椎後弯となった例,変性側弯進行例,術前から腰椎後弯で腰痛性間欠跛行を呈していた例であった.
  • 大谷 晃司, 菊地 臣一, 紺野 慎一, 矢吹 省司
    2004 年 10 巻 1 号 p. 127-131
    発行日: 2004年
    公開日: 2008/02/06
    ジャーナル フリー
    本研究の目的は,腰椎椎間板ヘルニア手術後10年以上経過例に対し,Roland-Morris Disability Questionnaire(以下RDQ)を用いて腰痛機能関連QOLを検討することである.対象は,腰仙椎部椎間板ヘルニア108例(ヘルニア摘出術の非固定群32例,ヘルニア摘出術+後側方固定術の固定群76例)である.追跡調査率は58%であった.手術例の最終調査時(術後平均14年)のRDQの偏差得点は54.1±6.4であった.偏差得点50点以上,すなわち,一般住民の腰痛による日常生活の障害度と同様か,それより軽度であった症例の頻度は93例(86%)であった.一方,非固定群のRDQの偏差得点は54.0±7.4,固定群のそれは54.2±6.2であり,両群間に統計学的有意差は認められなかった.腰椎椎間板ヘルニア手術の長期経過例の腰痛関連QOLは,固定術併用の有無にかかわらず,一般住民の腰痛と同等,あるいはむしろ軽度である症例が多数を占めていた.
  • 金森 昌彦, 長田 龍介, 石原 裕和, 川口 善治
    2004 年 10 巻 1 号 p. 132-138
    発行日: 2004年
    公開日: 2008/02/06
    ジャーナル フリー
    当教室における腰椎前方固定症例に対して術後の患者アンケート調査を行い,術前の病態別にみた成績の差について検討した.前方固定術を施行した243症例中156例(全症例の64.2%)からアンケート結果(JOAスコアの項目のうちSLR testを除いたものに準じて作成し27点満点とした)が得られた.その結果,変性すべり症の臨床成績は椎間板ヘルニアの治療成績と比較して有意(p<0.005)に悪く,特に下肢痛および歩行能力が劣っていた(p<0.01).その原因として変性すべりに伴って生じた分節性脊柱管狭窄が前方固定では解決しなかった可能性が高いと考えられた.
  • 瀬尾 理利子, 久野木 順一
    2004 年 10 巻 1 号 p. 139-143
    発行日: 2004年
    公開日: 2008/02/06
    ジャーナル フリー
    (緒言)分娩後発症の腰痛の多くは数カ月以内に軽快するが,遷延した例について検討した.(対象および方法)分娩後に発症または増悪した腰痛が,1年以上持続した経産婦23例について過去の腰痛歴,出産歴,理学所見,腰椎および骨盤のX線検査所見について調べた.(結果)罹病期間は平均6.9年と長期化している例が多く,疼痛は臀部または臀部から腰椎全体にわたり,圧痛は22例で仙腸関節に限局していた.腰痛を悪化させる姿勢としては立位,歩行,仰臥位,側臥位であった.歩行では,大股歩行が困難であった.片脚起立骨盤X線像で恥骨結合部に2 mm以上のずれを11例に認めた.治療は,13例に仙腸関節を中心に軟性の骨盤ベルトを装着し,有効であった.(考察)当センターにて出産した990例中,6カ月以上疼痛が持続したものが12.2%で,今回の検討からも出産は女性の慢性腰痛の危険因子と考えられた.分娩後発症腰痛の慢性化を予防するために,整形外科医が積極的に介入する必要があると思われた.
  • 瀬尾 理利子, 久野木 順一, 真光 雄一郎
    2004 年 10 巻 1 号 p. 144-148
    発行日: 2004年
    公開日: 2008/02/06
    ジャーナル フリー
    【緒言】近年,整形外科領域において超音波診断法が徐々に普及してきた.骨盤輪不安定性に対する超音波診断法の可能性について調査した.【対象および方法】14名の成人女性を対象とし,超音波検査を用いて恥骨結合を描出し,安静時と運動による画像の変化を調査比較した.【結果】画像で恥骨は高輝度,恥骨結合は無エコー部を呈した.股関節伸展位,左右股関節屈曲位の画像で,恥骨間距離や恥骨の高さに変化が確認された.【考察】妊婦の腰痛として骨盤輪不安定症は重要な疾患である.評価法としてX線検査が一般的であるが,妊婦では被爆の問題からX線検査には限界がある.今回の調査で,肢位による画像の変化を認め,超音波検査により骨盤輪の不安定性を診断できる可能性があることが示唆された.超音波検査にて,骨盤不安定性を評価する有効性ついては検討の余地があるが,今後手技の確立を要する.
  • 石田 和宏, 村上 哲, 佐藤 栄修, 吉本 尚, 伊藤 俊一
    2004 年 10 巻 1 号 p. 149-154
    発行日: 2004年
    公開日: 2008/02/06
    ジャーナル フリー
    当院における腰部疾患術後リハビリテーションを再検討する目的でアンケート調査を行った.対象は,当院にて腰部疾患の手術を受け,その後リハビリを実施した100例とした.入院中のリハビリに関しては,大多数から満足な結果が得られた.しかし,一部からは「リハビリ期間の不足」との意見も得られた.退院後に関しては,早期に職場復帰している症例が比較的多く存在し,退院時および退院後の職業的リハビリの重要性が示唆された.今後は,入院中のより加速的なリハビリの実践,退院時,退院後のFollow-up体制の確立が重要であると思われる.
  • Ko Matsudaira, Atsushi Seichi, Takashi Yamazaki, Junji Kishimoto, Kats ...
    2004 年 10 巻 1 号 p. 155-162
    発行日: 2004年
    公開日: 2008/02/06
    ジャーナル フリー
    The efficacy of the tricyclic antidepressant, amoxapine, was investigated in 20 subjects suffering from somatoform pain disorder, consisting of chronic lower back and leg pain with no identifiable organic cause and resistant to treatment. Evaluation of efficacy was made both prior to and 6 months after administration using the visual analogue scale (VAS) and self-rating depression scale (SDS). VAS and SDS improved significantly after amoxapine administration. If a VAS improvement rate ≥50% is defined as effective and < 50% as ineffective, then there were 10 subjects where the treatment could be rated as effective and 10 as ineffective. Correlations between pain response to amoxapine and subject background factors were consequently examined, but no predictive factors could be identified. The onset of the effect was 1 week in 7 subjects, and after 2, 3 and 4 weeks in 1 subject, respectively. The strongest effect tended to be shown in those subjects where the onset was earliest. These results indicate amoxapine administration may be an intervention worthy of consideration in cases of lower back and leg pain with no identifiable organic cause and resistant to other forms of treatment and that the efficacy can be evaluated in relatively short period of time.
  • 吉岡 克人, 鳥畠 康充
    2004 年 10 巻 1 号 p. 163-168
    発行日: 2004年
    公開日: 2008/02/06
    ジャーナル フリー
    急性大動脈解離・瘤破裂における腰痛・背部痛や対麻痺の頻度,および脊椎疾患との鑑別方法を明らかにするため,救急部を受診した50例に対し診療録による調査を行った.腰痛や背部痛のみを症状としたのは19例(38.0%)で,腰痛・背部痛に胸痛・腹痛を合併した例をあわせると64.0%の頻度であった.また,対麻痺の発症を1例(2.0%)に認めた.高血圧の既往を認めた例が59.6%,来院時に血圧異常を認めた例が83.3%と高率であった.画像診断では,CTスキャンで全例に確定診断が得られた.運動器プライマリケアにおいて,大動脈解離・瘤破裂は遭遇頻度は少ないが,患者の救命や医療過誤の回避という観点から極めて重大な疾患群である.高血圧の既往,来院時血圧異常,体位に関係のない激烈な腰背部痛を訴える症例に対しては本症候群を疑い,CTスキャンを施行すべきである.
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