リンゴ数種品の着色特性を知るために, 採取果実の成熟段階における
アントシアニン
生成の変化と, それに及ぼす袋掛け及び光質の影響について検討した. 開花約1ヶ月後に被袋した有袋果と無袋果 (着色開始前に被袋し, 着色を抑制) を随時採取し, 白色光 (9.3Wm
-2) あるいは白色光と紫外光の混合光 (白色光+UV312, 5.3Wm
-2) を照射した.
白色光+UV312の
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生成に対する効果は著しく大きいことから, この光照射による
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生成の成熟に伴う変化は, 果実の
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生成能の変化によると考えられた. 有袋果の場合, 品種にかかわらず, 白色光+UV312照射による
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生成は成熟開始前の段階では無袋果に比べて著しく多かったが, 成熟に伴って急激に減少した. 無袋果では,
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生成は成熟段階に入る少し前の時期から増加しはじめた. ‘スターキング•デリシャス’ (‘SD’),‘旭’及び‘紅玉’の
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生成は, 成熟に伴って急激に増加し, 成熟がすすんだ段階で最大に達した. ‘国光’, ‘つがる’及び‘ジョナゴールド’でも
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生成は成熟に伴って増加したが, 成熟の早い段階で最大となり, その後急激に減少した.
‘SD’及び‘紅玉’は白色光照射においても白色光+UV312の場合と同様に多くの
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を生成した. ‘つがる’及び‘ふじ’などの品種では‘SD’などに比べて
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生成量は少なく, その差は特に白色光照射で著しかった. 黄色品種の‘ゴールデン•デリシャス’及び‘陸奥’は白色光では全く
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を生成せず, 白色光+UV312照射でも生成量は少なく, 成熟に伴って漸減した. これらのことから,
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生成と光との関係において, 特に自色光に対する反応性が品種によって大きく異なることが推察された. したがって, ‘つがる’や‘陸奥’などの品種では, 良好な着色には紫外光が特に重要であることが推察された. このような光質反応の特性は, 被袋処理によっても変らなかった. 一方, 白色光による
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生成の増加は成熟の開始と一致することから, 成熟によって特に白色光に対する反応性が増加すると考えられた.
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