目的: 悪性リンパ腫は, HIV感染症に関連した悪性疾患としてカポジ肉腫についで多くみられる合併症である. HIV感染者における悪性リンパ腫の発症リスクは健常者の60倍以上と言われ, 非ポジキンリンパ腫は増加傾向にある. 今回われわれは, HIV感染患者の口腔内に初発した非ポジキン悪性リンパ腫の1例を経験したので, その概要を報告した.
症例: 症例は40歳男性で, 当院感染症科にてHIV感染症経過観察中の2003年12月下旬, 左側上顎歯肉に腫瘤が生じた. 近歯科にて治療を受けるも改善せず, 2004年1月26日に当科紹介となった. 初診時, 左側上顎小臼歯部の頬側歯肉に15mm×10mm大, 境界明瞭で弾性硬の肉芽腫様腫瘤を認め, 口蓋側歯肉にも大臼歯部に及ぶ辺縁不整なびらんがみられた. 上顎歯肉腫瘍の疑いで生検を行ったところ, Diffuse large B-cell lymphomaとの診断であったため, 3月8日, 感染症科に入院となった.
結論: CTにて頸部, 鼠径部に15mm大までの腫脹を認め, Ga67腫瘍シンチグラフィーでは, 左側上顎に集積がみられた. CD4: 104/μ1, HIV-RNA: 1.1×106copies/mlで, 3月9日よりHAART (d4T, 3TC, NFV) 導入し, 3月23日より75%EPOCHを開始した. 1クール終了後, 口腔内病変はほぼ消失し, cTでは頸部リンパ節の縮小を認めた.7月16日までに計6クールのEPocH療法を行い, 6クール終了時のGa67腫瘍シンチグラフィーでは左側上顎にも異常集積を認めなかった. 2007年1月現在, HAART継続中でリンパ腫の再発なく経過良好である.
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