緒言: 札幌市内の開業医にて, 海外での異性間性交渉によって感染したと推定される, 献血歴のある男性のAIDS例を経験した.
症例提示: 症例は28歳男性で, 淋病の既往歴はあるが, 同性愛はみとめられない. 高熱を主訴としてK医院を受診した. 胸部に瀰慢性間質性肺炎像を認め, カリニ肺炎やCMV肺炎を疑った. 初診時HIV抗体陽性だったが, 3年余り前の献血時の検査ではHIV抗体陰性だった. CD4は35μlと末期的状態で, 北大病院に転医し, AZT, ddI, IDVの他, グロブリン, 抗生物質などで集中治療したが6か月後死亡した. 剖検ではAIDSに伴う肺炎, 心外膜炎, 脂肪肝, 脳出血を認めた.
考察: 本例は感染から3年余りで発症し, 一般医院に発熱という訴えで受診していることを考えると, 外来患者にHIV感染者がいる可能性を常に考えて診察に当たることが求められる.
結論: 一方国内輸血によるHIV感染は, 5例がエイズ動向委員会に提出されているが, 確診例は1例のみである. 血液センターでも献血者の中にHIV感染者がいるという前提で, 問診を強化していかなければなるまい.
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