Bird Research
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8 巻
選択された号の論文の13件中1~13を表示しています
原著論文
  • 雲野 明
    原稿種別: 原著論文
    2012 年 8 巻 p. A1-A10
    発行日: 2012年
    公開日: 2012/03/01
    ジャーナル フリー
    道北にある中川町で2007年12月から2008年11月に,道央の空知地域の森林で2008年5月から2009年11月にクマゲラ Dryocopus martius のプレイバック法をもちいた生息調査を行なった.中川では5,9月を除いてプレイバックをもちいた生息調査でクマゲラを発見した.プレイバック再生前の待機時間,再生中,再生後の待機時間に発見したクマゲラの累積発見率の推移は,単位時間当たり同じ確率で発見するとした期待値とほぼ同じであった.雄も雌もプレイバックに反応した.クマゲラは声にもドラミングにも反応し,どちらによく反応するかは現時点ではわからないので,声とドラミングの混在した音源でプレイバックを行なうことを推奨する.クマゲラの発見率は,季節(春と秋)や日の出からの経過時間により変化することはなかった.プレイバック後に鳴かずに飛んでくることがあり,見落とす可能性が示唆された.プレイバック後にドラミングのみの反応しかなかった場合には,ドラミングによる種の識別手法が確立していないので,クマゲラのドラミングとして記録すべきでない.
  • 渡辺 朝一
    原稿種別: 原著論文
    2012 年 8 巻 p. A11-A18
    発行日: 2012年
    公開日: 2012/03/14
    ジャーナル フリー
    レンコン栽培が盛んな茨城県下のハス田で,レンコン食害を防ぐための防鳥ネットに,コガモ Anas crecca,ヒドリガモ A. Penelope,オオバン Fulica atar など,多くの野鳥が羅網して落鳥する事態が続いている.防鳥ネットが多く敷設されている霞ヶ浦湖岸のハス田で,2010 年から2011 年にかけての冬期に5回の調査を行なった.その結果,羅網鳥は15種が記録され,種の識別ができなかったものも含め,のべ185羽の落鳥が記録された.防鳥ネットの天井面積を1haに換算すると,1日の調査では7.5 ± 1.8 羽が記録された.マガモ属は主に翼を引っかけて羅網し,オオバンは主に足を引っかけて羅網していた.コガモの羅網はレンコン収穫前のハス田でより多く記録されたが,オオバンの羅網はレンコン収穫後のハス田で多かった.種の識別ができたのべ145羽の羅網落鳥個体のうち,98羽は同じネットで連続的に記録されず,確実に 1 か月以内にネットから消失していた.生息している鳥類は25種が記録された.サギ類,シギ・チドリ類は防鳥ネットの敷設されたハス田にはわずかな出現かあるいは全く出現せず,防鳥ネット敷設により生息にマイナスの影響を受けていた.スズメ目のハクセキレイ,セグロセキレイ,タヒバリ,ツグミは防鳥ネットの有無に関わりなく記録され,防鳥ネットは生息の障害となっていないと考えられた.
  • 植田 睦之
    原稿種別: 原著論文
    2012 年 8 巻 p. A19-A23
    発行日: 2012年
    公開日: 2012/04/12
    ジャーナル フリー
    オナガ Cyanpica cyana はツミ Accipiter gularis の防衛行動を利用して捕食を避けるために,ツミの巣のまわりに集まってきて繁殖するが,ツミが巣の直近しか防衛しなくなった2000年代からは,ツミの巣のまわりで繁殖することは少なくなった.しかし,一部のオナガはツミの巣のまわりで繁殖し続けている.なぜ,一部のオナガがツミの巣のまわりで繁殖しているのかを明らかにするため,営巣環境に注目して2005年から2011年にかけて東京中西部で調査を行なった.ツミの巣のまわりのオナガの巣は1990年代よりも葉に覆われた場所につくられるようになり,通常のオナガの営巣場所とかわらなかった.またツミの巣の周囲に好適な巣場所が多くある場所でのみ,ツミの巣のまわりで営巣した.これらの結果は,オナガは1990年代同様,ツミのできるだけそばで繁殖しようとしてはいるものの,当時のように自分たちの巣の隠蔽率を無視してまでツミの巣の近くを選択することはなく,営巣場所選択におけるツミの巣からの距離と隠蔽率の優先順位が逆転したことを示唆している.
  • 水田 拓, 阿部 優子
    2012 年 8 巻 p. A25-A33
    発行日: 2012年
    公開日: 2012/09/13
    ジャーナル フリー
    奄美大島における鳥類の窓ガラスへの衝突事故について調査した.2006年 4 月から2012 年 3 月までの 6 年間に,63 件(11 種)の衝突事故が確認された.衝突事故は一年を通して発生しており,夏鳥のアカショウビンHalcyon coromanda,留鳥のズアカアオバトSphenurus formosae,冬鳥のシロハラTurdus pallidus などで多かった.オーストンオオアカゲラ Dendrocopos leucotos owstoni やカラスバトColumba janthina など,絶滅が危惧される種でも衝突事故は見られた.衝突死した個体では,叉骨,烏口骨などを含む胸帯や,胸椎,肋骨,胸骨によって構成される胸郭の骨折が目立ち,またほとんどの個体で肺,心臓,肝臓などの器官からの出血が認められた.衝突事故は観光施設や公共施設,学校など大型の建物で多く発生していた.衝突事故を減らすためには,これらの施設で対策をとるよう普及啓発活動を行なうことが重要である.また,今後奄美大島で大型の施設を建てる際には,鳥類の衝突を未然に防ぐような設計上の工夫を施すことが望まれる.
短報
テクニカルレポート
  • 植田 睦之, 平野 敏明, 黒沢 令子
    2012 年 8 巻 p. T1-T6
    発行日: 2012年
    公開日: 2013/01/16
    ジャーナル フリー
    ICレコーダのタイマー録音のデータなど膨大な録音データから,効率的にその日のさえずりの状況を聞き取るための最適な聞き取り時刻の検討を行なった.北海道から高知県にかけて9地点の音源の日の出20分前から1時間後までの聞き取りを行なった.その結果,日の出4分前から6分後までの10分間に最も多くの鳥がさえずっており,その時間帯に記録率の低かったアオバト Treron sieboldii,イカル Eophona personata,センダイムシクイ Phylloscopus coronatus は遅い時間帯になって記録率が高くなることがわかった.また,初認日の夏鳥は,日の出前後の時間帯よりも遅い時間帯によく鳴くことがわかった.したがって日の出前後の時間帯と日の出からある程度たった時間帯の両方を聞き取るのが,録音データから鳥のさえずり状況を把握するためには良い手法と考えられた.
  • 関 伸一
    2012 年 8 巻 p. A35-A48
    発行日: 2012年
    公開日: 2013/01/17
    ジャーナル フリー
    トカラ列島の3つの無人島(臥蛇島,上ノ根島,横当島)に上陸して直接観察を行なうとともに,森林内に自動記録装置(赤外線センサー式自動撮影カメラとタイマー機能付録音機)を1年以上にわたり設置して鳥類相を調査した.3島で記録された種数はそれぞれ40 種,30 種,28 種であったが,繁殖の可能性が示唆された種は 13 種,9種,8種であった.直接観察でのみ記録されたのは海鳥類やサギ科など森林を利用することが稀な種であった.また,いずれの島でも自動記録装置でのみ記録された種が約3分の1を占め,渡りの途中で一時的に滞在したり,越冬したりする渡り鳥で,上陸調査の実施可能な時期には観察しにくい種が多く含まれた.森林性で繁殖していると推測された種は複数の手法で共通して記録されることが多かったが,繁殖の可能性を判断する根拠となったのは主に録音機による繁殖期の連続的なさえずりの記録であった.自動記録装置は,動作安定性に課題が残されてはいるが,遠隔地では非常に効果的な調査手法であることが明らかになった.
調査データ
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