Bird Research
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1 巻
選択された号の論文の8件中1~8を表示しています
原著論文
  • 植田 睦之, 松野 葉月, 黒沢 令子
    2005 年 1 巻 p. A1-A8
    発行日: 2005年
    公開日: 2005/09/01
    ジャーナル フリー
    1973年から1978年と1997年に東京都で行なわれた繁殖分布調査の記録を使って,ヒバリの分布状況の変化と,変化の要因について解析を行なった.ヒバリが記録されたメッシュは,1970年代の101メッシュから1990年代の28メッシュへと大きく減少していた.ヒバリの分布状況と植生状況の判別分析の結果,ヒバリに影響する環境要素として1970年代,1990年代ともに草地と畑地および水辺の面積が採用された.しかし,1970年代は畑地面積がもっとも重要な要素だったのが,1990年代は最も重要でない要素に変化しているところに大きな違いがあった.この 3つの要素のうち,畑地のみが1970年代から1990年代にかけて面積が有意に減少していた.畑地の作物はヒバリが生息する麦が占める割合が減少し,野菜の割合が増加していた.また畑地の小面積化も進んでおり,このような畑地の面積の減少と質的な変化が東京のヒバリの減少に最も大きく影響していると考えられた.
  • 峯岸 典雄
    2005 年 1 巻 p. A9-A14
    発行日: 2005年
    公開日: 2005/09/01
    ジャーナル フリー
    巣箱の密度がスズメやシジュウカラ類の巣箱使用率にあたえる影響を巣箱密度を変えることにより調査をした.巣箱の設置数はスズメ営巣数には有意な負の影響を与えていたのに対し,カラ類には正の影響を与えていた.また,スズメの使用数はカラ類の使用数に有意な負の影響を与えていた.気温はスズメの営巣数には有意な正の影響を与えていたが,カラ類には影響していなかった.スズメの営巣数は,食物条件の指標である気温に強い影響を受けているので,巣箱が増加してもスズメの営巣数は増加しないと考えられる.その結果,巣箱が増加した際にはスズメが使わない巣箱が増え,そこにカラ類が利用できる巣箱が増え営巣数が増加したのだと考えられる.なぜ,巣箱密度が増加したときにスズメが減少するのかは現時点では良くわからない.
  • 平野 敏明
    2005 年 1 巻 p. A15-A23
    発行日: 2005年
    公開日: 2005/09/12
    ジャーナル フリー
    2004年12月から2005年 4月上旬にかけて,渡良瀬遊水地の谷中湖で,ヨシなどの背の高い植物が植栽されている浮島がチュウヒの探餌のための環境利用におよぼす影響を調査した.調査は,浮島が設置された方形区(500×500m)と浮島が設置されていない方形区で行なわれた.浮島設置区域では,チュウヒの探餌飛行の頻度は,浮島非設置区域より有意に多かった.また,浮島設置区域において,チュウヒの探餌飛行は,浮島が含まれる方形区の方が,含まれない方形区より有意に多かった.さらに,浮島設置区域とヨシ原に設置された方形区の探餌飛行の頻度は,両者で有意な違いがなかった.調査中,合計17回の狩り行動が観察された.このうち,76.5%は浮島の縁の部分で,17.6%は浮島の上,5.9%は湖上であった.以上の結果から,浮島は,越冬期におけるチュウヒの重要な生息環境となっていると思われる.これは,浮島に植栽されている背の高い植物が,チュウヒの不意打ちハンティングに効果的であることによると考えられる.
  • 平野 敏明
    2005 年 1 巻 p. A25-A32
    発行日: 2005年
    公開日: 2005/11/10
    ジャーナル フリー
    2004年 4月から 7月に栃木県宇都宮市において,セキレイ属 3種(セグロセキレイ,ハクセキレイ,キセキレイ)の生息分布と生息環境を比較するために,1984年に行なわれた調査(平野 1985)と同じ場所,同じ方法で調査を行なった.調査地は1984年と同様に500×500mの方形区545個に分けられた.各方形区を優占する環境をもとに建物密集地,住宅地,農耕地,大河川,工業団地,丘陵の 6つに分けると,1984年と比較して建物密集地と住宅地の方形区は増加したが,農耕地と丘陵の方形区は減少していた.セグロセキレイの生息分布とその環境は,1984年と比較して,有意な変化はみられなかった.しかし,ハクセキレイは生息分布と生息環境ともに著しく変化した.すなわち,2004年には1984年にほとんど記録されなかった農耕地や大河川に分布を拡大していた.そのため,セグロセキレイとハクセキレイのあいだに,生息環境に有意な違いはなくなった.このようなハクセキレイの生息分布の変化の原因の 1つとして,調査地の都市化による営巣場所の増加が考えられた.なお,キセキレイでは,生息環境に変化はなかったが,分布は有意に縮小した.
  • 田尻(山本) 浩伸, 竹田 伸一, 上橋 修, 森川 博一, 大河原 恭祐
    2005 年 1 巻 p. A33-A41
    発行日: 2005年
    公開日: 2005/12/26
    ジャーナル フリー
    2002年12月から2003年 2月にかけ,石川県能美市いしかわ動物園において,飼育下のトモエガモ雌雄各 1個体に 5種類の穀物を与え,食物の選好性についての選択実験を行なった.実験にもちいた食物は,ヒエ,小麦,籾,トウモロコシ,大豆の 5種類で,これらの食物を個別に与えた場合と,混合して与えた場合の 2通りの実験を,各個体について 8-18回行なった.その結果,個別に与えた場合には小麦とヒエの消費量がもっとも多く,さらに混合した場合でもヒエの消費量が最も多かった.また野外での越冬期間中の主要な食物と考えられた籾の消費は比較的少なかった.このことから,トモエガモはおもにサイズの小さな食物を選好し,また採食中に食物を選別して食べていることが示唆された.
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