環境情報科学論文集
Vol.17(第17回環境研究発表会)
選択された号の論文の67件中51~67を表示しています
  • 北野 慎一
    p. 289-294
    発行日: 2003年
    公開日: 2006/02/17
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    有機廃棄物のリサイクルは、物質循環の観点からその重要性は高く、地域の環境問題を解決する方策として有用である。本研究では、「農業・農村の有する多面的機能」の一つとして有機資源リサイクル機能に着目し、その市場外価値を明らかにすることを目的とした。いずれも農業が基幹産業である北海道富良野市・京都府八木町・島根県大田市を対象に行ったアンケートデータを用いて、市場外価値の評価手法であるCVMにより、住民及び農家の有機資源リサイクルに関するサービス及びシステムの導入に対する支払い意思額(WTP)の導出を行った。その結果から、地域特性がどのようにWTPに反映されるかについて明らかにし、今後のリサイクル政策の方向性を探った。
  • 伊藤 洋一, 河野 英一, 飯塚 統, 笹田 勝寛, 徳山 龍明
    p. 295-300
    発行日: 2003年
    公開日: 2006/02/17
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    わが国では有機性資源の再生利用が循環型社会の形成の重点課題としてあげられている。このため、本研究では、アンケートにより有機性資源の再生利用の実態と課題および再生品の利用状況を把握した。その結果、有機性資源の再生利用が多くのところで実施されてはいるが、再生品の利用が促進されていないことが明らかとなった。これは、再生利用に関わる人々への啓蒙および再生品の品質と安全性の保証がなされていないからであった。また、有機性資源の堆肥化を試みて、その施用効果を把握した。
  • 森林バイオマスを通した地域循環システムの歴史
    鳥居 徹男, 三浦 秀一
    p. 301-306
    発行日: 2003年
    公開日: 2006/02/17
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    本研究は森林資源の循環システムのあり方を考えるために、我が国における薪炭利用の歴史的、地域的な位置づけを行い、伝統的な供給方法を明らかにしている。戦前まで、わが国における木材利用の中心は薪炭利用であった。日本各地で薪炭利用が盛んに行われていたが、大量の伐採木を消費地へ供給するために様々な工夫がなされていた。河川を使って輸送を行う「木流し」という方法が当時用いられており、東北地方の地誌にも木流しに関する記述が数多く現れる。山間部から消費地までの輸送距離は、10kmから30km程度までになる。その運搬過程では薪の刻印や仮設の堤(つつみ)を設けて放流を調節するなど、独特の作業が行われる。
  • 河野 万里子, 頭山 昌郁, 中越 信和
    p. 307-310
    発行日: 2003年
    公開日: 2006/02/17
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    アリ類を生物指標として、広島市の街区公園41個の環境を評価した。調査した公園はアリの種数及び種組成から2つのグループに分けられ、このグループ分けは公園の立木被度と対応していた。重回帰分析の結果、地表性種・樹上性種いずれの場合も種数に影響する環境要因として立木被度と生垣種数が抽出された。
  • 河田 幸視
    p. 311-316
    発行日: 2003年
    公開日: 2006/02/17
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    わが国でも科学的な野生生物管理が実施されつつある。特に、資源数が増加、減少している生物や、人との軋轢が生じる生物の管理が注目されている。本稿では、捕食者-被食者の関係にあり、被食者は経済的価値を有し市場で売買されるが、捕食者は価格がつかず農林水産業で被害を起こしているケースを取り上げる。理論モデルを構築し、数値シミュレーションをおこなった結果、(1)被食者の個体数が低い時の価格の増加が急激な場合には、生産者が収益を最大化しようとする結果、深刻な資源枯渇に陥りうる、(2)資源保護の観点からは、被食者を一定以上維持することで捕食者も保護される、(3)資源保護は消費者余剰の増大と整合的である、ということが示された。
  • 山西 亜希, 加藤 和弘, 恒川 篤史, 樋口 広芳
    p. 317-322
    発行日: 2003年
    公開日: 2006/02/17
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    三宅島2000年噴火は、同島の動植物やその生育環境に大きな影響を及ぼした。本研究では、噴火後の鳥類の分布状況を推定するため、三宅島において鳥類の出現種数と個体数を調査するとともに、衛星画像解析によって島の植生被害状況を把握した。森林のタイプと植被率、標高、傾斜の四つの環境要因から変数選択法により鳥類の出現種数と固体密度をそれぞれ推定する重回帰モデルを作成すると、変数として採用された環境要因は両モデルとも森林タイプと植被率の二つであった。鳥類の出現種数、個体密度は森林の植被率ととくに相関が高く、植被率の増加にともない、いずれも増加するという結果が得られた。得られたモデルをもとに、三宅島の鳥類分布推定図を作成することができた。
  • 岩崎 寛
    p. 323-326
    発行日: 2003年
    公開日: 2006/02/17
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    ため池周縁部に生育する植物の侵入や生育を阻害していると考えられるクズPueraria lobata Ohwi を効果的に駆除、管理する手法を検討した。クズの生育状況を調べるためにため池の水位と光合成速度の関係を調べ、クズの他の種への侵入阻害を検証するために希少種であるフジバカマEupatorium Fortunei Turcz.の発芽に対するアレロパシー効果を検証した。その結果、ため池周縁部に生息するクズは、生育場所の水面からの距離の違いにより光合成特性が異なることやクズのフジバカマに対するアレロパシー効果を調べたところ、その発芽を制御することがわかった。
  • 矢内 栄二, 早見 友基, 石井 裕一, 立本 英機
    p. 327-330
    発行日: 2003年
    公開日: 2006/02/17
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    ラムサール条約登録湿地である谷津干潟では、最近アオサの異常繁茂が問題となっている。本研究では、アオサ繁茂の原因を明らかにするため、隣接海域である東京湾の関わりを現地観測により調べた。その結果、アオサの繁茂は1995年の異常気象が契機となった可能性が示唆された。また、谷津干潟と東京湾を結ぶ2河川では、谷津川からの物質の供給が干潟に影響を及ぼしていることがわかった。
  • 優占種の変遷に及ぼす温度および照度の影響に関する実験的検討
    村上 和仁, 瀧 和夫, 松島 眸
    p. 331-334
    発行日: 2003年
    公開日: 2006/02/17
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    本研究では、現地観測ならびに培養実験を通して、富栄養化湖沼における植物プランクトンの優占化機構の基礎的知見を得ることを目的として、種間競争に着目した実験的検討を行った。その結果、気温と照度の季節変動は必ずしも一致せず、植物プランクトンの増殖に対しては独立事象的に作用すること、珪藻の優占化には温度・照度以外の環境要因、すなわち、栄養塩類、藻類代謝産物といった間接的な種間相互作用が大きく影響していること、優占種が珪藻から緑藻への優占種の変遷は、温度または照度の上昇に依存すること、藍藻の優占化には高温度・高照度を同時に満たす環境条件が必要であること、が明らかとなった。
  • 押田 佳子, 上甫木 昭春
    p. 335-340
    発行日: 2003年
    公開日: 2006/02/17
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    本研究では、大阪湾沿岸域の海浜34地点に生育する海浜植物とその他の植物の現状を種数、多様度、占有割合から捉え、これらに影響すると考えられる3つの環境特性(物理的特性、人為的特性、立地タイプ)の現状を把握し、関係性を捉えた。その結果、その他の植物の生育を抑え、海浜植物を保全していくには、?広面積の海浜の確保、?開放性の高い海浜の創出、?適切な利用と管理の実施などが必要であることが明らかとなった。また、海浜植物の種数、多様度、占有割合に対して、3つの環境特性が影響する順位は異なることが明らかとなった。
  • 大澤 啓志, 勝野 武彦
    p. 341-346
    発行日: 2003年
    公開日: 2006/02/17
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    稀少植物トウゴクヘラオモダカの種子発芽特性および谷戸におけるその保全管理手法について調査・考察した。最も高い発芽率が得られたのは低温湿潤処理の30℃明暗反復条件であり、これに対し低温湿潤処理を施さない種子の発芽率は極めて低かった。この種子発芽特性は谷戸奥の湧水地付近の過湿地という本種の生育立地環境によく対応するものであった。また異なる攪乱強度による成立植生の調査では、約30cmの耕起を行った地点のみ本種の生育が確認された。表層攪乱だけではミゾソバの繁茂は抑制されず、本種の生育にはミゾソバの繁茂を抑える意味で春季の耕起が有効と考えられる。
  • 嶋 栄吉, 堤 聰
    p. 347-352
    発行日: 2003年
    公開日: 2006/02/17
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    近年、農村地域の環境問題が顕在化し、特に河川水質の悪化が大きな問題となっている。農村地域での河川水質の汚濁は、農地からの科学肥料の溶脱と家畜ふん尿によって引き起こされている。そこで、本研究では、青森県東部の高瀬川集水域を事例にして、土地利用と畜産が流出水中の水質濃度に及ぼす影響について検討した。流出水の水量と全窒素濃度などが測定された。全窒素濃度は畑草地面積率に比例して増加し、畑草地からの窒素の流出は飼養頭数密度が大きく影響していた。そして、畑草地からの窒素の排出率は10~12%であった。
  • 笹田 勝寛, 河野 英一, 島田 正文, 森本 恭行
    p. 353-358
    発行日: 2003年
    公開日: 2006/02/17
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    近年、残存する谷戸流域はその環境の豊かさゆえに存在が評価されている。都市近郊河川の支流としての谷戸の環境を特に水質について検討した。その結果、藤沢市を流れる河川の水質について、その支流各地点での水質は各種イオン濃度が高く検出されており、農畜産業の影響が懸念された。また、土壌浸出液と流水の水質分析の結果、上部地域からの肥料成分および家畜排泄物成分が谷戸流域の土壌および流水に影響を及ぼしているといえた。一方で谷戸の水質浄化能力は、下流に向けての窒素成分の減少によって確認された。谷戸流域の持つ機能維持のためにも上部地域での施肥管理を含む営農方法の改善が必要である。
  • 坪井 塑太郎, 谷口 智雅, 宮岡 邦任, 朱 元曽
    p. 359-362
    発行日: 2003年
    公開日: 2006/02/17
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    本研究では、中国上海市の里弄住宅地の居住者を対象として、水道水利用の評価や砿泉水購買行動の実態を把握し、今後の中国の都市における生活用水利用の課題を検討した。その結果、水道水の「味覚」は取水場の移設や排出規制による取水源の河川水質の改善に伴い、近年では「良い」評価が得られており、また使用における安全認識が高いことが明らかになった。しかし一方で、居住者の多くは砿泉水を定期的に購入しており、水の購入が習慣化していることが示された。現在では、市販される砿泉水の種類も多い反面、小型のペットボトルの回収(リサイクル)機構が不充分であり、新たなごみ問題の誘発が懸念されることから、、社会的啓蒙等による対応が必要であると考えられる。また、近年の急速な都市開発に伴い水需要が急増しており、効率的な利用と水資源確保に関する将来展望の検討が必要であることが示唆された。
  • 吉田 幹雄, 小松 由明, 鞠 洪波, 恒川 篤史
    p. 363-368
    発行日: 2003年
    公開日: 2006/02/17
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    中国内蒙古農村を対象に、干ばつが農民生活に与える影響と、それに対する農民の対応を把握するため、村落調査から得られたデータを用いて2000年、2001年の農業生産、作物消費、収入を比較した。年降水量は2000年が368mmで平年値、2001年は274mmで軽度の干ばつであった。干ばつの影響は、農業生産量の減少、作物収入の減少、食料、飼料の品目割合の変化という形で現れていた。農民は干ばつに対して雑穀の播種面積の拡大、食料、飼料の優先的確保、農業外労働の増加により対応していた。これらの対応によって、対象地の食料、飼料の消費量、収入は干ばつであったにもかかわらず平年と同程度の水準に保たれていた。
  • 代表的な3地区を主事例として
    加藤 大昌, 澤木 昌典
    p. 369-374
    発行日: 2003年
    公開日: 2006/02/17
    会議録・要旨集 フリー
    ベトナムにおいて、ドイ・モイ政策の採択という社会システムの変化が自然環境(とりわけ水環境)に多大な影響を与えた。ハノイ市においてもそれは例外ではなく、非計画な水面の埋立てを繰り返した結果、現在、都市部(とりわけ中心市街地)において溢水の発生や既存の河川や湖沼の水質悪化が引き起こされている。また、中心市街地およびその周辺に小規模湖沼が増加している。本研究では、ハノイ市における湖沼の類型化を行い、それぞれの類型のハード面での特徴や周辺住民の利用や評価といったソフト面での特徴を整理・分析した。そこから得られた知見をもとに、ハノイ市の都市部において大小さまざまな湖沼と共生するための今後の課題についての提言を行った。
  • 千頭 聡, 上杉 圭子
    p. 375-380
    発行日: 2003年
    公開日: 2006/02/17
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    本研究は、ラオス北部焼畑地域を対象として、焼畑安定化による森林と土地の適切な管理、生活の安定化を目的として近年ラオス政府が進めている土地利用政策を、環境資源管理の視点から政策評価するとともに、ルアンパバン県カン川流域における数年間のヒヤリング調査結果に基づいて、土地利用政策の実態評価を行った。その結果、1)森林や土地の慣習的な利用形態に3つのタイプがある、2)土地・森林分配政策が焼畑農民の営農意欲向上に効果を出し始めている、3)焼畑農民は生活の森に対する依存度を強く認識している、4)人口増加、集落移動、換金作物への転換などに対して土地利用と土壌の管理が重要である、などが明らかとなった。
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