環境情報科学論文集
Vol.27(第27回環境情報科学学術研究論文発表会)
選択された号の論文の65件中1~50を表示しています
  • 飯田 義彦, 今西 純一, 森本 幸裕
    p. 1-4
    発行日: 2013年
    公開日: 2015/02/07
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    奈良県吉野山のヤマザクラ樹林景観について1995年~2012年の18カ年分の開花データおよび近傍地点の気象観測データを用いて,気温,降水,風速が開花期間の長さに及ぼす影響を調べた。下千本の開花開始期及び開花最盛期,中千本の開花開始期,上千本の開花晩期において当該期間の平均気温と期間日数に有意な負の相関がみられ,暖かい年にはそれぞれの期間日数が短縮される傾向にあることが示唆された。一方で,平均降水量は下千本の開花最盛期で有意な正の相関がみられた。平均風速についてはいずれの期間日数とも有意な相関はみられなかったが,気象観測点と現地の地形条件の差異を考慮する必要があることが考察された。
  • ラーマン ルトフォル , 梅木 清, 本條 毅
    p. 5-10
    発行日: 2013年
    公開日: 2015/02/07
    会議録・要旨集 フリー
    日本の暖温帯林の広葉樹4 種(スダジイ,ヤブニッケイ,タブノキ,シロダモ)の被陰された稚樹における樹形の違いを明らかにするため,当年シュートの相対的高さ・長さ・角度を解析した。他の3種に比べ,スダジイの稚樹は,水平に近い当年シュートを樹冠の中に比較的均等に分布させていた。これらの当年シュートの特徴により,被陰下のスダジイ稚樹は強い自己被陰をさけ,受光効率を増加させることができる。これに対して,他の種の稚樹は,典型的には,長く,垂直に近い当年シュートを樹冠の上部に集中分布させていた。これらの当年シュートの特徴により,他の種の稚樹は,被陰された低い空間から日のあたる高い空間に葉群をもち上げることができる。
  • 上田 萌子, 上甫木 昭春
    p. 11-16
    発行日: 2013/11/26
    公開日: 2015/02/07
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    本研究では,暖温帯におけるハマボウ群集を含む塩生植物群落全体の分布と空間特性や周辺植生との関係を調査した。その結果,一年草・二年草群落から多年草群落,木本群落までが分布するタイプ,草本群落のみが分布するタイプ,多年草群落と木本群落が分布するタイプ,主として木本群落が多く分布するタイプなど,さまざまな分布タイプが捉えられた。塩生植物群落の分布には,立地環境だけでなく,群落の規模や河川改修などの開発といった人為の影響,地域で行われている保全活動,サイトレベルの詳細な微地形などの条件が影響を与えていると推察される。
  • 黒田 貴綱, 勝野 武彦
    p. 17-20
    発行日: 2013/11/26
    公開日: 2015/02/07
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    希少な湿生植物であり保全のための知見が乏しいミズニラについて,圃場と自生地それぞれで本種の生育に関する基礎的な実験を行った。圃場実験の結果,人為的な管理下で本種を良好な状態で維持するためには,夏期において湿潤状態を保ち,30%以上の遮光を行うことが必要と考えられた。自生地実験では,競合種からの影響を低減するための除草管理の必要性が示され,夏期に1回程度の管理でミズニラの生育を保つことが可能と推察された。これらの事例を積み重ねていくことで,本種の保全策や生育地の整備手法の確立に繋がっていくものと考えられた。
  • -富士山での哺乳類動物のモニタリング事例
    土光 智子, 陳 文波
    p. 21-26
    発行日: 2013/11/26
    公開日: 2015/02/07
    会議録・要旨集 フリー
    生物多様性インフォマティクス手法提示と富士山北麓の哺乳類相の生物多様性評価を行った。アカマツ植林帯と混合林の森林地域にて,小型~大型哺乳類を対象とし2012 年9 月~11 月に15 台の自動撮影装置を設置した。 種の豊富さ,多様性,均等性,優占度を計算した。計4,271 枚の哺乳類撮影画像から,ヒトを含む14 種の哺乳類が識別できた。富士北麓における哺乳類相は,他地域より生物多様性が高かった。従来手法と比べ、本手法は人的資源と時間を節約可能で、生物多様性指標の定量化に効果があった。シカ優占群集,ヒト優占群集,無優占群集の3つの群集が存在していた。無優占群集は高い生物多様性を維持しており,優先的に保全していくべきである。
  • 宮地 俊作, 馬谷原 武之, 對馬 孝治, 笹田 勝寛, 河野 英一
    p. 27-32
    発行日: 2013/11/26
    公開日: 2015/02/07
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    相模湾に来遊するカタクチイワシの炭素・窒素安定同位体比(δ13C,δ15N)を調査した。相模湾ではシラスから未成魚(90mmSL)になるまでは体長に応じてδ15N は高くなることが再確認された。一方,δ15N 比の低い大型成魚個体群(120mmSL 以上)が春から初夏に出現し,成魚のδ15N 変異幅は著しく拡大した。これは同位体比の異なる個体が相模湾で混在していることを示す。従って,低いδ15N の大型カタクチイワシは,他の海域から回遊してきた個体群であると結論づけられる。これはδ15N だけでなくδ13C も低いので,この低い値は異なった食物網に属した摂餌履歴を反映していると示唆される。
  • 芦澤 航, 大澤 啓志, 勝野 武彦
    p. 33-36
    発行日: 2013/11/26
    公開日: 2015/02/07
    会議録・要旨集 フリー
    栃木県の喜連川丘陵南部に位置する谷戸(谷津)を対象として,ツチガエル<i>Rana rugosa</i>の繁殖期である初夏期~夏期に産卵状況調査を行なった。計335個の卵塊が確認され,承水路と水田での確認卵塊が多く,水路での確認は全確認卵塊数の5%未満であった。水辺要素別の卵塊密度より,本種は承水路を最も選好していることが明らかになり,それには流速の差が最も影響していた。一方,水田での産卵も比較的多く確認されており,必ずしも止水域を産卵場所として避けている訳ではないことも明らかにされた。
  • -共分散構造分析によるアプローチ
    大石 太郎, 大石 卓史
    p. 37-42
    発行日: 2013年
    公開日: 2015/02/07
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    本研究では、因子分析および共分散構造分析を用いて生物多様性向上農産物に対する日本の消費者の認知構造を分析した。分析結果から、生物多様性向上農産物は日本の消費者にとって、心理的福祉に関する価値、食材に関する価値、環境保全に関する価値の3 つの価値を有することが明らかとなった。また性別、年齢、所得、地域といった人口統計学的属性がそれらの3 つの価値に影響を与えていることが示された。さらに心理的福祉に関する価値は、消費者の生物多様性向上農産物に対する行動意向につながる重要な要素であることが示された。そのため、日本において生物多様性向上農産物を普及していく上で、心理的福祉に関する価値を強調するようなマーケティングアプローチが効果的なアプローチになると考えられる。
  • 辰己 賢一
    p. 43-48
    発行日: 2013/11/26
    公開日: 2015/02/07
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    愛媛県松山市にある1 圃場を対象とし,地域単位で推計可能な作物収量算定モデルの開発を行い,気候変動が水稲の収量や水収支に与える影響を評価した。その結果,1) 将来の夏季における降水量の大幅な減少に伴い,灌漑に必要な水量が増加する。2) 将来,水ストレスの増加に伴い気孔開度が低下し,葉面からの蒸散量が減少するが,CO2濃度の増加に伴い光合成が促進され,水生産性が増加し,その結果,熱・水ストレスによる減収効果を増収効果が上回る。3) 将来気候下で移植日を現在より約1 か月程度早めると,収量を維持しながら水資源を有効に利用することができる,以上3 点が本研究で明らかとなった。
  • -福島県喜多方市の「本木・早稲谷 堰と里山を守る会」による「上堰米」を例として
    田中 美香
    p. 49-54
    発行日: 2013/11/26
    公開日: 2015/02/07
    会議録・要旨集 フリー
    本研究は,継続的なパートナーシップでの農作物小売の実態を明らかにすることを目的とした。 調査手法は,資料調査・聞き取り調査・臨地調査・参与観察・アンケート調査,である。その結果,都市農村交流における六次産業化としての農作物小売は,段階を経てビジネスモデルとして成立していた。第一段階は,水利組合員とボランティアとの共同作業によって,連帯感が形成される。第二段階は,水利組合を母体とした組織を成立したことにより,水利組合の生産米をボランティアとその関係者に通信販売するビジネスモデルが可能となった
  • 中村 中, 櫻井 一宏, 小林 慎太郎, 丹治 肇
    p. 55-60
    発行日: 2013/11/26
    公開日: 2015/02/07
    会議録・要旨集 フリー
    農業水利サービスは農業生産において重要な位置付けにあり,我が国では稲作を主な対象として公共インフラ的な水供給システムの整備が進められてきた。農業従事者は水需要者として必要量を一定の費用負担により農業用水を利用するが,その負担額の決定をはじめ基本的な水管理を供給者が主導的に行う,いわば供給者主導型の水供給システムが伝統的に構築されてきた。本研究では,需要者である農家が彼ら自身の経営方針や意向を反映させた水供給システムのあり方について検討することを目的として,対象地域における農家の現状を調査し定量化したデータをもとにしてモデルの構築を行い,多様な営農形態を反映した水利サービス政策を仮定したシミュレーション分析を行った。
  • 森本 英嗣
    p. 61-66
    発行日: 2013/11/26
    公開日: 2015/02/07
    会議録・要旨集 フリー
    本研究は,次世代バイオマスの一つであるヤナギの生産が,メタン発酵消化液の更なる利用方法と耕作放棄地の有効活用方法に繋がることを示した。エネルギー収支比やGHG 排出の環境影響評価の点から,ヤナギの生産・利用を見据えたシナリオケースと現状の比較分析を行い,生産効率性の高さならびに資源作物としての十分な持続性を定量的に示した。さらに環境影響だけでなく生産活動にも着目し,従来の営農活動(水稲栽培)との作業工程を比較した。その結果,水稲栽培とヤナギ生産の繁閑期が重なることはなく労力の競合回避が図れることを明らかにした。
  • 島本 由麻, 上野 由樹, 鈴木 哲也
    p. 67-72
    発行日: 2013/11/26
    公開日: 2015/02/07
    会議録・要旨集 フリー
    環境負荷を軽減する精緻な作物管理には,作物に対する環境ストレスの非破壊検出法の開発が重要な技術的課題である。本研究では,トマトから発生する弾性波をAcoustic EmissionAE)法を用いて検出した結果を報告する。水ストレス条件下では,植物道管内部において気液二相流に起因した弾性波が検出される。既往の水ストレス評価指標である土壌水分計測および茎内流速計測結果と植物起源弾性波の検出波特性との比較検討を試みた。その結果,検出された弾性波の発生頻度および周波数特性は茎内流速との関連が示唆された。このことから,AE 法により検出された弾性波は,植物の水分動態モニタリングに有効であると考えられる
  • 鈴木 哲也
    p. 73-78
    発行日: 2013/11/26
    公開日: 2015/02/07
    会議録・要旨集 フリー
    平成23 年3月11 日に東北地方太平洋沖地震が発生し,マグニチュード9の地震規模により多くの貯水施設(ため池)が損傷を受けた。既存施設の戦略的保全管理を考慮した場合,東北地方太平洋沖地震により顕在化した損傷とその復旧過程を詳細に検討することは,今後の大規模地震災害における迅速な復旧に資するものであると考えられる。本研究では,農業用ため池の堤体部を対象に東北地方太平洋沖地震による損傷特徴を143 ヶ所の既存施設の調査結果から考察した。特に甚大な損傷を受けた2ヶ所の施設については比抵抗電気探査と常時微動計測を用いて被災状況と復旧効果の定性評価を試みた。検討の結果,東北地方太平洋沖地震によりため池堤体は堤軸方向のひび割れが顕在化し,それらの可視化には比抵抗電気探査の有効が確認された。常時微動計測結果は,H/V スペクトル比を用いることにより損傷と復旧効果の検証が可能であることが明らかになった。
  • 坂本 麻衣子, 谷 正和, 森山 雅雄
    p. 79-84
    発行日: 2013/11/26
    公開日: 2015/02/07
    会議録・要旨集 フリー
    バングラデシュのテクナフ半島では,過剰な森林伐採が行われている。本研究では,森林消失の要因の1 つとして考えられるキンマ栽培に着目し,森林消失を軽減するための実効性のある対策について検討するために,対象地域の住民の個人属性や環境に対する意識を調査し,キンマ栽培の選択と関連のある世帯属性の分析およびその普及過程を分析する。さらに,衛星画像を用いて,分析結果を検証する。これより,キンマ栽培を行う世帯の特徴を把握し,森林消失を軽減するための対策について考察する。
  • 杉本 賢二, 奥岡  桂次郎, 谷川  寛樹
    p. 85-90
    発行日: 2013/11/26
    公開日: 2015/02/07
    会議録・要旨集 フリー
    都市の持続的な発展を維持するためには,人間活動で使用される資源の量とその挙動を把握することが重要である。しかし,発展途上国では統計データの入手可能性や精度において課題があるため,世界全体で適用可能なデータが必要となる。本研究では,愛知県を対象として,人工衛星による観測値であるPALSARデータと,実際の建築物分布とを比較して両者の相関性について検証を行った。その結果,衛星画像の分解能よりも大きいサイズで集計することで固有のノイズが軽減され,相関係数が高くなることが示された。また,土地被覆データを用いて高さのある地物である樹木が存在している森林域を除外することにより,さらに強い相関が得られることが明らかとなった。
  • 栗島 英明, 小澤 健史, 菊池 康紀
    p. 91-96
    発行日: 2013/11/26
    公開日: 2015/02/07
    会議録・要旨集 フリー
    再生可能エネルギーはその特性上,地域レベルでの検討が必要である。また,再生可能エネルギーは季節・時間によって供給量が変動し,需要量も同様に変動する。そこで本稿では,埼玉県ときがわ町を事例に,再生可能エネルギー供給と家庭部門の電力・熱需要の季節・時間変化,将来の人口変動を考慮し,2030 年の導入ポテンシャルと需給バランスを検討した。その結果,再生可能エネルギーは,戸建住宅での太陽エネルギー利用が進むことで,電力は総需要量を上回り,熱量も総需要量の約71%を供給するポテンシャルがあると推定された。しかしながら,季節・時間別に見ると,需要量を大きく下回る場合があることが明らかになった
  • 小澤 暁人, 吉田 好邦
    p. 97-102
    発行日: 2013/11/26
    公開日: 2015/02/07
    会議録・要旨集 フリー
    本研究は家庭エネルギーに着目し,生活者の行動スケジュールを再現し,そこから時々刻々の家庭エネルギー(電力・給湯)の需要シミュレーションを行なうモデルを作成する。生活時間データからマルコフ連鎖によって生活行動スケジュールを再現し,生活行動に対し消費電力・湯量を設定することでエネルギー需要を推定する。生活行動・エネルギー需要の推定結果を生活時間データや他モデルによる推定結果と比較し,モデルの妥当性を検証する。またスペクトル解析によって複数世帯による電力需要のならし効果を評価する。
  • -風力エネルギーの地域受容性を踏まえた一考察
    尾形 清一
    p. 103-108
    発行日: 2013/11/26
    公開日: 2015/02/07
    会議録・要旨集 フリー
    「電気事業者による再生可能エネルギー電気の調達に関する特別措置法」(2012 年)の施行により,固定価格買取制度(Feed-in Tariff : FIT)の導入がなされた。一方で,再生可能エネルギーの量的拡大は,特に立地地域との関係において様々な課題があり,これら課題の解決を図る政策が重要になりつつある。 本稿はこのような課題に対して,再生可能エネルギーの社会的受容性研究で注目される配分的正義や手続的正義に基づく制度や政策を検討するものである。
  • 吉川 直樹, 天野 耕二, 島田 幸司
    p. 109-114
    発行日: 2013/11/26
    公開日: 2015/02/07
    会議録・要旨集 フリー
    病院・診療所向けのリネンサプライサービスを対象として,ライフサイクル温室効果ガス排出量の推計を行った。標準的に用いられる8 品目を対象に,病床1床1年間の供給を評価単位として算出した。 その結果,シーツ等のカバー類は洗濯頻度が高く,洗濯と集配送で排出量の60%~80%を占めたが,掛布団等の本体類では,製品の製造由来の排出量が使用・維持管理段階を上回った。温湯による消毒を行うことなどの影響で,一般的なクリーニングや家庭洗濯と比較して,洗濯工程の排出量が高くなった。環境負荷削減に向け,本体類では製品調達,カバー類では洗濯工程のエネルギーへの対策の必要性が示唆された。
  • 岩見 麻子, 佐藤 寿樹 , 木村 道徳 , 井手 慎司
    p. 115-120
    発行日: 2013/11/26
    公開日: 2015/02/07
    会議録・要旨集 フリー
    本研究では,特定地域を対象とした研究論文から研究のテーマを特定し,特定したテーマを介した分野間の関連性を定量的に把握するための手法の開発を試みた。開発した手法を,北海道下川町を対象とした研究論文に適用した結果,1990 年頃までは金属・鉱山工学や地球科学の分野の論文が主であり,両分野間の関連性が強かったことや,1991 年以降は,農林業や建設・土木工学などの多様な分野の論文が見られるようになるとともに,それら多様な分野は下川町の産業振興に同期したテーマを介して関連し合っていたことなどが明らかになった。
  • -和歌山市でのケーススタディ
    小川 宏樹
    p. 121-126
    発行日: 2013年
    公開日: 2015/02/07
    会議録・要旨集 フリー
    成熟社会の到来に向け,集約型都市構造の構築に向けた取り組みが注目されている。本稿では,近畿圏を例に交通施設と都市構造の関係について分析を行った。大都市圏レベルでみると,都心部から遠い市町村では,一律に駅そば型の集約手法を適応することは困難であった。そこで和歌山市を例に,交通施設の整備状況と直近10 年間の人口動態の関係を明らかにした。その結果,公共交通については,最寄り駅までの距離よりも,主要駅までの距離が小さい地区での交通施設整備や住宅供給が,人口・世帯数の安定に繋がっていた。また,自動車交通については,新たな幹線道路整備よりも,地区の道路密度を高めていく方が人口・世帯数の安定に繋がっていた
  • 熊井 大, 吉田 好邦, 松橋 隆治
    p. 127-132
    発行日: 2013年
    公開日: 2015/02/07
    会議録・要旨集 フリー
    輸送事業者における省エネ法のデータを分析した既存の研究では,事業規模(輸送キロ又は輸送量)が大きくなればなるほど,多くの事業者でCO2排出原単位が改善される傾向(スケール効果)の存在が確認されているものの,その詳細な検証は十分にされていない。輸送事業者のCO2排出量を表す回帰式について,スケール効果を考慮した片対数モデル式以外に,スケール効果を考慮した両対数モデル式やスケール効果を考慮しないモデル式を設定することが可能である。本研究では,弾性値の概念等を使い,スケール効果の特徴を明らかにしつつ,回帰分析の結果を比較し,輸送区分ごとで適切な回帰式を選択するための検討をおこなった。
  • 小林 貴, 坂本 将吾
    p. 133-138
    発行日: 2013年
    公開日: 2015/02/07
    会議録・要旨集 フリー
    本稿では,踏切の一時停止廃止による CO2排出量の削減効果を検討するために,一時停止,徐行,踏切の遮断の条件を変えた4つのケースについて踏切条件(交通量と列車間隔)を変化させた場合の CO2 排出量の削減率を算出し,次の2点を明らかにした。第1に,現状の排出量と比べて,一時停止無・徐行有では,交通量 300 台/h 以上で列車間隔3分未満の踏切で 10%以上の削減率が見込める。一時停止無・徐行無では,全ての条件で 20%以上の削減率が見込め,最大で 67%以上の削減率が見込める。第2に,一時停止廃止が有効となるのは,列車間隔3分以上の踏切で一時停止無・徐行無を行った場合である。 この場合,立体交差化した場合の削減率の 80%以上削減できる可能性を示した。
  • ―家庭エネルギー消費量・CO2排出量の推計精度の改善にむけて
    坂本 将吾
    p. 139-144
    発行日: 2013年
    公開日: 2015/02/07
    会議録・要旨集 フリー
    多様なライフスタイルが反映される世帯の活動スケジュールを,国民生活時間調査を用いて確率的に生成させ,家庭エネルギー消費量・CO2排出量を推計することがこれまで数多く行なわれている。しかし国民生活時間調査は全国単位,個人類型単位など使用可能な情報が限られていることによる課題が残されている。本研究では,国民生活時間調査では考慮しきれない情報を,交通行動の代表的な統計調査であるパーソントリップ調査の個票データも組み合わせることで考慮できる世帯の活動スケジュー ル生成方法を提案し,国民生活時間調査のみを用いた方法で不十分であった点が考慮可能で,かつ十分な精度で活動スケジュールの生成が行えることを示した。
  • 大森 将希, 大木 宜章, 大沢 吉範, 木科 大介
    p. 145-150
    発行日: 2013/11/26
    公開日: 2015/02/07
    会議録・要旨集 フリー
    本研究は,廃棄物を利用した効率的なエタノール発酵の可能性を見出すため,糖化工程を省略したエタノール発酵におけるエタノール生成および有機酸の生成量と割合特性について検討を行った。試料には,模擬生ごみを用い,これにS.cerevisiae を接種した。その結果, S.cerevisiae と模擬生ごみに生息している嫌気性細菌による複合微生物系によって,優先的にエタノールが生成され,有機酸の種類と割合が同様な傾向になった。また,酵母接種比が高くなるにつれて,固形分減少率も高くなる傾向がみられた。 これらの検討結果より,糖化工程を省略したエタノール発酵における最適反応時間は18 時間であり,最適酵母接種比は3.45g-湿潤酵母/kg-模擬生ごみであることが分かった。
  • -大阪府市町村の悉皆調査に基づいて
    稲岡 美奈子, 北野 慎一, 吉野 章
    p. 151-156
    発行日: 2013/11/26
    公開日: 2015/02/07
    会議録・要旨集 フリー
    PET ボトルの家庭からの排出量が増加する中,多くの市町村がPET ボトルの収集作業を負担している。一般的に市町村による収集方法は,拠点収集と定期収集に分けられ,定期収集はさらにステーションと家前に分けられる。本研究では,大阪府全市町村への聞き取り調査を実施し,PET ボトルの収集方法と収集量の概況を明らかにし,市民一人当たり収集量を規定する要因を定量的に分析した。その結果,消費者の排出負担に影響を与える収集方法の違いが,収集量に強く影響しており,収集量を増加させるには,定期収集が,さらに家前収集が効果的であることが示唆された。この結果を踏まえ,容リ法における費用負担の改善について検討を行った。
  • 杉山 智春, 浅井 航平, 松村 隆
    p. 157-162
    発行日: 2013/11/26
    公開日: 2015/02/07
    会議録・要旨集 フリー
    埼玉県内の自治体を対象に家庭から排出された廃蛍光管の収集状況を調査した。調査協力の得られたA市において廃蛍光管の種別分析を行い,同結果をもとにA市を含む6自治体における廃蛍光管由来の水銀回収率を積み上げ法で推計した。水銀回収率は5.3%~96.3%と自治体間で大きな差があることがわかった。その要因を収集方式,分別区分,収集日および収集容器の有無から比較・考察したところ,拠点回収方式で収集している自治体の値が高く,拠点回収方式を採用していない自治体でも廃蛍光管の分別区分に該当するごみの単独収集日を設けている場合および廃蛍光管の収集容器を設置している場合は水銀回収率が高くなる傾向にあることが示唆された。
  • -兵庫県を対象として
    伊川 純慶, 中久保 豊彦, 東海 明宏
    p. 163-168
    発行日: 2013/11/26
    公開日: 2015/02/07
    会議録・要旨集 フリー
    本研究では,兵庫県を対象としてごみ処理広域化施策の導入効果を3 指標(電力収支,温室効果ガス(GHG)排出量,事業コスト)で評価し,その改善効果を①既存ストックの活用効果,②規模の集約化効果に分類することで要因分析を行った。その結果,兵庫県全域(都市域,地方域)における20102040 年の累積値で,GHG 削減効果分は②規模の集約化効果が75.4%と高い寄与を示した。一方で,事業コスト削減効果分は,①既存ストックの活用効果が47.0%,②規模の集約化効果が53.0%と同程度の寄与を示した。
  • 山本 清龍
    p. 169-174
    発行日: 2013/11/26
    公開日: 2015/02/07
    会議録・要旨集 フリー
    わが国において最高峰を誇る富士山を事例として取り上げ,①登山者の登頂断念の経緯と急性高山病(AMS)の症状を明らかにすること,②登山者の属性と登頂断念およびAMS 症状との関係性を明らかにし,事故リスクを低減するために有効な管理方策について考察すること,の二点を研究目的とした。研究の結果,33 人の登頂断念の理由はAMS に関する事由が約半数を占めた。また,レイク・ルイーズの指標を用いてAMS 症状を把握した結果,49%で軽度(2点以上)のAMS 症状があり,登頂断念者でAMS 症状が強かった。さらに,宿泊者やガイド同行の登山形態で登頂率が高いことなどが明らかとなった。
  • 西原 博志, 浦山 益郎, 松浦 健治郎
    p. 175-180
    発行日: 2013/11/26
    公開日: 2015/02/07
    会議録・要旨集 フリー
    緑地協定制度は,開発事業者あるいは土地所有者等が,緑地に関する協定を定め,協力して緑地の保全または緑化を進めるしくみである。本研究は,新規開発された住宅地の緑の創出に効果があるといわれる緑地協定が,開発後かなりの年数が経過し,樹木の成長や居住者の高齢化が進んだ住宅地において,どのような課題を持っているか考察するものである。そのために,滋賀県大津市の協定地区を対象に,緑地協定書が緑地保全に対応するものになっているのか確認するために緑地協定書を分析し,制度運用の実態および緑地協定の問題点を把握するために協定運営委員会の代表者への聞き取り調査と住民アンケート調査を行った
  • 都日娜 , 長澤 良太
    p. 181-186
    発行日: 2013/11/26
    公開日: 2015/02/07
    会議録・要旨集 フリー
    中国の巨大都市は近年に急速な都市化を経験し,緑地の減少やそれに伴う環境上の憂慮すべき問題に直面している。本研究では,上海市を事例として都市化や都市政策に関連した都市緑地の時空間的なダイナミクスについて景観指数を用いて定量的な解析を実施した。その結果,上海市外環道路内における緑地の時空間的配置パターンは一様ではなく,2000 年~2010 年間の都市緑地の景観構造は都心を挟んで浦東と浦西の地域で大きく異なる変動を示すことがわかった。Gradient 解析の結果では,各緑地タイプの景観指数の値が都心からの距離に応じて都市化の進展状況や行政府の緑地政策の内容を反映し,東西方向に特徴的な値を示すことが明らかになった。
  • 片野 洋平
    p. 187-192
    発行日: 2013/11/26
    公開日: 2015/02/07
    会議録・要旨集 フリー
    本研究は,森林の適正な管理政策を導くために,代表的過疎地域の一つである鳥取県日南町の小面積の森林所有者の内,不在村所有者の所有動態を明らかにする。社会調査データの分析から不在村所有者の意識と行動に着目し分析を行った結果,第一に不在村所有者の多くは所有する森林の周辺地域に居住していることが分かった。第二に,不在村所有者の多くは,所有する森林を自ら管理したいと考えていることが分かった。第三に,登記や境界確認ができている不在村所有者は,所有意識が高く,適正な森林管理を行っていることが分かった。本研究の事例から,不在村所有者の社会的条件に応じた行政のアプローチの必要性が示唆される。
  • 羽生 一予, 田村 憲司, 森澤 建行, 森 英俊
    p. 193-198
    発行日: 2013/11/26
    公開日: 2015/02/07
    会議録・要旨集 フリー
    「自然環境要素と人の生理・心理的効果」に関する研究データが蓄積されている。しかしながら,土壌が人にもたらす効果に関する研究は乏しい。そこで「土壌観察」の一端である「泥ダンゴ作り」が人に与える影響として指標の検討を行った。実験は,桐生自然観察の森の来園者7名(平均年齢60.2±3.6 歳)を被験者とし,血圧,心拍数,心拍変動,唾液アミラーゼ活性,POMS(短縮版),VAS 法を観察の前後に測定した。その結果, VAS の「癒されない」,「リラックスしない」,「面白くない」,「楽しくない」,「緊張する」で値が有意に低下したことから,VAS が土壌観察の効果判定に有用な指標となりうると考えられた。その他の指標については,更なる検討が必要と考えられた。
  • 野中 裕介, 岩崎 寛, 三谷 徹
    p. 199-202
    発行日: 2013/11/26
    公開日: 2015/02/07
    会議録・要旨集 フリー
    本研究は森林内における仰臥療法家具「メッシュカウチ」を試行的に制作し,実地の森林セラピーロードにおける療法効果を検証することを目的とする。メッシュカウチは森林内において仰臥可能な休憩施設として,独自の計画がなされたものである。東京都奥多摩町の森林セラピーロードにおいて,カウチによる仰臥と,背もたれを持たないスツールによる通常の座観との比較検証を血圧,脈拍数,記述アンケート,POMS の計測により行った。検証の結果,仰臥位の保持による生理面・心理面での優れた効果と,林内に良好な眺望を新たにつくり出す効果が認められる。
  • -三重県松阪市朝見地区を事例として
    萩原 和, 冨吉 満之, 河村 則行
    p. 203-208
    発行日: 2013/11/26
    公開日: 2015/02/07
    会議録・要旨集 フリー
    本研究では,市街化調整区域下に所在する地区(小学校区)であり,かつ圃場整備計画の有無が混在するような事例を対象として,如何なる要因が景観意識を規定するのかを明らかにした。その結果,「圃場整備計画あり」,「圃場整備計画なし」の2 群において「美しさ」を基準とした変数クラスター分析による景観要素のグルーピングを試みたところ,「用水ため池」と「集落部分(「歴史旧跡」,「中心部」)」との間で,大きく異なること,またその規定要因は,「圃場整備計画あり」の場合,「生物多様性の保持」が大きな要素(負の相関)として認識されることがわかった。
  • 水上 象吾
    p. 209-214
    発行日: 2013/11/26
    公開日: 2015/02/07
    会議録・要旨集 フリー
    路地における鉢植えの緑が,緑量増加への寄与など地域の緑環境へ貢献するかを検討するため,鉢植えの設置条件や緑視率との関係を明らかにし,緑の効果や手入れ対する住民意識を検討した。その結果,路地の形態,幅員等の条件や路地の私的領域化が鉢植えの設置とかかわりを有すること,鉢植えの緑の集積が緑視率向上へ寄与することが明らかとなった。また,緑の効果に関する住民の考えが把握されるとともに,地域へのかかわり等が緑の手入れの頻度に影響していることが示された。以上より,鉢植えの設置にかかわる路地の環境条件が明らかとなった。
  • 小木曽 裕
    p. 215-220
    発行日: 2013/11/26
    公開日: 2015/02/07
    会議録・要旨集 フリー
    集合住宅の緑や屋外に対する居住者の印象が,緑を通じて潤いのある環境を享受できるように計画 設計を行ったブリッツ馬蹄形住宅の中庭を取り上げ,居住者の感じる緑の意識調査を行い実態を把握することにより,集合住宅のより良い緑のあり方の知見を得ることを目的とした。居住者は馬蹄形住宅の中庭を広い緑に囲まれている印象を持つと共に,住宅で座って見える中庭の緑を高く評価し,外に出ずに住宅の中から見える緑を高く評価し潤いも享受していて,バルコニーから見える中庭の緑と空間の評価は特に高かった。 居住者は中庭のヤナギの大木を好み,賃貸庭の果樹の評価も高いことがわかった。
  • -首都圏と関西圏におけるアンケート調査に基づいて
    吉野 章, 大南 絢一
    p. 221-226
    発行日: 2013/11/26
    公開日: 2015/02/07
    会議録・要旨集 フリー
    本稿は2011 年の福島第一原子力発電所の事故によって生じた放射性物質の食品汚染に直面して,消費者が行った情報収集における利用メディアのそのパターン解析を行った。首都圏および関西圏で実施した消費者アンケート結果を基に基づく,潜在クラスモデルの二段階繰り返し推定によって,約6 割の消費者が積極的に情報収集を行ったこと,並びにインターネットや雑誌・書籍・講演などの追加的な費用を伴うテレビや新聞以外の情報源の有用性が再確認された。
  • -宮城県閖上地区の事例として
    渡邊 一仁
    p. 227-232
    発行日: 2013/11/26
    公開日: 2015/02/07
    会議録・要旨集 フリー
    本研究では,東日本大震災の津波による閖上地区のアカガイ漁業への影響把握を目的として,漁業基盤の現状,アカガイ資源の解析,および放射性物質の検出状況を整理した。漁業基盤では,漁船隻数を中心に緩やかな回復が期待された。また,アカガイ資源は分布密度や殻長組成の推移から増大していると判断された。放射性物質の検出状況についても,アカガイは基準値以下であり,アカガイ魚業の継続は十分可能であると考えられた。今後,漁獲物サイズを大型化する等の実施により,持続性を担保したアカガイ漁業の復興が期待される。
  • 小林 剛, 上田 裕之, 高橋 ゆかり, 亀屋 隆志
    p. 233-236
    発行日: 2013/11/26
    公開日: 2015/02/07
    会議録・要旨集 フリー
    鉛や六価クロムなどの有害な化学物質による土壌汚染が全国で多く見つかっており,その汚染原因の一つとして,大気からの沈着が考えられる。本報では,東日本大震災津波被災地の事業所を例として,大気に鉛を排出する事業所近傍での土壌汚染の濃度分布を測定・調査し,土壌汚染の原因について考察した。大気拡散モデルにより推算した鉛の濃度分布と,実測した濃度分布との一致から,大気からの沈着により鉛土壌汚染が生じる可能性があることが示唆された。また,多様な化学物質の大気沈着による土壌汚染の可能性について検討した。
  • 中村 洋
    p. 237-242
    発行日: 2013/11/26
    公開日: 2015/02/07
    会議録・要旨集 フリー
    モンゴルで2009年から2010年にかけて自然災害“ゾド”が発生した。同国で最も家畜頭数が減少したドンドゴビ県で調査を行った結果,嵐が頭数を減少させる主要因であることが分かった。また,オトル(通常使う放牧地以外への畜群の移動)をしない,乾草を給飼できない世帯はゾド時に家畜頭数をより減少させていた。畜群の移動性の低い世帯は災害の影響を受けやすく,放牧地への圧力も高くなりやすい。以上から,移動性の低い世帯への政策として,乾草の備蓄を推進するよりも災害後に他の所得機会を与えるほうが,災害に強い社会と放牧地への圧力軽減を両立させられるのではないかと考えられた。
  • 久保田 泉
    p. 243-246
    発行日: 2013/11/26
    公開日: 2015/02/07
    会議録・要旨集 フリー
    気候変動影響への適応策に関する国際制度設計において,途上国への資金供与問題が注目されている。本研究では,適応関連資金配分の優先順位づけをいかに行うかについての示唆を得るため,京都議定書下の適応基金と「気候変動影響への対応力強化のためのパイロット・プログラム」(PPCR)の運用状況を,対象国/プロジェクトの選定に着目して比較検討した。その結果,適応基金の被支援プロジェクトのホスト国は,脆弱国への支援が謳われているにもかかわらず,各種指標で脆弱国リストの上位に入っていない国が多いことがわかった。今後の適応関連資金メカニズムには,脆弱性に着目したPPCR 類似の資金配分方法を確保することが重要である。
  • -カンボジアとラオスの事例より
    森田 香菜子
    p. 247-252
    発行日: 2013/11/26
    公開日: 2015/02/07
    会議録・要旨集 フリー
    本研究の目的は,途上国の森林減少・劣化からの排出削減など(REDD+)の森林保全,気候変動緩和,生物多様性保全の効果を最大化に資する制度構築に有用な視座を提供することである。REDD+ 実施の準備段階のカンボジアとラオスの事例と,国際政治学の相互作用の管理(Interplay Management)の分析枠組を用いて,REDD+に関わる既存の国内制度間の相互作用とその改善に貢献しうるアクターの役割を分析した。結果,特に気候変動分野の制度の強化と 3つの分野に関わる制度間の効果的な相互作用の必要性が示され,その構築には,環境を扱う省と農業・林業を扱う省との調整,多国間援助機関や中央政府と連携のある自然保護活動を行う国際非政府組織の参画の重要性が示された。
  • 小林 利夫, 西浦 定継, 木下 瑞夫
    p. 253-258
    発行日: 2013/11/26
    公開日: 2015/02/07
    会議録・要旨集 フリー
    近年の都市化傾向は,緑被を著しく減少させヒートアイランド現象の要因の一つと考えられている。そのため,ヒートアイランド現象緩和に影響があるとされている緑被の保全及び活用した自然配慮型のまちづくりが求められている。そこで本研究では,都市レベル,地区レベルでの解析を進めることで,既成市街地内の地表面温度から土地利用等の空間構成を明らかにした。分析の結果,低温域となる空間要素として建築物等の建ぺい率,容積率が低く,公園等のオープンスペース率が高いと地表面温度を緩和しやすくなることが分かった。また,低温化には緑被の影響が大きく,中でも樹木が効果的であることが分かった。
  • 森本 太一, 鍋島 美奈子, 中尾 正喜, 西岡 真稔
    p. 259-264
    発行日: 2013年
    公開日: 2015/02/07
    会議録・要旨集 フリー
    大阪府交野市私市では局所的な夜間冷気流が観測される。本研究では気象データを統計的に分析することにより,夜間冷気流と気象要素の関係性を明らかにし,夜間冷気流の流入の有無を判別することを目的とする。交野市消防本部の10 分間隔気象データを用いて交野市市街地への冷気流の流入パターンを 6 パターンに分類した。また交野市消防本部に加えて,大阪管区気象台,大阪港波浪観測塔の気象データを活用し,7 つのパラメータを設定し比較検討を行なった結果,冷気流の流入の有無には「6:00~11:50 の平均風速」「11:00~16:50 の積算気温差」の2 項目の関係性が高いことを明らかにした。これらのパラメータを用いて判別分析を行い,冷気流の有無を約75%判別することが可能であることを示した。
  • 荘保 伸一, 小淵 義照, 吉田 篤正, 木下 進一
    p. 265-270
    発行日: 2013/11/26
    公開日: 2015/02/07
    会議録・要旨集 フリー
    ヒートアイランド抑制と関連して,熱処理木材を使った木製外装による建物内外の熱負荷抑制効果を確認するため,木材その他材料が外装されたまたは外装されていない10 種類のコンクリート製の小型の建物模型を用いて,建物各面での表面温度および熱流束を測定し,建物内外への熱負荷の抑制効果について評価した。結果として,木製外装表面の温度が,日中は無施工の躯体に比べて高くなる傾向があるが,日射の低下する夕方急激に低下し,気温との差がほぼなくなること,また建物模型の躯体表面の熱流束および内部の温度の日変化が抑制されることが示された。
  • 山下 良平
    p. 271-276
    発行日: 2013/11/26
    公開日: 2015/02/07
    会議録・要旨集 フリー
    本研究では,企業の生物多様性保全活動の実態を圏域レベルで調査し,得られた結果を元にカテゴライズした企業群について,活動開始の障壁や継続条件の認識,及び活動不参加の要因を検討することを課題とした。調査対象は,北陸4 県を中心に事業所を置く企業とし,企業の実態を調べるためのアンケート調査を行った。その結果,企業が保全活動に取り組むには,まず社内の理解を進め,先行企業の情報等を参照しつつ,地域とのマッチングやノウハウ指導面で行政の支援が不可欠であることが示唆された。 そして,その活動の持続性を担保する評価機構については,現状では企業外部からの積極的な関与が必要であることが分かった。
  • 西村 武司
    p. 277-282
    発行日: 2013年
    公開日: 2015/02/07
    会議録・要旨集 フリー
    外来種であるセイヨウオオマルハナバチはトマト施設栽培の花粉媒介に不可欠な一方,外来生物法によって使用が規制される。本種の使用には,トマト生産者には施設へのネット展帳だけでなく,逃亡防止の努力が要求される。しかし,彼らの行動は観察不可能なため,非点源汚染の状況と類似したモラル・ハザード問題が生じる。北海道では,市民参加による本種のモニタリング活動が存在し,地域別の目撃・捕獲数が公開されている。本稿では,モニタリング活動がトマト生産者のモラル・ハザードを抑制する可能性について検討する。アンケート調査に基づいた分析の結果,この活動が連帯責任に基づいた心理的罰則を生産者に与え得ることを明らかにした。
  • ―柳津西山地熱発電所と小国地熱発電所計画を事例として
    上地 成就, 村山 武彦, 錦澤 滋雄
    p. 283-288
    発行日: 2013/11/26
    公開日: 2015/02/07
    会議録・要旨集 フリー
    日本は豊富な地熱資源を有しているが,開発コストや立地規制,地元住民の反対などが障壁となり,地熱発電開発は近年停滞している。今後は特に立地地域での合意形成が地熱資源開発を進める上で大きな課題となると予想される。本研究は,立地事例および計画中止事例の比較分析を通して,地熱発電開発に対する地域における社会的受容性に影響を与える要因を明らかにすることを目的とした。本研究の結果,地域における地熱資源利用方法の多様性,主観的リスク認知を左右する情報の具体性,開発事業者側のリスク管理の進め方などの点で違いが見られ,これらが地域における社会的受容性に影響を与える可能性があることを明らかにした。
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