大学などの実験室では工場などとは異なり、多数の研究者が空間を共有しながら、それぞれに独立した作業を行っている。そのため、実験中の事故は、自らの作業に起因するものだけではなく、同室内の他の実験者が起こした事故に巻き込まれるケースが多々ある。このような環境下において実験者の安全と健康を守るためには、個々の実験作業だけではなく、実験室空間全体について、人・機器・作業などの配置を最適化するラボデザインが重要となる。 ラボデザインは、実験室で行われる作業内容が変わる毎に変更すべきであるが、実際には、実験台や局所排気装置などは容易に動かせず、自由に配置換えを行うことはほぼ不可能である。また、ラボデザイン上重要なポイントが、実験室内の気流である。有害蒸気の発生源と室内気流を理解することで、実験者の無用な有害物質へのばく露を防ぐことができる。一方日本では、震災対策も重要となる。地震から研究を護るためには、建物だけでなく、実験室内の耐震性を上げる必要がある。そのためには設備や機器の確実な固定が必要であるが、固定はフレキシビリティを低下させることになる。 我々のグループは、安全で快適な実験室を構築するために、実験室内に6面体構造のフレーム構造を構築するフレームシステムを開発した。このフレームシステムは、フレキシビリティ、気流、耐震という3要素の同時向上が可能であり、安全で快適な実験室実現のための回答の一つとなりうると考えられる。
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