環境と安全
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4 巻, 1 号
選択された号の論文の7件中1~7を表示しています
原著
  • 中島 晋也, 小野 由紀子, 山上 仰, 篠原 亮太, 有薗 幸司, 林 譲
    2013 年 4 巻 1 号 p. 1_3-1_8
    発行日: 2013年
    公開日: 2013/04/23
    ジャーナル フリー
       多数の化学物質を効率的に測定するために、GC/MSで検出と定量に必要な情報をデータベース化しておき、登録された数百種類以上の化合物について、標準物質を使用しない calibration curve locking database(CCLD法)が開発・使用されている。本手法では、多数の化合物を対象とすることから、対象化合物の標準品を入手し、既知濃度試料を調製して、繰り返し測定から不確かさを推定することは時間的にほぼ不可能である。繰り返し測定によらない不確かさの推定法として ISO 118437(Capability of detection Part 7: Methodology based on stochastic properties of instrumental noise)がある。 ISO 118437では、ベースラインノイズとピークを指定することで、1回の測定で対象とする全ての化合物の不確かさ推定が可能となる。幾つかの農薬標準品を用いて、繰り返し測定と ISO 118437から求めた不確かさを比較し、 ISO 118437の上記の手法へ適用性を確認した。本研究は、 CCLD法で得た測定値の不確かさの推定を可能とすることで、多数の化学物質を迅速に測定できる CCLD法の利点を生かしたまま、不確かさを表記した測定値が得られる手法を提供する。
  • 小林 淳, 孫 深富, 吉 赫哲, 石橋 康弘, 篠原 亮太, 古賀 実, 有薗 幸司
    2013 年 4 巻 1 号 p. 1_9-1_14
    発行日: 2013年
    公開日: 2013/04/23
    ジャーナル フリー
       ノニルフェノール(NP)はアルキルフェノール類の一種であり、生殖・発生毒性など生物への影響が懸念されている。製品NPは多数の異性体の混合物であり、これまで混合物として水生生物への毒性評価がなされてきたため、個別の異性体の毒性については知見が限られている。本研究ではNP異性体の毒性を明らかにするため、直鎖型異性体、18種の分岐型異性体、さらにこれら19異性体の等量混合物を用いてヒメダカ(Oryzias latipes)仔魚に対する急性毒性試験を実施し、各NP異性体の半数致死濃度および異性体間の毒性の差異を明らかにすることを目的とした。OECDテストガイドライン203に準拠して急性毒性試験を行った結果、ヒメダカ仔魚の96時間半数致死濃度(96 h-LC50)は、直鎖型異性体では439 μg/L、等量混合物では265 μg/L、分岐型の18異性体では193(NP-O)~450(NP-A)μg/Lの範囲であった。大部分の分岐型異性体(NP-A以外の17異性体)は直鎖型異性体よりも急性毒性が強いという結果が得られた。分岐型異性体の96 h-LC50とそれらの分子構造との関係を検討した結果、NPのノニル基のα炭素のみにアルキル基が結合している異性体の一部で急性毒性が高い傾向があり、既報で観察されているNP異性体の分子構造とエストロゲン活性との関係と異なることが示唆された。
  • 中村 修, 青木 隆昌, 松原 孝至, 木間 富士子, 松浪 有高, 進藤 拓, 関根 守, 武田 誠, 後藤 裕之, 柏木 保人, 榊原 ...
    2013 年 4 巻 1 号 p. 1_15-1_23
    発行日: 2013年
    公開日: 2013/04/23
    ジャーナル フリー
       大学の研究室における化学物質の使用は短時間で間欠的な場合が多い。このため、労働安全衛生法で規定されている有害物質取扱作業場を対象とした作業環境測定では、研究室の健康障害リスクを検出できない可能性が指摘されている。著者らは個人ばく露測定や、化学物質リスクアセスメントを活用することによって、作業環境測定に基づくばく露管理をより適正に実施しうると考えた。これを検証するために、作業環境測定と個人ばく露測定の併行測定、並びにリスクアセスメントの試行を行った。それらの結果、個人ばく露測定とリスクアセスメントは作業環境測定では検出できない健康障害リスクを検出し、従来の作業環境測定に基づいた作業環境管理を補う可能性が示唆された。
  • 冨安 文武乃進, 野原 正雄, 安達 毅, 布浦 鉄兵, 中島 典之, 戸野倉 賢一, 刈間 理介, 横山 道子, 吉川 健, 辻 佳子, ...
    2013 年 4 巻 1 号 p. 1_25-1_37
    発行日: 2013年
    公開日: 2013/04/23
    ジャーナル フリー
       内容物が分からなくなった実験廃液や実験汚泥(実験系不明廃棄物)の回収と処理に関する方法論的研究を行った。この際、東京大学環境安全研究センターの実験廃棄物処理設備を用いて焼却処理することを前提とした。始めに、実験系不明廃棄物を有機系処理設備に投入するために必要な内容物情報と分析方法ならびに投入前処理方法に関して検討した。検討結果に基づき、21,695本の実験系不明廃棄物(約19,940 kg)を回収した。次いで実験系不明廃棄物を安全に混合した液を検体として、誘導結合高周波プラズマ質量分析(ICP-MS)法でHg, As, Se, Cd, Pb, Cr, B, V, Zn, Cu, Ni, Ba, Mn, Moなどの陽性元素を、燃焼機能付きイオンクロマトグラフ分析法あるいはイオン電極法でF, Cl, Br, I, P, S, Nなどの陰性元素を分析した。分析結果に基づき投入前処理し、11,957本の実験系不明廃棄物(約14,315 kg)を焼却処理した。また、開発した手法をより一般的に適用できるように検討し、焼却処理設備を持たない他の大学や研究機関での実験系不明廃棄物の処理方法として応用することが可能であると結論した。
報告
  • – 化学薬品を使用する現場での安全教育と廃液・廃棄物への対応 –
    荻野 和夫, 片岡 裕一, 川越 みゆき, 雑賀 章浩, 星井 進介
    2013 年 4 巻 1 号 p. 1_39-1_47
    発行日: 2013年
    公開日: 2013/04/23
    ジャーナル フリー
       国立高等専門学校では、大学等と同様に多くの薬品を使用する実験や実習が行われている。しかし、大学と大きく異なるのが、環境安全センター等の薬品管理や廃液処理を専門的に扱う部署がないことである。著者らは、教育を支援するセンターや学科(物質工学科等)等に属し、学生実験・実習・卒業研究等の指導を行っている。また、高専によっては、技術職員が薬品や廃液、廃棄物の管理・処理を行っている。本報では、高専で実際に行われている環境安全教育への取り組みと廃液・廃棄物の処理状況について現状を報告するとともに、今、高専が抱えている問題を明らかにして、今後の課題解決に向けての方向性を示すことを目指す。
  • – アサヒプリテック株式会社 北九州工場 –
    松山 直樹
    2013 年 4 巻 1 号 p. 1_49-1_52
    発行日: 2013年
    公開日: 2013/04/23
    ジャーナル フリー
       アサヒホールディングスグループアサヒプリテック株式会社北九州事業所は、平成19年11月6日に発足後、速やかに安全設備設置といったハード面での対応を行うと共に、当社の環境安全管理手法を、営業課も含めた北九州事業所全体に導入・展開し、ISO14001外部審査員からも高く評価されている。
       北九州事業所におけるISO14001活動のコンセプトは「業との一体化」であり、当社の環境保全の理念、環境方針に基づきISO14001=業務を強く意識したマネジメントを推奨している。一民間企業のISO14001運用において「業との一体化」を目指し、システムの運用と定着を行ってきた中で、収益改善、コスト削減、人材育成、安全体制の確立といったパフォーマンス結果から振り返ると、システムマネジメントの重要さを実感するとともに、ハード・ソフト両面からの対策の一つが欠けても高い評価を得るまでには至らないことが明らかとなった。
       システムの運用と定着には時間がかかるが、「ぶれない軸足と折れない心」を土台として、当たり前のことを当たり前に実行することが重要であり、結果だけでなく社員の動機付けにつながることもポイントである。
総説
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