日本地質学会学術大会講演要旨
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J.ジュニアセッション
  • 宮城県 仙台第三高等学校
    セッションID: J-P-2
    発行日: 2024年
    公開日: 2025/03/27
    会議録・要旨集 フリー

    研究者生徒氏名:張山真聖

     ジオパークとは、地球科学的意義のある地形や景観が保護、持続可能な開発の全てを含んだ総合的な考え方によって管理され、1つにまとまったエリアのことである。宮城県栗原市にある栗駒山麓ジオパークもその1つである。また、ジオサイトとは、ジオパークに含まれる地形や景観のことであり、この地域を特徴づける見学場所である。本研究では、栗駒山麓ジオパークからジオサイトになりうる露頭の解析を通して、新たな見学地を提案する。

     栗原市には、かつて国内最大級の鉛、亜鉛鉱山であった細倉鉱山が位置している。細倉鉱山の鉱床は熱水性の鉱脈鉱床であり、細倉層中に胚胎している。細倉層は新第三系中新統の地層であり、細倉鉱山の鉱床母岩となる重要な地層となっている。細倉層は岩相より下部の層と上部層に区分される。下部層は安山岩質溶岩、火砕岩からなる。上部層は主にデイサイト質火砕岩、溶岩からなり、安山岩質溶岩や凝灰岩質泥岩を挟在する(高橋 1988)。細倉鉱山やその周辺地域については、商業的な観点のみならず地質学的な観点から調査が行われた論文も複数書かれているが、形成過程などの詳細については不明な点が多い。本研究では、当地域の地質調査を通じて凝灰岩の構造や特徴を明らかにすることにより、地史を考察することを目的とし、ひいてはジオサイトとしての魅力を発掘することも視野に入れている。

     細倉地域の地質構造を明らかにするために地質調査を行った。調査の内容は、クリノメーターによる走向傾斜の測定、2万5千分の1地形図への地質構造及び岩相分布の記載と調査地域についての柱状図、ルートマップの作成を実施した。これらの層序および地質構造を解析した。さらに、露頭から採取した岩石について、研磨面の観察および薄片を用いた鉱物の比較を通して岩石学的な比較を行った。

     野外調査の結果、調査地域内において標高200m以下に安山岩が厚く堆積している。その上位に凝灰岩層と安山岩層が交互し、その後、凝灰岩層が主となる様子が確認できた。しかし、凝灰岩と分類した岩石の中でも含まれるれきのサイズや基質部の色や構成鉱物に違いがみられた。同様の標高に位置する岩石でも細粒な黒い鉱物が多く含まれているものや、砂質で黒い物体の貫入を受けているもの、全体的に灰色で非常に細粒なもの、緑の鉱物とオレンジ色の小さな鉱物を含みグリーンタフの可能性があるものなど、採取した場所によって全く外観が異なっていた。また、安山岩層と凝灰岩層それぞれ一箇所ずつにおいて、岩脈のような構造が観察された。

     以上のことから、本地域において、溶岩流の噴出と、その後の凝灰岩の堆積する過程が観察でき、凝灰岩の露頭については多様な形態を確認できる。このことから、本地域の形成課程に関する詳細な活動履歴を復元できる可能性がある。

     今後は採取地点に関する詳細な分布をもとにサンプルの岩石薄片を作成し、鉱物顕微鏡による鉱物組成の観察を通して岩石の成因を解明したい。それによって過去の地球活動が明らかになれば、調査範囲の地層の層序関係が明確になるとともにルートマップと柱状図のより詳細な記載が可能になり、本研究の目的に近づけると考える。

    [参考文献]

    ・高橋洋.細倉鉱床の鉱化変質分帯と生成モデル.鉱山地質,1988

    ・柏木高明.鈴木強,脇田健治.細倉鉱山の地質構造と鉱脈系について.鉱山地質,1971

    ・上野健一.久田健一郎編.地球学シリーズ3 地球学調査・解析の基礎.古今書院,2011

    ・西本昌司.観察を楽しむ 特徴がわかる 岩石図鑑.ナツメ社.2020

    キーワード:栗駒、細倉層、凝灰岩、ルートマップ、ジオサイト

  • 宮城県 仙台第三高等学校
    セッションID: J-P-3
    発行日: 2024年
    公開日: 2025/03/27
    会議録・要旨集 フリー

    研究者生徒氏名:髙木瑚太郎

     宮城県栗原市には日本ジオパークの一つである栗駒山麓ジオパークがある。当ジオパークでは平成20年に起きた岩手・宮城内陸地震による山地災害や河川の氾濫、冷害など、かつてそこで起こった数々の災害を後世に伝える活動を行っている。

     一方で、ジオパーク内には成因や時代区分の詳しく分かっていない露頭が数多く残されている。これらの露頭における科学的な価値を十分に活かし、発信していく必要がある。そこで本研究では、栗駒山麓ジオパークに存在する露頭の解析を通して学術的価値を明らかにし新たなジオサイトとして一般普及させることを目的とし研究を進めた。今回の調査では、栗駒市金成小迫に位置するクロスラミナ構造を持つ露頭を調査対象とした。この露頭は20万分の1地質図「一関」において13Maから8Maごろに形成された上黒沢層に属する砂礫層(凝灰角礫岩を含む)とされているが、露頭に関する詳細は明らかになっていない。

     そこで本研究では、露頭を構成する堆積物をサンプリングし観察を行った。サンプルは構成粒子が比較的大きいラミナと小さいラミナの2つから採取し、ふるいを用いて構成粒子の大きさごとに鉱物の種類や粒子の特徴について差が見られるかを調べた。また砂の粒径の鉱物を観察し、サンプル内の粒子は特徴ごとに分類した。サンプルに多く見られる白い岩片は軽石と推定した。これらの岩片を「シロ」、その中に一つでも有色鉱物が認められたものを「ゴマ」、0.3mm以下の粒子が塊になっているものをと定義した。また、本露頭のラミナの走向傾斜を測定することでかつての水の流れを示す古流向を復元、走向傾斜のデータからステレオネットに投影することで方位解析を行った。

     その結果、それぞれのサンプルにおいて石質岩片「シロ」の割合が76.7%、64.4%、89.7%といずれも構成粒子の殆どを占める結果となった。更に、その他石質岩片「ゴマ」、「集合」も合わせるといずれのサンプルにおいても白色の石質岩片の割合が約9割を占めた。加えてステレオネットによる解析では、ラミナの方向により南東から北西方向(T=N47°W)の水流が推定された。

    これらのことを踏まえ、本地域におけるかつての海流と地形に関する考察を行う。本露頭の形成年代とされている13Maから8Maごろは東北日本の形成が行われた時代であり、Horikawa et al (2018) によると10Ma頃の日本において南東から北西方向の海流の存在が示唆されており、これはラミナから示される古流向と一致した。また、構成粒子について、白色の石質岩片が多くを占め、角ばっていることから侵食作用は進んでいないため、その供給源は、比較的近傍の珪長質の火山ではないかと考えた。この露頭の南側には、松島湾周辺において松島層を形成した火山活動が存在し、それらに関連する火山活動は本露頭の堆積物の供給源である可能性がある。

    [参考文献]

    ・Kozaka, Y., Horikawa, K., Asahara, Y., Amakawa, H., & Okazaki, Y. (2018) Late Miocene–mid-Pliocene tectonically induced formation of the semi-closed Japan Sea, inferred from seawater Nd isotopes. Geology, 46, 903-906.

    ・髙嶋礼詩 松島の地質と地形のなりたち

    キーワード:クロスラミナ、ステレオネット、古流向、栗駒、古環境復元

  • 山形県立 山形南高等学校
    セッションID: J-P-4
    発行日: 2024年
    公開日: 2025/03/27
    会議録・要旨集 フリー

    研究者生徒氏名:

    遠藤 仁南疏(理数科2年)・須田 太志(理数科2年)・高橋 玲桜(理数科2年)・武田 悠希(理数科2年)・峯田 久志(理数科2年)・井村 匠(山形大学理学部)・湯口 貴史(熊本大学理学部)

    (内,発表会参加生徒数 5名)

     山形県山形市の盃山および愛宕山地域は、馬見ヶ崎川中流域に位置し、県内では有名な観光スポットである。本地域周辺に分布する地層は、中期中新世~後期中新世に生じた海底火山活動による火山岩類であるとされる(神保,1965;山形応用地質研究会,2016)。先行研究となる神保(1965)および山形応用地質研究会(2016)では、盃山および愛宕山は火砕岩主体の成沢層(神保,1965)を貫くデイサイト~流紋岩質の火山岩類であるとされている(神保,1965;山形応用地質研究会,2016)。一方、一昨年度に我々が実施した現地踏査では、盃山よりも東部の愛宕山南~南東斜面において、さらに愛宕山を貫く暗色貫入岩の産出が確認された。この暗色貫入岩の産状、成因は先行研究では触れられておらず未詳である。また、愛宕山南東部斜面では軽石質火山礫凝灰岩の露出も確認されたが、この火砕岩の層序や分布についても同様に未詳である。そこで、山形盆地内でかつて生じていた海底火山活動を含む地質形成発達史のより詳細な理解を進めるため、盃山と愛宕山における地質の未解明部分を重点的に調査した。

     新たな現地踏査の結果、愛宕山の南東斜面にて複数の暗色貫入岩が点在していることがわかった。これらは顕微鏡観察より安山岩と判断される。また、愛宕山南東斜面から馬見ケ崎川河床にかけて、愛宕山をなすデイサイト~流紋岩質溶岩を被覆する軽石質火山礫凝灰岩層が分布する。この軽石質火山礫凝灰岩層は、ほぼEW走向の平行層理が発達しかつ軽石が卓越する上部層、および塊状無層理かつ軽石以外の緻密火山岩礫を含む下部層に分けられ、両者の境界部は不明瞭である。下部層にあたる河床部には暗色~暗灰色緻密かつ隠微晶質の安山岩からなる小岩脈がみられ、軽石質火山礫凝灰岩層にも様相の異なる貫入岩の産出が認められる。これらの中にはジグソーパズル状に割れてほぐれ掛けたものが砕屑岩脈をなすこともあり、水冷に伴い自破砕化したものと解釈される。

     以上より、まずこの地域全体がデイサイト質溶岩に覆われ、その後に軽石質火山礫凝灰岩が一部を覆い、対象地域東部に集中して安山岩質マグマが貫入したと推定される。この発見は、先行研究では記載されていなかった本地域の詳細な地質情報を提供するものであり、特に、海底環境であったとされる中期~後期中新世の地質学的プロセスないし地域全体の地質構造の理解を深める重要な手掛かりとなるだろう。今後は踏査地点を増やし、地域の地質情報をさらに明らかにしていくことで、地域の防災対策にも貢献したい。

    引用文献:神保 悳(1965) 山形県の地質. 山形県商工労働部鉱山課, 68.;山形応用地質研究会(2016)山形県地質図(10万分の1)および説明書.山形大学出版会,共栄印刷,25–32.

    キーワード:盃山,愛宕山,軽石質火山礫凝灰岩,貫入岩

  • 新潟大学附属長岡中学校 新潟大学理学部科学人材育成事業
    セッションID: J-P-5
    発行日: 2024年
    公開日: 2025/03/27
    会議録・要旨集 フリー

    研究者生徒氏名:3年 諏佐 和香

    はじめに

     私は、新潟大学サイエンスキャンパス新潟にて「放散虫と糸魚川の大地と日本海の成り立ち」について研究を始めました。今回は、新潟県糸魚川市能生の弁天岩周辺の海水と黒井突堤の海水の試料を手作りのプランクトンネットで採取しプレパラートを作成し観察しました。そして、沖縄の試料と比べて気づいた点やその結果について報告したいと思います。

    研究の方法

     海水の採取の仕方:手作りのプランクトンネットで海水を採取しました。採取の方法は、垂直引きで行います。海底にプランクトンネットが接触しないように気を付けました。プランクトンネットを5回引き上げるとペットボトル1本分になりました。それを6回繰り返します。ペットボトル6本の海水を採取しました。まずは、海水を処理していきます。2023年の8月20日新潟県糸魚川市能登の弁天岩(A地点)の試料ビン5個、2023年11月23日新潟県糸魚川市能登の弁天岩(A地点)の試料ビン6個、2023年10月28日新潟県黒井突堤(B地点)の試料ビン6個、2023年10月28日新潟県糸魚川市能登の弁天岩(A地点)の試料ビン6個、2023年9月23日新潟県糸魚川市能登の弁天岩(A地点)の試料ビン6個、2023年9月23日新潟県黒井突堤(B地点)の試料ビン6個、2023年11月23日新潟県黒井突堤(B地点)の試料ビン6個、2023年12月4日沖縄県瀬底の試料ビン3個。

    ホットプレートで水を蒸発させます。封入材をその上にたらし、カバーガラスでふたをします。自宅では硫酸で処理した不溶残渣と硫酸ではないもので処理した資料を封入材の代わりにレジンを使用したカバーガラスなしのプレパラート作成に挑戦しました。

    観察の結果と反省

     2023年の9月、10月に採取した海水から放散虫が多く発見されました。なぜなのかを調べます。プレパラートの作成では蒸発の加減を見極めるのが難しくどのように判断するかを調べます。実際にプレパラートを作成してみて、工夫するべき点がたくさんあったのでその点を改善していこうと思います。そして、放散虫以外にも珪藻や有孔虫などがいるので観察をしていこうと思います。

    キーワード:放散虫、弁天岩、黒井突堤、瀬底、形

    Radiolarian, Benten Iwa, Kuroi Jetty, Sesoko, Shape

  • 新潟大学附属長岡中学校 新潟大学理学部科学人材育成事業
    セッションID: J-P-6
    発行日: 2024年
    公開日: 2025/03/27
    会議録・要旨集 フリー

    研究者生徒氏名 3年 板垣 成俊

    1. はじめに

     「放散虫」は、海の中を漂いながら生活する動物プランクトンである。とても小さな単細胞の生物で、アメーバ状の体の中に、40~400㎛程度のガラスの骨格がある。生息した時代により骨格の形態が異なり、その変化が速いため、重要な「示準化石」と言われている。

     私は、2021年の新潟ジュニアドクター育成塾ドクタープログラムで「生きている放散虫」の研究を開始し、現在もサイエンスキャンパス新潟の受講生としてその研究を継続している。

    研究3年目の昨年度は、今までで一番多い38個の放散虫を見つけることができた。いろいろな種類の放散虫を発見することが出来て嬉しかったのだが、それらの飼育につなげることができなかった。(参考資料として昨年までの経過表を添付した。)

    研究4年目となる今シーズンも「生きている放散虫を捕まえて飼育観察すること」を目標に、新潟県出雲崎町での海水サンプリングに取り組んでいる。放散虫は「殻」にならないと種の同定が出来ない。今年は自分で捕まえた放散虫の種の同定も行いたいと考え、捕まえた放散虫の標本作製にも挑戦している。

    今シーズン捕まえた放散虫など、これまでの研究結果について報告する。

     

    2. 研究の方法など

    ① 新潟県出雲崎町の海岸(水深約5m)からプランクトンネットを用いて日本海の海水を採取。採取場所を固定し、月に2回程度サンプリングを行う。

    ② サンプリングから帰宅後、採取した海水を倒立顕微鏡で観察し放散虫を探す。

    ③ 生きている放散虫を捕まえたら、自宅で飼育・観察を行う(仮足が確認できなくなり、死亡と判断するまで)。

    ④ 捕まえた放散虫の種を同定するため、死亡と判断した放散虫の個体を「殻」にして標本作製を行う。

    3. 研究結果

    今シーズン(2024年)はこれまでに7回のサンプリングを実施している。初回のサンプリング試料からナセラリア目の放散虫を12個体発見した。全個体とも発見時から仮足が見えず、生存していると判断ができなかった。その後、アカンタリア目の放散虫を多数発見することも出来た。しかし、まだ飼育研究に結び付く放散虫個体は発見できていない。

    4.おわりに

     今シーズンは、初回のサンプリング試料から大好きなナセラリア目を発見することができた。とてもラッキーだと感じている。今後もサンプリングと観察を継続し、飼育観察につながる放散虫個体を捕まえたい。

     私は4年前の研究開始時から、「生きている放散虫を自分で捕まえて、飼育すること」を目標に研究を続けている。たくさんの種が存在し、示準化石でもある放散虫。放散虫を捕まえて飼育方法が確立できたら、放散虫の生態についてもっと知ることが出来る。それは、地球環境について知ることにもつながると思う。わからないことだらけで、とても大変な研究であるが、できることから一つずつ挑戦し続けていこうと思う。

    キーワード:放散虫 日本海 プランクトンネット 光学顕微鏡 UVレジン

  • 新潟大学附属長岡中学校 新潟大学理学部科学人材育成事業
    セッションID: J-P-7
    発行日: 2024年
    公開日: 2025/03/27
    会議録・要旨集 フリー

    研究者生徒氏名:1年 板垣 礼子

    1. はじめに

    放散虫は、ガラスの骨格を持つ動物性プランクトンです。およそ5億年前に出現し、その骨格の形を変化させながら進化を続け、現在も海の中で生き続けています。ガラス質の骨格のために個体の数が多く化石になって残りやすいことなどから、放散虫は地層の年代を決めるのにもとても役立つそうです。 

     私は2023年、「自分で採取した岩石から放散虫を見つけたい!」と、新潟ジュニアドクター育成塾ドクタープログラムで、松岡篤先生のご指導のもと放散虫化石の研究を始めました。まず、地層探しを行い、岩石の採取、自宅でのプレパラート作製、そして顕微鏡観察を行いました。

    その結果、私が採取場所に選んだ「新潟県長岡市落水」の泥層試料から放散虫化石を4個発見することができました。たった4個でしたが、見つけることができて本当に嬉しかったです。(添付の写真は、私が最初に発見したスプメラリア目放散虫化石です。)

    2年目となる2024年はサイエンスキャンパス新潟の受講生として現在もこの研究を続けています。

     今回は、昨年見つけた地層からさらに試料を採取し観察を行っているので、その結果も含めた研究結果を報告します。

     

    2. 研究方法

    (1)岩石採取

    ・新潟県長岡市落水に露出している地層から砂や岩を4か所採取。(地層のどの部位から採取したか分かるように記録する)。

    (2)試料処理と標本作製

    ・試料をハンマーなどで細かく粉砕し、水を使ってほぐし、洗浄する

    ・プランクトンネットを用いて濾過し、固形物に少量の水を加えて試料とする

    ・温めたフライパンの上に洗浄したスライドガラスを置き、試料をシリンジで滴下し、水分を十分に蒸発させる

    ・試料が乾燥したら、スライドガラスをフライパンから下ろし、UVレジン液を泡が立たないように静かに滴下し、試料全体をレジン液で封入する

    ・市販のUVライトでレジン液を十分に固化させて、標本の完成

    (3)光学顕微鏡で観察

    ・出来上がった標本を倒立顕微鏡で観察する

    ・放散虫化石を探す

    3. 研究結果

     昨年採取した試料と、今年新たに採取した試料の観察を行っているのですが、わずかに珪藻が見つかるのみ。現時点では新たな放散虫化石を発見できずにいます。

    4.おわりに

    私が採取した試料では、砂層よりも泥層の方が珪藻も多いので、泥層の観察を重点的に続けています。それでもなかなか放散虫を見つけることができません。実際にはもっと放散虫が含まれているはずだと思うのですが、私がまだ自信をもって放散虫化石を見分けることができていないのも見つからない原因の一つです。これからも、もっとたくさん観察を続け、経験を積む必要があります。

     なお、UVレジン液を用いた標本作製については、自宅でも十分可能であることがわかりました。UVレジン液の厚さを均等にして見やすいスライドを作製するのが今後の課題です。カバーガラスを使ってみるなどの工夫をしてみたいと思います。標本として固める前の水を含んだ状態での試料をシャーレに移し、顕微鏡観察すると放散虫化石が探しやすくなることもわかりました。

     これからも顕微鏡観察を続けて新たな放散虫化石を見つけてみたいです。そして、同じ落水の地層を各層ごとにサンプリングして、それぞれの地層の違いも観察できたら楽しいだろうなと考えています。

    キーワード:放散虫 地層 新潟県長岡市 UVレジン液 光学顕微鏡

  • 國學院大學 栃木高等学校
    セッションID: J-P-8
    発行日: 2024年
    公開日: 2025/03/27
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    研究者生徒氏名:髙森 亜門

     栃木県佐野市の葛生地域に分布するペルム系石灰岩は葛生石灰岩とよばれ、下位の出流層と上位の鍋山層から成る。出流層は玄武岩質溶岩や凝灰岩が主体で、鍋山層はさらに、下部石灰岩部層、ドロマイト岩、上部石灰岩部層に区分される(柳本,1973)。

     今回の発表は、日本古生物学会第173回高校生ポスターセッションにて発表した際に調査した吉澤石灰工業および住友大阪セメントの鉱山内のほか、山菅、大釜に加え、栃木市出流町、埼玉県小鹿野町の二子山、秩父市の武甲山も加え、計12地点のサンプルを採取した。得られたサンプルは岩石カッターを用いて切断し、計222枚の岩石薄片を作製した。顕微鏡で薄片の中のフズリナや微化石を観察し、その種類を同定した。また、石灰岩の岩相も併せて解析することで、堆積環境を推定した。山菅、大釜、出流、二子山、武甲山では、薄片のサンプルが少ない点や状態等により、石灰岩を酢酸で溶かし、その残渣からの観察も試みた。

     吉澤石灰工業で調査した場所のうち、最下部と推定される地点には凝灰岩が見られた。この部分は出流層に相当し、海底火山噴火により作られた海山の土台であると考えられる。その上位には石灰岩がみられ、Parafusulina kuzuensis、Parafusulina yabei などのフズリナが観察できた。これらのフズリナの産出から、この層準は下部石灰岩部層だとわかった。しかし、その地点とは別の層ではParafusulina japonicaが産出していたため、上部石灰岩部層も分布すると分かった。フズリナの間は泥サイズの細かい堆積物が埋めていることから、静穏ではあるがフズリナくらいの大きさの粒子が運搬されてくる波浪環境になっていったと考えられる。住友大阪セメント鉱山内で採取した9サンプルはすべて灰色で、粒子が細粒砂ほどの大きさである岩相であった。また、Parafusulina japonicaが一部の層から産出するため、上部石灰岩部層とわかった。これらのサンプルが示す堆積環境としては、波浪の影響が少なく生物が多い浅瀬、あるいはその近くであった可能性が高い。山菅では、Parafusulina yabeiが観察できたため、下部石灰岩部層と分かり、珊瑚が観察できたことから、温暖であり、水深は比較的浅いと考えられる。大釜では、山菅と同様にParafusulina yabeiが観察できた。また、多くの腕足類やコケムシなど、非常に多くの種類が観察できた。出流では、フズリナは観察することができなかったが、四射サンゴが観察できた点から、山菅同様に温暖であり、水深は比較的浅いと考えられる。また、12地点で唯一サメの歯が観察できた。二子山では、Daixina sokensisが観察できたため、石炭紀後期だと考えられ、武甲山では、Triticitesが観察できたため、ペルム紀前期と考えられる。

     本研究は以上のそれぞれの地点の特徴を踏まえ、葛生地域と秩父地域を比較し、葛生石灰岩の環境を推定した。

    キーワード:葛生、秩父、フズリナ、岩相、環境推定

  • 中央大学 附属高等学校
    セッションID: J-P-9
    発行日: 2024年
    公開日: 2025/03/27
    会議録・要旨集 フリー

    研究者生徒氏名:朝倉悠晴

    1. はじめに

    圧電効果(ピエゾ効果)とは.1880年にキュリー兄弟が石英やトルマリンなど多くの結晶で圧力により電荷が生じることを発見し,この現象に名付けたものである.今日,圧電効果はライター,ラウドスピーカー,信号変換器など数多くの日用品で利用されている.

    この現象を用いて,本研究では岩石中に石英を含むものを判別し,さらに石英の含有率の推定が可能かどうかを検証することを目的とする.なお,圧電効果については資料[1]を参考にしている.また石英などの破壊による発光の色に関しては,三井・柳谷(2012)[2]や、簡易的な岩石の発光研究として石川県立七尾高校(2021)の研究例[3]などの先行研究がある.

    2. 研究目標

    圧電効果を用いた岩石の種類の鑑定が可能かどうかを検証する.

    3. 実験方法

    はじめは,一定の力で擦り合わせることのできる装置を作ろうと考えたが,岩石が重すぎ固定するのが難しかったため,実験は全て手動によって実施した.

    実験方法

    22種類の岩石(図1)を用いて,暗い場所でそれぞれの組み合わせで各10回ずつ擦らせ,発光回数を計測した.なお,実験に用いた岩石資料は,入間川周辺・多摩川周辺・筑波山周辺で採集したもの及び各地にて購入したものである.

    実験1

      22種類の岩石に対して水晶を10回ずつ擦らせ,その発光回数を記録した.(表1)

    実験2

      22種類の岩石に対してガラスを10回ずつ擦らせ,その発光回数を記録した.(表1)

    実験3

      22種類の岩石同士を組み合わせで10回ずつ擦らせ,その発光回数を記録した.(表2)

    4. 実験結果と考察

    4.1.1 実験1および実験2

     結果は表1による.

    4.1.2 結果と考察1

     はじめは水晶に含まれるSiO2(二酸化珪素)が原因だと考えたが,実験より同じSiO2が素材であるガラスと岩石を擦らせたところ,発光しなかったためSiO2を含むもの全てが発光するものではないことがわかった.

     これは,ガラスが非結晶であることに関わると思われる.

    4.2.1 実験3

    結果は表2による.

    4.2.2 結果と考察2

    岩石同士を擦らせたところ,SiO2が結晶化してできた石英が多く含まれた岩石同士だと確率高く発光した.そのことから岩石同士の発光具合が含まれる石英の量の違いが原因であると考えられ、岩石鑑定の方法の1つとして利用可能であると考えられる.

    5. 今後の課題

     石英と似た構造をした鉱物,およびこれを含む岩石を用いても発光するのかについて実験することで,発光の原因が結晶の構造の違いにあるかどうかについて考える.

    参考文献

    [1].TDK ピエゾ技術の基本. https://www.tdk.com/ja/tech-mag/knowledge/089 (参照2024.6.20)

    [2].三井雄太・柳谷俊,2012,珪岩・水晶・溶融石英の破壊に伴う発光の色について-結晶の圧電性の寄与-.北海道大学地球物理学研究報告,pp109-115.

    [3].石川県立七尾高等学校,2021,石の発光と石の硬度や含まれる鉱物との関係.https://10th-wpisymposium-nanolsi.jp/assets/img/details/pdf/p-27.pdf

    キーワード:圧電効果 石英 岩石鑑定

  • 中央大学 附属高等学校
    セッションID: J-P-10
    発行日: 2024年
    公開日: 2025/03/27
    会議録・要旨集 フリー

    研究者生徒氏名:大原遼人

    1. はじめに

    蜃気楼とは空気中の屈折率の勾配による光の屈折により,物体が反転したり歪んだりした虚像が見られる大気光学現象である.空気中の屈折率は主に気温によって変化する.蜃気楼には上方蜃気楼,下方蜃気楼,側方蜃気楼の3種類あるが,これらは光の屈折の向きに違いはあるものの原理はすべて同じである.今回の再現実験及び分析では上方蜃気楼を対象とした.

    静岡県立清水東高等学校自然科学物理班(2009)のような実験で再現した際の光の軌跡を図示するというものがある.一方,本研究では理論的計算により蜃気楼における光の軌跡をエクセル上で描き,ショ糖水溶液を用いた再現実験における光の軌跡との比較を行った.

    2.研究背景・目的

    本研究の目的は蜃気楼の発生予測プログラムの作成である.そこで,蜃気楼における光の軌跡の理論値計算,並びにショ糖水溶液を用いた再現実験との比較によりその正確性の確認を行った.次に空気中での蜃気楼の再現を行い理論値計算との比較を試みた.

    3. 溶液を用いた再現実験

    1)屈折率が1.33から1.42の間で等差となるような8つのショ糖水溶液(0,8,16,24,31,37,44,50重量%)を作成する.

    2)作成したショ糖水溶液を屈折率の低い方から注射器を用いて水槽の底へ静かに入れ,同じ厚みである8層のショ糖水溶液からなる水槽を作る.

    3)最下層から角度をつけて緑色のレーザー光を入射させる.水槽側面に対する入射角5度から5度ずつ増加させ,水面における光の全反射が発生するまで計測をする.(図1)

    4)レーザー光の屈折後の座標を計測する.角度はレーザーポインターの側方にスマートフォンを付け測定した.

    4. 理論値計算

    ある区間が極めて多層に分割されていると仮定し,その層ごとに屈折率が異なり,且つ屈折率がグラデーション状になっている場合を想定する.エクセルを用いて各層間における光の屈折による光の角度の変化,及び進んだ距離を算出する.その算出した結果を用いて光の軌跡を図示する.また,先の再現実験との比較をするため,光の屈折後の座標を明らかにする.

    計算はスネルの法則を利用して行った.理論上,光の軌跡の最上部において光が水平になる.光が水平になるとその後水平に進んでしまい計算が続かないため,光の入射から光が水平になるまでと光が水平になった後の2つに分けて計算を行い,図示の段階で合成した.(図2)

    5. 空気中における再現実験

     ホットプレートを300℃に加熱し,その150㎜ほど上部に-15℃にした保冷剤を設置する.それらの間にレーザー光を入射させ,線香の煙を利用し,レーザー光の道筋を可視化する.(図3)

     図4は光の軌跡の一部を拡大したものであり,赤線は蜃気楼未発生時(温度差を生じさせていないとき),緑線は蜃気楼発生時の光の軌跡である.

     図4において赤線と緑線にずれが生じていることから蜃気楼が発生していたことが分かる.

    6. 考察・今後の展望

    空気中の再現実験において光の屈折がかなり小さく,理論値計算との比較が出来なかった.

    今後はホットプレートと保冷剤との距離を小さくすることや保冷剤の代わりにドライアイスを利用することで温度勾配を大きくする改善を試みる.また,曲がり方の定量化の方法を再検討する.

    蜃気楼の原理を利用した空気の温度分布の計測方法を模索する.

     

    参考文献

    静岡県立清水東高等学校 自然科学部物理班,2009.光線追跡による蜃気楼モデルの解析.

    キーワード:蜃気楼 光の軌跡 再現実験 ショ糖水溶液 温度差

  • ★日本地質学会ジュニアセッション奨励賞★
    中央大学 附属高等学校
    セッションID: J-P-11
    発行日: 2024年
    公開日: 2025/03/27
    会議録・要旨集 フリー

    研究者生徒氏名:鶴田拓海

    1. はじめに

    私は2023年カナダのイエローナイフにおいて天然の雪の観察を行い,雪の幾何学的な結晶構造と天然ものゆえのノイズに魅了された.これを人工的に再現したいと思った.先行研究[1][2]などによると,雪結晶を再現する方法としては低温室を用いたものやペットボトルとドライアイスを用いたものなどがある.だが,低温室は高価かつ数が少ないという難点が,ペットボトルを用いた方法では多様な雪結晶を再現することはできないといった課題がある.そこで,高校でも実行可能な安価かつ多様な雪結晶を再現できる装置の開発を研究目標とした.

    2. 雪の形成メカニズム

    地上で暖められた空気は空気塊を形成して上昇する.地上と比べ高度が上がるにつれ気圧が下がるため,空気塊は膨張し温度が下がる.そうすると,空気中に溶けていた水蒸気が空気中に存在する微粒子を核として析出し,氷晶や水滴を形成する.この時,氷晶の形状は,周囲の気温と水蒸気量を変数として変化する.特に水蒸気が多い場合,氷晶と水滴間に水蒸気的な飽和度の差が生じ,空気を介した水分の急速な譲渡が行われ氷晶が発達する.これらのことから,人工雪を再現するにあたって必要な条件は氷晶と過冷却水滴が共存できる環境にあることがわかる.

    3. 人工雪発生装置

    3.1開発

    多様な雪結晶を再現するには気温と水蒸気量を任意に変化させられる装置が必要である.そこで我々は次のような装置を開発した.冷凍庫内部に設置したプラスチック球内にゴムチューブを介して温度を制御した水蒸気を送り込み,線香の煙を凝結核として加え,半球内で対流を起こすことにより雪結晶が成長することを期待する装置である.(図1)

    3.2実験

    この装置を用いてフラスコ内の水温(3℃・4℃・5℃・6℃)と時間(10分・20分・30分)を変数とした対照実験を行った.結果は,六花状のもの,針状のもの,氷枝が単独で存在しているもの,複数の結晶がくっ付いたものなど,実に多彩な結晶を作り出すことができた.(図2はその一例である)

    3.3 考察

    水温を1℃変えるだけで得られた氷晶の種類に大きな変化があった。これは、過冷却水滴の飽和水蒸気圧曲線と氷晶に対する飽和水蒸気圧曲線の差がもたらしたものと解釈される。

    また,時間を変えた時の氷晶の成長速度は加速度的になる.氷晶の周りの空気の体積とくっつく水蒸気の量が比例しているためだと考えられる.ただし、どの段階から過冷却水滴から氷晶に対する水蒸気の譲渡が行われているかは不明である.また、氷に対する飽和水蒸気圧の有効半径がどの程度なのかを今後調べる必要がある.

    4.今後の展望

    今後の展望として,より細かな温度設定や水蒸気量の定量化を行っていきたい.

    参考文献

    [1]亀田貴雄・舘山一孝・百武欣二・高橋修平・遠藤浩司・関光雄,2009,学校教育における雪結晶生成実験-北見工業大学の物理学実験での実施例-.雪氷,71,4,263‐272

    [2]平松和彦,1997,ペットボトルで雪の結晶をつくる.1997年度日本雪氷学会全国大会講演予稿集,216.

    キーワード:人工雪 対流 過冷却水滴 冷凍庫 氷晶

  • 市川学園 市川高等学校
    セッションID: J-P-12
    発行日: 2024年
    公開日: 2025/03/27
    会議録・要旨集 フリー

    研究者生徒氏名:児嶋悠斗

     大路池は太平洋北西部,伊豆諸島三宅島の南部に位置する約2500年前の噴火口にできた(津久井ほか,2005)海水との交流はない淡水の湖沼(新井ほか,1977)である(図1C).

     新井ほか(1977)は池の水と海水のイオン組成をキーダイアグラムで表したことから異なる組成であることを発見し,池の水と海水の交流がないことを証明した(図2).新井ほか(1977),新井(1978),青木ほか(1984)は大路池が地下水の露頭であり,水収支は地下水でのみ行われていて,地表からの河川などによる流出入はないことを示唆した.小寺ほか(2014)は大路池を含む三宅島の陸水の水質が火山の影響を多く受けていることを示唆した.佐藤ほか(2020)は地下水と海からの塩によって水質が形成されていることを示唆した.

     そこで本研究では火山や海水,地下水が大路池の水質に与える影響を解明し,大路池の水理特性を明らかにすることを目的とする。そのために2024年1月17日に予察的に調査を行った.また2024年7月下旬にも現地調査を行う予定である.

     2024年1月17日の調査の結果,Loc.6で他の5か所に比べ水温の変化が小さく,pH,電気伝導度,Na⁺濃度の値が低くなった(図3~6).このような観測結果となった原因として9世紀に雄山から大路池北西部付近まで流れ込んだ玄武岩質溶岩流(津久井ほか,2005)の内部を水が通って大路池内に流入したこと(図7),池の底部と表層部の密度の違いから内部で水の流れが発生したこと,風によって池に水の流れができたことなどが考えられる.土(2017)は富士山で玄武岩質溶岩流内部から湧水が湧出することを発見している(図8).これは大路池付近の溶岩流内部を水が通って池に流入している可能性を示唆する.

     今後は2024年1月及び7月の調査により得られたデータを基に考察を行い,本学会にて発表する予定である.

    <参考文献>

    青木滋・新藤静夫・茅原一也(1984)三宅島火山島の地下水.火山第2集第29号(1984),三宅島噴火特集号,S324〜S334頁;アジア航測株式会社「赤色立体地図」;新井正・森和紀・高山茂美(1977)三宅島の陸水について. 陸水学雑誌. 38, 1, 1-8.;新井正(1978)三宅島・大路池の水収支.地理学評論.51-9,704〜720;小寺浩二・濱侃・斎藤圭・森本洋一(2014)名水を訪ねて(106)伊豆諸島の名水. 地下水学会誌. 56-3, 237~249.;佐藤篤来・松本達志・小寺浩二・猪狩彬寛・矢巻剛(2020)三宅島における火山活動の影響を考慮した水環境の変化に関する研究(1). 2020年度日本地理学会春季学術大会講演要旨集P167.地質図Navi.三宅島火山地質図.産業技術総合研究所地質調査総合センター;津久井雅志・川辺禎久・新堀賢志(2005)三宅島火山地質図.独立行政法人産業技術総合研究所地質調査総合センター,火山地質図12,三宅島火山;土隆一(2017)富士山の地質と地下水流動.地学雑誌126(1) 33-42.

    三宅島,大路池,水質,溶岩流

  • ★日本地質学会ジュニアセッション奨励賞★
    名古屋高等学校 名古屋中学校
    セッションID: J-P-13
    発行日: 2024年
    公開日: 2025/03/27
    会議録・要旨集 フリー

    研究者生徒氏名:牧野 航大(Kouta Makino)・堀越 健太郎(Kentaro Horikoshi )・鈴木 凜士(Rinto Suzuki)・足立 健人(Kento Adachi)

     宮川他(2021)は愛知県知多半島南西に存在する内海断層が中新世に半地溝をつくる正断層としてはたらいていたとし,地下半島地下の基盤上面が内海断層側つまり南西側に傾くモデルを提唱している。我々は,当時内海断層の北東側で堆積した師崎層群が層理面を北東側に傾けていたことを示す堆積構造の変形を発見した。海中断層である内海断層のおよそ450m-550m北東側にあたる,南知多町豊浜坂井地先の師崎層群豊浜層分布域である海岸を2021年より調査している。海岸の潮間帯には1.5mを超える高さの海食崖が2つある。2021年・2022年の調査では国道側の海食崖からは生痕や斜交葉理や荷重痕など多くの堆積構造が観察された。しかし,沖側の海食崖からは上部の一部に斜交葉理と平行葉理が観察されただけで,多くの部分で堆積構造が見つかっていなかった。沖側の海食崖は国道側の海食崖に比べて観察可能時間が短く,生物を壁面から除去するのに手間が掛かり,観察できた面積が狭かったために堆積構造が見つけにくかった。そこで,沖側海食崖を2023年3月より追加して調査した。調査日程は 2023年3月24日,2023年3月25日,2024年3月27日,2024年3月28日,2024年6月8日,2024年6月22日の6日間である。沖側の海食崖の下部が水面上に出ている時間帯に現地調査により海食崖の生物に覆われていない部分を探して,露頭の表面に出ている岩石を観察・記録した。白色の粒子,および黒色の自形を示す鉱物粒子を火山噴出物(火山灰)と判定し,それ以外を砕屑物と見なし,粒径はルーペによる観察で,体積で50%以上を占める代表的な粒子を選定し,その粒子が1mmの間に何個並べられる大きさであるか見積もり,記録した。想定した堆積構造は平行葉理,斜交葉理,その他の葉理,漣痕,生痕,荷重痕,火炎構造,コンクリーション,であり,それらの堆積構造および化石が認められた場合は記録することにしていた。その結果,荷重痕が並ぶ層準が沖側海食崖から3層準見つかり,さらに,3層準とも荷重痕が非対称変形していることが判明した。露頭の壁面が南南西を向いており,上位・中位・下位どの荷重痕も左手前に飛び出した部分がくるように変形している。斜面の剪断変形によって荷重痕が変形する場合,傾斜方向の反対側に荷重痕が飛び出すように変形するため,変形当時の層理面はおおむね北東から東の方向に傾いていたことになる。中位の変形荷重痕の飛び出しを使って傾斜方向を測定すると,傾斜方向はN60度Eとなった。また,上位の変形荷重痕の直上に見られる漣痕とその下の斜交葉理から堆積当時の古流向を測定するとS65度Eとなった。北西から南東に延びる内海断層の北東500mの地点の海食崖で師崎層群豊浜層にN60度Eの方向に層理面が傾斜していたことを示す変形荷重痕を見いだしたことから,豊浜層堆積時の堆積盆の中心は内海断層の北東500mよりもさらに北東側にあったことがわかる。タービダイトが堆積した当時の古流向は斜面の傾斜方向と斜交するS65度Eで,内海断層に沿って,北西から南東へと向かう流れであった。傾斜方向と流向が斜交する原因は,内海断層が急崖をつくっていて,それに沿う流れが卓越しやすい地形であったからと思われる。上位と中位の荷重痕は二村(2020)が南知多町長谷崎の豊浜層から報告したものに形態と大きさが類似しているが,二村(2020)は変形に系統性がなく変形時の層理面に傾斜がなかったとしている。この違いは,長谷崎の方が内海断層から離れており,堆積盆中央に近かったからではないか。

    キーワード:師崎層群,荷重痕,内海断層,変形,堆積構造

  • ★日本地質学会ジュニアセッション優秀賞★
    兵庫県立姫路東高等学校 科学部地学系研究部マグマ班
    セッションID: J-P-14
    発行日: 2024年
    公開日: 2025/03/27
    会議録・要旨集 フリー

    研究者生徒氏名:稲本晴香、陰山麻愉、永野千世、藤田詩桜、松田理沙、村尾倖生、横山桃子、石井漸、岡本莉空、永井翔、中田天晴、中村賢矢、冨士佳蓮、前川司、辻本ゆき乃、西川大貴、藤本知真、山口歩珠

     オーストラリアのニュー・サウス・ウエールズ州南東部沿岸Bingi Bingi Pointは複合深成岩体の一部をなし、古生代デボン紀末期の2種類の異なるマグマが十分に混ざりあうことなく、不完全な混入のようすを残して固結している。筆者らは5日間にわたって露頭調査を行い、岩石分布図を作成するほか岩石試料の採取を行った(図1)。

     本地域は主に閃緑岩からなっており、それをトーナル岩が包み込むように固結している。閃緑岩にはトーナル岩からのびるマグマ残液の支脈が多くみられるほか、トーナル岩中にブロック状や紡錘形に周囲が融解して引き延ばされた形状の閃緑岩の捕獲岩が、2つの岩体の接触面に沿って一方向に配列している。閃緑岩やトーナル岩を同質マグマから生じたアプライト脈が貫入している。最後に玄武岩の貫入が数度起こった。

     トーナル岩からのマグマ残液の支脈の影響を受けている閃緑岩の角閃石の淡緑色リム部から、結晶のc軸方向に発達した波状累帯構造が多数発見された(図2)。波状累帯構造は幅数μm程度の細い帯が波動のように繰り返す構造で、マグマ残液中の熱水によって形成されることが知られている。外側の帯が内側の帯を切るように形成されていることや、異なる角閃石の結晶に平行に連続するような形状で形成されていることから、結晶の外から数度にわたる熱水の循環があったことを示している。波状累帯構造は淡褐色コア部にはみられない。一方、閃緑岩体中央部の角閃石の淡緑色リム部からも波状累帯構造が発見されるが、それらはいびつな形状に発達したパッチー累帯構造の間隙に発達しており、閃緑岩自身の豊富な熱水が激しく循環したことを物語っている。波状累帯構造は淡緑色リム部と自形の磁鉄鉱が共存しているほか、角閃石の外縁部にはスフェーンがみられることから、淡緑色リム部とそこに発達した波状累帯構造は酸化的環境下の熱水残液の循環によって形成されたと考えられる。

     角閃石の波状累帯構造の成分分析の結果は、Ⅰ型Edenite型を中心とした組合せ置換が優勢である。また、マグマ分化過程下で結晶化した角閃石には見られず、マグマの飽和・脱水による熱水残液によって置換された角閃石に特徴的とされる、AlVIが0.6以下の値を示す。そのほかさまざまなイオン置換の特徴は、酸化的環境下における二次再平衡を経験した深成岩類と共通であり、角閃石のリム部がさまざまな激しさの熱水残液循環の影響を受け、波状累帯構造やパッチー累帯構造を形成したと考えられる。西南日本における先行研究において、角閃石の波状累帯構造が二次的な熱水残液の循環によって形成されたことが示されており1)2)、本研究においても、角閃石の波状累帯構造はマグマ分化過程末期の環境を示す指標になる。

    1) Kawakatsu,K. and Yamaguchi,Y.(1987)Geochim.Cosmocim.Acta.Vol.51, 535-540.

    2) 兵庫県立姫路東高等学校科学部(2023)日本地質学会第130 年学術大会(2023京都大会)要旨

    キーワード:熱水残液、波状累帯構造、パッチー累帯構造、組合せ置換、サブソリダス

  • 愛媛大学 附属高等学校
    セッションID: J-P-15
    発行日: 2024年
    公開日: 2025/03/27
    会議録・要旨集 フリー

    研究者生徒氏名:Monyakova Parvez Masako , 斎藤遙香

     本研究の試料採集地でもある関川は愛媛県四国中央市を流れる河川で、その流域には上流に位置する 東赤石山から運搬・堆積された最高変成度の三波川変成岩類が見られる。その中には、日本地質学会によって愛媛県の「県の石」 に選定されており、日本では主に同地域において産出するエクロジャイトという希少な岩石も存在する。本研究では、当該地域において採集した複数の岩石に対してX線粉末回折実験や走査型電子顕微鏡による観察・分析を行い、それらの岩石が形成された経緯を推定した。

    キーワード:関川,エクロジャイト,ざくろ石,累帯構造,透輝石角閃岩,X線粉末回折実験,走査型電子顕微鏡

  • 熊本県立 宇土高等学校
    セッションID: J-P-16
    発行日: 2024年
    公開日: 2025/03/27
    会議録・要旨集 フリー

    研究者生徒氏名:徳丸 亮汰 小林 瑞 本田 琢磨 新宅 草太 米田 直人 村上 聖真 吉田 大暉 西川 幸輝 徳丸 幸樹 堀田 舞衣 橋本 直大 西田 琉花

    1 背景・目的

    蜃気楼の一種とされる不知火現象の研究を進める中で、浮島現象も蜃気楼であることを知った。そこで、不知火より発生しやすい浮島を観測し、より浮いてみる浮島の発生・観測条件を明らかにしたいと思い研究を始めた。

    これまでに浮島の発生・観測条件として以下の3つを明らかにした。①観測点が低い、②海水温と気温の差が大きい③適切な距離である。

    今回の研究目的は、以下の3つである。

    ①観測、再現実験により浮島の発生・観測条件を探る

    ②シミュレーションにより浮島の発生原理を確認する

    ③風による蜃気楼への影響を明らかにする。

    2 研究内容

    A 浮島の発生、観測条件

    ①野外観測

    宇城市不知火町永尾から大島を対象に観測を行った。観測では①夏と冬の違い、②朝と昼の違い、③海岸と観望所の違い、④距離による違い、この4つを比較した。今回観測から浮島の発生・観測条件は①冬(12、1月)の早朝、②海面に近い場所(満潮時の海岸)、③対象まで10km程度ということが分かった。

    ②再現実験

    シリコンラバーヒーターやカメラ温度調節器などを用いて浮島再現装置を作成し、室内で浮島現象の再現を行った。実験から①ヒーターの温度が高いほど浮いて見える、②観測点の高さが低いほど浮いて見えるということが分かった。しかし、ヒーターの温度が高くても観測点の高さが高かったらあまり浮いて見えなかった。このことから、観測点の高さが大きく影響していることがわかり、観測でもこのことを確認することができた。

    ③光が屈折する範囲

    浮島の再現実験において、ヒーターは長ければより浮いて見えるのか、それとも一部だけで十分なのか。装置でヒーターの位置、観測点の高さを変えて浮き具合を調べた。実験から①下位蜃気楼の観測には対象付近の気温差が重要であること、②観測点の高さが高くなると光が屈折する場所が対象側に近づくということが分かった。

    B 浮島の発生原理

    ①温度層の測定

    ヒーターの温度によるヒーター上の気温の鉛直分布を高さ1mまで計測した。すると、ヒーターの温度が高くなると気温変化する空気層の厚さが厚くなった。温度変化による密度差で光は屈折するため、蜃気楼が発生する。

    ②シミュレーションによる説明

    実際に観測した状況を再現するために温度プロファイルを作成し、独自のシミュレーションを用いて光路計算を行った。すると、見るものの高さによって見え方が異なることわかり、また、観測点の高さが低いほど消失部・反転部が拡大し、より島が浮いて見えることが分かった。

    C 風による影響

    再現装置やシミュレーションを用いて風による蜃気楼への影響を調べた。実験は扇風機を用いて①無風、②微風、③弱、④中、⑤強の5つの強さの風を流して行った。実験を行うと、風が強いほど浮き具合が小さくなった。次に、OpenFOAMを用いて流体のシミュレーションを行い、風速①0m、②1m、③1.5m、④2mにおいての温度層の発達を観察した。結果、温度層の厚さは1m>1.5m=2m>0mとなり、浮き具合も1m/sで最大となった。実験とシミュレーションの結果が異なったのは、実験における風が強すぎたためだと考える。

    3 まとめ

    ①発生・観測条件

    (1)気温と海水温の差がある…12~1月の早朝

    (2)観測点の高さが低い…満潮時の海岸

    (3)適当な距離がある…10㎞程度

    (4)対象付近の温度差が重要

    ②発生原理

    (1)見るものの高さにより見え方が違う

    (2)観測点が低いとより浮いて見える

    ③風による影響:風速1m/sで浮き具合が最大となる

    キーワード:浮島現象、蜃気楼、シミュレーション、再現実験、温度層

  • 熊本県立 宇土高等学校
    セッションID: J-P-17
    発行日: 2024年
    公開日: 2025/03/27
    会議録・要旨集 フリー

    研究者生徒氏名:米田 直人 村上 聖真 吉田 大暉 西川 幸輝 徳丸 幸樹 堀田 舞衣 橋本 直大 西田 琉花

    1 はじめに

    私たちが暮らす宇土半島を含む有明海沿岸は江戸時代に日本で最大級の自然災害であった島原大変肥後迷惑による津波被害を受けた。2011年の東北地方太平洋沖地震、2016年には熊本地震を経験し、2024年の能登半島地震では津波による甚大な被害を目の当たりにした。それにもかかわらず、身近な場所で過去に大きな津波被害があったことを多くの人が知らない状況にあるのではないか、と疑問に思った。

    2 目的

    A 津波被害の実態把握

    (1)島原大変の被害の実態を把握

    (2)多くの人に実感を持ち理解してもらえるようにする

    B 津波被害に関する科学的な理解

    (1)津波被害が大きい所(2)津波高と海岸線の形との関係性とその検証

    3 研究内容

    A(1)被害の実態把握

    ① 現地での震災遺構調査

    宇土半島北側の7か所の供養塔や津波石などの遺構を調査した。

     → 遺構までの道案内や被害状況等を示した看板が設置された所は少なく、場所が分かりにくい所が多かった。津波石が海から遠く離れ、高さ20m近くの場所もあり、津波が来たとは信じられない場所があった。

    ② 地域住民への聞き取り調査  

     震災遺構の周辺の地域住民に遺構や島原大変に関して知りうる情報や防災対策について聞き取りを行った。

     → 遺構の存在は知っていても、島原大変やその時の被害状況等について知っている人はほとんどおらず、遺構近くの人が善意で掃除や管理をされ、行政が積極的に管理・運営しているとは言い難い。津波災害に対する訓練はなされておらず、意識は高いとは言えない状況である。

    ③ 文献調査  「島原大変による寛政大津波(堀川治城、平成20年)」、「日本の歴史上最大の火山災害島原大変(国土交通省九州地方整備局雲仙復興事務所、平成15年)」などを調べ、特別展に参加し資料を拝見した。

    → 宇土半島の北側だけでなく、荒尾・玉名、熊本市や天草市など、有明海沿岸での溺死者数、家屋流出軒数、津波の波高や津波の到達地点などが分かった。

    (2)島原大変に対する理解の拡大~大昔の津波による被害を実感できるような工夫~

      ① 被害状況のマッピング

        震災遺構や津波高などをGoogleEarthにプロット。遺構写真や関連データを添付。

       → 様々な地点での被害やその程度の違いが空間的に理解しやすくなった。

      ② グラフ化 → 場所による被害状況の違いをグラフや表にまとめ可視化した。

    B 津波被害に関する科学的な理解     

     Aより2つの疑問が生じた。

    疑問① 同じ宇土半島で距離が近くても、被害の程度は全く異なるのはなぜか。

       ⇒ 仮説:津波被害は、海岸付近の低い平地で大きい。

    疑問② 標高は同じでも場所により、津波が到達の状況が異なるのはなぜか。

       ⇒ 仮説:津波高は、海岸線の形により異なる。

    (1)標高の高・低と平地・傾斜地で分けて、津波被害の大・小を表にまとめる。

      → 標高の低い平地で、溺死者数や家屋の流出軒数が多く、仮説は正しい。

    (2)① 津波高と海岸線の形については、大きく4つの異なる海岸線の模型をつくり、波を発生させる実験を行い、海岸に到達する津波が遡上する高さを計測する。

       → 夏休みを利用して、実験装置を完成させ実験する。

    ② ①で得られた結果を、島原大変および東北地方太平洋沖地震のデータを元に確かめる。

    4 まとめ  日本最大級の自然災害である島原大変については、多くの人が知らない状況である。私たち世代がきちんと実態や科学的仕組みを理解し、地域住民に伝えて防災意識を高めていく必要がある。

    キーワード:島原大変肥後迷惑、震災遺構、津波災害、岩屑なだれ

  • 熊本県立 宇土高等学校
    セッションID: J-P-18
    発行日: 2024年
    公開日: 2025/03/27
    会議録・要旨集 フリー

    研究者生徒氏名:米田 直人 村上 聖真 吉田 大暉 西川 幸輝 徳丸 幸樹 堀田 舞衣 橋本 直大 西田 琉花 徳丸 亮汰 小林  瑞 本田 琢磨 新宅 草太

    [1:はじめに]

    (1)不知火とは

    不知火とは1年に1回、八朔(旧暦8月1日)の晩にのみ見られる現象とされており、時間変化で1つの光源が横方向に分裂し、つながって見える蜃気楼の一種と考えられている。

    (2)昨年までの成果

    幻の現象を見たいと思い研究を始め、今年度で7年目となった。これまで6年間で23回もの観測を行ったが、一度も不知火らしき現象は見られなかった。

    しかし、室内での不知火の再現に成功し、左右の温度差と微風が条件であること、シミュレーションを行うことにより近年不知火が見られない主な要因は漁火がないことということが分かった。

    [2:目的]

    (1)不知火海でしか見られない理由を探る

    (2)不知火の野外での観測に成功し、鮮明な写真・動画の撮影を行う

    [3:研究内容]

    (1)不知火海でしか見られない理由を探る

    <再現実験から考える不知火海の地形的特徴>

     条件1:潮位変化が大きく、広大な干潟が存在する←異常屈折を引き起こす

     条件2:視線方向に何㎞も続く左右の温度差がある←側方蜃気楼を発生させる

     条件3:真っ暗な背景←不知火へと発展した光源を際立たせる

    A 潮位

     日本海側、不知火海側、内海で潮位差を調べた。

     →不知火海や有明海、瀬戸内海は日本最大級の干満差を持つ

    B 広大な干潟

     地理院地図、環境省WebGISを用いて広大な干潟が分布する地域を調べた。

     →不知火海、有明海は遠浅の地形で広大な干潟が分布する

    C 連続する左右の温度差

    不知火の観測場所として知られる永尾から夜に不知火海を望むと、右に温かい海が、左に放射冷却によって冷えた陸が広がっている。

    海岸線は日奈久断層によって直線的になっており、干拓前後では変わらないものである。日奈久断層は横ずれ運動をし、さらに海側が深くなるため、山側からの土砂が堆積し、遠浅の干潟地形や広大な干潟が形成されたと考えられる。

    Ⅾ 光源の背景

     現代の不知火海では観測方面の大島に明るい街明かりが存在するが、干拓によって作られた埋め立て地であるため、かつては真っ暗な背景だったに違いない。

    また、不知火現象は有明海でも見られたとされる文献もあるが、島原―熊本間などは背景の街明かりの光が強く、不知火が発生しても不知火海と比較すると目立たなかったため現象の名前が不知火とされているのではないかと考えられる。

    (2)不知火を観測するためには?

    現在ではもう不知火は見られないのか?と考え、日本蜃気楼協議会の森川浩司さんからいただいたプログラムに、自由に温度を調節できるヒーターを用いた実験から得られた海面上の温度プロファイルを作成したものを入れ、光路を可視化、シミュレーションをした。

    様々な条件を変えていく中で光源の高さが低くなると、海面近くの温度変化の影響を受けやすく、より光が曲がることがわかった。

    さらに、地元の漁業組合や酒屋さんへの聞き込みから禁漁期間を設け始めてから不知火が見られなくなっているとわかり、不知火の発生・観測には海面に近い光源としての漁火が重要だと考えた。そこで、光源が漁火であった場合でシミュレーションを行うと大鞘川、水無川に漁火があった場合観望所の高さに蜃気楼が見える範囲が来ることが分かった。

    [4:まとめ・今後の展望]

    (1)まとめ  

    ①地形

     不知火海でしか直線的で広大な干潟は形成されず、明瞭な不知火は起こらない。

    ②光路シミュレーション 

    現代でも漁火があれば、観望所から不知火が見られるかもしれない。

    (2)今後の展望

    9月2日に地元の漁師さんの協力で漁火を出し、不知火の観測を行う。

    キーワード:不知火現象、シミュレーション、再現実験、干潟、漁火

  • ★日本地質学会ジュニアセッション奨励賞★
    熊本県立 宇土高等学校
    セッションID: J-P-19
    発行日: 2024年
    公開日: 2025/03/27
    会議録・要旨集 フリー

    研究者生徒氏名:

    徳丸亮汰 小林 瑞 本田琢磨 新宅草太

    村上聖真 米田直人 吉田大暉 西川幸輝

    徳丸幸樹 堀田舞衣 橋本直大 西田琉花

    1.はじめに

    (1)目的

    私たちは不知火という蜃気楼の一種の研究を行っており、八朔の晩にのみ見られるとされている。そこで、不知火海を吹く風や気温、海水温を探ることで八朔の時期の気象的な特徴を探り、不知火が八朔にのみ見られる理由を明らかにすることを目的にして研究を進める。

    (2)昨年までの成果

       一日、一年の中での風の解析を行い、不知火海では夜に海陸風、昼に季節風が吹くことが分かった。また、東西と南北の範囲で海陸風が不知火海という局所的な場所で吹いていることが分かった。

    2.研究内容

     (1)不知火海を吹く風の推定

    ①背景

     不知火の再現実験において不知火海の風が不知火現象の発生条件の一つに含まれることが分かった。不知火の観測値である永尾を吹く風を調べようと思ったが、永尾付近には気象観測場所がなく、気象庁の観測データがなかった。そこで、永尾を吹く風を推測し、実際に観測して確かめることとした。

    ②広域での風の傾向 

     A九州全体での風の傾向

      a方法

    九州全体が高気圧に囲まれた九州沿岸を吹く風を月ごとに調べる。

      b結果

       ・夜はほとんどの地点で一年を通して陸風とみられる傾向の風が吹いていた

       ・昼はほとんどの地点で夏に南風、冬に北風とみられる傾向の風が吹いていた 

     B夜に季節風が吹いていないことの確認

      a方法

       晴れた日の中で、1~3時の間に4地点(三角、松島、八代、水俣)全てで同じ風向きの風が吹いている日数とその割合を解析する。

      b結果

       晴れた日の1~3割程度しか夜に季節風が吹くことはない。

     C考察

      a海陸風について

       一年を通して昼夜どちらも海陸風が吹く

      b季節風について

       季節風の強さは昼夜で変化する

    ③永尾での風

     A永尾での風の推測

      永尾での風を推測すると、夜は北風(陸風)、昼は夏に南風、冬に北風(季節風)が吹くと推測される。

     B実際の観測結果

      実際に9~12月に計10回観測を行うとほとんど推測と同じ傾向だった。

     (2)不知火海の気温と海水温の関係

    ①背景

       不知火を含む蜃気楼は密度の差によって光が屈折して発生する現象である。密度差は海水により温められた海面付近の空気と海水の影響を受けない空気の温度の差によって形成される。そこで、八朔の時期の晩の気温と海水温の関係を調べることとした。

    ②気象庁、水産研究センターのデータを用いた解析

     A方法

      気象庁の観測所「三角」での最低気温と熊本県水産センターが測定した不知火海の海水温を元に調べる。

     B結果

      冬に気温と海水温の差が最大になり、夏に最少となり、八朔は気温と海水温の差が大きくなり始める時期である。

    ③自作海水温測定器を用いた解析

    熊本県水産研究センターのデータは一日の中で一回測られたデータであり、実際は一日の中でも海水温は変動しているため、自動で海水温を測る装置を作り気温との差を調べることにした。

     A方法

    作製方法 Arduino unoと温度センサー、SDカードモジュール用いて自動海水温測定器を作製する。作成した装置を浮き輪に固定して、アンカーなどによって潮流で流されないようにする。

    3.まとめ

    ●昼と夜で季節風の強さが変わる

    ●永尾でも夜に陸風(北風)、昼に季節風が吹く

    ●八朔は夏よりも気温と海水温の差が大きくなる

    4.今後の展望

    ■季節風の昼夜での強弱の違いの理由を明らかにする

    ■宇土半島の北側と南側とで、風の観測を続ける

    ■海水温測定器を用いて八朔の気温と海水温の差を調べる

    キーワード:海陸風、季節風、不知火海、海水温、気温

  • 熊本県立 宇土高等学校
    セッションID: J-P-20
    発行日: 2024年
    公開日: 2025/03/27
    会議録・要旨集 フリー

    研究者生徒氏名:

    3年:徳丸亮汰、本田琢磨、小林瑞、新宅草太

    2年:吉田大暉、西川幸輝、米田直人、村上聖真

    1年:橋本直大、徳丸幸樹、堀田舞衣、西田琉花

    1:動機 私たちが住む熊本県宇土市で産出される馬門石は、Aso-4火砕流堆積物である阿蘇溶結凝灰岩とされているが、赤色の原因は未だ不明であるため。

    2:目的・仮説 本研究では馬門石の赤色の原因を明らかにしたい。今回は文献を参考に、赤色の原因を「鉄」のFe2O3と考え、研究を進めた。以下、赤いものを馬門石、黒いものをAso-4とよぶ。

    3:研究内容 A:観察・実験 馬門石とAso-4の違いや鉄の酸化物の生成を知るため、観察・実験を行った。(1)馬門石とAso-4の違い 密度→差はほとんどなかった。磁性→磁石についたものは、磁鉄鉱の他に角閃石等も見られた。(2)空気中と水道水中の鉄クギのサビの発生を観察 水道水中の鉄クギで赤サビFeO(OH)が発生した。(3)粉末(Fe、Fe2O3、Aso-4、馬門石)のガスバーナーでの加熱、塩酸中での反応 馬門石とFe2O3の実験結果は類似していた。

    ⇒ 赤色の原因は、Fe2O3かFeO(OH)ではないか。

    B:成分分析 両者の成分の違いを調べるため、熊本県産業技術センターで成分分析や電気炉での加熱を行った。(1)蛍光Ⅹ線分析 成分組成はほぼ同じで、鉄が約10%含まれていた。

    (2)Ⅹ線回折 固有波長のピークが不明瞭で、Fe2O3の有無を明確にできなかった。(3)電気炉での加熱 1,000℃で加熱すると、どちらも赤色になった。⇒馬門石の赤色の原因は、岩石中の「鉄」ではないか。さらに(2)よりFeO(OH)ではと考えたが、Fe2O3である可能性もある。

    C:岩石の分布調査 両者の産状と色の関係を明らかにすべく、宇土市網津町馬門にて分布調査を行った。その結果、複数箇所で境界が見られた。主な観察結果は以下のとおり。

    ①基底部付近はAso-4、その上に馬門石が見られることが多かった。②境界面の傾斜は場所によって様々で、局所的に変化していた。③境界面は色が漸移しており、不明瞭だった。④含まれる礫や黒曜石レンズの量や大きさに、違いは見られなかった。⇒両者の大きな違いは色だけ。元は同じ岩石ではないか。⇒①②より、馬門石の生成は熱による酸化ではなく水による酸化が原因ではないか。

    4:考察 元々は全てAso-4だったが、水や空気に触れることで部分的に酸化し、FeO(OH)が発生して赤くなったものが馬門石ではないか。

    5:まとめ 馬門地区における馬門石の分布の詳細を明らかにした。馬門石とAso-4は色の特徴以外ほぼ同じである。現在、Aso-4が、馬門地域では内部の角閃石が風化する際に、鉄が水により赤サビを形成し、赤くなったものが馬門石だと考えているが、断定できない。

    6:今後の課題● 岩石中のFe2O3の検出。● FeO(OH)とFe2O3の温度による生成の変化を調べる。● 馬門の阿蘇溶結凝灰岩は、Aso-4火砕流堆積物のどのユニットかを明らかにする。● 鉱物による酸化、 風化のしやすさなどを調べる。● 馬門地区での追加の分布調査や、他地域の馬門石に類似した岩石の調査を行う。

    7:謝辞・主な参考文献 本校教諭の本多栄喜先生、熊本県産業技術センターの大城善郎様、元本校地学教師の田中基義先生、御船町恐竜博物館学芸員の池上直樹先生など、研究に関わって下さった皆様に心より感謝申し上げる。●酸化鉄、水酸化鉄系化合物の生成と物性(1969)高田利夫●阿蘇火山の生い立ち 地質が語る大地の鼓動(2003)渡辺一徳●国土地理院地図●熊本の自然をたずねて(2009)熊本県高等学校教育研究会地学部会●熊本日日新聞(2021)「馬門石 噴火の軌跡に触れる」

    キーワード:岩石、Aso-4火砕流堆積物、鉄、馬門石、酸化

  • 鹿児島県立国分高等学校 サイエンス部地学班
    セッションID: J-P-21
    発行日: 2024年
    公開日: 2025/03/27
    会議録・要旨集 フリー

    研究者生徒氏名:中村 一護・福永 成喜・中原 大成・久保 悠太

    1914年に桜島が大噴火してから今年で110年が経過した。京都大学の研究によると桜島の地下にあるマグマだまりは9割ほどのマグマで充填され,この数十年以内の大噴火が予想されている。仮に桜島が大正噴火級の噴火をした際,どの方向に降灰が分布するかに興味を持ち,先輩達が研究を始めた。研究では,桜島上空の風向きの調査が必要であり,気象庁が公開している風向きのデータを入手し研究した。鹿児島地方気象台Webページにある,1日2回の9時と21時の高度別風向データを活用した。データは鹿児島地方気象台上空の風向きデータであるが,気象台によるとその風向きと桜島上空の風向きはほぼ同じとのことであった。昨年度までの成果は以下の通り(2012年~2022年までの462,027個のデータ)

    ・研究1年目:2021年の高度0~5kmまでの対流圏の風向を中心に解析した。風向のバラツキが大きいが,西風が多めであることが分かった。

    ・研究2年目:2013年~2022年の高度0~5km,5~20km,20~40kmの3つの高さに分けて風向を解析した。高度0~5kmは西よりの風向が多めだがバラツキが大,高度5~20kmはほぼ西寄りの風,20~40kmはほぼ東寄りの風が多かった。

    ・研究3年目:2012年の高度0~20kmに絞って風向を解析した。9時の結果は7~9月の夏は主に南寄りの風,それ以外の時期は主に西~南西の風であった。21時の結果は9時とほぼ同様の傾向であったが,11~3月ではどの高さもほぼ西の風で一定であった。ジェット気流の影響と考察した。

     昨年度までの研究から,7~9月の主に夏に大噴火が起こると桜島の北方向に位置する霧島市方向に多量の降灰が起こり,それ以外の季節では桜島の東側の大隅半島側に多量の降灰が起こると予想している。これまでの先輩達の研究では,大噴火の際の降灰分布の方向のみを考察してきたが,今年の研究では2023年から2024年までの最新の風向データを使って,これまで使わなかった風力と気圧データも入手して,実際に桜島が大正噴火級の噴火をした際の降灰について,降灰の向きに加えて,降灰量分布の推定を目標に現在解析中である。また先輩達のデータも活用して,年ごとでの風向に特徴がないかも検証することを目標に同時に解析中である。

    キーワード:桜島,大正噴火,降灰,風向,風力

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