学生が学術的な文章を書けるようになるには,文章全体の根本を成す骨組み,所謂,序論・本論・結論という文章構造内で書くべき項目とされる構成要素について理解する必要があると考える.本研究では,この構成要素に焦点を当て,論文に記すべき構成要素を明確にした上で,初年次学生が執筆した課題論文全体の中に必要な構成要素がどれくらい存在しているのか,また,その記述内容を数値化し論文の文章構造面の特徴や問題点を明らかにした.
本研究では,6回のアカデミック・ライティング授業内で3編の小論文(小論文①,小論文②,小論文③)を執筆し,小論文②と小論文③においては,序論・本論・結論で何を書くのかを文字化できる「小論文アウトラインシート」を使用した.小論文3編全体の文章構造分析を行った結果,序論「問題提起」と結論は,執筆回数を重ねる度に明確に表現できるようになり,特に序論「問題提起」に関しては「小論文アウトラインシート」の効果が確認できた.しかしながら,本論「客観的データ解釈や考察」,「自身の意見の提示」の表現に課題が残ることが明らかとなった.これらの課題はOECDのPISA2018読解力低下に繋がるものであり,課題を克服すべく,読解力リテラシーを身に付けるための授業デザインの構築を思案すべきであると考える.
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