Journal of Inclusive Education
Online ISSN : 2189-9185
ISSN-L : 2189-9185
13 巻
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ORIGINAL ARTICLES
  • ―複数年にわたる親の語りの分析を通して―
    若松 美沙, 若松 昭彦, 下手 佐智代
    2024 年13 巻 p. 1-21
    発行日: 2024/08/30
    公開日: 2024/08/30
    ジャーナル オープンアクセス
    本研究は、複数年にわたる親の語りから、学齢期ダウン症児1名におけるエンゲージメントの循環プロセスを可視化し、その意味を検討することを目的とした。誕生から小学3年生までの循環プロセスをTEM図で可視化したところ、第1期は、将来を見据えて、子どもの目前にあらゆる選択肢が広がるように最大限備える時期であり、子どもがエンゲージメントの基盤を入念に準備する時期であった。第2期は、子どもが意志を貫くことを尊重し、動物研究と神楽研究へのエンゲージメントと、その産物としての研究活動の日常化を促進することを期待する時期であり、子どもがいくつかに焦点を絞って夢中を追求する時期であった。第3期は、子どもが各研究に工夫を添えるためのエンゲージメントを後押しし、専門家に届ける価値を共有する時期であり、子どもが追求し続けてきた夢中を表現・発信して拓く時期であった。以上から、エンゲージメントには、子どもにとって、地域コミュニティの中での豊富な経験を通した世界や社会の広がりを獲得し、将来の明確な自己像の描出につながる意味があるのではないかと推察される。
  • ーデルファイ法を用いた合意形成を通してー
    今井 彩, 前原 和明
    2024 年13 巻 p. 22-35
    発行日: 2024/08/30
    公開日: 2024/08/30
    ジャーナル オープンアクセス
    本研究では、特別支援学校の現場実習において高等部教員の指導・支援に寄与するためのガイドラインの開発を目的に、デルファイ法(専門家に対して原案の提示とコンセンサス判定の手続きを繰り返し行い、合意形成を図る研究手法)を用いて、現場実習のフィードバック場面における指導・支援方法を記載したガイドライン内容の検討を行った。研究協力者としてX県の知的障害を主とする特別支援学校12校から、進路指導を専門とする教員を選定してもらい、調査のためのガイドラインの原案には、これまで特別支援学校の高等部教員が、現場実習を通して実践してきた取組について集約・整理した先行研究を用いた。その結果、2回の調査を通してガイドライン内容は高いコンセンサスを得ることができた。理由として、ガイドライン内容が教育現場の実践とつながりやすく、特別支援学校の教員が抱く課題に対応していることが考えられた。
  • Seiji KOGA, Mizuki YOHINAGA, Haruki KOCHO, Haruo FUJINO
    2024 年13 巻 p. 36-48
    発行日: 2024/08/30
    公開日: 2024/08/30
    ジャーナル オープンアクセス
    Due to the COVID-19 pandemic, wearing a mask has become commonly implemented in school life. Compared to adults, there is a lack of knowledge on the effects of mask-wearing on facial expression recognition in children. Hence, this study aimed to investigate this relationship for Japanese preschool children. We collected data from 58 children aged 3–5 years. The children were asked to indicate the type of facial expression from 18 facial expression stimuli that were displayed individually on a screen, consisting of three types of facial expressions (happy, anger, and sadness) × three levels of emotional intensity (weak, moderate, strong) × with or without a mask. The global correct response rate was 86% in preschool children. Wearing a mask significantly reduced correct responses in children (88 to 83%). Happy and stronger emotional intensity (moderate to strong) was associated with higher accuracy. The results suggest that the effect of wearing a mask on facial expression recognition is significant; however, the effects are limited in preschool children.
  • ー震災支援者の視点からのテキストマイニング分析ー
    餅原 秀希
    2024 年13 巻 p. 49-63
    発行日: 2024/08/30
    公開日: 2024/08/30
    ジャーナル オープンアクセス
    本研究は、2024年能登半島地震における障害者のニーズと現状を明らかにし、支援体制の改善に役立つ知見を提供することを目的とした。能登半島で障害者支援に携わった8名の支援者に対するインタビューを実施し、テキストマイニング分析を行った結果、障害者向けの個別スペースやヘルプカードの必要性、配給食の問題、バリアフリー設備の使いにくさなどの課題が明らかになった。また、先行研究と一致して、点字案内やバリアフリー対応の不備、情報提供の不足、医療ケアの確保の困難さが再確認された。これらの課題に対しては、視覚障害児者向けの点字案内やバリアフリー設備の改善、聴覚障害者への情報提供手段の充実、知的障害者や精神障害者に対する医療ケアの確保、自閉症児者の安否確認システムの整備が求められる。本研究の限界として、サンプルサイズの少なさ、取材時間の制約、特定地域に偏った調査が挙げられる。今後は、より広範な地域での調査を行い、多様な視点から障害者支援のニーズを把握する必要がある。本研究は、障害者支援体制の強化と適切な支援の提供に向けた基礎資料として役立つことが期待される。
  • ; Through a Survey of Teachers at University-affiliated Elementary School in Japan and Taiwan
    Hsuanling CHEN, Shoko MIYAMOTO
    2024 年13 巻 p. 64-82
    発行日: 2024/08/30
    公開日: 2024/08/30
    ジャーナル オープンアクセス
    This study focuses on the status of disability simulation in elementary school and compares Taiwan and Japan. This study aims to clarify and compare the status of disability simulation and difficulties associated with them in elementary schools. We conducted a survey among six regular class teachers at each of the ten university-affiliated elementary schools in Taiwan (60 teachers in total) and all 68 national university-affiliated elementary schools in Japan (408 teachers in total). The response rates for Taiwan and Japan were 25% (12 teachers) and 23% (93 teachers), respectively. The results revealed that Taiwanese teachers experienced difficulties related to a lack of personnel, while Japanese teachers faced challenges obtaining and preparing the necessary materials and equipment. Consequently, it is recommended that school staff collaborate more effectively and establish connections with external organizations in Taiwan. Furthermore, in Japan, resources should be made available and smooth cooperation with external organizations should be ensured.
  • 金 珉智, 金 彦志, 金城 紅杏
    2024 年13 巻 p. 83-104
    発行日: 2024/08/30
    公開日: 2024/08/30
    ジャーナル オープンアクセス
    日本と韓国ともに特別支援教育が普及・発展したことに伴い、障害の重度・重複化への対応は共通の課題の一つになっている。本研究では、特別支援学校の重度・重複障害児に対する指導領域である日本の「自立活動」と韓国の「日常生活活動」の指導内容を比較分析することで、日韓における重度・重複障害児指導の特徴と相違点を明らかにすることを目的とする。テキストマイニングの結果、「自立活動」において「音」、「玩具」、「働きかけ」、「手」、「目」、「聴覚」、「視覚」、「基本」、「歩行」、「用具」、「動作」が主な特徴的なキーワードとして示された一方、「日常生活活動」においては「自立」、「生活」、「実物」、「シンボル(象徴)」、「疎通」、「意思」、「文化」、「地域」、「社会」、「余暇」であることが示された。本研究により、「自立活動」は、教材・教具による感覚刺激を通して指導を行うことを特徴としている一方、「日常生活活動」は、地域社会で主体的に生活していくために実物やシンボル(象徴)に重点を置いて指導を行うことを特徴としていることが示された。
ACTIVITY REPORT
  • ―双方向のかかわりに着目して―
    平塚 達也, 鈴木 徹
    2024 年13 巻 p. 105-119
    発行日: 2024/08/30
    公開日: 2024/08/30
    ジャーナル オープンアクセス
    本研究では、交流及び共同学習における学習活動の違いが、通常学級の児童のかかわり方や学びに及ぼす影響を明らかにし、双方向のかかわりを重視するために必要な学習活動や教師の手立てについて検討することを目的とした。小学校5年生の3つの学級で行われた交流及び共同学習の実践を取り上げ、授業内のかかわりと授業後の学びを総合的に踏まえて、各実践の成果と課題を分析した。1組では、両校の児童が小グループに分かれて活動した。成果として、個別に密接なやりとりが生じた点が挙げられた。一方課題として、相手との急な距離感の近づきに苦戦した点が挙げられた。2組では、両校の児童にそれぞれ役割があった上で活動した。成果として、役割があったことで、やりとりのしやすさにつながった点が挙げられた。一方課題として、役割が固定されていたことで、かかわり方が限定された点が挙げられた。3組では、両校の児童全員で一緒の活動をした。成果として、両校の一体感が芽生えやすくなった点が挙げられた。一方課題として、個別にかかわる場面は限られた点が挙げられた。このように、各学級の学習活動が異なったことで、別々の成果と課題が挙げられた。双方向のかかわりを重視するために、実態やねらいに合わせた学習活動の使い分けや、他者とのかかわりを促す教師からの言葉掛けの必要性が示された。
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