Journal of Inclusive Education
Online ISSN : 2189-9185
ISSN-L : 2189-9185
5 巻
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原著論文
  • 深田 將揮, 竹下 幸男, 生野 勝彦, 渡邉 健治
    2018 年 5 巻 p. 1-17
    発行日: 2018年
    公開日: 2018/08/30
    ジャーナル オープンアクセス
    本研究では、小学校の学級担任を対象にダイバーシティ教育に関する取り組みと意識について明らかにすることを目的とした。調査は、1)担任している学級の実態、2)児童の多様性に配慮した教育や多様性を認め互いに尊重し合う態度や行動を児童に醸成する教育の実施状況、3)ダイバーシティ教育に関する学級担任の意識について行い、検討した。その結果、学級を構成する児童の実状が、配慮のあり方や醸成する内容をある程度規定しているということが示された。また、学級担任の意識として、今後の多様性教育の推進に関してやや消極的な側面を持ちながらも、児童の多様性に配慮した教育を行うことや多様性を認め互いに尊重し合う態度や行動を児童に醸成する教育を行うことについては、肯定的な考え方を持っていることが明らかになった。
  • ―海外の実践報告分析を中心に―
    小原 愛子, 下地 華愛, 太田 麻美子, 野崎 美沙
    2018 年 5 巻 p. 18-33
    発行日: 2018年
    公開日: 2018/08/30
    ジャーナル オープンアクセス
    通常の学級に在籍するASD傾向の子どもへの社会スキルプログラムを開発するための構成概念の検討を行うために、海外のASD傾向の子どもへ実践報告を分析した。ERIC-Institute of Education Scienceの論文データベースにおいて「ASD social skill」で検索した結果、14件が分析対象となった。主に「伝える能力」の「自分の気持ちを伝える」、「語彙力を身につける」といった実践が多く、「場を整理する能力」の「空間を整理する」に該当する実践報告はなかった。「伝える能力」に関しては、特にビデオモデリングやソーシャルストーリーなどの模倣や汎化といった指導方法が効果的とされる実践が多かったため、今後、プログラム開発の際はそれらの手法を取り入れることが重要であることが示唆された。プログラム実施期間は、それぞれの実践によって異なっていたため、さらに分析を行って適切なプログラム実施期間や頻度を考察することが今後の課題として挙げられた。
  • 大久保 賢一, 渡邉 健治
    2018 年 5 巻 p. 34-52
    発行日: 2018年
    公開日: 2018/08/30
    ジャーナル オープンアクセス
    本研究においては、公立小学校の知的障害特別支援学級と自閉症・情緒障害特別支援学級の担任教員を対象として、担任教員が認識している特別支援学級に関わる現状と推移、そして通常学級支援を目的とする弾力的対応の実態について質問紙法による調査を行った。その結果、対象教員の大部分が、在籍児童数、仕事量ともに増加していると認識していることが明らかとなった。また、通常学級に対する自らの支援の必要性は、大多数の特別支援学級担任教員によって認識されており、頻度の差はあるものの7割から8割の者が実際に弾力的対応を実施しており、通常学級担任教員への支援としては「担任教員に対する助言」や「児童の実態把握」が多く、通常学級在籍児童への支援としては「授業中における児童に対する学業面や行動面での個別的支援」が多かった。しかしながら、付加的な時間を必要とする対応、通常学級の児童集団から個別的に切り離して場を設定することを必要とする対応、そして実施の際に保護者や本人の同意を得ることが必要な対応については実施率が低かった。
短報論文
  • ―沖縄県内高等学校のデータを用いた分析―
    照屋 晴奈, 矢野 夏樹, 下條 満代, 韓 昌完
    2018 年 5 巻 p. 53-60
    発行日: 2018年
    公開日: 2018/08/30
    ジャーナル オープンアクセス
    韓・沼館・呉屋(2018)が開発したScale for Coordinate Contiguous Career (Scale C3)は、学校や職場において観察することのできる、対象者の実態把握に関連する評価項目を仮説に基づいて、構造化した尺度である。本研究では、Scale C3自己評価用(高校生版)を作成し、Cronbach’s α係数を用いて尺度の信頼性の検証を行った。また、得られたデータから生徒の傾向や現時点における尺度の有用性について考察することを目的とした。 信頼性の検証結果、全項目及び全領域でα>0.700となり、高い信頼性が確認された。特に全項目においては、α=0.972と非常に高い値となり、尺度全体の信頼性が検証された。また、パス解析を用いた検証にて、「パーソナリティ」から「キャリア」の「人間関係形成能力」「自己理解・自己管理能力」を媒介し、「課題対応基礎能力」「キャリアプランニング能力」に影響を与える可能性があることが示された。カットオフ値についてもその結果から、協力校の生徒の傾向も見ることができた。Scale C3を使用し、学校や職場において、観察する対象者の実態を構造的に捉えることのできる可能性があることが示された。今後は、教員の客観的評価ができるScale C3を含め、データを増やしカットオフ値の設定や、パス解析にて様々な仮説モデルを検証していくことが求められる。
  • ―日本、韓国、アメリカ合衆国、イギリスの研究を中心に―
    權 偕珍, 太田 麻美子
    2018 年 5 巻 p. 61-76
    発行日: 2018年
    公開日: 2018/08/30
    ジャーナル オープンアクセス
    2006 年に国連で障害者権利条約が採択されてから、日本国内でも様々な領域(厚生労働省, 2017: 文部科学省, 2012a)で、その権利を保障するための障害理解が重要視されてきた。しかしながら、現在行われている障害理解は、障害者を保護して支援する対象として捉えており、その結果、社会の中で共に生活し、働く仲間として障害者が認識されない一因となっている(權・田中, 2016)。社会における障害理解を促進し、障害のある者と障害のない者が共に生きる社会(“共生社会”)を実現するためには、障害を人間の多様性として捉え、多様な人材を社会で活用するというダイバーシティの観点(日本経済団体連合会, 2002)から障害理解教育を考える必要がある。そこで、本研究では、日本、韓国、アメリカ合衆国、イギリスの高等教育機関における教員養成制度及びダイバーシティ観点に基づいた障害理解教育について整理し、動向を把握する。
実践報告
  • ―認知特性に配慮した効果的な英単語書字指導法―
    上岡 清乃, 北岡 智子, 鈴木 恵太
    2018 年 5 巻 p. 77-78
    発行日: 2018年
    公開日: 2018/08/30
    ジャーナル オープンアクセス
    本研究は、英語学習に特異的な弱さを示した高校生2名(A児、B児)を対象として認知特性に応じた効果的な英単語書字指導法を検討した。両名とも全般的知的発達水準は平均から平均の上の領域で、視覚的情報処理の速度と正確性に認知的短所が考えられた一方、A児は視覚情報をもとに推理し思考する力が、B児は聴覚言語系情報処理が認知的長所として考えられた。指導では、英単語の綴りにおける効率的な学習と確実な定着を意図し、PC画面上に提示したスライドを用いて綴りを諳んじる視覚系列化法や語呂合わせを介して綴りを音韻に乗せて覚える言語イメージ法などを行った。その結果、指導開始前に比して指導終了後に書字成績の向上がみられた。また、一定期間後も高い正答率が維持されたことより確実な定着が窺えた。ここから、聴覚優位/視覚優位といった個々の認知特性に応じた英単語の書字指導方法について考察した。
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