日本救急医学会関東地方会雑誌
Online ISSN : 2434-2580
Print ISSN : 0287-301X
44 巻, 2 号
日本救急医学会関東地方会雑誌
選択された号の論文の9件中1~9を表示しています
研究速報
症例報告
  • 岩本 知己都, 山本 真貴子, 小島 伸介, 伊藤 響, 小林 憲太郎, 佐々木 亮, 木村 昭夫
    2023 年 44 巻 2 号 p. 237-240
    発行日: 2023/03/31
    公開日: 2023/03/31
    ジャーナル フリー

    昇圧薬に反応しないカルシウム拮抗薬の急性薬物中毒に対しカルシウム塩の投与が著効した61歳の男性の1例を経験したので報告する。症例は61歳男性。既往歴は心不全, 高血圧。薬物過量内服による意識障害・血圧低下により国立国際医療研究センター (NCGM) 病院へ搬送された。内服したのは主にアムロジピンベシル酸塩で最大280mgを内服した。血圧低下に対して挿管管理, 中心静脈カテーテルを留置し, ノルアドレナリンの持続投与を行ったが血圧の改善に乏しく, 塩化カルシウム水和物を投与したところ効果を示した。塩化カルシウム水和物の持続投与により循環動態を安定化することができ, 合併症なく第3病日には抜管し, 第12病日に自宅退院した。カルシウム拮抗薬中毒に対してカルシウム塩の投与が著効する場合があるので, 循環動態の改善に乏しい患者に対しては, カルシウム塩の投与を検討すべきと考える。

  • 大塩 節幸, 川口 祐美, 小野原 まゆ
    2023 年 44 巻 2 号 p. 241-245
    発行日: 2023/03/31
    公開日: 2023/03/31
    ジャーナル フリー

    新型コロナウイルス感染症第5波では爆発的な感染拡大と感染者像の変化に対応が迫られた。多職種を巻き込んでチームで向き合った。情報共有のために1日2回のカンファレンスと災害医療で使用されることの多いライティングシートを活用しながら共有を図った。中等症, 重症患者が増えるなかでプロトコールを作成した。呼吸数の上昇や急激な酸素需要の増加にいち早く対応した。HFNCの使用と覚醒下腹臥位療法を組み合わせた管理を行うとともに経口気管挿管のタイミングが遅れないように注意した。新型コロナウイルス感染症対応にはチーム医療がきわめて重要である。新型コロナウイルス感染症との戦いはまだ続いているが, 必ずこの経験が今後の医療の発展につながると確信している。

  • 長谷部 理佐, 坂本 壮, 中村 聡志, 藤森 大輔, 吉田 隆平, 糟谷 美有紀, 伊藤 史生, 高橋 功
    2023 年 44 巻 2 号 p. 246-249
    発行日: 2023/03/31
    公開日: 2023/03/31
    ジャーナル フリー

    除草剤の一種であるパラコートは, 致死率が高い製剤であることから本邦では1999年に生産が中止された。しかしパラコートを5%に希釈した低濃度製剤であるパラコート・ジクワット製剤 (以下, PGL) は現在も販売されており, PGL飲用による死亡例は現在も散見される。2015~2021年に当院で経験したパラコート中毒の5例を検討した。1例は誤飲が原因で, 4例は自殺企図で飲用された。1例はパラコートで, 4例はPGLであった。患者背景としては精神疾患が多いとされているが, 当院の症例も精神疾患やうつ状態の背景疾患があった。また, 農村地域・農家での報告が多く, 当院も農村地域に位置することから, パラコート・PGLが容易に入手できたと考えられる。中毒発生防止のためには行政的対応以外に保管者への啓発が重要と考える。

  • 赤穂 良晃, 堀江 勝博, 辛 紀宗, 磯川 修太郎, 一二三 亨, 大谷 典生
    2023 年 44 巻 2 号 p. 250-252
    発行日: 2023/03/31
    公開日: 2023/03/31
    ジャーナル フリー

    喉頭蓋にガスを伴う気腫性喉頭蓋膿瘍の報告は過去少ない。今回我々は, 健常成人男性に発生した気腫性喉頭蓋膿瘍を診断し, 切開排膿により良好な治療経過を得た。症例は44歳の男性。前日夜からの咽頭痛で夜間救急外来を受診した。既往歴や喫煙歴なし。喉頭ファイバースコピーで喉頭蓋左側の腫脹が見られ, 単純CT検査で同部位にairが確認された。抗菌薬投与を開始し, 夜間は気管挿管せず集中治療室へ入室した。翌日, 喉頭蓋の腫脹は増悪し, 造影CT検査で喉頭蓋内部の気腫増大と膿瘍腔が確認された。同日, 手術室で気管挿管され, 切開排膿術が施行された。手術翌日に抜管し, 第8病日に合併症なく退院した。喉頭蓋膿瘍が疑われた場合には画像検査が考慮され, 気腫を伴う場合はより迅速な切開排膿術が望まれる。

  • 藤岡 舞, 伊藤 隆仁, 大坪 諭, 村上 諒典, 橋野 伸, 若原 聡汰, 増澤 佑哉, 須田 秀太郎, 庄司 高裕, 武部 元次郎, 菅 ...
    2023 年 44 巻 2 号 p. 253-256
    発行日: 2023/03/31
    公開日: 2023/03/31
    ジャーナル フリー

    症例は76歳の男性。突然の意識消失で救急搬送された。精査により冠動脈肺動脈瘻破裂と診断し, 心タンポナーデによる閉塞性ショックに対して心囊ドレナージを行い循環動態が一時改善したが, 再出血のため心肺停止に至った。二次救命処置を行いながら緊急手術を実施し, 人工心肺下に冠動脈肺動脈瘻閉鎖術を施行した。術後, 心囊ドレーンの排液は病的増加なく経過したが, 第6病日にCT検査で心囊内に巨大血腫が判明したため血腫除去術を施行した。術後より意識障害が遷延し, 人工呼吸器離脱は困難であり, 第29病日に気管切開術を施行した。全身状態は安定したが脳神経学的転帰は不良で, 第63病日に転院した。肺動脈瘻に合併した冠動脈瘤破裂において心肺停止状態から救命し得た報告はきわめてまれであるが, 心タンポナーデが急速に進行しない場合や, 迅速に経皮的人工心肺装置の導入および緊急手術が実施された場合は救命できる可能性があると考えられた。

  • 石橋 尚弥, 田中 保平, 杉田 真穂, 山根 賢二郎, 由井 憲晶, 藤屋 将眞, 鷹栖 相崇, 古橋 柚莉, 渡邊 伸貴, 新庄 貴文, ...
    2023 年 44 巻 2 号 p. 257-260
    発行日: 2023/03/31
    公開日: 2023/03/31
    ジャーナル フリー

    症例は54歳男性。仕事中に鉄パイプの下敷きになり受傷した。CT検査で, 鈍的外傷によると思われる左肺ヘルニア, 左多発肋骨骨折, 左血気胸, 左肺挫傷, 骨盤および左右大腿骨骨折, 左腰椎横突起骨折と診断した。胸部損傷に対して左胸腔ドレーンを挿入して経過をみた。大腿骨骨折と骨盤輪骨折に対して固定術を行い, 経過良好で入院50日目に転院した。肺ヘルニアは入院36日目のCT検査では還納されていたが, 受傷から約7カ月後のCT検査で再発していた。その後の治療方針について呼吸器外科とも協議し, 局所症状や呼吸器症状はないため, 患者に説明のうえで経過をみる方針となり, 受傷後約1年の現在まで無症状に経過している。外傷性肺ヘルニアは比較的まれな損傷形態で, 病態によっては脱出と還納を繰り返す可能性から治療方針に苦慮することがある。いまだ定石はないがリスク・ベネフィットを考慮して方針を決める必要があると考えられる。

  • 緒方 友紀, 持田 勇希, 海田 賢彦, 山口 芳裕
    2023 年 44 巻 2 号 p. 261-264
    発行日: 2023/03/31
    公開日: 2023/03/31
    ジャーナル フリー

    糖尿病の既往のない60歳代男性。入院1週間前より消化器症状が出現し, さらに構音障害と異常行動が出現したため家族が救急要請した。救急隊により脳梗塞を疑われ, 当院脳卒中科へ搬送された。来院直後にショックバイタルとなり, 精査結果から糖尿病性ケトアシドーシスを伴う劇症1型糖尿病と診断し, 集中治療室に入室した。血糖コントロールを含めた全身管理により状態が改善し, 第14病日には一般病棟へ転床となり良好な転帰を得た。劇症1型糖尿病の症状は多彩で急速な経過をたどることが特徴であり, 救急要請の段階で中枢神経症状を呈している可能性が高い。プレホスピタルで脳卒中が疑われた際には初期診療から専門診療科に振り分けられるため, 脳卒中選定患者に当該疾患が潜んでいる認識をもち, 遅滞なく糖尿病ケトアシドーシスに対する治療介入することが肝要である。

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