今回われわれは, 来院時造影CTにて明らかな腹腔内臓器損傷を認めず, 数日後左胃動脈仮性動脈瘤破裂を呈した症例を経験した。症例は, 85歳女性, 自転車走行中車と接触し, 救急搬送された。来院時バイタルは意識レベル以外明らかな異常を認めず, 身体所見にて後頭部挫創, 左腰部擦過創, 画像所見にて外傷性くも膜下出血, 側頭骨骨折のみを認めたため, 頭部単独外傷と診断し入院となった。第4病日に, ショック状態となり, 体幹部造影CTにて, 食道裂孔ヘルニアにより胸腔内に逸脱した胃体部前面に活動性出血を認めたため, 緊急血管造影検査を施行した。左胃動脈に仮性動脈瘤を認め, 塞栓術を施行した。その後明らかな貧血の進行は認めず, リハビリ目的に第32病日に転院となった。遅発性に左胃動脈の仮性動脈瘤を発症した報告は非常にまれである。来院時に体幹部に明らかな異常を認めなくても, 状態が悪化したときには全身を再検査することが重要である。
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