日本救急医学会関東地方会雑誌
Online ISSN : 2434-2580
Print ISSN : 0287-301X
最新号
日本救急医学会関東地方会雑誌
選択された号の論文の6件中1~6を表示しています
原著論文
  • 小林 佑次, 竹田 亘孝, 本多 満, 岸 太一
    2024 年 45 巻 2 号 p. 115-121
    発行日: 2024/03/29
    公開日: 2024/03/29
    ジャーナル フリー

    【目的】東京消防庁では, 2017年6月1日から除細動プロトコールが改正された。改正から3年が経過したことから, その効果を検証した。【方法】2011年1月から2021年2月までに東邦大学医療センター大森病院救命救急センターへ搬送された初期波形が心室細動/無脈性心室頻拍の院外心肺停止症例 261例を対象とした。発生場所により, 自宅, 路上・公園, 公衆出入場所の3群にわけて, 改正前後で効果を検証した。【結果】プロトコール改正後では3つの場所とも現場活動時間が短縮され, 病着時間も短縮し, PCPS装着率は高くなった。自宅, 公衆出入場所発生において転帰は向上し, 特に自宅発生では, 有意に上昇した。【結語】2017年の除細動プロトコールの改正は, 初期波形が心室細動/無脈性心室頻拍の院外心肺停止の予後の改善に寄与していた。

症例報告
  • 鄭 善仁, 金子 直之, 柚木 良介
    2024 年 45 巻 2 号 p. 122-126
    発行日: 2024/03/29
    公開日: 2024/03/29
    ジャーナル フリー

    症例は20歳代の男性。自殺目的に頭から被ったビニール袋にヘリウムガスを充填させて吸入し, 倒れているのを発見された。救急隊接触時にSpO2測定不能で, リザーバー付き酸素マスク10L/分投与で搬送された。来院時, Glasgow Coma Scale (GCS) E4V2M4。体温 39.2℃。脈拍 151/分。血圧 102/52mmHg。呼吸数40/分, SpO2 95% (リザーバー付き酸素マスク10L/分投与下) で, 動脈血ガス分析で著明な乳酸アシドーシスがあった。鎮静・気管挿管・人工呼吸器管理を行い, 翌日アシドーシスは改善したが全身性強直性痙攣が出現したため抗てんかん薬投与を開始し, 人工呼吸器管理を継続した。痙攣は反復し人工呼吸器管理が長引いたが, 第9病日に痙攣は消失し, 意識も改善したため, 第12病日に人工呼吸器を離脱し, 第28病日に自宅退院した。ヘリウムは, ガス自体に毒性はないが, 高濃度を吸入した場合には低酸素血症を生じ, まれに低酸素脳症や脳空気塞栓症などを合併し重症化する。本症例は, 著明なアシドーシスと痙攣を生じたが, 後遺症なく改善した。

  • 鐘ヶ江 紘典, 早川 達也, 植地 貴弘, 首藤 瑠里, 柴崎 貴俊, 宮城 隆志, 竹下 諒, 中村 俊介, 中森 知毅
    2024 年 45 巻 2 号 p. 127-131
    発行日: 2024/03/29
    公開日: 2024/03/29
    ジャーナル フリー

    症例は60歳代の男性。受診の10ヶ月前に尿膜間囊胞に対する腹腔鏡下摘出術を受け, その際に膀胱頂部を合併切除された。長時間排尿を我慢した後の下腹部痛を主訴に当院救急外来を受診した。腹部CT検査で膀胱周囲に腹水の貯留があり, 膀胱造影検査で, 膀胱頂部からの膀胱外への造影剤の流出がみられたため非外傷性膀胱破裂の診断で抗菌薬投与を行い, 待機的に腹腔鏡下膀胱修復術を行った。術後に再度膀胱造影を行い, 造影剤の膀胱外への流出がないことを確認し退院した。今回, われわれは膀胱自然破裂の1例を経験したので, 文献的考察を含めて報告する。

  • 松下 鈴佳, 森田 智也, 浅野 和宏, 梁 豪晟, 高橋 仁, 舩越 拓
    2024 年 45 巻 2 号 p. 132-136
    発行日: 2024/03/29
    公開日: 2024/03/29
    ジャーナル フリー

    失神を呈した患者の心電図はBrugada型であったが, Brugada症候群による失神ではなく薬剤性失神と判断した症例を経験したため報告する。症例は40歳代の女性。胸痛を自覚し, 硝酸イソソルビドスプレーを使用した後に一過性意識消失発作をきたした。来院時の心電図がBrugada型であったため, Brugada症候群による失神を考えた。しかし, 意識消失の状況が昼間, 立位かつ動作時であり, Brugada症候群による失神の典型例である夜間, 臥位, 睡眠時とは合致しなかった。加えて, 患者が硝酸イソソルビドスプレーを使用した後に前兆を伴う失神をきたしたことから薬剤性失神の可能性が高いと判断し, 外来経過観察の方針とした。救急診療における失神は来院時に症状が消失していることが多く診断に苦慮するが, 初診時の心電図がBrugada型であったとしても, Brugada症候群以外の要因も検討し, 適切な転帰を決定すべきである。

  • 杉中 宏司
    2024 年 45 巻 2 号 p. 137-139
    発行日: 2024/03/29
    公開日: 2024/03/29
    ジャーナル フリー

    今回われわれは, 後腹膜気腫を呈した小児の鈍的外傷性十二指腸穿孔を経験した。症例は, 12歳の男児。サッカーの試合中に相手の膝が心窩部に当たり受傷した。来院時, 心窩部に自発痛, 圧痛はあったが反跳痛はなかった。血液生化学検査では優位所見なく, 腹部造影CT画像では, 十二指腸浮腫性壁肥厚, 膀胱直腸窩に少量の腹水を呈するのみであった。胃管留置により減圧を施行し, 入院加療とした。14時間後の腹部造影CT画像では, 新たに右腎周囲の後腹膜気腫を確認した。さらに23時間後の腹部単純CT画像では, 膀胱直腸窩の腹水増加があったため緊急手術を行った。十二指腸水平脚に径約10mmの穿孔が確認された。穿孔部を単純閉鎖し, 大網被覆術を試行した。第12病日に経口摂取を開始し, 第24病日に独歩退院した。受傷早期の腹部CT画像で十二指腸穿孔と診断できない場合は, 繰り返しのCT検査で厳格に管理し, 手術の時期を逃さないようにする必要がある。

  • 藤原 慈明, 田中 保平, 藤屋 将眞, 渡邊 伸貴, 新庄 貴文, 松村 福広, 伊澤 祥光, 米川 力, 間藤 卓
    2024 年 45 巻 2 号 p. 140-143
    発行日: 2024/03/29
    公開日: 2024/03/29
    ジャーナル フリー

    マムシ咬傷は死亡例も報告され, 重症例ではマムシ抗毒素投与が推奨されている。症例は66歳の女性。4年前にもマムシ咬傷で抗毒素を2回投与されていた。今回, 再び右手をマムシに噛まれ, Grade III の判断により抗毒素を2回投与された。投与後に症状は改善傾向となり, 第4病日に退院した。しかし, 退院した翌日より発熱, リンパ節の腫脹・圧痛や全身の紅斑が出現したため再度来院した。経過から血清病と診断し, 再入院のうえステロイドと抗ヒスタミン薬で加療したところ, 徐々に症状は改善し, 後遺症を残さず退院した。マムシ抗毒素による血清病の発症率は6~15%程度で, 2回目以降は異種蛋白質に対する抗体が増加する場合があるため早期からより強い症状を呈する可能性がある。過去の抗毒素投与時に血清病の発症がなくとも, 再抗毒素投与の際にはその得損失を十分考慮し, 血清病の発症に注意をしながら投与することが重要である。

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