症例は20歳代の男性。自殺目的に頭から被ったビニール袋にヘリウムガスを充填させて吸入し, 倒れているのを発見された。救急隊接触時にSpO2測定不能で, リザーバー付き酸素マスク10L/分投与で搬送された。来院時, Glasgow Coma Scale (GCS) E4V2M4。体温 39.2℃。脈拍 151/分。血圧 102/52mmHg。呼吸数40/分, SpO2 95% (リザーバー付き酸素マスク10L/分投与下) で, 動脈血ガス分析で著明な乳酸アシドーシスがあった。鎮静・気管挿管・人工呼吸器管理を行い, 翌日アシドーシスは改善したが全身性強直性痙攣が出現したため抗てんかん薬投与を開始し, 人工呼吸器管理を継続した。痙攣は反復し人工呼吸器管理が長引いたが, 第9病日に痙攣は消失し, 意識も改善したため, 第12病日に人工呼吸器を離脱し, 第28病日に自宅退院した。ヘリウムは, ガス自体に毒性はないが, 高濃度を吸入した場合には低酸素血症を生じ, まれに低酸素脳症や脳空気塞栓症などを合併し重症化する。本症例は, 著明なアシドーシスと痙攣を生じたが, 後遺症なく改善した。
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