本研究では,心理臨床において日本語版SPARKレジリエンス・プログラムを活用するという臨床的介入の可能性について検討した。女子高生に対するカウンセリングと,小学生男児に対する心理教育的アプローチのなかでプログラムを取り入れた。前者では,それまでの面接で明らかになったクライエントのリソースや強みへの認識を高める可能性が示された。後者では受験の失敗や対人トラブルといった逆境を乗り越える一助となり,家族システムにも肯定的な変化をもたらす可能性が示された。2事例を通して,クライエントの主体的な力を引き出すことや,レジリエンスについての学びと実生活での変化を紐づけられるという臨床的介入の可能性が示唆された。
本研究は,息子の分離困難と不登校を主訴とする母親の事例を提示し,ナラティヴ・セラピーの視座から検討したものである。不登校の「分離不安説」は,ひとつの「専門的知識」として古くからわが国の教育関係者,家族らに根強い影響力を持つ「ドミナント・ストーリー」と考えられた。事例では,偶発的なものを含んだいくつかのきっかけから,そのドミナント・ストーリーから離れた新たなストーリーが見出されていった。本稿ではその過程を描き出しながら,ナラティヴ・セラピーを用いた臨床実践のあり方について考察した。
すでにアカウントをお持ちの場合 サインインはこちら